コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- オレの周りの殺人鬼たち
- 日時: 2011/04/05 11:04
- 名前: ヒマワリ (ID: hg1Gx/0a)
ハジメマシテ!!
ヒマワリと申しますw
えぇと、これから書くのは題名にしては怖くないタイプの小説です。
書き下ろし・・・。というか、思いつきで書きます。
どうか温かい目で見守ってください!!
★お客様★
無音サマ♪とぅいらサマ♪月読 愛サマ♪みかんサマ♪杏サマ♪
- Re: オレの周りの殺人鬼たち ( No.39 )
- 日時: 2011/05/02 12:04
- 名前: ヒマワリ (ID: OJjBESOk)
★第四章 ②★
そんなわけで、上機嫌のあまりどこかのラブソングを口ずさみながら先頭を歩く三芳と、殺人計画が水に流されて不満げな顔を何とか隠す桜丘と、無理やり家から連れ出されたオレは、本来なら待ち合わせ場所だった【船井駅西口の紫のパンジーの花壇】前へと着いた。
夜の10時を回ってはいるものの駅前というだけあって人ごみは止むことを知らず、ざわめきも昼とたいした変わりは無かった。看板のネオンのきらめきや怪しげな店への勧誘など、活気にあふれている。
「うーん。こんだけいれば、何人か仲間にできるだろ。」
三芳が楽しげに呟いた。もちろん楽しそうなのは三芳だけで、オレと桜丘はというと、半ばげんなり状態だった。まぁ、夜に桜丘と二人きりで会って違った意味でドキドキして、最終的にはこの世からオサラバなんていう地獄コースと比べればマシなほうなのだが。
「じゃ、手始めにそこら辺の女性を口説いてこい。」
三芳がクルリとこちらを振り返って衝撃的な一言をぶつけた。いきなりのことで言葉が出なかったオレの代わりに、桜丘が控えめに聞いた。
「ナンパ?」
「チッチッチ。ノンノンノン。違いますよー女神サマ♪」
三芳は人差し指をピンッと伸ばして左右に振った。
「メンバーを募集してるだけですって。」
「同じようなもんじゃないか?」
我に返ったオレの言葉は、突然の轟音でかき消された。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん
「!?」
その音は、駅から聞こえた。
爆音とともに、すさまじい爆風が吹いて、足がすくわれそうになる。桜丘が小さな悲鳴を上げて、オレのコートを掴む感触がした。三芳はあっけなく飛ばされて、姿が見えなくなる。
周囲を歩いていた通行人たちも、何事かと駅のほうへ視線を送る。その視線の先では、オレンジ色の炎を空高く上らせて燃え盛る船井駅があった。モクモクと立ち上る灰色の煙が風にまかれて周囲に広がる。すぐに、鼻を覆いたくなるような匂いが立ち込めた。
状況を読み込めないオレの視界に、何かが映る。
煙の中に浮かぶ影が、映った。
桜丘が、普段は出さないであろう陰のある声で低くつぶやく。
「爆弾狂・・・木霊(こだま)!!」
木霊と呼ばれたその人影が、ゆっくりと近づいてくる。
そしてオレは、またしても聞きたくない一言を聞いていまった。
「【小金井君】みーっけ❤」
♪第四章 続♪
- Re: オレの周りの殺人鬼たち ( No.40 )
- 日時: 2011/06/20 22:59
- 名前: ヒマワリ (ID: OJjBESOk)
★第四章★
もくもくと、もくもくと、灰色の煙が駅を、オレの視界を飲み込んでいく。のどの奥がツンとするような痛みと、鼻呼吸が不可能なほどの刺激臭と、目を襲う痛みが風に乗って一気に押し寄せてくる。
煙の中から現れたその男は、それらの害をものともせずに爆心地に立ち続ける。
