SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

忘れ去られた小説達の末路。 ( No.1 )

日時: 2016/05/08 00:12
名前: ニンジン×2

「過去ログ 最後の部屋」
その部屋には世間から忘れ去られた小説の精霊達がギュウギュウに詰められていた。

最後に感想を貰ったのは……もう10年前だろうか。

毎日その部屋には精霊が来て、パソコン上から去っていった。

パソコン上から去るということ、それは死ぬという事と同じだった。


今ちょうど、過去ログの最後の精霊、サーヤはガタガタと震えていた。

「作者さん……来てよぉ……悲しいよお……アタイの事忘れちゃったの?思い出してよお。あんなに、頑張って書いたじゃないの……今思い出して、現行ログに移してぇ……。」

「サーヤ……。仕方ないんだよ。所詮精霊だよ。作者さんが今生きている証拠も無いんだよ。どうせ、私達は死ぬんだ……。」

「マリヤ!やだ……死にたくない……私の身体……どんどん黒くなってる……いや……忘れられたくない!!」

サーヤはドアノブを掴もうとした。でも、ドアが高すぎて掴めなかった。

サーヤはぺたんと尻餅をついた。

マリヤは泣いていた。
「マリヤ……どうしたの……?」
マリヤは無言で懐から、精霊達へのお知らせ用のマイクに繋がっているイヤホンをサーヤに差し出した。

サーヤは真っ青な顔で耳に付けた。

「新しく小説の精霊が誕生しました。サーヤさんは、出て行ってください。」

サーヤの床にぽっかりと大きな穴があいた。

サーヤは泣きながら落ちていった。

下を見ると、真っ赤な炎があった。

サーヤは
「助けて、助けて。」
と叫び続けた。

叫びながら、この世から消滅した。

ーBATEND さよならー

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