SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
この世界は貴方に食べられる為にあるみたいね。 ( No.7 )
- 日時: 2023/11/09 18:05
- 名前: ひとび
「まるで、」
「この世界は、貴方に食べられる為にあるみたい。」
『そうかもね。笑 でもオレは、ーーー・・・』
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つまらない、本当につまらないわ!
水槽の前を通る研究員達も、清掃員も、警備員も、返事一つ返してくれないんだもの。
(人魚の言葉って、解らないのかしら?)
(何か、面白い事〜、無いなら、[ピーーーーーー]して目玉をほじくるぞ。)
【ビーー!、ビーー!、ビーー!、】
【警告します。現在施設のセキュリティは大変危険な状態です。】
【ビーー!、ビーー!、ビーー!、】
【セキュリティが、破壊されました。】
慌てた様子で、水槽の前を去っていく研究員達。
(せきゅりてぃ?が破壊?! 面白そうだわ!!)
(どうにかして、出られないかしら?)
辺りを見渡して見ると、一つの人影が見えた。
オレンジ色のモッズコートに、黒い長靴。括られた青い髪は、無造作に背中まで伸びていた。
(研究員かしら?)
その人影は、段々此方に近づいてくる。
パリンッ、!!
此方に見向きもせず、隣の水槽を割った。
ドンッドンッ!
「こっ ち も わっ て!」(口パク)
またしても、無視する人間。
気にする素振りもなく、赤く染まった口で生きたままのクラゲを頬張る。
『・・お嬢さん、』
『そっから出たいの ?』
力一杯頷く。
『あ、そう。』
興味なさげな人間。腹立つな。
ガキッ! パリンッッ!!
二重になった強化ガラスを、笑顔で叩き割る人間。しかも斧で。
(いたい・・・。刺さった、、)
『お礼はナシ?笑 ま、良いけどね。』
「、 ありがとう。 これでいいかしら?」
(なんだこいつ 。)
『じゃ、バイバーイ。』
いつの間にか、数メートル先に居る人間。
「ねぇ!どこ行くの?」
「ちょっと、待ってちょうだい!!」
『な〜に。』
心底ウザそうな顔で振り返った人間。
「何処か行くなら、私も連れていって。」
『は? ヤダ。』
「ん"〜〜、意地でも付いて行くわ!!」
『んはっ、お嬢さん図々しいね、笑』
『条件付きなら、考えないこともないケド、?』
「・・・。条件って?」
『君を、』
『喰べさせて。』
そう言った、彼の眼は、ナニかを欲しているようだった。
( 飢えている 。)
「それだけ?」
「もちろん、着いていくわ。」
『ふはっ笑、今喰われるかもしんないのに、 馬鹿だね。』
『イイよ。 着いてきて。』
『 オレに喰われるその日まで。笑 』
__________________ー数年後ー___________________________
何年も、何年も、 彼は、私を食べなかった。
『 いただきます 。』
"今日も"、
彼は、私じゃないものを口に運ぶ。
「何時になったら、私を食べるの?」
『自ら食べられたいだなんて、可笑しな奴だね。』
『急かさなくても、何時か喰うよ。』
話しながらも、食べ終わる気配の無い彼。
数年間、ずっと食べつづけて来た癖に、
お腹一杯、という言葉を一度も聞いた事が無い。
「ねぇ、ショーヤ。」
「貴方は、何を求めているの?」
「貴方が、食べ続ける先に、目的は有るの?」
『どうだろうね、笑 』
『知らないよ。何も、』
『ただただ、今、』
『 飢えているんだ。 』
『なにかが足りない、』
『ただ、それだけ。』
「可笑しな話ね。」
「まるで、この世界は、貴方に食べられる為にあるみたい。」
『そうかもね。笑 』
『でも オレは、すべてを喰って尚、』
『飢えているのかもしれない。』
『 例え、地球を喰らったとしても、 』
『だから、』
『オレが、すべてを喰らうまで。』
『エンヴィー!、オレと 』
『二人で 旅をしよう。!笑』
『 幽世さえも、喰らってしまうまで。笑 』
_____________________________________________end.
ー追記ー
人間の名前 ショーヤ
人魚の名前 エンヴィー
幽世(かくりよ)→死せる者の魂やこの世のモノならざるモノ達の世界。