「【小金井】くぅぅぅぅん★ 会いたかったよぉ。」
オレは会いたくなかったけどな。なんて皮肉が言えるわけもなく。
その男は、ニマニマと気味の悪い笑顔でゆったりと近づいてくる。身長は目算で180センチくらい。黒いタンクトップから溢れる、盛るに盛られた筋肉は太く、数々の戦を駆け抜けてきたであろう戦士のような体躯だった。迷彩柄のズボンはところどころが破れ、黒い煤のような汚れも見える。
「爆弾狂・・・?」
思わずつぶやいたオレの声を拾ってか、桜丘がうなずいた。
「私たちの間では、【木霊】と呼ばれていたの・・・。奴はこの業界の中でも危険視されている存在で・・・」
「なぁーにボクちゃんを置いて、内緒話ですかぁぁぁぁぁ??許せないなぁ。許さないよぉ。」
危険視されている理由は、この口調のせいか?とはさすがに聞けない。
そうこうしている間にも、木霊はケタケタと笑いながら、近づくスピードを徐々に上げてきていた。
風が吹いて、煙がもぉっと舞い上がる。一瞬だけ視界が灰色に包まれた。目に鋭い痛みが走り、自然と涙が出る。
と、その煙の中、突然大きな影が現れ、その影から手が伸びてきた。避ける間もなくその手はオレの頭を鷲掴みにする。
「・・・・・・・っっっ!!?」
脳内で危険信号が点滅する。逃げろ逃げろとサイレンが鳴る。桜丘に殺されそうになった時とは全然違う恐怖が、オレの身体を駆け巡る。掴まれた頭が割れ砕けそうだ。呼吸もままならない。やべ・・・。ホントに死ぬかもしれない・・・。
もうろうとする意識の中、オレの耳がまだ正常に動いていた場合の話だが、妙な言葉が聞こえた。
「・・・は・・・物・・・・。・・さない。・━━死ね━━」
ドスン
目の前の男が一瞬だけ揺れたような気がした。まるで、何かにタックルされたように・・・。
でも、オレの意識はそこまで持たなかった。
だんだんとあたりの景色が薄れていく。
誰かの声も遠く
世界は真っ白になった。
第四章 続
- Re: オレの周りの殺人鬼たち ( No.41 )
- 日時: 2011/07/11 15:47
- 名前: ヒマワリ (ID: OJjBESOk)
★第四章 ④—空の中★
何もない、白い部屋。
家具もなければ飾りもない。部屋のような気もしたけど、違うのかもしれない。周りが白一色で統一されているせいで、壁がどこにあるのかわからない。いや、壁なんてあるのか?
一歩踏み出そうと試みるが、足が動かない。ゆっくりと視線を下ろし、オレは自分の足を━━━無い。
「なんだこれ。」なんだこれ━━なんだこれ━━
白い世界に、オレの声が響いた。音が白い世界のどこかで跳ね返って、オレの鼓膜を震わす。
足のないオレは歩くこともできずにただそこに立ち尽くしていた。
「いや、足が無いのに立ち尽くしてるって・・・ハハッ。」
自嘲気味に笑った自分の声でさえ、律儀に跳ね返ってくる。クソいまいましい。
そういえば、どうしてオレはここにいるんだっけ。ふと浮かんだ疑問を解決するべく、オレは脳みそをフルパワーで稼働させる。まず最初に浮かんだのは、視界を遮る灰色の煙。その煙の中から時折ちろちろと見える赤い炎。煙に映る巨体。伸びてくる大きな手。
「━━━━っ。」
次々に浮かんでくる映像は止まることなくオレの脳内で暴れまわる。思い出すのを止めようとしても、止まらない。壊れて流しっぱなしの蛇口のように。
大きな手につながった巨体が、ゆったりとした動きでオレの目の前に現れて、気味の悪い笑みを浮かべ、何かを言った瞬間にぐらりと傾く。その巨体の前には小柄な少女が身体をくっつけるように立っていて・・・。
プツン
その音が幻聴なのか現実のものなのかはわからないが、浮かび上がって止まらなかった映像は、音とともに消えた。
