コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 魔法使いの宝物
- 日時: 2011/05/01 21:36
- 名前: 桜野兎姫 (ID: 6fmHesqy)
はじめまして、桜野兎姫です
クリックしていただきありがとうございます。
この作品は、私が初めて書いた小説なので、至らないところはたくさんあると思いますが、どうか最後まで目を通していただきたく思います。
そしてずうずうしいお願いではありますが、この作品をよりよい作品にするためにアドバイスなどもしていただければ幸いです。
〜目次〜
>>1 プロローグ
>>2 第一話
>>3 第二話
>>4 第三話
>>6 第四話
>>9 第五話
>>12 第六話
>>13 第七話
>>14 第八話
>>15 第九話
>>16 第十話
>>17 エピローグ
>>18 あとがき
〜大切な友人〜
仁都さん
〜この作品をよりよくするため、いろいろアドバイスを下さった方々〜
翡翠さん
ゆnさん
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.14 )
- 日時: 2011/05/01 21:15
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第八話〜
あれからもうだいぶ歩いたが、遺跡が見えてくる気配はない。木もだんだん多くなり、周りが暗くなる。周りが暗くなったのは木のせいだけではないようで、木々の間からは、月が見え始めていた。
「ねぇ、まだつかないの?」
「もうちょっとだと思うんだけどなぁ」
困ったように頭をかくシウルに、私は空を指差しながら言う。
「もう暗くなってきたよ?」
「今日はこの辺で休めばいいんじゃありませんの?」
「それもそうか」
納得したシウルが、周りをきょろきょろし始めた。するとシュネが、少し大きめの木を指差す。
「あのあたりはどうですか?」
その木の下にみんなで協力して大きいテントと小さいテントをひとつずつ建てる。といってもほとんどジェラーニが魔法で組み立てたのだが……。
「では、毎回こうれいのくじ引きですの。印付きだった方が大きいテントを使えますのよ」
私たちは、ジェラーニの持っている割り箸のような棒を順番に引いていく。結果は私、シウル、の二人が印なし。ジニアスの表情が異常にうれしそうだったが、それは使えるテントが大きいからということにしておこう。
炎使いのジニアスがつけてくれた火でランプをつけ、テントに入ると思っていたよりは少し広かった。夕食は、シウルが持ってきてくれていたサンドイッチで済ませ、後かたずけを終わらせると、床に寝袋を広げた。
そこで私は昼のことを思い出す。
昼間、シウルにハート型の氷をもらった時のこと。部屋の扉を開けると、そこは私があこがれていた部屋そのものだったこと。とてもおいしい紅茶を飲ませてもらったこと。そして、シウルとであったときの始めの一言。そこまで思い出して、私はふと不思議に思う。
あの時シウルは、私が名乗る前に私の名前を呼んでいた。あの紅茶も私はどこか懐かしい味だと感じていた。部屋にあった家具のカバーの模様も、氷の形も、私の大好きなハートだった。そこで私が考えたことはひとつ。
シウルは今日出会う前から私のことを知っていた? そして私は彼のことを知らない。ということは——。
「ねえ、シウル?」
「ん? なんだ?」
「シウルは三年以上前、私にあったことがある?」
「なんで?」
シウルは少し驚いた顔をする。
「あのね、私、三年前から記憶がないの。だからもし3年以上前にシウルと会ったことがあったとしても何も覚えてない。私、シウルの家で目を覚ましてからびっくりするようなことがいっぱいあった。でもね、どれも初めてのことじゃない気がしたの。シウルが入れてくれた紅茶の味も、魔法を見たのだって。だから……」
そこで私はどう話していいか分からなくなり、言葉に詰まる。
「ごっごめんいきなりへんなこと言って」
私は急いで謝り、その話をやめようとする。しかしシウルは、そんなことは気にしてなかったようではなしを続ける。
「いや、いいんだ。確かにルミと会ったのは今日が初めてじゃない。でもどうして?」
「それは、私が名前を言う前にシウルが私の名前を呼んでた気がしたから……」
「そうか、確かに呼んだかもしれないな。なつかしいな、そういう鋭いところ、昔からぜんぜん変わってない」
「シウル! 三年前、何があったのか教えて! 忘れたままじゃいけない気がするの!」
私は思わず叫んでいた。少し身を乗り出してシウルの返事を待つ。
「まあいいが、ちょっと落ち着け。といっても三年前何があったかなんて俺が聞きたいくらいだが……」
ランプをはさみ、向かい合って座ると、シウルはゆっくり語りだした。
「ルミと俺は、幼馴染だった。いつも大きな木の下で待ち合わせをして、暗くなるまで遊んでた。あの紅茶は、ルミの大好物だったんだ。いつも家に来たら飲んでた。 だからシュネさんが持ってきた手紙でルミが全部忘れてるって知ったときはだいぶショックだったんだぞ? 」
