コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 妖言遣い 【短編集】
- 日時: 2011/03/28 14:08
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
*
ラブコメな話ではないのだけれど。
あたしがこの「好き」を全否定してしまうと、人生いくらかつまんなくなる。
全てでないにしろ、殆どということもなく、大方粗方な程度ですらないが。
例えば、シャアザクの角の部分くらい大切。
例えば、常日頃から眼鏡をかけてる人の眼鏡くらい。
どうでもいいのだけれど、それさえなくなれば自分がよくなることは確かだけれど。
それでもやっぱり、やめられない。
「ダメ、絶対!」なものじゃないし。
いやはや、恋する乙女じゃあるまいし、我ながらじれったい。
さてさて。
あだ名ではあるのだけれど、蛟(みずち)さんと呼ばれるのはやぶさかではない。
どうしてか、なんて、理由はない。本名の略っぽいし、まあ字で書くと虫偏なのが唯一の難点だけれども、あたしはこの呼び名をなかなか気に入っている。
……あー、ここで残念なお知らせです。
初っ端から「ラブコメ」なんて単語出しといて、その要素皆無です。
以上!
*
「バカになったみたいだ。恋をしたのかな?」「私は半年前からバカだったわ」
なんて、恥ずかしながらそれはそれで素敵だなあって思ってしまうけれど、「は? やっぱバカなんじゃねえのお前?」とも思ってしまう、何かの名言。
恋って甘美な響きだねえ。
うん、いいと思うよ、恋。若い内にしとけだよ、恋。
大人んなったらねアレだかんね、気恥ずかしくてこっ恥ずかしくてアレだからね。
——っと思ってるあなた! 大人ってえのはそういう気持ちを否定しない、いわゆる認める人ってやつだぜ。恋は「する」もんじゃなくて「しちゃう」もんだって認めちゃう人だぜ!
とか言うと「大人ってハンパなく残念じゃねえか……」なんてよく言われるんだけれど、まあそんなことはない。そもそも真の大人とやらでも月並みに人それぞれだ。
ので、恋愛のどーのこーののは、いまをときめかないあたしの自論。
哲学みたいな屁理屈。
モテないあたしの心の独り言。
つか、心の独り言ってアレじゃね? モノローグじゃね?
「で、あんたが好きなのは『食』なわけね? イケメンでもBLでもGLでもなく、『食』なわけね。うわぁ、年頃の女の子がそれとか……うわぁ」
「年下で敬語も遣わない子に、そんな謂れはないかなあ」
「でもでも……うわぁ。ウチも小学生そこそこの頃は『鉄分取らなきゃ!』って言いながらリストカットして手首から流れ出る血に舌を這わせていたものだけれど……うわぁ」
「うわぁ……」
相談相手のセレクトに失敗した。飛んだ変態野郎である。
野郎というか、まあ年下の女の子なのだけれども。
未見未知(みのみまとも)という近所の女の子。
未見(みけん)で未知(みち)である。マトモだけれども異常な女の子だ。
つか、何が「鉄分取らなきゃ!」だ。ばっかじゃねーの。
「とにかく、蛟(みずち)さんはもっとアレです、異性や他人に魅力を感じるべきです」
「例えば?」
「……あー、そう、ですねえ、」未知ちゃんが口籠りながら続ける。「自分の顔を子供に分け与える——」
「アンパンマンじゃん!?」
「…………ぅぐ」
なぜか悔しそうに下唇を噛む。
え? ちょ、ええ? なんで?
「じゃあ口から溶解液出す——」
「カレーパンマンか!? 何がどう『じゃあ』なの!?」
「蛟さんは恋でもしたいんですかぁぁ!? 違いますよね? それってただ『そういう話がしてみたい』ってだけなんじゃないんですか!? あなた、最低です」
「待て待て待て、何? 未知ちゃん何が言いたいの!?」
「るっせえ黙れ!! 何? 夢見がちで彼氏なしの少女には王子様なタイミングで何か現れるとでも思ってんの? はっ、傑作だな、マジありえねえよ、福澤諭吉もビックリだ」
「いや、福澤さんは関係な——」
「そんなんだから蛟さんはピ——でピ————でピ——————なんですよ!!」
「いや、どうなの!?」
わかんないんだけど、ピ——でわかんないんだけど!!
