SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

あの空をもう一度 ( No.57 )

日時: 2015/11/28 21:49
名前: 彩都

 僕は飛べなくなった。
 僕は飛べなくなってしまった。
 僕はもう一度、飛びたい、この世界に!!−−−

 三年前−−−
 大歓声の中、司会者がマイクを持ち、喋る。
「さぁさぁさぁ!!遂にこの大会も決勝戦!誰が勝つか分からない!では、ファイナリストの登場です!!」
 そう言って、少年と少女のコンビは暗闇から現れる。
「この二人は、若干十三歳にして、決勝戦に来た、期待の新人です!!」
 司会者はそう言って、観客席の上、大きな画面に、『期待の新人!!吉野五月(よしのさつき)&伊賀俊哉(いがとしや)』と出る。
 うわぁ……さっちゃん……遂に此処迄来たね……、と僕は言う。
 そうだね、しーちゃん……良く頑張ったね……私、今最高だよ!、と、五月は言う。
 だが、この決勝戦で僕は羽を殺がれた。
「期待の新人に挑むのは、五年連続出場&五年連続優勝の絶対最強のコンビ!!」
 司会者が言うと、また、観客席の上、大きな画面に、『最強コンビ!!吉田祈理(よしだいのり)&甲賀雄哉(こうがゆうや)』と出る。
 会場は一気に燃え上がる。
 この会場は、ダンスの会場だ。
 僕らは優勝する為に来た、さて、僕らは最強のコンビだからだ。
 そう思いながら、僕らは、舞台に立ち、踊った。
 最強コンビの二人は、同い年とは思えない、力強い、ダンスを見せた、僕らは体の柔らかさをしようした、ダンスを見せた、僕らは体が柔らかいから、このダンスを選んだ。
 そして、披露は終える。
 僕らはやる事をやった、全力で出し切ったんだ……そう思った時、司会者が喋る。
「はーい、遂に投票が終わり、結果発表です!!」
 ダララララララララ……とミスコンの優勝発表のような音が鳴る。
 あっ、この大会も決勝戦だった。
 すると、さっちゃんが声を掛ける。
「(小声で)ねぇねぇ、優勝できるかな……?」
「(小声で)出来るよ、僕達なら、ね……」
 そして、発表される。
 圧倒的な差で、僕が負けた、僕らが負けた。
 100分割すれば、僕らが、5、相手のコンビが95、みたいな感じだ。
 そしてMVPは、甲賀君と吉田さんだった。
 屈辱的、僕はトイレの中で、泣いた、すすり泣きだった。
 さっちゃんも泣いているだろう、女子トイレに突進する事は出来ない……。
 そして泣き終わった僕はトイレを出た。
 すると、さっちゃんは障害者用トイレの前で待っていた。
 目の周りを見ると、彼女の泣いた後が見える。
 僕はそれに対し、また泣いてしまった。
 何て不甲斐無いのだろう……僕は、さっちゃんの胸の中でで泣いた。
 それから、一ヵ月後、さっちゃんは引っ越した。
 僕とさっちゃんは離れ離れになった。
 その日から、僕はダンスを辞めた。
 もう、僕は、甲賀君レベルには行けないのだから。
 
 そして、時は今、三年後だ。
 高校一年生になった僕は、必ず、部活に入らないといけない高校、『久松高校』に入学した。
 僕は部活勧誘を見る。
 ダンスはもうしたくないな……運動系も体力ももう無いし……無難に漫画研究部にでもするか……。
 そう思いながら、漫画研究部を探す。
 すると、『ダンス部 部員募集!!』という、でかい看板を持った巨乳の女性を見つける。
(ヤバッ!?逃げないと……)
 もう関わらないと思っていたがために、その場から逃げる俊哉。
(逃げないと……逃げないと……)
 俊哉に三年前の記憶が蘇る。
 もう、ダンスは厭なんだ……
 そう思いながら、校舎の裏へ移動した。
 はて、此処は何処だろう……?
 無我夢中で逃げたからな……
 俊哉は、ダンス部の女性が近くに居ない事を祈りながら、周りを見遣り、正門前迄出る。
 よし、居ないな……そう思いながら、また進む。
 今度は会わないような道を選ぶ。
 ……でもこの高校は部活が多いなぁ……。
 この高校は、部活が100以上もある、それを統括するのが、生徒会、生徒会も、20人程居る、生徒会長なんて、3人も居る。
 それ位の大きな高校なのだ。
 中には、単行本研究部なんていう部活もある。
 やはり、漫画研究部が楽だ、と思いながら、漫画研究部を探す。
 すると、あっさり見つかった、だが、隣にはダンス部の看板を持った巨乳の人が……。
 僕が、伊賀俊哉として、バレ無きゃ良いだけの問題だ……そう言い聞かせながら、漫画研究部の前に来る。
「あっあの!!すいません!入部希望です!!」
 俊哉は頭を下げる、頭を上げると、目の前には巨乳のダンス部の人、オワタ……。
「いやぁ……ダンス界のファイナリスト様が漫画研究部なんて、勿体無いですよ、と言う事で、ダンス部入れ」
 そう言われ、椅子に座らされ、机に入部届けに鉛筆を渡される。
 もう……逃げれないじゃないか……てか、隣のメガネの漫画研究部の人はオロオロしてるし!!
 俊哉がそう思った時、聞き覚えのある声で、『しーちゃん』と聞こえる。
 んっ?と振り向くと、三年前引っ越したさっちゃんが居た。
 僕は驚いた。
「まだ、……ダンスをしてるの……?」
 僕は返答に困る。
「う……あ……」
 すると、巨乳の人は言う。
「そりゃあそうでしょう?だってこの人はこの高校のダンス部に革命を起こすのだから」
 ハッ!?何言ってんだこの人は!?僕はもうダンスを……。
 僕は俯く。
 するとさっちゃんは言う。
「ねぇ、しーちゃん……日本一をもう一度……目指さない……?」
 ……僕は答えない。
 肯定も何もしない、いや、何も出来ない。
 すると、巨乳の女性が言う。
「いや……この人は……」
 女性が言う前に僕は言う。
「さーちゃん……それは本気……?」
「三年間、私も特訓をしたよ……」
 僕はやってない。
 でも……さっちゃんとなら……日本一を取れる気がする……多分だけど……。
「……行こう……日本一へ!!」
「うん!!」
 さっちゃんは泣きながら、僕を抱き締める。
 そして僕らは、この高校の、久松高校ダンス部の門を開いた。