「そうか・・・。桜丘が・・・。」
そのあとに続く言葉は寸前で飲み込んだ。目の前で起こっていたことを信じたくないのもあるし、何より信じられない。
オレはそれまでの考えを振り払って、改めてこの白一色の世界を観察することにした。観察といっても、何もないが。
「足が無いんじゃ、どうしようもないよなぁ。」
響き、跳ね返る声もどこか虚しさを帯びていた。やっぱり壁はあるんだろうか。白い世界の一点に視線を集中させていた、その時。
ぶわっ
「!!」
いきなり、オレの足元から薄水色の液体のようなものがあふれ、白い世界を飲み込み始めた。どこまでも続く白を、水色が占めていく。その景色の中のところどころに雲が浮いていた。やがてオレの周りには、果てしなく続く空ができた。遥か上には、まぶしく輝く太陽が昇っていた。
♪第四章 ④ 続♪
- Re: オレの周りの殺人鬼たち ( No.42 )
- 日時: 2011/07/11 17:59
- 名前: ヒマワリ (ID: OJjBESOk)
★第四章 ④—白箱の中★
バタバタとせわしない音が行きかう病院内。白いナース服と白衣の波が、廊下を滑るように進むストレッチャーの後を追いかける。ところどころがくすんだ白い壁はこの建物の古さを物語っている。
ツンとするような消毒液の匂いが充満するとある小部屋に、二人の少年少女が黙って立っていた。
一人は、黒髪を肩まで伸ばした小柄な少女。その少女の目に宿る光は希望の光というよりも、何かをたくらんでいるような怪しい光を帯びていた。
もう一人は、ぴっちりとした坊主頭に黄色いフレームの伊達メガネ。身長は少女よりも高く、メガネの奥に光る瞳は心なしか揺れていた。
二人の視線の先には、青白い顔をして仰向けに横たわっている少年。呼吸も細く、今にも消えてしまいそうな彼を見て少女がつぶやいた。
「小金井くん、死なないよね?」
「大丈夫っすよ。女神さまを置いて死ぬような奴じゃないっす。」
少女の問いに答えた坊主頭の少年━━三芳光輝は、言葉とは裏腹に力なく応えた。
その言葉を聞いて少女━━桜丘華はゆっくりと目を伏せた。深く長い溜息を吐いて、一言。
「死なれたら困るんだけど・・・。(私が殺すのに!!)」
その言葉にさまざまな感情(主に殺意)が込められているとは知らず、光輝は華の手を(どさくさに紛れて)握った。
驚いた華がわずかに息をのむ。
「龍斗は死なないっすよ!!だってアイツは不死身ですから。あ、でも待てよ?もし龍斗が死んだらおれと女神さまが付き合えぶふぉっ」
「はーい。どいてどいて、今から検査するんだからサ。」
光輝の何気ない計画も、どさくさに紛れて握った華の手も、突然の第三者によって中断されてしまった。
「・・・っ誰!?」
悲鳴を上げたのは以外にも光輝で、華はというと茫然と看護婦を見つめていた。
「誰って、どっからどう見ても看護婦でしょ、アタイ。それと、病室で大声出さないでって。他のお客もいるんだからサ。」
彼女は看護婦とは思えない発言を連発させながら、ベッドに横たわる龍斗に歩み寄った。すれ違いざまに香るのは香水の匂い。
その看護婦が着ていたのは、白い清楚なナース服とは異なり、薄オレンジの生地にパステルカラーのカラフルな花がプリントされたナース服。服から伸びる手足は小麦色に焼けており、雑誌モデルにでもいそうな体躯をしていた。
【弥生坂 恵(やよいざか めぐみ)】と書かれたネームプレートには小さなキャラクターのシールまで貼ってある。コレのどこが看護婦か。
さらに彼女は右手に持った注射器を龍斗に刺そうとしていた。寸前で慌てて光輝が止める。
「ちょっ。ちょ、ストップストップ!!何で注射!?検査じゃなかったんすか?」
