SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

おはよう ( No.53 )

日時: 2016/03/28 22:31
名前: リリ

学校が始まる、朝。

「おはよう」

初めて君に言った時は、緊張した。

「おはよう」

だんだん、あんまり緊張せずに言えるようになった。

「おはよう」
「おはよう」

それが、たまに君から帰ってくるようになった。

「おはよう」

それを君に言うのが、当たり前になった。

「おはよう」
「おはよう」

それをお互い言い合うのが、当たり前になった。

「おはよう」
「………」

返ってこないと、不安になった。

「おはよう」
「おはよう」

返ってくると嬉しかった。

「おはよう」
「…おはよう」

言い方がおかしいと不安になった。

「おはよう」
「おはよう!」

元気に返ってくると安心した。

「おはよう」
「おはよう」

それは掛け替えのない言葉になった。

「おはよう」
「おはよう」

毎朝言える、言ってもらえるのが嬉しくてしょうがなかった。

「おはよう」
「おはよう」

でもなんだか、また緊張するようになった。

「おはよう」
「おはよう」

どうして緊張するのか、わかった朝があった。

「おはよう」
「おはよう」

そう言うたびに意識するようになった。

「おはよう」

…なのに。

「…?」

君は突然いなくなった。

「………」

病院の、ベッドの上。

「…おはよう」

いくら呼び掛けても返ってこなかった。

「おはよう」

もうおはようが言えない場所に、逝ってしまった。

「おはよう…」

いくら言っても、身体を揺すっても、返ってこなかった。

「…おはよう…」

何も、返ってこなかった。

もう「おはよう」は言えなかった。

「…!」

君からの手紙。

『おやすみ。

また次におはようって言える時まで、おやすみ。

そしたら、言いたかったこと、ちゃんと言うから。

おはよう、それから、俺、お前のことーーー


「…っ」

ぽろぽろぽろぽろ。

そんなの望んでなかった。

絶対に望んでなかった。

また次におはようって言えたら、私こそ、そう言おうと思ってたのに。

でも。

言えないから。

またおはようって言うために、今はこう言っとくんだ。

「おやすみ」

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