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SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
恋するティラミス ( No.17 )
- 日時: 2016/09/20 10:07
- 名前: ゼロ
高田周平は大あくびをした。
午後4時過ぎのコンビニって、意外と客少ないんだよな……。
自動ドアの開く音がして、振り向きもせず言う。
「いらっしゃいませぇ〜」
「しゅーへー」
「祥子かよ!」
現れたのは高校のクラスメイトで彼女の祥子だ。夏休みに告白してOKをもらった。付き合って7ヶ月になる。
「かよ、って何よ、かよ、って!嬉しくないの?せっかく彼女が来てあげたのに、ねぇ?」
隣のレジにいる店長が、同意を求められて笑う。
「そうだよ高田君、油断してると盗られちゃうぞ」
そんなわけで俺は、祥子の尻に敷かれているのだ。
「それより祥子、今日は早いじゃん」
「今日は部活ないの!先生言ってたじゃん!」
「そうだったっけ?忘れた」
祥子は呆れたように、すたすたと奥に入っていく。
あれ?そっちはスイーツのコーナーだぞ?
甘いものが嫌いな祥子は、いつもチキンやおにぎりしか買っていかない。何かを手にし、不機嫌な顔でそれを置く。
目の前には240円のティラミス。
「珍しいな、お前が甘いものなんて」
「はい、240円でしょ!早くお釣り!」
祥子はなぜかぶりぶり怒っている。
「へいへい。何なんだよもう。はい、60円お釣り」
そして、何も持たずに出て行こうとする。
「おい!祥子!ティラミス忘れてんぞ!」
振り返ったその顔は、真っ赤だった。
「鈍感!バカ!」
そして本当に出ていった。
何なんだよマジで……。ティラミスを置いていったあげく、怒って出ていくとは。
「ははっ」
笑い声に隣を見ると、店長がニヤニヤしていた。
「今日は早く上がりなよ」
ぽかんとする俺に、続ける。
「カ・レ・ン・ダ・ー」
俺はカレンダーを見た。
2月14日だった。
「……早退します」
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