SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
貴女の望むもの ( No.18 )
- 日時: 2016/09/20 14:20
- 名前: 奈乃香
幼い頃から私はなんだってあたえられてきた
欲しいものがあれば言えば手に入ったし、言わなくてもすでにあたえられていた
でも、それが普通ではないことを幼い頃から知っていた
『どうして?』
わからない・・・
でも、見たわけではない、教わったわけでもない貧富の差を知っていた
『それは、可笑しな話ね』
うん・・・
いつだって、私はみんなに可愛がられて、汚いものなんて目に入らないように育てられた
なのに、それを理解している
私以外を知らないのに私が普通じゃないって知ってる
『じゃあ、本当は貴女が見ないように忘れたようにしている何かがあるんじゃないの?』
わからない・・・
でも、そうなのかもしれない・・・
『フフ、貴女は素直でいい子ね』
どうして?
『だって私の言ったことうのみにして考えてるんでしょ?』
うん
でも、そうするしかないからそうしてるだけ
『フフ、そう、じゃあ、それでいいわ』
それより、貴女は私の何を知ってるの?
『さあ、どうでしょうね』
あいまいな答えね・・・
『いずれわかるわ』
そう・・・
『それより思い出した?』
うんん
全く思い当たる節がないの・・・
私は生まれた時から私で、こうやって育ったんだもの
だから、思い当たる節なんてあるはずないの
『本当に?』
え?
『フフ、まあいいわ。思い当たる節がないのなら私の質問に答えて』
・・・別にいいけど、突然何?
『フフ、細かいことはまだ考えなくていいの。じゃあ、一つ目の質問ね。貴女は今何歳?』
え、私の歳?
・・・あれ?・・・
私の・・歳は・・・え・・わからない・・・
え、なんで?
『フフ、じゃあ、二つ目ね。貴女の名前は?』
・・わからない・・・
『じゃあ、貴女の誕生日は?血液型は?』
・・・わからない・・・わからない・・・
『フフ、貴女は貴女のこと何もわかってないのにどうして思い当たる節がないなんて言えるの?』
・・わかんない・・・
こんなの、わかんないよ!
『フフ、泣いても叫んでも現状は何も変わらないわよ』
ねえ・・何で、何でわかんないの?・・・
『あら、フフ、私にそれを聞いてくるなんて予想外だったわ。フフ』
いいから、答えて!
『フフ、簡単なことよ。貴女が見ないようにしてるものは貴女自身だからよ』
私・・自身・・?
『そう、貴女の話した甘やかされてる自分は貴女の理想の自分。そうやって貴女は理想の自分を作って現実の自分を見ないふりしてるの』
よく・・わかんない?
『つまりは貴女の思ってる貴女は夢で現実は違うってこと』
私は・・・私のこと・・・捨てたの?・・・
『そう、貴女は貴女を捨てて理想を手に入れたの』
じゃあ、ここは・・夢?・・・
『フフ、そう。だから、こんなことを忘れようと見ないようにしようと貴女の自由ってこと』
そう、なんだ・・・
じゃあ、私は―――――・・・・・
とある病院
医「この子がここに運ばれてきてからもう、一年ですか・・・」
看「そうですね・・・」
医「まだ、目を覚ます気配もないし、親族の方がお見舞いにも来ない・・」
看「かわいそうですね・・・」
医「ああ・・」
夢の中
『貴女がそれを選ぶことを誰も咎めないわよ。むしろ歓迎するわ』
ねえ、最後に一つ教えて
『何かしら?』
貴女は・・・誰?
『フフフ、私の名前は――――――・・・・