「あー、ダリぃ。ワリぃは蛟さん、変ちくりんな本名って設定の妙ちくりんな女の子の物語ってマジダリぃわ。めんどいんでやめる」
「……?」
*
と、言うわけで。
はい、なんだったのでしょうか、このお話は。
伝えたいメッセージとか、ワクワクドキドキの展開とか。
なかったっすね、はい。本当になんだったのでしょう。真面目にラブコメ気持ちがあれば「キャーイケメンこと池に落ちていたお面よぉー」な話を予想していたあたしとしては、残念極まりない限りである。全く以て悲しいの極みだ。
まあ、閉めにここで某名言を一つ。
「恋愛論を得意げに語るやつには、恋人がいない」
<了>
とかなんとか。
はい、どーも初めましての人は初めましての玖夙友でっす
ちなみにイキナリ貼ってある上記のやつは、最近「乾ききった悲しい環境」の酔狂のせいでいろいろあって書いてみました。我ながら悲しい話ですwww
>>1
>>11
>>12
>>13
- Re: 妖言遣い 【短編集】 ( No.11 )
- 日時: 2011/03/25 18:50
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
*
「いいですか蛟(みずち)さん、キスをするのとされるのとじゃ全然違うんですよ。キスするっていうのはハンパなく勇気が必要なんです。なんせ日本の法律じゃ男の人が女の人のキスする場合、被害届け出されたら強制わいせつ罪や暴行罪が成立すると聞きました。まあそれが間違いだとしてもです、なんと! キスで歯周病は移るんですよ! まあまあ恐ろしや怖ろしや、それを除いてもです、なんかのCMで何億個もの菌が行き来するありましたし、やっぱアレっすね、あんなこと健全な女の子のすることじゃないっすね、キスだか接吻だかちゅーだかあヴぇヴぇヴぇヴぇだか知りませんけど、ほんっとああいうのやめてほしいっすわ。つーかマジうぜえんだよ、ああもちゅっちゅちゅっちゅしてる連中は」
「…………ところで未知ちゃん、あなたは何が言いたいの?」
「ウチ三、四回キスされたことあんだぜすげーだろバーカ!」
「黙れ」
- Re: 妖言遣い 【短編集】 ( No.12 )
- 日時: 2011/03/21 15:39
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
*
「扉は閉じるためにあるよ。開けるためだったら、扉じゃなくてでかい穴でも開けとけばいい」
「閉じるためなら壁を隔てろよ。いらないものが捨てられなくて棄てられなくて、息苦しくなって死ね」
「お前こそ死ね。誰にも想われず死んだくせに」
「お前と違って誰かを想えて死んださ。ま、その想われた側は、こんなカッコよくなくて馬鹿なやつに想いを寄せられてるなんて、鳥肌ものだろうけど」
「違いない。どーでもいいと想われ——いや、そもそも想われたくないなんてやつさえいる。まあ、そんなやつに限ってモテまくりだったりな。羨ましいったらねえぜ」
「口だけの構ってちゃんもいるけどな」
「あ、おれ正にそんな感じだったわ。奇を衒って不思議ちゃん装ってみたんだがね、寂しいったらねえよ」
「ふぅん。ロクデナシくんも大変だったんだね」
「変態だったよ。いや、いまでも変態だな。キミはどうだいキリソクラくん」
「ボクかい? そーだねえ、死ぬ前の一週間くらいだけど、世界かキラキラして見えたよ」
「ほほぉ、また嘲笑的な」
「抽象的ね。別にキラキラ光って見えたってわけじゃなくてな、なんか、何をするにも面白かったし、嫌ってほど繰り返してきたことなのに、新鮮だった」
「どってよ? 慣れや経験でなんにでも飽きがくるのに、何がそんな新鮮だったん?」
「そーだねえ……ご飯、かな」
「…………。いままで食べたことのない味を知ったのか?」
「違う違う。ボクはいつもボぉーっとしてたからさ、ご飯を味わって食べたことなんて随分と久し振りだったと思う。それにね、クラスメイトや近所の人との他愛ないお喋り、得意じゃない遊びなんていうのも、つまらないし笑えなかったのに、楽しかったよ」
