SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

約束」 ( No.7 )

日時: 2020/11/11 16:59
名前: 四ッ谷 霧果

「木苺を取ってきて」
冷たい風が吹き雪が窓については溶けていく冬。
継母は大きなかごを棚から出しこういった。
「まだ冬よ。」
何を言っても行けの一点張り。

(ああ、この人は新しい人形を見つけたんだ)

「一個じゃだめよ。かごにいっぱいですからね。」

継母は私を外に追い出し鍵まで閉めた。
木苺を取るには森の奥の奥に行かなければならない。
木苺なんてないと分かっていながらも森の奥へ進んだ。

もう何分歩いただろう。
雪はだんだん強くなり森は暗くなった。
防寒具なんて持ってはいない。
手足はジンジンと痛み、手に至っては感覚がない。

(ここで死ぬんだな)

ふと母を思い出した。
母は優しくいつもニコニコとしていた。
そんな母とお菓子を作るのが好きだった。

どこからかいい香りがする。
母のシチューの香りによく似ている。

「母さん、、?」

森の奥に小さな光が見えた。
家だ。
そこに母さんがいるような気がした。

「母さん、、、母さん、、、!」

夢中で駆けた。

家に近づき戸をたたく。
そこで我に返った。
あの母さんはもういないと。

うつむき雪道をとぼとぼ歩いた。

もう帰る家はない。











「ねぇあなたどうしたの?」

どこからか声がして目が覚めた。
先ほどの家の薪小屋で寝ていたようだ。
声の主は少女だった。
この家の子らしい。
少女は衰弱しきった私を見て驚き家に招いてくれた。
少女はヘレンといい両親を火事でなくしここに一人暮らしをしているそうだ。

「お風呂に入ればいいわ」

ヘレンはタオルケットを一枚出すとお風呂を勧めてくれた。
久しぶりのお風呂は気持ちがよかった。

「、、おふろ、ありがとう。」

ヘレンは微笑み
「どういたしまして。」

といった。
その笑顔は母にそっくりだった。
よく見ると笑っていない顔もそっくりだ。

「シチュー食べるでしょ。昨日作りすぎたの。」

「、、、いただきます」

ヘレンのシチューはとてもおいしかった。
母さんの味に似てる。

「、、ごちそうさま。」

気づけば皿のシチューはなくなっていた。

「、、おいしかった。」

「ありがと。」

ヘレンはどういたしまして。と紅茶をすすった。

「どうして知らない人にやさしくするの?」

なんとなく気になった。
ヘレンはうーんと少し悩んだ後
私の目をしっかり見て

「カミナ知らない人じゃないから。」

といった。

「そう。」

ヘレンはまた紅茶をすすった。
変わった人だなぁ。
うん?

「何で私の名前知って、、!!」

ヘレンのほうを見ると体がうすくなっていた。
ヘレンは笑ったままだ。

「何でも知ってるよ。カミナのことなら。」
「そんな格好してるのに男の子、、とか。実は泣き虫とか。寂しがり屋とか。」

まさか、まさか、まさか、、、

「母さん、、、?」

「正かーい。」

ヘレンは母さんがよくする口調で言った。
おどけているような口調。

「ごめんね。おいていって。」
「一人寂しかったね。」

一つ一つの言葉がしみこみ涙があふれ出てくる。

「なんで、なんで、おいていったんだよ。」

「ごめんね」

「僕これからどうすればいいんだよ。」
「生きて。」

「住む場所ないよ。」
「ここでいい。」

「一人だよ。さみしい。」
「裏の一本道を通れば町に出る。」

「母さんとがいい。」
「もう、大丈夫でしょ。」

「おいてかないで。」
「ずっと空から見てる。」

ヘレンは、母さんは涙を流しながら最後に

「生きて。地に根を張って、踏ん張って。そのときがきたら私が迎えに行くから。」

と言った。




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「今日、母さんと命日だね。まだ、空から見てる?」

雲ひとつない空を見上げながら母さんに聞く。
返事の代わりに心地いい風が吹いた。

「僕、結婚するんだ。」

花びらが舞った。

「この人と。」

僕の手の先には麦わら帽子が飛ばないように抑えながら空をみつめるひとがいる。
彼女は息を大きくすうと聞いたこともないような大きな声で

「幸せにしてもらいます!!」

と叫んだ。
僕が笑うと彼女は正しいことを言っただけよとおこった。
僕も負けてられない。

「幸せにします!!!」

彼女に負けない声を出したつもりだったが彼女はまだまだねと笑った。

「「まだむかえにこないでね!!!」」

もちろん。と鳥が鳴いた。

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