SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
Reason for the smile ( No.23 )
- 日時: 2016/09/24 00:13
- 名前: ユリ
■□■□■Reason for the smile・U■□■□■
「僕はね、今まで色んな人達とあったんだ。」
少年が言った。十代半ば程の、痩せこけた少年だ。
「だから?それは説明にならないよ」
少女が言った。十代前半の、大きな目が印象的な
可愛らしい少女だ。
「その"色んな人達"は、皆それぞれの考えを持って
いて、それぞれの"逃げ道"があったんだ。」
少年はそう言って、柔らかく微笑んだ。それに少
女は大きな目をくりくりさせて応える。
「じゃあ君の逃げ道は笑うことってこと?」
「そうだね」
少年はまた笑った。少女は怪訝な顔をする。
「嘘だ、そんなこと言って、そんなのキレイゴト
だよ、ヒトなんて皆同じだもの」
少女の言葉に少年は微笑む。そしてゆっくりと
口を開く。
「そうかもね、君や誰かには、"可笑しいこと"かも
しれない、"狂っていること"かもしれない。」
少女は怪訝な顔を更に歪めた。分からなかった。
少年の心情が。
「でもね、笑うことで、嫌なことが忘れられるんだ、
楽しい気持ちになれるんだよ。それは僕がおかしい
んだとしても、狂っているんだとしても、笑うこと
だけが、唯一の"救い"で、"逃げ道"なんだ。」
少年は無邪気に笑った。嘘偽りのない、心からの。
少女はふぅんと興味を無くしたように目を逸らした。
少年はそんな少女の様子に苦笑して、口を開く。
「それじゃあ僕は眠るよ、おやすみなさい。またね、
瞳ちゃん。」
「おやすみなさい、ルカくん」
布団に潜った少年はやがてスースーと寝息をたてる。
その音も少しずつ小さくなっていく。やがて、消えた。
ーーーーーーーーーーーーそこにはもう少女の姿は無かった。
■□■□■Reason for the smile・T■□■□■
「今日のは〜…と、あった、魅月ルカくん、生まれなが
らの心臓病、今日の21時かぁ」
××病院の前にいた少女は、スケジュール表をパラパラ
めくりながら呟いた。そして何かを確認した後、病院の
階段を慣れた様子で三階まで昇る。
305号室の病室を開けると、痩せこけた少年がいた。
少年は少女を視界に捉えると、微笑んで挨拶をした。
「やぁ、君は誰?」
少女は考えるような仕草をした後、言った。
「あたしはーーーーーーーーーーーー名前はないよ」
「そうか、じゃあ瞳ちゃんって呼ぶね」
少年は無邪気に笑って言った。"目がおっきいから"とつ
け足した。少女は分からなかった。何故笑えるのか。死
期が近いことは当事者の彼が良く知っているだろうし。
だが彼からは死への恐怖が微塵も感じられない。少女は
好奇心が涌いてきて、ルールを忘れて訊いてしまった。
「ねぇ、君、今日死ぬよ?」
少年は少女の言葉にきょとんとしたが、やがて笑いだし
た。
「あはは、なんだ、今日なんだ、短い人生だったなぁ」
少女は更に分からなくなった。好奇心にかられ、ルール
など、もう頭の片隅にも無かった。
「ねぇ、どうして笑えるの?」
他の人達とは違うタイプだったから、好奇心で自分の目
がキラキラするのがわかった。
「ん?そうだなぁ…」
少年は間をおいて、口を開いた。