SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

エンドロールに星屑を ( No.35 )

日時: 2016/03/06 14:04
名前: 湯呑ゆざめ

真っ暗な画面に、白くどこかぼうっとした文字で役者の名前が緩やかな
音楽にのり、スクロールされていく。ゆっくり、じんわり。

観客たちは映画の余韻に浸りながら、その静かで質素なそれにさえ
頬を涙で濡らす。

今の私の状況はどこか、もやがかかっているように言葉で表せない。

でも、精一杯の語彙力で言うのならそれはきっとエンドロール。



最初は、先輩だった。
次に、憧れの人。
そして、好きな人に変わった。

あなたの無邪気な笑顔を見るたび、何度好きと告げたくなったか。

あなたが糸を解すように柔らかく言葉をつむぐのに、何度救われてきた
事でしょう。

いっそ、消せれば良かった。
いっそ、諦めればよかった。


だって、言えない苦しさと降り積もる淡い恋心に嘘はつけない。


でも、あなたはもう卒業。
ならばせめて、彼のエンドロールが質素でありきたりでも。
私が零れ落ちる星屑を散らばめよう。


彼の旅立ちが輝くものであるように。
最後まで、「後輩」でいよう。

私の恋は幕を下ろさずに。

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