SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
思い出 ( No.3 )
- 日時: 2016/01/10 15:32
- 名前: 電波
「ほい、これプレゼント!」
彼は私に向かって微笑みながらワンピースを見せてきた。緑を主とした可愛らしいデザイン。ちょっと子供っぽいけど、せっかくの彼からのプレゼントなのだから喜ばないわけがない。
「わぁ可愛い!ありがとう!」
彼はちょっと照れくさそうに顔を赤らめて視線を下に向けた。
「いやぁさ、今日お前の誕生日だろ?サプライズで買ってきたんだ」
「もう、今まではケーキだけで済ませていたくせにぃ!」
私は意地悪っぽく笑いながら、彼に言ってやった。
「ごめん、もっと早くこういうプレゼントしとけば良かったかな?」
「当然でしょう。まったく…」
彼は相変わらずの様子だ。いつもはへらへらと冗談やって怒られたり、叱られたりしてるのにいざという時はてんでダメでやんの。
「ははっ、手厳しい反応だな!」
彼はすぐ後ろの椅子に腰かけ、思い出すように上を見上げた。
「そう言えば去年沖縄に行ったのも今ぐらいの季節だったよな?」
「そうそう。確か〇〇君たら泳げないのに見栄張って海に飛び込んだよね?で、結局溺れて近くの人に助けてもらったんだっけ?あの時は笑ったなぁ…」
「恥ずかしかったよ…まったく…特にお前に笑われたときは…」
今になってもまた笑いがこみ上げてきそうだった。このまま笑ってしまえば彼が可哀想だなと思った私はだ必死にそれを抑えつつ、彼へのフォローに回る。
「でも、今になってみれば良い記念になったんじゃない?」
「まぁ、良い思い出にはなったかな」
「なら良かったじゃん!」
彼はフッて微笑みながら、私へと視線を向けた。
「さて、今度はどこに行く?南は制覇したから今度は北国か!」
「賛成!でも海じゃなくて雪に溺れないよう気を付けてね!私、力ないから引っぱり出せないから!」
「まったく…」
そう言いながら、彼は顔を下に向けた。皮肉を言う私に彼は呆れたのだろうか。
「ごめんごめん!冗談だよ冗談!」
私は両手を振って今の言葉が本当ではないことを伝える。誰にしろ間違いはある。とは言ったものの、ちょっと体が震えてる○○君を見て罪悪感を感じた。私は謝罪を込めて彼に伝える。
「だから……」
「〇〇……」
彼は私の名前を呼びながら顔を上げた。
「そんな悲しい顔をしないで……」
「なんで死んだんだよ……」
水滴がポタポタと落ちる男の目の前に置かれたのは幸せそうな表情でこちらを振り返る少女の写真だった。プレゼントは写真の前に置かれ、彼女が生まれ変わってもいつまでも幸せでいられるよう、男は心から願った。