コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 天空の覇者
- 日時: 2011/01/01 21:11
- 名前: ai (ID: qd1P8yNT)
初めまして、aiです。
これから小説を書きたいと思います。
まず、最初に軽く登場人物を言っておきます。
リア…主人公。
「天空の覇者」の刻印を持って生まれてきた。
本人は、それが何なのか良く分かっていない。
トゥル…国家に仕える騎士。
幼いときから父に英才教育をされていた。
そのため、まだ18という若さなのだが、剣の腕は一流。
…まずはここまでです。それでは、早速始めたいと思います。
- Re: 天空の覇者 ( No.12 )
- 日時: 2011/01/08 21:25
- 名前: ai (ID: qd1P8yNT)
「…おい、騎士が剣をおさめたぞ」
「ああ、やるなら今だ…」
木陰では二人の男が、何かの準備を静かに始める…
「…まだ、信じてくれないのか」
そう言って呆れ顔になる少年。
少年の目の前には、異常なまでに震える両手で、小さな果物用のナイフを構えるリアの姿があった。
…少年に対抗しようとしているらしい。
ちなみに、このナイフはもともとは木の実採集用のナイフだ。
少年のあの立派な剣には普通に考えて叶わない。
(けど…けど!)
怖い!!
それだけがリアの頭を彷徨っている。
そもそも、“こくえい”という組織はこの辺では聞いたことがない。
それに…相手は剣を持っている。
いつあの剣でスパッと華麗に斬られてもおかしくないのだ。
…というか、本当はそんな可能性、塵に等しいのだが。
だって相手は国の防衛のために毎日毎日働いている騎士。
なんで国を守る人が国民を斬らなくてはならないのだろう。
しかし、そんな予備知識を持たぬ一人の村娘は、
「…」
かなりおびえていた。
(殺される、殺される、絶対に殺される…)
そういう想像(妄想とも言う)が頭の中で絶えず浮かんでくる。
恐怖と不安。その二つに心をとらわれたリア。
まさに心は、断崖絶壁にいるような気がしてならない(意味不明)。
「…」
「…あのさぁ、」
「ひぇっ!!」
突然そう大声を出して、さっきより一層手の震えが増したリア。
そのせいで、ナイフを宙に投げ出してしまう。
「ひゃあ!」
震える両手でナイフをキャッチし、再び相手に向ける。
…この時、リアは心が焦るあまりに、自分は危険なの刃のほうを握っていて、
相手に向けているのは安全な柄のほうだという事実に気づいなかった。
(…コイツ、完全にビビってるよ)
まだ自分の愛剣にビビっているのか、
俺自体にビビっているのか、
それとも、普段とは違う使い方のナイフを持つことにビビっているのか…
…よくわからない。
「…フー…」
そう言って再度ため息をつく。
そしてリアの方を見る。
…さっきより手の震えが酷くなっている。
「…」
(痙攣か? 病気なのか、コイツ…)
そう疑いたくなるほどだった。
「おい、お前」
「ひぇぇぇ!!!」
「いちいち叫ぶな。煩い」
冷たく言い放ってみる。
すると、手の震えは相変わらずだったが、その代わりに声がピタリとやんだ。
「…お前、もしかして…病気?」
「…はい?」
突然変な質問をする少年に、リアは眉間にしわをよせる。
(…何を言ってんだ、この人は)
そんな考えが脳裏に浮かぶ。
それと同時に、手の震えが止まった。さっきより怖くなくなったみたいだ。
けど、やっぱり不安は消えないので、ナイフは構えたまま。
それと、自分が刃のほうを握っていることにやっぱり気付かない。
「…何、言ってるのかよくわかんないんだけど」
「だから…!」
急に少年の表情が一変した。
さっきまでの呆れ顔がどこかへ飛んでいき、代わりにかなり驚いている。
リアは首をかしげる。何が何だかわからない。
