SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
妄想を続けた結果、こうなりました。 ( No.15 )
- 日時: 2016/09/18 21:26
- 名前: のあ ◆8DJG7S.Zq.
幼い頃から、妄想をする事が好きだった。
最初の妄想は、確か5歳位の時。
好きなアニメを見て、私も主人公達と仲良くなりたいって思ったんだ。
そこで私は、オリジナルキャラクターを作り、主人公や、他のキャラクターと一緒に生活している所を妄想していた。今時の言葉で言うと、「夢女子」というものだと思う。このアニメの妄想は、幼稚園を卒園するくらいまで続いた。
小学校に入学してからも、私は他のアニメやゲームの妄想を続けた。妄想をして、数ヵ月たったら飽きて、また別のアニメやゲームにはまって…私はこの行為を何回も続けた。
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何年かたち、私は中学生になった。
最近は「アニメなど」の妄想はしていない。だけど、新しいものにはまっていた。
それは、自分でオリジナルの物語を作って、それを妄想する事。
キャラクター、年齢、世界、何もかもが自分で操れる。私はそのオリジナルの世界を楽しんでいた。…え?オリジナルの世界を作る人は少なくない?そんなこと、とっくに知ってる。
私はキャラクターの一人を、自分に置き換えて妄想をしていた。
そのキャラクターの名前は、五十嵐(いがらし)凛(りん)。統合失調症(とうごうしっちょうしょう)を患いながら高校に通っているという設定だ。私はそのキャラクターを脳内でなりきっていた。
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そしてある日、私、保坂(ほさか)亜夢(あむ)の妄想は生活にまで危害を加えた。
「おーい!亜夢!部活いこー!」
「分かった!そこの階段までねー。」
そういうと、親友の結(ゆい)はぽかんとした顔で、
「あれっ?今日亜夢部活休むの?」
「え?だって私が吹奏楽部で、結は美術部でしょ?部室違うから、そこの階段で別れちゃうじゃん。」
「何言ってんの!?私達二人とも美術部でしょ!?」
「…あ。」
しまった。これは凛の設定だった…。こんな過ちをしたのは、今のが初めて…どうして…。
「ごめんごめん、冗談だって(笑)」
「もうやめてよね!…でも珍しいね。亜夢がこんな心配する冗談吐くなんて。」
「あぁ、たまにはいいかなーって(笑)」
「へぇー。」
何とか誤魔化せた。これからもちょっと注意した方がいいかな…。気を付けないと。
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あの出来事から2ヵ月経った。凛の妄想は相変わらずで、私は前よりも妄想のキャラクターを増やしていた。
それに比例するように、私の妄想は生活を悪化させる一方だった。例えば、自分の名前が分からなくなったり、自分の中学校ではなく近くにある高校に行こうとしたり…私はだんだん凛に汚染されていった。
学校でも、私を怖がって避ける人が何人かいた。でも、先生や結は私のことを心配してくれた。私はその事がとっても嬉しかった。まるで私が統合失調症のように扱ってくれて…。あぁ、ごめん。何でもないや。
そして、たまに幻が見えるようになったりした。それは、自分の脳内でイメージしている、凛とそのクラスメートだったり、家の風景が違って見えたり…。
さすがにこれは両親もおかしいと思ったらしく、私は精神科へ連れていかれた。
もちろん抵抗した。どうしてそんな所に行かなくちゃいけないのか。とか、私はただ妄想を楽しんでいるだけだ。とか。でも、最終的には強制に連れていかれた。
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「保坂亜夢さーん。」
自分の「本当の」名前だと思うのに数秒かかった。私は、診察室へ入る。
「はい。保坂亜夢さんですね。」
「…はい。」
「では、今までの話を、聞かせてください。」
5歳の時の妄想から、今の状態まで、全て話した。
「ですから、私は精神に問題なんてありません。私はただ楽しんでいるだけなのに。あったとしても統合失調症じゃないと、ダメなんです。あ、いや、これは…妄想?あれ?…あぁもう分からないっ!現実と妄想の区別が!分からないよ!」
え?何で?統合失調症は妄想の世界でしょ?何で私は今精神科にいるの?統合失調症は現実の世界だったの?もう、分からないよ…。
「…妄想の通りですね。」
やめて、やめてよ。
「貴方は、統合失調症の可能性があります。ですが、それはほんの一部です。ちゃんとした病名があります。それは…」
嫌だ嫌だ。やめて。私は統合失調症でなきゃいけないんだ…!違う、違うんだよ、もう分からない。分からないよ…!自分が誰なのか!
医師がゆっくりと口を開く。
「…貴方は、妄想性障害(もうそうせいしょうがい)の可能性があります。」
妄想性障害…聞いたことがある。妄想のせいで、生活とかにも危害を加えるという病気…。あぁそっか、私は病気だったんだ…。
事実を理解した私の中で、何かが死んだような気がした。
保坂亜夢。妄想を続けた結果、こうなりました。