シウルは、少し笑うが、すごく悲しそうだ。
「たぶんもともと魔界の人間だったから魔法を見てもあんまり驚かなかったんじゃないか? だけど、あんなにいつも一緒に遊んでたルミが三年前、突然待ち合わせの場所に来なくなった。家まで行っても誰もいないし、森中探し回ってもどこにもいないし、どうしたのかと思った。俺が知ってることは簡単に言えばこのくらいだ」
シウルはわざとなんでもないことのように語っていたが、無理してることはばればれだ。
「ごめん。何も覚えてなくて」
「いや忘れたのは仕方ないよ。それに俺にはわからないが、何か理由があって忘れてしまったんだろ? それは、ルミのせいじゃない」
シウルは私を安心させるようにぽんぽんと軽く頭をたたいて寝袋に入る。
「さあそろそろ寝よう。明日もまだ冒険は残ってるぞ?」
シウルは自分だってつらいはずなのに私をきづかってくれている。そう思うだけで目が熱くなった。私も急いで自分の寝袋に入り、ぬれた目を隠すようにして、
「消すよ」
とランプに手を伸ばした。
「ああ」
シウルの返事を聞いてランプを消し、目をつぶると、私はいつの間にか眠ってしまった。
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.15 )
- 日時: 2011/05/01 21:25
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第九話〜
「朝だよ! ルミおきて!」
私はシウルの声で目を覚ました。眠い目をこすりながら寝袋からでる。
「おはようシウル」
「おはよう」
寝起きでボーっとしている私の寝袋を、昨日の大きな荷物の中に片付けながらシウルはテントの隅を指差す。
「朝ごはん、早く食べてくれ」
「あっ、うん」
私は急いで昨日とは違う味のサンドイッチを食べるとテントから出る。テントの外にはもうみんな集まっていた。立てたときと同じようにテントをたたむと、早速歩き始める。
少し歩くと思ったより早く、石できた建物が見えてきた。とても大きくて古そうなその建物は冒険にぴったりでうきうきしてくる。
入り口にある二体の女神像の間を通ると、いよいよ冒険らしくなってきた。薄暗い廊下の中を足音がこだまする。いくつかの部屋を通り抜け、大きな部屋まで来たところで行き止まりになった。
「行き止まりですの?」
「いや、ジャックの話ではこの部屋に隠し扉があるらしい」
「この辺にスイッチがあるんじゃない?」
私は近くの壁に手をついて答える。
ガタッ
「ひゃっ」
その手に力を入れたとたん、手をついていたレンガが奥へ引っ込んだ。ゴゴゴゴと重い音を立てて近くの壁が開く。
「すごい」
「まさかここがスイッチだったなんて……」
しばらくその場に立ち尽くす私だったが、状況がつかめてくると、
「いこっ!」
と壁にあいた穴の中へと駆け出した。
壁の奥は、さっきの部屋の何倍もの広さがあり、なかなか奥へとたどり着けない。少し行くと部屋の一番奥に宝箱のようなものが見えてきた。私は振り向くと叫ぶ。
「宝箱あったよーっ」
それを聞いた私以外の全員の表情が曇る。
「ルミ、すぐ戻って来い」
シウルの言葉の意味が理解できなかった。宝箱はもう見えているのだ。
「どうして?」
私は首をかしげながら聞いた。
「いいから早く!」
いつになく必死なシウルの言葉に、私は戻ろうとゆっくり足を一歩踏み出した。そのとき。地面蛾が大きく揺れた。突然私の周りが暗くなる。その理由はすぐにわかった。振り返るとそこには、巨大な三つ目の狼がいたのだ。足だけでも私の二倍はあるだろう。狼はその巨大な足を大きく振り上げ、今にもその鋭いつめで私に襲い掛かろうとしている。
「逃げろーっ」
シウルの大きな叫び声が聞こえる。逃げなくては、そうわかっていても、体が動かない。そんな私の上に容赦なく大きな足が振り下ろされた。もうだめだ。私はぎゅっと目をつぶる。キンッと部屋中に乾いた音が響き渡った。
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.16 )
- 日時: 2011/05/01 21:28
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第十話〜
私は、恐る恐る目を開ける。そこに見えたのは真っ黒なローブだった。シウルがとっさに作り上げた氷のたてが私を守ってくれたのだろう。しかし完璧には防ぎきれなかったようで、私を守った黒ローブの氷使いシウルは、右手で左肩を抑えている。抑えられた肩からは、赤い液体がぽたぽたと滴っていた。
しかし、いつまでもそこに突っ立っているわけにも行かなかった。狼は、大きな足を持ち上げ、二度目の攻撃を始めようとしている。ジニアスは炎で剣を作り出し、ジェラーニは近くにあった大き目の岩を魔法で持ち上げ、戦闘体制にはいっている。シュネの光は、もう狼の後ろ足を黄色く染めていた。
「ルミ、ここは危ない。離れて待っててくれないか?」