 翌日、部室は、三階の端っこの音楽室だった。
 すると、巨乳の人や、他の人は自己紹介をする。
「私は石谷滴(いしやしずく)」
と、巨乳の人……基、滴さんは自己紹介をする。
「……轟豪也(とどろきごうや)……」
 轟さんは僕より弱々しい人だった。
「坂町リリックだ!皆宜しく!!」
 坂町さんは、ハーフなようで、元気があるなぁ……。
 と、違和感に気付く、顧問は……?
「あの、すいません、顧問は誰です……?」
 すると、皆は笑った。
「ハハハ!顧問?私だよ?」
 滴さんが言う。
「そうだったんですか……」
 僕は驚くばかりだ。
 まぁ、知っていて損は無いだろう、……紹介が終わり、早速練習が始まった。
 走りこみ、……開始五分で死に掛け……。
「しーちゃん……まさか三年間ダンスしてなかったの?」
 一周遅れの僕にそう問いかける、さっちゃん。
「……うん……」
 僕はそう言う。
「そうなんだ……ゴメンね……勝手に誘って……」
「いいよいいよ……」
 急いで僕は体を慣らす為に頑張った。
 そして一ヶ月が過ぎた。
 まず、大会に出る事に。
 僕らは一応経験者なので、さっちゃんと組んだ。
 この一ヶ月は大変だった、カットするのが惜しい位に。
 まず、足腰を鍛えたり、ダンスの曲を決めたり……。
 そして、何とか優勝。
 これだ……これを僕は忘れていた……有難う、さっちゃん……またこの世界に引き込んでくれて……。
 そして、全国大会への切符を手に入れた。

 こうして僕達は勝ち続けた、でも忘れてはならなかった、三年前僕等に勝った甲賀君達の事を……。
 彼らも全国大会に出ていた。
 僕達が勝てば、僕らは遂に勝ったと思える。
 そして当日、僕らも甲賀君達も勝ち上がり、三年前を髣髴させるような状況になった。
 そして決勝が始まった。
 僕とさっちゃんは全力を出し切った。
 甲賀君達も全力を出し切っていた。
 この勝負、どちらが勝っても、可笑しく無かった。
 そして結果発表……。
 結果は……僕らが少しだけ上で勝った。
「え……?」
「やったんだよ!!三年前の屈辱を今達成したよ!!」
 さっちゃんに言われ、混乱する。
「おい、お前」
 そう言われ、僕は振り向いた、甲賀君が居た。
「三年前負けたお前が俺達を越えるとか……すげぇよ……」
「うっうん!!」
 意味が分からない返答をして、僕は去った。
 僕らは勝った、そして優勝し、全国一になった。
 その翌年、久松高校のダンス部は何十人も部員が入ったと言う……。
 そして僕とさっちゃんはまた離れた。
 理由はまた、引越しだ。
 でも、僕はダンスを辞めなかった。
 次、もっと凄いダンスを披露する為に……。

 五年後……

「さぁ、今回の大会の目玉は!高校時代、無敗のコンビ、甲賀、吉田ペアを破った、この二人です!」
 そう司会者が言って、僕とさっちゃんは舞台に出る。
「さぁ、行こう、さっちゃん……」
「うん……」
 僕らは踊る、華麗で妖艶なダンスを。
 僕は思い出す、此処の舞台を思い出し、羽をつけてくれた、この……さっちゃんに……。
 僕も、他の人に翼を付けれるような人間になりたいな……
 僕は思う。
 さぁ、あの空をもう一度見よう。

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