SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

雨とネコと拾えない彼 ( No.38 )

日時: 2016/03/15 19:03
名前: りあむ*

行き交う人々はみな傘を差している

空を見上げる者はいなくて

誰も彼女のことを見ない

僕だけが空を見上げた

彼女は優しくすべてのモノに訪れる

彼女を拒む行き交う人々にも律儀に傘をノックする

彼女を見つめる僕にも

彼女が触れるとぱらぱらと雫が溢れた

彼女は優しくて

僕が悲しいことにすぐに気がついた

僕はひたすら空を見上げ続けた

ぬっと僕の上に影が落ちた

誰かが僕に傘を差し出している

その人の肩に彼女が宛ら蝶のようにとまった

彼は僕の代わりに彼女を受け入れた

そして彼は僕を拒みきれなかった

僕を少しだけ受け入れてしまった

一瞬だけ触れて

知ってしまった温もりの優しさがとても痛い

僕は彼女を拒んだけれど

優しい彼女は朗らかに笑った

彼は彼女を連れて去っていった

僕は空を見上げた

赤い傘で遮られた僕の上に

彼女はもういない

傘は彼女を拒むけれど

僕を唯一

いつまでも優しく受け入れるのだと知った



***

句読点使わないものを書きたくて書きました。見づらかったらすみません汗

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