すると恵はきょとんとした顔で光輝を見た。
「え?だってけが人でしょ?けが人には注射がイチバンさ★」
そう言って彼女は怪しい色の液体が入った注射器を小刻みに振った。
「ちゃんと治療してあげなくちゃ、ね♪」
「(コイツ・・・どっかで見たことのある・・・。まさか、私たちと同じ殺人鬼?コイツも小金井くんを狙って?だとしたら止めるべき?いや、今は三芳くんがいるし。でもこのままじゃ・・・。)」
華の脳内でさまざまな思いが錯綜する中、窓の外では夜が明けようとしていた。
♪第四章 ④ 続♪
- Re: オレの周りの殺人鬼たち ( No.43 )
- 日時: 2011/07/16 21:33
- 名前: ヒマワリ (ID: OJjBESOk)
★第四章 ④—空の中Ⅱ★
突然広がった空は青く、うっすらと浮かぶ雲も真っ白で、ずっと高く上った太陽はサンサンと光り続けていた。まぶしくて、なんだか暑い。太陽の光がオレの目を通り抜けて、直接脳に突き刺さるようだった。かすかに頭が重い。風邪をひいて熱を出した時のようなだるさが、オレの全身を支配する。
あいかわらずオレの足は無い。膝のあたりから輪郭がぼんやりとぶれている。しっかりとした床の感触もない。やっぱりオレは浮いているのだろうか。いまだに実感がない。
ここからどうやって脱出しようか。そんな考えが頭をよぎったとき、どこからか声が聞こえた。
「━━━━な━ね?」
どこから聞こえているのかはわからないが、確かに声は聞こえた。ぼんやりと響いて聞き取りにくい。声からすると、女性のようだ。そこでふと、桜丘の顔を思い出した。駅前で記憶が途切れてからというものの、会っていない。アイツもこのわけのわからない世界に巻き込まれているのだろうか。
それもそれで困るな。二人っきりだったらいよいよ殺されるかもしれない。
桜丘のことはひとまず置いといて、三芳も心配だ。
アイツもいろんな意味で不死身だからな。しぶとく生きていそうだ。しかし、オレはどうしてここにいるんだろう。
「大丈夫━━。━━を━て━━━な奴━━っす。」
「三芳!?」
頭の中で、ヘラヘラした笑いを浮かべる三芳を思い描いていたので、声が聞こえたときは正直驚いた。自分の幻聴かとも思ったが、どうやら違うようだ。その声は、どこからかぼんやりと響いてオレの鼓膜を震わせた。
「━━困る━━。」
再び女性の声がした。さっきの声が三芳だとすると、この声はひょっとしたら桜丘かもしれない。桜丘以外で三芳に女子の話し相手がいるとは思えない。
と、突然、それまでぼやぼやしていた声が急にはっきりした音に変わった。
「———誰っ。」
女の声。桜丘だ。
浮かんでいた雲がわずかに揺れた。空が青さを増していく。
声には、焦りの色が浮かんでいた。何をそんなに焦っているのだろう。というか、オレをここから出してくれ。
「ちょ。ちょ、ストップストップ!!」
三芳も焦っている。なんだ。オレの見えないところで、オレのいないところで、何が起こっている。
今すぐ駆け出して二人のもとへ行きたいのに、今のオレには足が無い。二人の場所もわからない。くそ。オレは何をしたらいい。
しかし二人が焦っている割には、第三者らしきものの声が聞こえない。とういうか、オレは今どういう状況なんだ?
悩み始めたオレの脳内を映し出したかのように、空の色がゆっくりと変化していく。鮮やかなオレンジ色が、またオレの足元から広がっていく。ところどころにカラフルな花が浮いているのはなんなのだろう。
夕焼けのような空に不釣り合いな色の雨が降り始めた。
♪第四章 続♪
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