SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

焦がれし子宮 ( No.7 )

日時: 2016/09/22 18:37
名前: めー

パパにねだった真っ白なフリルのついた赤いワンピースはとっくの昔に押し入れ行き、もうどこにあるのかすら見当もつかない。きっとどこか冷たいところでホコリをかぶっているのだろう。小学校の頃の主役が落ちたものだ。
ママにねだったピンクの口紅、背伸びしすぎよと苦笑気味でプレゼントしてもらったが、私もそう思うわ、ママ。結局それは一度だけ使われたあと錆びたクッキー缶のなかに申しわけ程度に詰められ捨てた。いつの頃だったかもう思い出せない。

最近誰にも裏切られなくて心が晴れ晴れしているなんて喜んだのは二度目の男に振られた日。なんだか胸糞悪くって吐いたのは五度目の男を振った日、もともと誰も信じちゃいなかったからだ。
べったりとした灰色の空から降る雨を浴びることに嫌悪感を感じたのは化粧をするようになったから、絵の具のようなそれを顔に塗るのには嫌悪感を感じない、義務です、不思議ね。

友人は一人二人いればいい方、それでも話題は男か金かはたまた大人の汚い部分か、女はおそろしい男はおそろしい聞き飽きたので、犬の友達でも作ってみたいと生まれて初めて思った。ワンしか鳴かないなんて理想。退屈な話題を聞いてるふりしてはがれかけたネイルを弄るくせ、ママのピンク色した爪が恋しい。
学生のとき友達だった子たち、何をしているかしら。自分と同じ惨めで虚しい日々を送っていれば嬉しいなと思った。
人の死ぬ話で泣けなくなった。生温い液体を垂れ流していたのが久しくなる頃には寂しさも消え失せる。泣くために人は死んでばかりだ、お葬式にもどうせなら着飾りたくなる、真っ白なワンピース着て、皮肉に醜く笑ってやりたくなる。

ママ私は今日も元気よママ。ママの望むいい子でいるよ。悪い子を心の底で笑うくせはやめました。その変わりいい子を笑ってやるのです。そしたらいつの日かそのいい子、とっても悪い子になるの。
ねえママ私とっても元気よ、幸せよ。自分がいちばんの被害者面して今日もこぼれた幸せを啜って生きていくの、そして不幸の下水に沈みゆく私は、幸せだよ、ママ。


title∴ごめんねママ

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