SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

輝夜姫は夜の闇に消える ( No.5 )

日時: 2015/11/02 17:42
名前: はみう(゜ω゜*)三

月の形はとても綺麗で、何かが思い出せるような。何故だか懐かしいような。その真の意味を知っているか。そう言われれば、はい。と言えてしまうのだろうか。でも、私は何も言わない。しったかぶりなどしないのだから。

「かぐや」
「翁様」
「今日の婚約者は…」
「ああ、逃げて行っちゃいました」
「そうか。…暗くないかい?」
「大丈夫ですよ。私はこのくらいが好きなんです」

暗闇と言うのは、恐いものでも、何もないものでもないと思う。夜が来れば月と一緒に暗闇が来る。嫌な明るさばかりでは、もはや暗闇が恋しくなる。誰もこのことは知らない。月は常に明るい。夜と共に光る月は、常に明るいのだ。

「…かぐや。月に帰るのか?」
「帰りません。私はここで一生過ごすのです」
「それなら…私もうれしい」
「はい。私も…です」
「―――――」
「翁様」

暗闇は、私を救ってくれる。嫌なことから救ってくれる。私は暗闇が好きだ。常に暗いこの場所は私が住むところ。大好きなところ。光は、私を殺してしまう。底の底へと突き落とす。常に明るいあの場所は、私を殺す。嫌にさせる。もう嫌だった。

「―――――」
「媼様」
「かぐや」
「媼様」
「私はあなたのことが大好きよ」
「私もです。とっても嬉しいです」
「本当に大切な人なの。大好き」
「私もです。」
「嬉しいわ。かぐや」
「私もです…。」

大切な物とはなんなのか。迷う人もいるだろう。私はすぐに言える。決まっているじゃないか。大切な人とは何なのか。迷う人もいるだろう。私はすぐに言える。…本当に、決まっているじゃないか。

「何があっても私はあなたのことを忘れないわ」
「私もです。」
「私も…よ…フフッ」
「…ぷっ。フフフッ」
「フフッ…・・・・・・」
「…媼様」
「―――」

大切な物なんて、大切な人なんて、もう、決まってるじゃないか。
「――――――――」
「翁様」

「――――」
「翁様」

「――――」
「翁様…?」

「――――」

「…・・・っ、」
「ぅああ…ッ。ああっ…」
そして暗闇は、私を救って私を落とす。墜とす。深い、深い、闇へと…

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