SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

君といたいから嘘をつく ( No.60 )

日時: 2016/04/04 11:30
名前: 瑠夏奈

大好きな人に、急にキスされた。


***


私の大好きな人には、常に彼女がいる。
彼女がいなくなっても、またすぐに彼女ができる。
だけど、私はずっと彼が好きだった。

「オレさ、また彼女と別れたんだよね〜。誰かいねーかな」
「ふうん…。私には一生無縁の話だわ。カレカノとか」

こんな話はもう何度も聞いた。
もう、こうやって話せるだけでいい。見ていられるだけでいい。

「そう? お前彼氏できそーだけど…」
「あー無理無理。私顔から性格までダメだから」

私がもっと可愛くて素直だったら、君に告白できたのだろうか。君の彼女になれたのだろうか。

「……じゃあ、好きな人もいねーの?」
「…うん、そうだよ」

君と話すとき、私はすぐに嘘をつく。
好きな人に、言えるわけない。

「………それならさ」

彼は、私の髪にそっと触れたかと思うと、ぐいっと引っ張った。
急に引っ張られ、目をぎゅっと閉じる。

「オレの、彼女になれば?」

___目を開いた時、私と彼の唇が、重なっていた。

唇が離れた後、私の頭の中でいろんな考えが回っていた。
彼は私を好きではないだろう、とか他の子にもこんなふうに簡単にするのかな、とか。
でも、口から出たのは、考えていたこととはまったく違った。

「___みんなに、秘密ならいいけど?」

私のこと好きじゃないならやめて、とか本当は言いたかった。
だけど、私が本当に君を好きだと知ったら、君は離れて行く気がした。

___それなら、嘘をついても君と共にいたいと思ったんだ。

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