SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
旅には素敵な出会いがたくさんある。 ( No.33 )
- 日時: 2024/12/29 17:12
- 名前: ミセス好きの青りんご
ー旅には素敵な出会いがたくさんある。
この言葉は私が好きな旅のサイトに載っていたもの。この時の私はこの言葉の本当の意味を知らなかった…。
ある夏の日、東京から京都へ向かう新幹線の中、大学生の私は一人旅を楽しんでいた。久しぶりの旅行に胸が躍る。私は歴史的な街並みや美味しい料理を堪能することが好きで、旅をしている。でも心のどこかで特別な出会いがあるのを期待していた…。
新幹線が進むにつれ、窓の外に広がる風景が流れていく。栄えている町、静かな山々。新幹線がトンネルに入り、窓に通路を挟んで横の席に座っている同じ年頃の青年が映る。彼は本を読みながら、時折窓の外を眺めている。その綺麗な横顔に思わず見惚れてしまった。私は思い切ってその青年に声を掛けた。
「何の本を読んでいるんですか?」
彼は驚いたように顔を上げ、微笑んで答えた。
「これは旅行記なんです。旅の中での出会いや経験が描かれていて、すごく面白いですよ。」
「もしかして、旅好きですか?」
「はい。旅ってワクワクして楽しいですし。」
「私、美咲です。よければ旅のお話しませんか?」
「俺は翔太です。喜んで。」
その言葉をきっかけに、二人は旅の話について語り合った。翔太は1人で海外にも行ったことがあるそうだ。私はまだ1人で海外に行ったことがない。いや、行く勇気がないというのが事実だ。いつか一緒に行ける人が現れたらいいのに…。なんてね。
新幹線が京都に近づくにつれ、二人の距離はどんどん縮まっていった。
京都に到着し、私が翔太に別れを告げると翔太は
「俺も京都に旅行に来たんです。一緒に観光します?」
と言い、この言葉で二人は一緒に観光することを決めた。清水寺や祇園の街並みを歩きながら、彼らはお互いの夢や将来について語り合った。私は翔太の真剣な眼差しに、自分の心が高鳴るのを感じた。
夕暮れ時、二人は鴨川のほとりに座り、静かな時間を過ごしていた。別れの時間が近づいてきていて、少し胸が苦しい。
「こんな素敵な出会いがあるなんて、旅って本当に不思議ですね。」
翔太は頷きながら、私の手を優しく握りしめた。胸にあるはずの心臓が、手にあるかのように脈打っている。
「本当にそうだね。旅は新しい出会いをもたらしてくれる。君と出会えたことも、きっと運命なんだと思う。」
いつの間にか敬語じゃなくなっていて、距離が縮まっているという事実を実感する。私は心臓が高鳴るのを感じながら、翔太の目を見つめた。彼の真剣な表情に、何か特別なものを感じた。もしかしたら、翔太も同じ想いを抱いているのかも。なんて夢みたいなことを考える。夕日が鴨川を照らし、二人の影が長く伸びていく。この時間が永遠に続けばいいのにー。
ふと思い出したかのように翔太が話しかける。
「もし、また会えるならどこに行きたい?」
美咲は少し考えた後、笑顔で答えた。
「次は、海が見たいな。青い海と白い砂浜、あと美味しい海の幸を楽しみたい。」
翔太はその言葉に頷き
「じゃあ、いつか一緒に行こう。約束だよ。」
と微笑んだ。
その後、二人は連絡先を交換した。また一緒に旅に行けるように。嬉し過ぎて心臓が爆発しそうだった。
別れの時間が近づいてきた。私は心の中で名残惜しさを感じながらも、翔太との出会いが特別なものであったことを確信していた。
「また会えるよね?」
と私が不安そうに尋ねると、翔太はしっかりと私の目を見つめ
「絶対に会おう。旅は続くから、俺たちの物語も続くんだ。」
と力強く答えた。
その言葉に勇気づけられ、私は微笑んだ。二人はそれぞれの道を歩き出しながらも、心の中には新たな希望と期待が芽生えていた。
数週間後、私は京都での思い出を振り返りながら、翔太からのメッセージを待っていた。私は翔太との再会を願っていた。そして、ある日、翔太から「次の旅はどこに行こうか?」というメッセージが届いた。私は思わず顔がほころび、心が躍った。私はすぐに返信し、「海に行く約束、覚えてる?」とメッセージを送った。
数日後、二人は再び会うことに決め、湘南の海へと向かった。青い空と広がる海、波の音が心地よい。私は海岸を歩きながら、翔太と過ごす時間がどれほど特別かを実感していた。
「今日は本当に素晴らしい日だね。」
と翔太が言うと、私は頷きながら
「翔太と一緒だから、普通の旅でももっと素敵に感じる。」
と返した。翔太はその言葉に照れくさそうに笑い、二人は手を繋いで海辺を歩いた。もう手を繋ぐことに躊躇いはなくなっていた。
海の家で新鮮な海の幸を楽しんだ後、二人は砂浜に座り、夕日が沈むのを眺めた。オレンジ色の空が徐々に暗くなり、星が顔を出す。私はその美しい景色を見ながら、翔太との出会いが運命的なものであったことを再確認した。
「これからも、いろんな場所に一緒に行こうね。」
と言うと、翔太は真剣な表情で
「もちろん。君と一緒なら、どこでも楽しいよ。」
と答えた。
その瞬間、私は彼の目の奥にある真剣さを感じ、心が温かくなった。不意に自分の気持ちを伝えたくなり
「翔太、私…貴方のことが好きです。」
と告白した。翔太は驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しい笑顔に変わり
「俺もだよ、美咲。美咲と出会えて本当に良かった。」
と返した。その言葉に私は心が満たされた。本当に貴方に出会えて良かった。そう、何度も強く思うのだった。
私はこの言葉の本当の意味を理解できた気がする。
ー旅には素敵な出会いがたくさんある。