SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

宇宙(よぞら)のなかの、おともだち。 ( No.1 )

日時: 2016/09/06 18:26
名前: Garnet



星空に手を浸したい

きらきら輝く小さな宝石たちに波紋をつくって
空からこぼしたい

その星を手にとって
ネックレスにしたい


ねえ
お月さまは、それくらいのこと、できるんでしょう?


できるよ


お月さまは
ちいさな女の子のために
空から
ぽろり
ぽろり
星屑を手にとりました

赤いの、青いの、銀色の、金色の

女の子はたいへんよろこびました


すごい!
でも
そのお星さまは、どうやって繋げるのかしら?


こうするのさ


お月さまは
ちいさな女の子のために
地球の近くから
さらり
さらり
流れ星を指に絡めて繋げました

細く耀く流れ星は
星たちを
するするつなぎとめていきます


女の子はたいへんよろこびました


きれい!
でも
わたしはそんなに、背が高くないから
首に掛けてもらいに
お月さまのところまでは
届かないわ


これならどうかな


お月さまは
ちいさな女の子のために
天の川をたぐりよせて
ゆらり
ゆらり
地球から
お月さままで
橋をかけてあげました

女の子はたいへんよろこびました

小さなほっぺを
大きなひとみを
きらきらさせて

女の子は駆け足で
天の川をのぼっていきます


ほら、きみにプレゼント

わあ!
ありがとう、お月さま!


お月さまはおおきな手で
ちいさな女の子に
ネックレスを掛けてあげました

女の子はたいへん喜んで
天の川のうえを駆けまわりました


もう夜も更けてきてしまった
そろそろ帰りなさい、お嬢さん

うん


お月さまは
女の子をお家まで
おおきな手で
送り届けました

ところが

女の子の首に掛かっていた
綺麗なお星さまのネックレスが
ちら
ちら
ちら
弾けて
消えてしまいます

女の子はたいへん悲しみました


ああ
消えてしまうわ
折角、お月さまがつくってくれたのに


ちいさなほっぺに
ぽろ
ぽろ
ぽろ
大きな涙の粒が
こぼれていきます


お星さまはね、透明な宇宙でしか、耀けないんだ
もちろん、ぼくも

どうして?


消えてなくなるお星さまを掴もうと
女の子は一生懸命
こぶしを固く握りしめていました


お星さまにはね
地球のなかは、すこし、苦しいんだ


お月さまの言葉に
指をそっと、開くと
きらり
きらり
きらり
光のかけらが
てのひらから逃げて
消えてしまいました

白銀にかがやく流れ星も
ふつり
ふつり
ふつり
千切れて
空気に溶けてしまいました


じゃあ、いつか
わたしがお星さまになる日が来たら
もう一度
ネックレスを、作ってくれるかしら?


お月さまは、そんな女の子を見て


うん
いつか。


そっと目を閉じて、そらに、うたうのです。

女の子が眠りについたその夜深け
真っ暗な街の空には
たくさんの流れ星が
降り注いだそうな

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