コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- とんぐぶ! 【4/9本編更新】
- 日時: 2012/04/15 01:30
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: sHQaGZqh)
どうも、紫亜です。
はじめましての方ははじめまして、いつもお世話になっている方はお世話になっております。
意味の分からない、でも本当にありそうなコメディを目指そうと思います。
ちょっと別板と迷ったので、もしこちらの板向きじゃないと思った場合はこっそり教えてください。
そしたら考慮の末、移動するかしないかしようと思います。
同時運営小説:【この物語は、】
【結局世の中顔でして。】
では、どうぞ。
登場人物【>>2】
本編【>>1】【>>4】【>>6】【>>11】【>>12】【>>13】【>>16】【>>19】【>>20】【>>24】
【>>26】【>>27】
お客様
・さえ
・チビ二世 様
・椎香
・愛河 姫奈様
\ コメント大歓迎! /
[4/9追記]
参照人数200突破感謝!
[4/14追記]
>>28 紫様より感想/アドバイスをいただきました!
ありがとうございました!
- 明坂視点 ( No.24 )
- 日時: 2012/04/22 21:00
- 名前: 紫亜 ◆RC5Rh1pXuc (ID: CyM14wEi)
「明坂ー。 お前ちょっとついてきて」
三時間目の授業が終わった後、 一応オレたちの部活の顧問である中嶋先生に呼び出されて、 先生の後について職員室へ向かった。 そして職員室の扉をくぐり、 デスクへ向かう。 前にもちょっと思ったけど、 先生のデスクは入り口から遠くて面倒。 出来れば……こう……そうだな、入ってすぐのところとか。 うん、その辺が楽だな。
と、 どうでもいいことを考えながら先生の背中を見つめる。
広くてしっかりした、 “男の背中”を見つめているうちに、 何か悔しくなってきたので視線を床へと落として歩き続けた。
デスクに着くと、 先生はさも当然のようにどっかりとイスに腰掛ける。 というか乗る。
木々がさわさわと音を立てながら、 風に揺られて微かに動きながら職員室に影を落とす。 中嶋先生のデスクは入り口から遠い代わりに、窓際なので温かい。 木の隙間から差し込んでくる日差しの具合が調度いい。 その木漏れ日が気持ちよくて、 だんだん眠くなってくる。
……職員室なんかで眠る勇気はないけどな。 さすがに。
先生はおもむろに机の引き出しの上から二段目を開け、 綺麗に整理されたその引き出しの奥の方、 右奥のあまり視界に入らないようなところに、 まるで隠されていたかのように入れられていた鍵を取り出した。
小さな鍵だが、 ひとつひとつ微妙に違う鍵が三つ、 ボールチェーンによって繋げられている。
失くさないように、 という工夫なのだろう。
だが一人の男の子としては、 このように複数の鍵を渡されると純粋にわくわくしてしまうのでそんなことは全体的にどうでもいい。
オレが鍵をじっと見つめながら高揚した気持ちを抑えて固まっていると、 中嶋先生は目を細めてくつくつと笑い出す。
「いいねえ、 その反応。 部長としては、 ちょっと貫禄が足りねえかもしれないけど」
先生の笑い声が段々と大きくなっていく。 終いにはハッハッハ、 とわざとらしく笑いだした。
何のことだか全く分からないオレは、 頭上にハテナマークを出すほか無かった。
「それ、 お前に一旦預けとくよ。 放課後にでも皆で行ってみ」
