SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

ありがとう、そしてごめんね。 ( No.16 )

日時: 2016/02/10 00:19
名前: 暁 ゆら


お姉ちゃん。

どうして、大人にならなくちゃいけないの?

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僕には6つ上の姉がいます。

うちは4人家族で、あまり裕福ではありません。

僕が4歳の時、姉は小学4年でした。

姉は、受験もすべて失敗せず、

よい高校を卒業し、就職しました。

大学進学を親に頼む姿も、

見たことがありませんでした。

僕は高校を卒業し、大学進学を決めました。

姉はいつも物静かで、

すぐに寮へ行ってしまったので思い出も少ないけれど、

一つ、4歳のころに姉に聞いたことがあります。

「お姉ちゃん。
 
 どうして大人にならなきゃいけないの?」

「私は、大人になりたくないな、一生。」

あの時小学4年だった姉は、

なにを思っていたのだろう。

そのとき、僕は何もわからなかった。

でも、今なら分かるよ。

ごめんね、お姉ちゃん。

一人だけに重い荷物を持たせて。

ごめんね。

姉から、メールが届いたんだ。

「大学進学おめでとう。」

ありがとう。

そしてごめんね。




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