SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

夏祭りの君 ( No.34 )

日時: 2022/08/19 09:09
名前: ruha

私は未央(みお)。地味であまり目立たない中学生。私は今、恋をしている。幼馴染の、優人(ゆうと)に…。

今日は夏祭り。学区の、夜店が出る小規模な祭り会場は地域の小中学生でそこそこ賑わっている。
もちろん私も賑わいの中の一人で、中学のクラスメイト数人で夜店を巡っている。そこには、優人もいた。

いつもなら、優人と同じ空間にいるというだけで私は幸せな気分になる。しかも今日の優人は甚平姿で、親友の唯(ゆい)に嬉しい気持ちを爆発させてたと思う。でも…今日は違った。

「未央!優人がいるのに喜ばないなんて、珍しいじゃん。なんかあった?」
唯が言う。その通りだ。私には、重大な出来事が“あった”のだ。

それは昨日のこと。優人のお母さんと仲のいい私のお母さんが、何気なく私に言った。
「そういえば!未央、優人くんがね、同じとこでサッカーを習ってる子と付き合い始めたらしいわよ。」
私は、その言葉を聞き返す心の余裕まで無くしてひたすらにショックを受けた。
…ずっと好きだった。でも、運動神経が良くてハキハキした性格の優人と、地味な私は釣り合わない気がして、ずっと気持ちを隠してきた。いつの間にか私は、優人を避けてしまうようになっていた…。

「唯…ううん、なんでもない」
折角の夏祭りなのに、唯に余計な迷惑をかけたくはない。
「そう?ならいいけど。ほら、もっと優人の近く行ってきなよ!」
唯に小突かれて、半ば強引に優人の隣にたどり着く。
「おう未央!」
優人は今日も変わらない。満面の笑みで話しかけてくれた。
「優人…」
久しぶりに話す。緊張して、声がぎこちなくなった。そんな様子に、優人はすぐに気づいたみたいだ。

「未央、なんか元気ないなぁ。飴でも食う?」
優人が、ポケットから飴の缶を出した。
「射的で獲ったんだ。本当はゲームソフトが獲りたかったけどな」

優人は優しい。私の気持ちに気づいているのかいないのか、優しい。
そんなのずるいよ…、もっと好きになっちゃうじゃん。


「ありがとう」
飴を一つ受け取って答える。

いいんだ。優人を見てるだけで幸せなんだ。
口の中に、飴の甘酸っぱさが広がった。

まるで、この片想いみたいに。



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