皆、 というのは、 恐らく部活のメンバーのことなんだろう。
……オレ今、 すげえ部長気分。 いや、 実際オレ部長だけど。
先生に軽く会釈をし、 職員室を立ち去った。 しばらく鍵を観察し続けたかったが、 やはり次の授業が優先なので、 オレは鍵をそっと制服のズボンの右ポケットにしまい三階の教室へと小走りで急いだ。
時計の長針は授業開始三分前を指していた。
次は数学とかなんかその辺だったはず。
急がねば。
そして、 それを乗り越えれば昼飯だ。
オレは階段を駆け上がった。
途中で二年生の学年主任に遭遇し、 廊下を走るなと叱られたので小走りから早歩きに切り替えた。
本鈴と同時に到着した。
*
「——そいやさ」
「……え、 なに棗くん、 おまつり気分?」
「あーヨイショッ! ってちげーよ!」
今オレたちは、 七組の教室で昼飯を食っている。 食堂には憧れるものの、 何となく先輩が怖いので弁当を持参しているオレたちの、 いつもの定位置だ。 つっても、まだ入学してから一ヶ月も経ってないけど。 竜夜の席は扉のすぐそばだから、 たまに入ってくる冷気がきつい。
つーか竜夜の卵焼き超うめえ。
「なんだ棗。 メシ食いながらしゃべんな」
「すまぬ。 もぐもぐ」
あと由紀生の白米が無駄にうめえ。
「で、 どうしたの? 棗くん」
「お、 おお。 そうだったそうだった」
拓斗のせいで脱線した話を戻してくれた竜夜に感謝しつつ、 俺はずっとしまっていた鍵をポケットから出して三人に見せる。 鍵のボール部分に指を引っ掛けているだけなので、 今にも落ちてしまいそうに見えるが実際はなかなか安定している。 オレ以外の部員三人は、 そのゆらゆらと微かに揺れ続ける鍵に目を見開いて、 食い入るように見入っていた。
自分のものではないが、 なんとなく得意げになってしまう。
「棗くん、 これどうしたの?」
拓斗が体を起こし、 目をパチパチ瞬かせて言う。 大きな瞳が、 さらに大きくなっていておもしろい。
拓斗が起き上がると、 それに続くように由紀生と竜夜も先ほどと同じように背筋をピンと伸ばしてオレの方に注目する。 竜夜や、 由紀生までもが拓斗と同じ様子でオレは更におもしろくなった。
「中嶋先生にもらった」
正確には “預かった” だけど。
そう言うと、 由紀生は少し訝しげな顔をした。 本当だぞ、 おい。 嘘ついてないぞ、 おい。
由紀生の様子に反して拓斗と竜夜は興味津々なようで、 目を輝かせてこちらを見ている。 由紀生もこれくらいキラキラした目で見てくれれば、 今世紀最大のいい気分になれたかもしれないのに全くクールぶりよって。
由紀生はまだ眉間に皺を寄せているが、 拓斗と竜夜が未だにこちらを見つめ続けているので、 オレは再び話を切り出す。
「今日の放課後、 行ってみろってさ。 場所は——」
何となく予想のついているその “場所” を、 口に出さないのはただのオレの冒険心。
- Re: とんぐぶ! 【4/3本編更新】 ( No.25 )
- 日時: 2012/04/03 13:26
- 名前: 紫亜 ◆RC5Rh1pXuc (ID: CwD5uNz.)
姫奈さん
堂々としていいのですよ!私がオススメいたします!←
ちょっとよく分からないこと言いましたすいません。
再び来てくれてありがとうございます!^^
うん?神文どこですかドコドコ—!(^o^三^o^)
大丈夫よ!w私になら充分勝てるよ!w大丈夫よ!ww
自重しなくていいのよ!
堂々と見続けてくれるなんてそんな嬉しいことをww
暴走したっていいのですよ、このスレ自体そんなもんなんで!
私がやりたいからやってる!そんなスレなんでいいですよ!