「矛盾してね?」
「そーかも。あ、あとね…………」
「ん? どしたよ?」
「久し振りに、他人と手を繋いでみた、んだけどね……」
「うぉ、で? で?」
「……いちいちムカつくなキミは」
「よく言われます。で?」
「…………」
「言いなしゃいよキリソクラ、お前もうすぐだぜ? な? さあ! 勇気を出して、恥ずかしがらず」
「くッ……」
「はぁーやぁーくぅー」
「……んぅ、じゃ、言うから茶化すなよ」
「おーけーおーけー」
「えと……久し振りに他人と手を繋いでみて、その……くすぐったかったんだよ、手が」
「うぉー、ウブだねえ」
「し、死ねッ!! お前いますぐ死ね!」
「ままっ、そー仰らず。——お? キリソクラくん、キミぃそろそろだ」
「消えるのが?」
「そゆこと。いやー、にっしても、キミみたいのに会うのはあんまりないからね。来世でまた死ぬときにでも、ここにきてよ。多分、憶えてるから」
「こようとして、これるの? ここ」
「無理、かも」
「嬉しそうに言うなよ」
「ごみんごみん。でもま、楽しかったよ。——さ、死んでこい」
「おお、死んでくるぜ」
「何か言い残すことあるかい少年?」
「お前の名前は?」
「そんなことかい。いいよ、教えてやろう。ロクデナシって意味で、××だ。さよなら」
「名乗ってさよならか。ビミョーだね」
「だね」
「ほいじゃ、」
「天文学的にありえないけど、縁があったら、また」
「うん、バイビー」
「地獄で会うぜ」
「いや、ここでまた会おうぜ!?」
- Re: 妖言遣い 【短編集】 ( No.13 )
- 日時: 2011/03/26 15:25
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
「大好きとか愛してるとか、そういう陳腐で風化した言葉で例えると——」
「……いや、なんでもない」
*
高校生活は、面倒ごとの連続だ。
「ねーねー、昨日のテレビ見た?」
「……ああ、パイプイスがどっかんだったぜ」
「どんな番組!?」
「——腐ってやがる。早過ぎたんだ」「黙れ小僧!」
「なんだっ? ジブリネタ?」「ノックもしないのかい!」
「でさ、俺バイト募集のファミレスで断られてよぉ」
「粘れよ、『働かせてください!』って」
「『千と千尋』連続!?」「あー、オレ見てねーわ」「焼き払え!」
「ちなみにアタシは『ハウル』派だ」
「俺『千と千尋』かな」
「クールに『豚』だね」
「そう? 私なんか『魔女の宅急便』とかだけど」
「はぁ!? 普通に『ラピュタ』でしょお!?」
「いやいや、ここはあえて『ハリーポッター』を」
「「ジブリじゃない!?」」
「……あー、そんなことより山坂さ、あいつほんっっと最低だよね」
「誰だよ山坂って」
「つか大声で陰口言うなや、ワザとらしい」
「えヴぇヴぇヴぇヴぇッ!」「そうだよ! えヴぇヴぇヴぇヴぇヴぇだよ!」
「ヴぇが一つ多いよ」
「ヴぇってなんだよ!?」
「赤崎ぃ、数学の宿題やってきた?」
「……あー……ぅー」
「ん、どうした?」
「えと、オレ平沢や」
「…………」
「——どうした佐倉、浮かない顔して」
「なあ、一つ頼んでもいいか?」
「あぁ? 何を?」
「ちょっと国防省を爆破し——」「断る」
「——あ、そうだ、いーちゃん、何かほしいものある?」
「……? よくわからないけれど、恥ずかしながらほしいものはあるわ」
「なになに?」「あなたがいない世界よ」
「…………」
「——なあ宝井、オレたちも長い付き合いになるよな?」
「うわ気持ち悪っ、急にどうしたの?」
「お前をオレの親友と見込んで頼みがある。——死んでくれ」
「てめえが逝け! つか、なんで!? 何があったの!?」
「——ありり、内尾さんに湯田さんでねえの、どった? 怖い顔しちゃって」
「トトロに会った!」「ジブリネタ再開!?」
「訳、『ありえねえデブと遭遇した』」「酷ぇなオイ!」
「あのモンスターをハントして来てほしい」
「……こんどPSP貸してやるよ、そこで狩りをするといい」