「…どしたの?」
少年は表情を変えずに言う。
「腕…」
「え?」
「腕…見せて」
そう言いながら、少年はリアの元へ歩いてきた。
「ッ…」
やっぱり不安が消えないリアは、少し後ずさった。
すると、少年は少し速足で来た。
「ちょっ…」
あっという間に近くに来た。
ナイフを向けようとしたが、そのナイフはあっさりと取られてしまった。
というか、もともと安全な柄のほうを向けていたナイフなので、そんなナイフ、怖くもなんともないのだが。
やっぱりそんな事に気付かないリアは、
(やっぱ、男の子って強い…)
と思っていた。
少年は奪ったナイフを近くに投げ捨て、リアの右手をつかんだ。
…近い。
少年との距離があまりにも近かった。
「…」
何も言えずに茫然と立ち尽くす。
少年は、リアの右手首の上にそっと手をおいて、袖を少しずつまくり始めた。
…まくるといっても、正確には袖を押して右手首の下にあるものを見たいだけなのだが。
ドキッ
リアの心臓が高鳴った。
村娘でまだ15歳という年齢のリアは、少し子供っぽい性格のせいか、
男の人と付き合ったことはなかった。
ましてや男の手が肌に触れるなどということもあり得ない。
だが…今、少年は確かに触れている。
自分の肌に。
「…」
体温があがっていくのが分かる。
胸の鼓動が大きくなっていくのが分かる。
もう、おかしくなりそうだ。
- Re: 天空の覇者 ( No.13 )
- 日時: 2011/01/15 23:16
- 名前: ai (ID: qd1P8yNT)
目の前にある衝動が抑えきれず、あたふたしているリアと比べ、
少年の頭はひどく冷静だった。
「…」
目を細めてそれを見る。間違い無い。
(どうして、この子が天の刻印を…おかしい。
あれから、今年で五十年だって言うのに…)
少年の頭の中が謎で覆い尽くされる。
(父上…どういう、ことでしょうか)
故人となった少年の父親。
戦争の犠牲となって死んでいったが、誰よりも戦争を毛嫌いし、
誰よりも平和を強く願っていた。
自分に剣術を教えてくれたのも、父だった。
“誰かを助けたいと思うのは誰にでもできる。
だが、それを実行し、成功する人は限られている。
いつか、お前は大切な人を守らなくてはならない時が来る。
その時のために、お前に剣術を教えよう…”
父の言葉がふっと脳裏に浮かぶ。
少年はチラリと自分の愛剣を見た。
父が死ぬ直前に、自分に渡してくれた。
国衛試験に受かった時に、合格祝いとしてくれたものだった。
“これは天翔の剣(てんしょうのつるぎ)と言ってな、
もともとは、天の刻印を持っていたお姫様の護身役を受け持っていた、
ヒールという青年が作った剣だ。
見た目は細くて重みもないが、切れ味はなかなかいいものだ。
刃先がしっかりしていて、太い木でもこれがあれば簡単に切れる。
ただ…この剣は持ち主を選ぶ”
父は、その剣に認めてもらえなかった。
剣を使うたびに、全身に何かの力が走り、とたんに動けなくなるのだと。
ヒールという青年の想いがつまったこの剣…
“姫を、命に懸けてもお守りしたい”
そのような想いを持たぬ人は、その剣を扱うことは不可能だといわれている。
だとしたらおかしい。
父は、毎日毎日誰か(姫ではないが)を守るために、剣の修業を怠らなかった。
何かを守るため、必死に…
なのに、なぜその父が認められず、特に守るものもなく国衛に入った自分が認められたのか。
…その理由が今、分かった気がする。
この剣はかつて刻印を持った姫君———つまり、天の刻印を持つものを守るために作られた剣だ。
父の前には、天の刻印を持った人物は現れなかった。
つまり、その姫君を守る機会もなかった…ということである。
だが、自分は違った。
自分の前には確かにその刻印を持った少女がいる。
(…まさか、俺にこの少女を守れと…?)