おお、質問また増えたのですね!w
分かりました黒田くんと橘くんやりに行きます(#`∀´)ゞ
ありがとうございました!ノシ
- 日向視点 ( No.26 )
- 日時: 2012/04/22 21:01
- 名前: 紫亜 ◆RC5Rh1pXuc (ID: CyM14wEi)
今日は皆で、 棗くんの貰った鍵の部屋へ行く。
昼休みに見せてもらった鍵は、 何となく古めかしい感じがした。
棗くんとの約束で、 HRが終わったら七組の教室前に全員が集まることになっている。 五組は他のクラスと比べてHRが少しだけ早く終わるので、 ボクはあとの三人が終わるまで暇なのである。
「…………」
暇なので、 ボクは自分の机に軽く腰掛けて、 次々と教室を離れていく皆の去り際を手を振って送り出す。 次々と教室を出て行くクラスメイトたち。 今一人、 手芸部の女の子が。 今三人、 バスケ部の男の子たちが。 今度は二人、 バレー部の女の子と卓球部の女の子が出て行く。 やっぱり運動部は活動のテンポがいいみたいで、 誰もが既にその部活特有の持ち物を持っては喜々として各々の活動場所へと向かっていく。 忙しいのだろうか。 いや、 むしろ本当に忙しいのだろう。 主にサッカー部やテニス部といった、 この学校で強いのだと名高い (らしい) 部活に所属している人たちは皆教室を出るなり廊下を忙しなく駆けていく。 充実してるんだろうなあ。
それにしても、 皆はとても優しい。 まだ入学して間もないのに、 ちゃんと手を振り返してくれるのだから。 ボクはまだ明るい窓の外を見つめて、 しみじみと思い腕を組む。 今ボクわびさびってる。 何か今ボク新しい動詞作っちゃった。
ふわふわとよく分からないことを考えていると、 何となくおもしろくなってくる。 早く部活へ行きたい。 とは言っても、 部室がないボクたちにとっての “部活” とは、ただ皆で集まり所々皆で寄り道したり冒険したりしているだけの云わば集団下校に過ぎないのだけれど。
まだ部活を設立して三週間ほどだけど、 それでも。 既に “部活” という “居場所” が出来ていることに気がついて、 少し嬉しかった。
「あ。 橘くんばいばーい」
「……あ、 うん。 ばいばい」
最後までしっかりと帰る準備をしていた橘くんを送り出し、最後に演劇部の女の子二人を見送ると、 とうとう教室にはボク一人になってしまった。 皆出て行くの早いなあ。 むしろボク遅すぎるのかな。
橘くん……ボク、 橘くんと初めて会ったとき、 『この人とは絶対に仲良くなりたい!』 って思ったんだよなあ。 何となくだけど。 ……そういえば、 橘くん……お昼のときとか一人だよなあ。 あんまり自分から人に関わりに行かないっていうか……。
……橘くん、 とんぐ部に誘ったら皆怒るかな。 ……そんなことないかな? 皆優しいし。 でも、 逆に橘くんに迷惑かな……だけどこの学校、 絶対部活入らなきゃいけないし。 橘くんまだ部活入ってないよね?