「えー、リアルがいいー!」「一人でハンザイやってこいよ……」
*
繰り返す。
高校生活は面倒ごとの連続だ。
- Re: 妖言遣い ( No.14 )
- 日時: 2011/04/30 21:11
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
ボクの愚痴。
*
「んぁー……マジ眠い、やべえ、やべえよ、パねえ、三浦の顔の気持ち悪さがマジパねえ。
なんでああ視界に入るだけで人を不快に思わせる何かがあるかなー、もはや特殊能力だな、あれ。
んぇ? ああ、ゴメンゴメン。確かに陰口はよくないよな。
そんなことよりケチャップの話しようぜ? おれぁ中一んとき、給食の時間にケチャップかけられたことあんだよ。
そいつ斉藤っつうんだけどよ、これがマジ気持ち悪ぃの。色黒で脂ぎってて顔なんてあんたの想像を絶するほど醜いし……
いや、そいつモテんだけどね。なっぜかモテるんだけどね。嫉妬じゃねえよ、顔じゃない何かがあるんじゃないの、中身とか。
……人にケチャップかけるようなやつだけど。
んぇ? ああ、ゴメンゴメン。確かに地球温暖化はよくないわな。
そんなことよりランドセルの話しようぜ? おれぁ小一んとき、クラスメイトのランドセルの金具、あれぇぶっ壊したときがあんだよ。
事故じゃなくて、故意にな。なぜかっつうとなんとなくなのが——若さってやつ?
んぇ? ああ、ゴメンゴメン。確かに愚痴こぼすのはよくないですな」
*
- Re: 妖言遣い 【短編集】 ( No.15 )
- 日時: 2011/05/30 23:07
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
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「あ、ふぅーちゃんだ」
我が家の敷地内から出たほぼ直後だった。突如僕のことを〝ふぅーちゃん〟呼ばわりする謎の少女登場。
「何者だ貴様ッ……!」
端麗な顔つきに後頭部のところで二つに括った髪型——そしてなぜかいま正に〝狂犬〟めいたそれに喉笛引き裂かれそうになっている謎のシチュエーションの、女の子だった。
「ほんと何者だ貴様ッ……!」
「煮物にございますふぅーちゃんの旦那」
「馴れ馴れしいッ」
人をふぅーちゃん呼ばわりするんなんて。「お前は僕の幼馴染か何かか!」
「そうだよ!? えちょっ、そうだよッ!?」
というか。
なんで腹ペコそうなでかくて怖いワンコに押し倒されてんのしかもその状況で冷静でいられるの普通に冗談が言えるの、と思うのだが、しかし目の前の女の子は給食の牛乳にストローを刺すような涼しい顔で僕を見ている。
「ほんと何者だよお前ッ!?」
「国王陛下の遣いの者にございます」
「豪く偉そうに言うけどヒゲないと僕信じないからねそういうことは!」
「ひ、ヒゲだと……? お主まさか『良い子はみな和子教会』の——」
「属してねえよそんな教会ッ、つーか何、なんでお前ワンワンに首噛み千切られそうになってんの!? NHKで昔そこそこの人気を博してたワンワンになんで殺されそうになってんの!?」
「……あれは、草木が照りつく、寒いある日のこ——」
「いや草木は照りつけねえよ」
「私は……ふっ、いまとなっては懐かしい話だな。何はともあれエスタークを倒した古いドラクエのデータが巡り巡って、このパドソンに渡った——おっと、パドソンはこの犬の名前だ」
「パドソンに殺されそうになってんぞオイ」
「パドソンは、犬の国の王子で、とても人懐っこいとかそういうところはなかった。トランプで例えるならJだ」
「……Jに王子様的な意味はないからな? あれ召使いとかそういうのだからな」
「そしてまたあるときは川に芝刈りに行きました。めでたしめでたし」
「ああ、そう……」
とにかく面倒だったので、僕はお家に帰ることにした。
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