SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
天使と悪魔と (1) ( No.54 )
- 日時: 2016/11/15 22:39
- 名前: 草見 夢 (ai311sakurairo@docomo.nejp)
この目まぐるしく動く現代社会には、この世の者たちに混じってなにくわぬ顔をしながら生きている奴らがいる。
この世の者ではない者、つまりあの世の者たちである。
そしてこの僕、朝霧優(あさぎり ゆう)も例外ではないのである。
********************************
単刀直入に言えば、僕は悪魔だ。
僕は人間に紛れ込むため、普段は角も尻尾も真っ黒な羽もしまい、血のように紅い目も黒くしている。目の色を自由に変えられるようになるまでいささか時間はかかったが、今ではもう朝飯前なのだ。
それから僕は更に人間らしくなるため、高校に通っている。実際の年齢は人間の寿命の何倍もあるのだが、容姿的に十代後半に見えるので高校へ行くことにしたのだ。
もはや一見すればただの男子高校生である。
そんなある日のことだった。
ちょうど僕がバイトを終えて帰っているときだ。
僕は路地でそいつにあった。
*********************************
「何してんの?」
僕は路地で毛布にくるまってガタガタと震えているそいつに向かって声をかけた。
応答はない。
「ねえ?迷子なの?」
また声をかけてみたが、応答は一向に返ってこない。
僕はイラッとして毛布を掴み、思いっきりひっぱった。するとそこにはとても美しい僕と見た目が同じくらいの少年がいた。さらさらとした白い髪、蒼く美しい目、そして背中には僕とは正反対の真っ白い羽が生えていた。
…天使だ。
瞬時に理解した。僕が呆気にとられていると
「な…何ですか?俺の羽を取ろうとしているんですか?」
天使が涙目になって聞いてきた。
「いらないし、取らない。」
僕は言った。
「だから僕のマンションすぐ近くだからちょっと来てくんない?」
このとき僕はどんな顔をしていただろうか?それこそ悪魔の微笑みを浮かべていたと思う
天使と悪魔と ( No.55 )
- 日時: 2016/11/17 23:42
- 名前: 草見 夢 (ai311sakurairo@docomo.ne.jp)
朝霧優 自宅にて
ねえ皆さん、確かに僕は家に来てくれと言いましたけど…こんな一人暮らしの男の家にのこのこと一人で上がりますかね?コイツがバカなんでしょうか。それとも天使ってのは皆世間の大バカ野郎ばっかなんでしょうか。
まあ、考えるのも無駄か。
僕は大きくため息をついて天使にお茶を出す。そして、僕は一呼吸おいてから質問した。
「ねえ、本当に君って天使なの?」
「はい。そうですが?」
…そんな簡単に言っていいもんなんだ…。
もはやツッコミをいれる気力もない。
「じゃあさ、何であんなとこにいたの?」
天使は、しばらく黙っていたがぽつりぽつりと話始めた。
「実は俺、数日前に天界から落っこちちゃったんです。あ、でも万が一落っこちたとしてもいつもなら飛んで天界の扉からまた天界には戻れるんですよ。でも…。」
「でも?」
「ここ数日、天界の扉が開かなかったんですよ。で、結局数日間何も食べていなくて…飛ぶ力もなくなって…で、うずくまっていたらあなたに会ったってわけです。」
…天界の扉が開いてなかっただって?あそこはいつも開いているはずなのにな…。後でサタンにでも問い詰めるか。
「じゃあ君は、今どうしたい?」
「帰れることなら、天界に帰りたいですけど…どうしてですか?」
天使はキョトンとした顔で聞いてきた。
「じゃあ、教えてあげる。」
そういって僕は笑いながら、もとの姿に戻った。
「僕は朝霧優。悪魔だ。」
天使は呆気にとられた顔で僕の姿を見てきた。よっぽど珍しいのだろうか。
「ねえ、僕と契約しない?もちろん悪魔の契約だ。君の願いを三つ叶えてあげよう。何でもいいよ。天界にも帰れるようにしてあげる。その代わり、君が死んだとき君の魂を僕に頂戴?」
この質問は僕がよくしている質問だ。人間はよく、欲望にまみれた願いをしてきた。金が欲しいだの、若くて美人な奥さんが欲しいだの、色々な事を要求してきた。もちろん僕はすべて叶えたし、魂をもらってきた。貰った(奪い取った?)魂は皆小瓶に一個一個保管している。別に食べてもいいのだが、魂の色は皆それぞれ違い、とても美しいので、僕はコレクションしている。
そして気になったのだ。コイツはどんな願いを願うのか。コイツの魂の色はどんな色をしているのか。
「じゃあ…。」
天使がしばらく間をおいてから口を開いた。
「俺と…友達になってください!」
……はあ?
「え?君、天界に帰りたいって…」
「帰りたいですけど!それよりもあなたと友達になりたいんです!」
…やっぱりコイツはバカだった。
僕はまた大きなため息をついて言った。
「いいよ。それが君の願いならば。」
「ところで、君の名前はなんていうの?」
そういえば聞き忘れていた。
「北条…北条奏(ほくじょう かなで)」
「これからよろしくね!優!」
奏はそう言って僕の手をとり、満面の笑みをこちらに向けてきた。
…温かい。
僕は少しはにかみながら言った。
「よろしくね、奏。」
こうして、悪魔と天使との奇妙な生活が始まったのだった。
To be continued