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SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
受け継がれる想い。 ( No.30 )
- 日時: 2016/10/06 18:29
- 名前: レオン
甘くて、苦い。
それが、最初の感想だった。初めて飲んだ、砂糖とミルクたっぷりのコーヒー。大人には届かないけど、真似をしたくて…。パパやママみたいに余裕ぶって飲んでたけれど、だんだん苦さの方が強くなって、、
そんな風に懐かしむ事が出来るぐらい時が経って、今はもうおばあちゃん。昔に比べれば砂糖の数もミルクの数も格段に減ったけれど…、砂糖とミルクたっぷりのこのコーヒーは思いでの味。そして、孫に受け継がれている味。
「♪……おいしいね!でもなんか苦いよぉ……。うぇぇ」
「だから茜にはまだ早いって言ったろう?コレはね、ばぁばがばぁばのお母さんに…」
「えっ?ばぁばのお母さん?てっことは!あかねのひいおばあちゃんだ!わぁ!」
「ふふ、こらこら飛び跳ねないの……そうだね。私も茜ぐらいの頃お母さんにだだこねて、作ってもらったんだよ……」
「…ばぁば?泣いてるの?何か悲しいことあったの……?」
「…うんにゃ。悲しくはないさ…ただね?ばぁばは…茜が大好きって事さ…」
「うん!茜もばぁば大好き!」
「茜、茜に大切な人が出来たら…このコーヒーを飲ませておやり…ばぁばとの約束。」
「うんっ!約束!」
あかねーと呼ぶ声がする。またいつもの日常で、懐かしい夢を見ていた。一昨年亡くなった、祖母の夢。
「…ばぁば?あのね、ばぁばにひ孫ができたんだよ?約束通り…あの人にも、この子にも、あのコーヒー飲ませるね?約束だから…」
お腹をさすりながら私は言う。
私は伝えていく。この想いを……。
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