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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊1＊

2ー1

双葉学園高校の、一年生の教室の窓に木漏れ日が差し込んでいる。その光を頬に受けながら、二人の少女は喋っていた。

「ええっ、舞、そんなの嘘でしょ」

「いやいやいやいやぁ、真琴ちゃん、本当なんですよこれが」

舞はどこか得意気だ。
真琴は思わず、ため息をついた。
…この馬鹿が、なんで？

「でもあんたさぁ、生粋の馬鹿で純粋な阿呆で間抜けの王道を行く人間じゃん」

「んまぁ、それはそうなんだけどねぇ…」

最近リニューアルオープンしたビルで、壮絶な生き残り争いを何とか勝ち抜いた店がある。
舞はリクルート、と書いてある掲示板に、そのギリギリ残ったイタリアンレストランの少し派手な求人広告を見つけた。

“アルバイト募集中、高校生歓迎！制服貸与、交通費こちらで持ちます”

条件は一通り読んでみたが、その時はただ、ふーん、と通りすがっただけだった。
崖っぷちで生き残った店ってのも、大変なんだねぇ。
でもバイトなんてまだ早いし。親のスネかじっててもまだ許される年頃でしょ…？