SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

未来へ向かって...... ( No.19 )

日時: 2021/10/03 09:39
名前: シズク

「ねぇ、私、ちゃんと卒業できたよ。」

明るい笑顔で、桜の木を見上げる。
今日、私は卒業した。
卒業できたのはサクラのおかげと言ってもいい。
そう、私がサクラと出会ったのは、入学してすぐのことだった。

入学式の翌日......

「おはよう!」
「ねえねえ、昨日のあれさぁ......」

みんなすっかり打ち解けている。
同じ小学校からきた子かな。
私は引っ越してきたばかりだったから、クラスにあまり馴染めなかった。

一日が終わる頃には、もういくつかのグループができ始めていた。
誰とも話せていないのは、私だけみたいだ。
話しかけようともしたけれど、私とは話したくないようだった。

そうして一週間が過ぎ、私はクラスで何と無く避けられるようになった。
どうやって話しかけたらいいんだろう。
今更聞くことも出来ずに、惨めな自分を責めた。
休み時間は、校庭の桜の木の下で過ごした。
桜からは、寂しさを紛らわしてくれるような、そんな暖かい感じがした。

そんな時だった。
「何か悩んでる?力になれたらいいな!」
いつの間にか、同い年くらいの女の子が隣に立っていた。
「あの、あなたは?」
驚いて思わずそう聞いた。
「私はサクラだよ!この桜の木に宿る精霊。困ってる中学生を助けるのが仕事。」
サクラの話は、普通なら信じられないような話だったが、
その時はなぜか、本当のような気がした。

それから、私はサクラと毎日話すようになった。
私が友達作りに悩んでいることを話すと、こう言ってくれた。

「凛らしい言葉で話しかければいいの。
気を使いすぎなくてもね、案外仲良くなれるものよ。
自分なりの方法を見つけてね。」

その言葉を聞いて勇気が出た。
実はそのころ、隣の席の女の子が気になっていたのだ。
自分と同じアニメキャラクターが好きだと話していたのを聞いたことがある。
頑張って話しかけて見ることにした。

「あの、おはよう!私、凛っていうの。よ、よろしく。」
「私は美智香。こちらこそよろしくね!」

話してみると、優しくて面白い人だな、と思った。
その時から、私は、友達に話しかけられるようになった。
親友も2人できた。あの時の美智香と、同じアニメが好きだった彩音。
サクラには感謝してもしきれない。

私に親友ができた時、サクラは、
「もう私はいなくても大丈夫だね。これからも楽しく過ごしてね!」
と言っていた。
それきり、サクラには会えていない。
でも、この桜の木の中に、サクラはいると思うんだ。
「ありがとう!サクラ!私、サクラのおかげで、高校でも頑張れるよ!」
桜に向かって叫び、歩き出す。
この先に待っている、明るい未来へと......

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