SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

夢を拾ってみました。 ( No.50 )

日時: 2015/11/24 17:06
名前: 榛都

11月12日
僕は街灯のない路地を一人あるいてた。
暗くて暗くて、細い道を。
そしたらどこからか、風船が飛んできて。
それは、

顔も名前もわからない少年の夢でした。


<夢を拾ってみました。>


その日も随分と平凡だった。
昨日拾った風船は誰かのいたずらかもしれないな。
そう思いながら風船につけられていた手紙を読み返した。

『はじめまして。僕は中学二年生です。
 そして僕はもうすぐ死にます。
 知らない人にこんなこと言ってごめんなさい。
 でも担当医さんにそういわれました。余命3ヶ月と。
 最後に僕の夢を叶えたいと思って、風船を飛ばしました。
 僕の夢はたくさん旅をすることです。
 これを手にした方。お願いです。
 新しい風船とともに、もう一度この手紙を飛ばしてください。
 これが僕が旅をできる、唯一の手段です。
 人生最後のお願いです。どうか、どうか。』

「旅・・・ねぇ・・・。」

ぽつりと呟き僕は考えた。
信じていいのだろうか。話が出来過ぎていないか。
・・・とりあえず保留しておこう。
そうして僕は、引出しに手紙をしまった。


あれから3日が過ぎた。
僕は毎日、あの薄暗い路地を通るたびに
あの手紙を思い出していた。
家に帰り、液晶画面越しにため息をついた。

「はぁ・・・。どうするかな。。。」

僕にはほしい物があった。
そのお金を貯めるため、一銭も無駄遣いはしたくない。

「・・・でも、ゲームしててもらちあかねぇな。」

・・・どうするべきか。そう思い、もう一度手紙を読み返した。
そうすると、端に小さな文字を見つけた。

『2014・11・10』

「・・・え。一年も前じゃねぇかよ。」

僕は気づいた。この少年はもういないことに。
そして、少年の夢をつなげている人がいることに。

僕のちっぽけな都合で、少年の夢を切るわけにはいかない。
やっとわかった。

そして次の日、僕は風船とガスを用意した。

風船に手紙を括り付け、近くの山に登った。

頂上の景色はいつも見るものより、はるかに美しかった。

「ーとべ。」

そういって、僕は風船を離した。
少年の夢が終わらないように。
少年が生き続けられるように。



11月20日
私が学校から帰っていると、風船が落ちてきた。
そこには手紙が着いていて、そこにあったのは

顔も名前もわからない少年の夢でした。


<夢を拾ってみました。>



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