一人で橘くんについて (勝手に) (ごちゃごちゃと) (おせっかいだけど) 考えた結果、 行き着いた先はあの日と同じだった。
「ねえ、 橘くん!」
既に階段へと曲がりかけていた橘くんが、 ゆっくりと振り返る。
ああ、 隣のクラスはもう空っぽだ。 全員を見送ってるうちに、 流石に他のクラスも終わるよね。 うん。
皆が曲がって行ったほう……運動部の集まる体育館や、 文化部が活動している管理棟、 運動部の部室館、 それから武道館がある西側へと向かう五組からの最短ルートである右側とは逆を唯一歩いていた橘くん。
理科室や美術室もある管理棟へと向かうために右側へはよく曲がるものの、 逆に左側の通路は登下校以外には利用しないために、 自ずとその通路を突き当りまで行った先にある階段は、 この時間になると人通りが少なくなる。
部活に所属しているといっても、 とんぐ部は今のところただの帰宅部に過ぎないのであって、 つまりはとんぐ部もこの時間はよくこの通路を、 皆と逆走して通るのだ。
「あ! おい、 たく……」
「橘くん!」
「ええええええええええええええええ!!!!??」
ボクは小走り……というか全力疾走で橘くんのいる20mほど先へ向かった。 橘くんはびっくりしたのか、 肩を大きく震わせたけれど、 まあそれは面白かったからいい。
橘くんの肩をしっかりと掴み、 軽く息をついてから橘くんの目をみる。
瞳を揺らしながらも、 口を半開きにしながらもボクの目を真っ直ぐ見てくれる橘くん。 ……やっぱり彼は、 根っからのいい子だと思うよ僕は。
「橘くん! ちょっとお時間いいですか!」
「え、 え? え?」
わ、 橘くんうろたえてる。 どうしようボク今これ大丈夫だよね。 変質者みたくなってないよね。
橘くんがよろけかけてしまったので、 ボクは肩から一度手を離して代わりに彼の両手をしっかりと握り、 もう一度彼と視線を合わせる。 橘くんの目の泳ぎが少なくなってきたところで、 ボクは話を切り出した。
「橘くん! ボクたちの部活においでよ!」
「え? ……日向くんたちの……部活?」
あれ、 首を傾げちゃった。 知らなかったのかな、 ボクらの部活のこと。
「え……日向くんたちの部活って……え? 何部?」
ああ、 知らないのか。 ちょっと焦っちゃってるよ橘くん。 目ぐるぐるしだしちゃったよ。 おもしろいなあ。
様子を伺っているうちに、 橘くんは挙動不審になってきてしまった。 うん、 おもしろい。 とっても。
「あのね、 ボク、 部活作ったんだ! いや、 ボクだけのじゃないけどさ。 この学校、 部活強制所属でしょ?
ということで、 橘くんを誘いに来ました!」
「……誰の指示で?」
「ボクの独断」
キッパリと言い切ると、 橘くんはフイと視線を床に落とした。 何かあるのかと気になったので、 僕ボク同じく下を見てみる。 だけどそこには特に変わったものはなく、 彼がただ目を逸らしただけだと気付いた。
「……迷惑じゃないかな、 って思ったんだけどね。 流石に。 まだ部の皆にも言ってないし。
だけど、 だけどね。 ボク、 なんとなーくだけど。 橘くんを僕らの部活に入れたいんだ」
橘くんの手は、 少し冷たかった。 だけど、 その代わり心がじんわりと温まっていく感じがした。
きっと、 この子は人と付き合うのに慣れていないだけなんだろうな。
「他に目ぼしい部活があるなら無理には誘わないけど」
ボクは二ヒッと笑ってくるりと180度回ると、 橘くんに手を振って走り出す。 今は、 まだ答えはいらない。 少し時間をかけてでも、 橘くんにはゆっくり考えてほしいから。
部活に所属しなくていいその期限は、 六月に行われる体育祭までだそうだ。 ……まあ、 それまでには彼を部に入れたい。 うん。 入れたい。
鞄を置いてきてしまったので、 ボクは五組に帰るつもりだった。 だけど、 どうやら後ろでずっと棗くんが叫び続けていたようで。 ぷりぷりと怒る棗くんに苦笑いを向けておく。
そして、 ボクたちは今日の本題へと歩を進めるのだった。
- 黒田視点 ( No.27 )
- 日時: 2012/04/22 21:02