そういうことになる。
その運命が見えていたからこそ、この剣は自分を認めたのだろう。
ということは、だ。
この少女と出会うことも、この少女を守ることも、
すべては決まったことであり、これから確実に現実のものになる…ということだろうか。
「…」
そう考えた途端、頭の中が真っ白になった。
この子を守るのは自分だ
国宝級の刻印を持つ子を、魔からお守りするのは自分だ
命を懸けて、守るのは自分だ
誰かに、宣告されているようだった。
国衛の騎士としては、こんなことは一生に一度あるか分からないほどの超重要任務。
それと同時に、成功すればかなりの名誉がもらえるチャンスだ。
だが…失敗すれば、かなりの不名誉を受けてしまう。
普通の騎士ならば、「そんな大役、私には無理です」と言って無礼をわきまえてでも断るだろう。
それは少年も同じだった。
(無理だ…)
そんな大役を、背負う自信がなかった。
それに…少年は分かっていた。自分にはもう人など守れぬことを。
父のように、正義感あふれる人材にはなれぬことを。
あのことがあってから—————
「…」
「…あの、」
少年は黙ったままだった。
その様子に疑問を持つリアが、少年に声をかける。
その時だった。
「そのお譲ちゃんから離れな、小僧…」
- Re: 天空の覇者 ( No.14 )
- 日時: 2011/03/20 22:34
- 名前: ai (ID: qd1P8yNT)
「誰だ」
少年の低く冷静な声が、森に響く。
その瞬間、少年に向かってナイフが飛んできた。
「ちっ!」
少年は剣を素早く抜くと、それでナイフをはじいた。
だが、少年は気付かなかった。剣を抜いたすきに、一人の男が少年目がけて飛びかかってきたことを。
「オラァ!」
男は少年と同じように剣を持ち、それを思い切り振りおろした。
急いで剣を走らせ、それを何とか受け止めることに成功する。
両手で剣を支え、その上から剣で力強く押さえつけてくる男。
「くっ…」
「ほぉ、ただのガキかと思ってたが、実際戦うと力強いんだな」
「な、なにを…」
ぐぐ…と、剣を支える手に力を込め、次の瞬間、勢いよく男を剣もろとも突き飛ばした。
男は、少しよろよろ体勢を崩しながらも、少年と少し距離を置いた。
だが、顔は笑っていた。いや、最初から笑っていた。
「…何がおかしい?」
少年は剣を左手で構えた。右手は、驚いて何もできずにいるリアを守るように横に突き出している。
「国衛の騎士が、こんなところで、一人で、なにしてんだよ」
まるで少年たちをあざ笑うかのように言ってくる。
「そんなこと、お前には関係ない」
冷静に言うが、心の中では少し焦りが生じていた。
そもそも国衛の騎士というのは、常に二人以上の人数で行動するので、一人で戦うことなどない。
もちろん、一人で戦えないわけではないが、こっちには命に代えても守らなくてはならない人がいる。
それに…さっき見た、刃物を持っていた連中も気になる。もしこの男があれと仲間なら、いろいろと面倒になってくる。
(どうする…ここは広大な森の中、仲間はいない、敵は何人かわからない。
おまけに、こっちには守らなければいけない人がいる…)
圧倒的に、こっちが不利だ。
「…」
頭をフル稼働させて、次の行動を考えていると、ふと、誰かが自分の後ろに隠れた。
リアだった。リアは男の持つ剣を見て、怖くておびえているようだった。
自分の後ろに隠れ、震えて汗まみれになった手で自分の肩をつかんでいる。
(———————)
少年の、剣を持つ手に、力がこもった。
「…来い」
「あ?」
「お前らの目的は、俺の後ろに居る少女だろう。
だが、猫の子じゃあるまいし、簡単には渡せんのだ。
お前も男だろう。男なら男らしく、正々堂々勝負しろ」
少年の宣戦布告は、男の心に火をつけた。
「おとなしく渡せば命は見逃してやる…と、言おうと思ったが、気が変わった。
いいだろう、分かった。勝負してやるよ」
男がそう言った途端に、あふれんばかりの緊張が、その場を支配し始めた。
- Re: 天空の覇者 ( No.15 )
- 日時: 2011/04/02 21:29
- 名前: ai (ID: qd1P8yNT)
「…」
「…」
無言のまま、二人は剣を構えている。
静かになったその場。少年は、何かの音を聞いた。
パチパチパチパチ…
(これは…)
少年はこの音に聞きおぼえがあった。
国衛になって最初の事件。西の森の4分の1を巻き込んだあの———
(火事!?)
