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SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
僕と姉 ( No.29 )
- 日時: 2016/02/23 15:24
- 名前: 赤榎
「タカ、起きなさい」
そう優しく呼びかけるのは、僕の自慢の姉だ。
これといって喧嘩もなく、両親や親戚から見ても、仲麗しく見られていたことだろう。
僕が気になることとすれば一つだけ、それは姉が本当の家族ではないということだ。
約10年前に姉がこの家に引っ越しをしてきたという話だ。
僕はそう聞かされていた。
まだ小さかったせいか、記憶がないのだ。
だがあるとき、夜にトイレに行こうとしたときに両親の話を耳にしてしまった。
「あの子はもう、駄目かもしれないね、新しいの交換しないと」
「そうだな、あの子がさみしくないようにと買ったこのロボットも、もう寿命だからな」
そう僕は、姉がロボットであると知ってしまったのだ。
回収日時は来週、つまり今日なのである。
いつも世話を焼いてくれた姉に最後の別れとして、笑顔で見送ろうと思っていた。
しかし、そうはいかなかった。
なぜなら、回収業者に手をつかまれたのは、僕の手、だったからだ。
姉はこちらに目を合わせようとせず、ずっと泣いていた。
それは両親も同じである。
そこでふと、我に返った。
そうか、記憶がなかったのは、小さかったからではなく、自分が機械だったからなのかと。
だがお別れなことには、変わりない。
笑顔で別れよう。
あの優しい笑顔と記憶とともに・・・
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