SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

約束。 ( No.18 )

日時: 2024/01/05 13:51
名前: みぃみぃ。

「私は深沢(ふかざわ) 由紀愛(ゆきあ)です。趣味は、絵を描くことです。半年くらいでまた転校すると思うけど、よろしくお願いします。」
私は由紀愛。小5の女子。
これで…10回目の転校だ。
年に2回ほど転校するのだ。
なぜなら…日本を旅しているから。
とりあえずいつも通り自己紹介を終えた。
「じゃあ、深沢さんは、浅野(あさの)さんの隣に座ってください。あそこです。」
「あ、はい。」
「由紀愛さん、よろしくね。」
「あ、はい、浅野さん。」
「莉里(りり)でいいよ。私、浅野 莉里だから。由紀愛でいい?」
「あ、うん、いいよ、莉里。」
「ありがと、由紀愛。」
「はい、朝の回を終わります。礼。」
「ありがとうございましたー」

ちなみに、私はよく“冷たい”と言われる。
口調が原因かな?
ま、どうでもいいけど。

「由紀愛さんってさ、莉里と仲良いよね…」
「騙されてるじゃんw」
「莉里って性格ゴミだよね…」
「いやいや、顔も性格も存在もゴミでしょ。」
「確かにー」
…とんでもないことを聞いてしまった。
そういえば、莉里、最近おかしいな…。
これが原因?
「由紀愛さんもさ、なんか冷たいよね〜」
「分かる!感じ悪いし…」
「…ねえ、二人とも、すぐそこに由紀愛さんいるけど大丈夫そ?」
…やばい。
私はその場を飛び出した。
「うわー、逃げた!」
そう言われたけど、気にしなかった。

半年後。
この時には私はあまり“冷たい”と言われないようになっていた。でも、未だに莉里はいじめられていた。止められないのが悔しかった。
「ねえ、由紀愛!」
「なに、莉里?」
「由紀愛、転校してきたじゃん?その時、『半年くらいでまた転校すると思う』って言ってたじゃん。もしかして、もうすぐ、、転校、するの?」
「…う、ん。」
すごく言いにくかった。でも…言うしかなかったのだ。
だって、本当のことだから…。
「あと、一週間くらいで、転校するんだ。」
「…隠してた、でしょ。」
「うん…」
「私もね、隠してたことがあるんだ…」
なんなんだ。
莉里は、隠し事をするような人じゃない。
でも隠してたことがあった。
それは、とんでもないことなのではなかろうか?
そして私の予想は…的中した。
「私、余命、あと、1ヶ月なの…」
「…え?」
最初は聞き間違えかと思った。
でも、確実に、余命1ヶ月だと言った。
「嘘、でしょ…」
「本当、だよ。今まで隠しててごめんね。」
…信じられない。
私の目から、涙が溢れた。
「うっ…ううっ…うわーんっ!」
情けなかった。
でも、悲しかった。
「由紀愛。私が死ぬまで、転校しないで欲しい。」
「…うん。何としても、絶対守るから、その約束。」
私たちは、家に帰った。

私はそのことで、夜、寝ようとしても、どうしても寝れなかった。
…お母さんに、言わないと、あのことを。

お母さんはまだ起きていた。
「由紀愛。まだ起きてたの?早く寝なさい。」
「お母さん、ちょっと、お願いが、あるの…」
「どうしたの?」
「…あの、ね。莉里が、あと、余命、1ヶ月、なの…」
「え…!?莉里って、あの莉里ちゃんよね…?」
「そ、う」
苦しかった。
認めるのが。
「だか、ら。転校するの、莉里が死んでからにしてほしい…」
「…分かった。お父さんにも言っておくわ。」
「うん、ありがとう、お母さん…」

次の日。
「あれ、莉里が、いない。」
嫌な予感がする。
さては…
でもそんなこと、あと1ヶ月も、あるんだから…

…暗い顔で、先生が入ってきた。
「皆さん、よく聞いてください。」
私は息を呑んだ。
「浅野 莉里さんが、亡くなりました…」
嘘。
まだ、1ヶ月、あったんじゃないの…?
「ううっ…うわーんっ…うわああーんっ!!」
私は声を上げて泣いた。
みんなは私を驚くように見ていた。
きっと、莉里が、いじめられていたから、だと思う。
それでも構わない。
私はずっと、ずっと、泣き続けた。
「そして、深沢さん。」
「は、はいっ」
「浅野さんから、この手紙を深沢さんに読んで欲しいと渡されました。だから、読んでくれませんか?」
「は、はいっ」
私は手紙を受け取り、開いた。そして…読み始めた。
「私は、いじめられていました。
 とても辛く、死にたいと思うこともありました。
 その時、余命が残り一週間なことを知りました。
 余命最後の日、由紀愛に、伝えないとと思い、伝えました。
 でも、怖くて、『余命1ヶ月』と嘘をついてしまいました。
 そう言ってしまったことに、とても反省しています。
 死にたいと思ったことは、由紀愛に出会って、なくなりました。
 そうしてくれた由紀愛に、感謝しています。
 そして私をいじめていた人に言いたいことがあります。
 他の人に絶対にしないでください。
 そして私は由紀愛がいじめられていることを知っています。
 絶対に辞めてください。
 私が言えることはそれくらいです。でも、本当に、やめてほしいです。
 そして、今まで余命のことを隠していてごめんなさい。」
私は読みながら泣いていた。
ずっと、ずっと。
すると、みんなが、泣き始めた。
「り、莉里、ごめん、なさい…」
「莉里、由紀愛…ほんとに、ごめんなさい…」
「り、り…」
「…みなさん、いじめは絶対にいけないことです。」
「莉里、ごめんなさい…由紀愛も、本当に、ごめんなさい…」
「うっ、うわーんっ!ごめんなさいっ!」
みんな、ずっと、泣き続けた。私も泣き続けた。
「さて、こんな状態で授業を受けても何も耳に入らないでしょうから…特別に帰ってもいいですよ。」

私達は帰った。
「由紀愛、なんでこんな時間に帰ってきたの?」
お母さんに事情を説明すると…
「…そう、だったのね…」

私はそれから10年が経ち、成人した。
でも未だに引っ越してはいない。
引っ越したら、莉里と、離れてしまう。
そう思ったからだ。
私が死ぬまで、この街を出ない。
それは、莉里に、感謝を伝えるためだ…。

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