音の鳴るほうに目をやった。
目をこらせば、ぼんやりと、赤い光が見えなくもない。
その時だ。男が急に大声で笑い出した。
「…!?」
男だけではない。その周りの者共も笑い出した。
「え? 何?」
リアは分からずあたりをきょろきょろ見る。
「まさか…」
驚いた表情で男を見た。そうあってほしくなかった。
だが…
「気付くのが、少し遅かったな」
そう言ってまた笑う。
「くそ!!」
少年は素早く剣を鞘におさめ、馬にまたがった。
そして、リアを馬上に引っ張り、馬を走らせた。
「え、え、何が起こったの?」
「火事だ!」
「火事?」
「あいつら、この先の村に火をつけたんだ!」
「え…」
この先の村…リアが知る範囲ではあそこしかなかった。
(…お姉ちゃん!!)
リアの姉がいるはずの、リール村。
- Re: 天空の覇者 ( No.16 )
- 日時: 2011/04/02 22:00
- 名前: ai (ID: qd1P8yNT)
「…おい、」
「うるさい!!」
差しのべた少年の手を、リアは素早く払った。
「どっかに行ってて!!」
背中を丸め、両膝を両手で抱え、顔を俯かせるリア。
少年はその場を離れなかった。リアが何度言っても、その場から動こうとはしなかった。
リアは少年とともに村へ行った。だが、もう手遅れだった。
村はひどい勢いで燃えていた。
消火隊が来て火を消すための水をまいていたが、それでも火は燃え続けていた。
「お姉ちゃん…」
家に居るはずの、姉。
「お姉ちゃん!!」
リアは馬から駆け降り、村へ一直線に走った。
「あっ!」
ふいをつかれた少年は、自分もあわてて馬から降りた。
火の中にでも飛びこまれたら困る。
リアの足は速かった。だが、それ以上に、少年の足が速かった。
「おい!」
少年はリアの手をつかんだ。
「放して! 行かせてよ!」
リアはもがいて、少年から逃れようとする。
「冷静になれ! あの中に行けば死ぬぞ!」
「放せっ!!」
少年の話など聞こえていない。
ただ、早く姉の元に行きたかった。
リアは、少年の手を力いっぱい叩いた。
手を拳にして、何度も何度も振り下ろした。
「やめろ」
少年はあっさりとその手をつかんだ。
冷酷な声だった。リアは悔しくてたまらなかった。
「放してよ…」
目から涙がこぼれる。
ひとつ、ふたつ、みっつ…
「…駄目だ」
少年は、つかんだリアの手を、放そうとはしなかった。
消火隊の鎮火作業が行われている間、リアはずっと座ってうつむいていた。
その傍らには、少年がずっと立っている。
「…」
「…」
お互い、何も言うことがなかった。
「トゥル!」
という男の声がし、少年は振り向いた。
そこには、馬に乗った中年の国衛の騎士がいた。
「レッカ、隊長…」
「トゥル、こんなところで何をしていたんだ?」
「…」
トゥル、という名の少年は黙ってうつむいた。
「…まあいい、そのことに関しては今度聞こう。
それより、お前も鎮火作業を手伝え」
「えっ?」
本来消火隊が行う責務なのに、なぜ国衛の騎士が出動するのか。
疑問に思ったトゥルは、不思議そうな顔をした。
「消火隊だけでは、とても間に合わんのだ」
それまでうつむいていたリアが、少し、顔をあげた。
「だから、我々も手伝う。分かったか?」
「はぁ…」
「分かったら、とっとと来い。馬はここにおいて構わんから」
そう言って、レッカはその場を去ろうとする。
「あ、あの、隊長!」
トゥルはレッカを呼びとめた。
「何だ」
馬を止め、首だけを向けたレッカ。
「あの…村の人々は…」
リアのことを気遣ったのか、聞いてみた。
すると、レッカは淡々と言った。
「まだ、見つかっていない」
「え?」
トゥルは驚きの目でレッカを見た。
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