SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

時計は大切な人の死とともに止まる。 ( No.13 )

日時: 2016/05/21 20:00
名前: 紫音

「 あれ…時計止まってる… 」

私が生まれてきたときに買ったといわれている時計が初めて止まった。

不思議なことにこの20年間、一度も止まった事のなかった時計が。いきなり止まった。

午前10時49分で止まった。

「 大きな古時計かよ… 」

大きなのっぽの古時計 おじいさんの時計

あの歌でも一度も止まらなかった時計がおじいさんが死んだときに止まったと歌詞にある。

でも歌と違って私はちゃんと【 今 】生きている。ちゃんとここにいる。

時計に新しい電池を入れて、時間を合わせている時に母さんから私の携帯に電話が来た。

「 もしも_ 」

「 大変よ!!春くんが、春くんが……! 」

春くんが、交通事故に遭って、ついさっき、亡くなったわ。

「 死んじゃった、の…?春にぃが?なんでっ 」

春にぃ。私の年上の幼馴染の男。

「 バイクに乗ってる時に、車がぶつかってきた_ 」

つい最近、バイクの免許を取ったばかりで何度も、何度も自慢してきた春にぃ。

『 遂にバイクの免許取ったんだぜ。良いだろ、雪歌 』

誇らしげに笑う春にぃの事を思い出すと、急に頭が真っ白になった。

携帯が手から滑り落ちる。

母さんが大きな声で私の名前を呼ぶ。 雪歌、雪歌って。

私の中の時計は止まった。

何年も動いていた、時計と一緒で、時が止まったんだ。



後で聞いた話だけど、春にぃが息を引き取った時間が、10時49分。

あの時計が止まった時間と一緒だった。


【 大切にしていた時計は大切な人が息を引き取ったと同時に時を刻むのをやめた 】

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