コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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I Wanted...
日時: 2010/08/30 18:16
名前: _N0Z0MI (ID: qTh1yy9a)

この声、あなたに届いていますか?


今さらだけど。

未練がましい、よね。
もう、ふたりは別の道を選んでしまったのに。


もう戻れない。
分かっているからこそ、これだけは言わせて。
これで3度目になる、このセリフを......

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I Wanted... ( No.8 )
日時: 2010/08/31 17:15
名前: _N0Z0MI (ID: UIcegVGm)

その日の放課後。

あれから雨はますます激しくなって、雷まで鳴り出した。
天気予報、大ハズレ。


あたしは部室でギターのチューニング(音程を調整すること)をしていた。
部員は誰もいない。
いつまた降り出すか分からないから、ちょっと小雨になった今のうちに、みんな帰ったんだろう。

あたしは、ギターをアンプ(スピーカーみたいなもの)につないで、アンプとマイクのスイッチを入れた。

ピックを持ち直して、構える。
ギターを弾きながら、歌い始める。
だんだん楽しくなってきて、つい笑顔になる。
ギターの重さが心地良い。



__あたしは気づいていなかった。
この、たったひとりの孤独なライブに、観客がいたことに。

I Wanted... ( No.9 )
日時: 2010/08/31 17:25
名前: _N0Z0MI (ID: UIcegVGm)

番外編 from Fuyuto.


思い出せない___。

曲名が出てこない。
絶対、知ってる曲なのに。


驚きすぎて、思い出してる暇なんてなかった。
本当に?
本当に、俺の目の前にいるのは、あの雨崎なのだろうか?

こんなに明るい、楽しそうな表情を見るのは初めてだった。
疾走感溢れる曲も、黒いエレキギターも、彼女のその表情も。すべてが、普段の雨崎ノゾミとはかけ離れていた。

ドアの隙間からそっと覗いていたはずの俺は、気がつけば、
ドアを大きく開け、入り口に立ち尽くしていた。



その時、唐突に演奏が止まった。

I Wanted... ( No.10 )
日時: 2010/08/31 18:02
名前: _N0Z0MI (ID: UIcegVGm)

「あか...みね?」

嘘...
頬が赤く染まるのが、自分でもわかった。
向こうも驚いたようで、こわばった表情をしている。


やがて、小さな拍手。
「上手いやん」
「いつからいた?」
「結構前」
赤嶺は、にっと笑った。
無邪気で、だけどちょっと意地の悪い笑み。
...その笑顔が、突然はっとした表情に変わった。
「ステレオポニーの『I do it』!」

あたしが今、歌っていた曲。
「知ってるんだ」
「たった今、曲名思い出した」



「初めてだ、他人に演奏聴いてもらったの」
「軽音部なのに?」
「1年の頃なんて、ひたすら基礎練だったから」
「文化部もそうなんや。知らなかったなぁそれは」


「つーか今日、ひとりなん?」
「みんな、雨が激しくないうちに帰ったっぽい」
「雨崎は、なんで帰らへんの?」
それは、訊かないでほしかったなあ。ま、いいか。

「か...雷、なってたから」
「雷、怖いん?へ〜意外」
「うっさい!ひ、秘密だからね!」
「嫌だ。みんなに言ったろかな♪」
「秘密って言ってるやん!」

赤峰が、小さく笑った。
「『言ってるやん』やて。関西弁うつった」
「あっ...」


一応部活中なのに、時間が経つのも忘れて話し込んじゃった。
赤峰は、不思議な人だ。
人見知りなあたしでも、こんなにすぐ打ち解けられて。
不思議だ_____。

I Wanted... ( No.11 )
日時: 2010/09/02 23:10
名前: _N0Z0MI (ID: JJibcEj3)

「ノゾミぃ〜、勉強教えて!」
放課後、夕摩があたしのところにやってきた。

…といっても、あたし、特別頭がいいってわけじゃない。ただ、夕摩が「勉強は専門外」と嘆いて、あたしにすがってくるだけなんだけどね。

「どーしよー、中間テストまで2週間しかない!
テスト前、1週間も部活できないなんて地獄」
「そっちかよ!(笑」

夕摩とは、こんな風にふざけ合うこともできるようになった。クラス替えしてよかった。


「そーいえば、赤峰が言ってたよ。『テスト、雨崎にだけは負けたくない』って」
「…赤峰が?なんで?あたし敵対視されてるのかな」
「うーん、そうじゃないと思う。ライバルとして認められてるんじゃん?」



認められてる_____

確かに、赤峰とは相変わらずよく話す。
あの雨の日以来、音楽の話もするようになったし、
どんどん仲良くなっている気はしている。

…気がつけばあたしにとっても、あいつはライバルになっている。


ライバルなんだけど友達で、趣味を共有できて。
男子とか女子とか、そんな壁を越えた存在。
それが赤峰。

彼が、同じように感じてくれていたらいいな。

I Wanted... ( No.12 )
日時: 2010/09/07 21:15
名前: _N0Z0MI (ID: 4pBYKdI8)

___love or like?



数学の時間。
「じゃ、この問題を雨崎」
黒板に、白いチョークで答えを書いていく。
小柄なあたしは、ちょっと背伸びしないと届かない。

「正解!」
先生の笑顔に微笑みを返して、席に戻った。

赤峰と目が合う。
「さすが」
小さく囁く、声。
いつものように、ちょっとだけ意地の悪い、でも満面の笑み。


ごめんね赤峰。
最近、彼に上手く笑顔を返せなくなった。
上手く言葉を返せなくなった。
話しやすい相手だと思っていたのに、どうしちゃったんだろうね。
赤峰は変わらず接してくれているけど、もしかして気づいてる?




梅雨入り直前のこの時期は、空もあたしも不安定_____


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