私の身を案ずるその一言がとても悲しかった。私以外のみんなは自分の力で戦っている。私のことまで気遣って守ってくれる。でも、私は何もできない。みんなと同じ場所に同じように立っていてもこうも違うのだ。私はここにいても邪魔にしかならない。そう思うと、どうしようもない何かがこみ上げてきた。私は部屋の端まで全力で走る。
それから私は、長い長い戦いを部屋の片隅でじっと見ていた。みんなそれぞれ戦っているのに私は……。どんなに考えまいと思ってもどうしても考えてしまう。
しかし、私だけ闘いに参加しないというのも許されないことだったらしい。巨大な狼は、次のターゲットに私を選んだようだ。
狼は突然こちらを向くと、一気に私の元までやってきた。この部屋の私がいるのとは反対の角の近くで戦っていた狼は、五秒で私の所までやってきた。二百メートルはあるはずの距離をたった五秒で。そしてまたその大きな足を私の上へと振り上げた。
今度こそ間に合わない。どんなに足が速い人でも、二百メートルを五秒で走るのは無理だ。それにあの巨大狼はもう五秒も待ってくれないだろう。もう助からない。そうあきらめかけたとき。
「ルミ! そいつに直接触れ!」
「え!?」
思いもよらないことをいわれ、戸惑うが、今は言われたようにするしかない。このまま何もせずにたっていたところでやられるだけだ。
「えいっ」
思い切って私は狼の体に触れる。
すると信じられないことが起こった。私の足元に真紅の魔法陣が開く。その魔法陣はほかの誰のものよりも巨大で、あの大きな狼よりも大きかった。狼に触れた手から何かかが私に流れ込んでくる。頭の中には、知らないアルファベットの列が、弧を描くように流れていた。
アルファベットの流れが止まり、魔法陣も閉じると、そこに残ったのは力を失った巨大狼だった。
私はその場に座り込む。そんな私の元にみんな驚いた顔で駆け寄ってきた。
「今のはなんですの?」
「何があったんだ?」
問われるが答えられない。私にも何があったのか全くわからなかった。
「帰ろう。立てるか?」
私は小さくうなずき、優しく差し出されたシウルの手のほうへ、右手を伸ばす。しかし、私は途中でその手をとめた。
もしも今、私がこの手を握れば……。私が彼の手に触れれば、彼は——?
そんな考えが私の頭の中を何度も駆け回る。
私のこの手は、シウルの何倍もの大きさがあるいわば化け物を一瞬で倒してしまったのだ。この手でシウルに触れたら……。そう考えると、差し出されたこの手を握ることはできなかった。そんな私の気持ちを察したかのように、シウルは一言。
「大丈夫」
と言った。それでも手を握るのをためらう私。すると、シウルは半ば強引に私の手をつかみ引っ張った。
引っ張られた勢いで、立ち上がった私の体が、シウルにドンとぶつかる。かなりの勢いでぶつかった私の体をシウルはよろけることなくがしっと抱きとめ、耳元で一言つぶやいた。
「な? 大丈夫だっただろ?」
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.17 )
- 日時: 2011/05/01 21:29
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜エピローグ〜
私たちは、シウルの家がある森に帰ってきた。足元には、真っ白な雪が積もっており、空はもう鮮やかなオレンジ色に染まり始めていた。
少し歩いていくと、大きな木が見え始める。もう何年もそこにたっているであろうその巨大樹は、私たちの帰りを祝福しているようにも見えた。
私はこの森で宝物を見つけた。やさしい光を帯びた、とても素敵な宝物。とても温かい宝物。
この先にあるものは、楽しいことばかりではないかもしれない。つらいこと、苦しいことがたくさん待ち構えているかもしれない。だけどあえて私は先に進もう。この先にある楽しい未来に向かって。夕日を受け、オレンジ色に美しく輝く、私のとても大切な宝物とともに。
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.18 )
- 日時: 2011/05/17 15:49
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜あとがき〜
こんにちは、桜野兎姫です。『魔法使いの宝物』をお読みくださりありがとうございます。初めて書いた小説なので、本当に完結に向かっているのか? こんなことで本当に完結するのか? と不安でしたが、どうにか完結させることができました。
この小説を書くにあたって、本当にたくさんの方にアドバイスを頂まして、やっと書き上げることができました。しかし、私の力不足により、皆様からいただいたアドバイスどおりにいっていないところが多数あります。アドバイスいただいた方、申し訳ありません。そして、本当にありがとうございました!
最後になりましたが、この文をここまで読んでくださった皆様に、最大の感謝を述べさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。
2011年5月1日 桜野兎姫
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