- 名前: 紫亜 ◆RC5Rh1pXuc (ID: CyM14wEi)
「……おい、 本当にここか?」
「……たぶん」
棗と、 何故か拓斗の先導により辿り着いた教室。 ボードには、 【少人数教室】 と書かれていた。 扉ののぞき窓には埃が全体にかかり、 うっすらとしか中は見えない。 だが、 その様子からあまり掃除はされていないことが伺える。
棗は思い出したように、 昼飯の時間に鍵を取り出したのと同じ制服のズボンの右ポケットから、 例の鍵を取り出した。 そして、 いつになく真剣な顔つきで口を開く。 その様子に、 思わず背筋を伸ばした。
「……この鍵の中のどれかが、 この教室のと一致したら……オレと拓斗に百円よこせよ」
「十円玉が十枚と一円玉が百枚、 どっちがいい」
「そういう話じゃねえよ」
俺の軽いジョークに、 棗は真剣な顔を崩さず、 しかしすかさず返事をした。 それを見た拓斗と竜夜が突如口を勢いよく押さえて俺たちから体を逸らし肩を揺らしていたのを俺はしっかりと目撃した。
「おい、 鍵開けるぞ?」
部員がそろそろ集中力を切らしてきたことを察し、 部長が俺たちに向けて言う。 俺たちは棗を先頭に後ろについているので、 顔をこちらに向けずに前を向いたまま言葉を発した棗の表情を知るものは誰もいなかった。
だが、 俺には何となくわかる。
きっと、 目を見開いているのだろう。 そして、 口元を緩めているのだ。
棗がやや低めに、 抑揚をあまりつけずに、 しかしどこか上擦っているような声音で何かものを言ったときの顔は、 だいたいそんな感じなのだ。
「まず、 この……なんか、 一番貫禄を感じるやつからな」
一番貫禄を感じるやつ。 それは一つだけ明らかに黒ずんでいて、 そしていくつかあるなかで最も大きく、 謎の存在感を放っているものだった。
「まず、 って……どの鍵を使うとか聞いてなかったのか?」
「聞いたけど忘れた」
「だめじゃん」
呆れた、 というか力の抜けたような顔をしてダメ出しをする拓斗に、 棗は少し口を尖らせたものの、 すぐにいつものニヘラっとした顔に戻り、 鍵穴にその鍵を差し込む。
……差し込む。
…………差し込む。
………………差し込んだのだが。
「……大きすぎちゃったね」
竜夜の苦笑まじりのコメントに、 一同は肩を落とすのだった。
「何で誰も気付かなかったんだよ! こんな鍵穴にこんなでかい鍵入るわけねーだろ!」
「棗くんがそれでやってみるって言ったんじゃない! 欲を捨てろ愚か者!」
「やめろ拓斗! 棗がちょっとドジ踏んだだけだ!」
「そーだそーだ! って、誰がドジだ!!」
窓の外から、 野球部の声が聞こえていた。
広い広いグラウンドに声を響かせ、 俺たちにまで元気を届けてくれる。
期待に目を輝かせ、 泥だらけになりながら白球を追いかける野球部の面々を見習いたい。
俺たちは何だ、 いったい。 誰もいない廊下で、 ひたすらギャーギャー騒ぎ続けている。
この状況を何とか打破しようと、 俺は今まで話に入ってこなかった竜夜の方を見た。 こういうときに一番頼りになるのはあいつだ。
そして俺は、 竜夜の姿に目を疑った。
「…………っらァ!!」
スパァン。
高く上げられた竜夜の細長い脚が、 斜め下へと宙を切った。 素早く振り下ろされた竜夜の右足の内側面が、 そのまま古びた教室の扉を直撃する。 急な衝撃を加えられたそれは、 少し嫌な音を立てて軋み、 左へ勢いよくスライドする。 そして、 人が一人ずつくらいなら入れそうな隙間を作り上げた。
驚いた。 あの竜夜が、 教室の引き戸を蹴破っていたのだ。
「ふう……開いたよ、 棗くん……どうしたの、 三人とも?」
まるで何事も無かったかのように。 まるで当然のような顔をして、 いや、 とてもスッキリした顔をして、 竜夜はこちらを振り返った。 そう、 まるで酷いDVをする旦那に逆に殴りかかってやった専業主婦のような。 しばらく苦しんだ便秘に、 やっと開放されたかのような。 バク転がきまったような。 そんな、 全てが満ち満ちたような、 満悦した表情をしていた。
煌めく汗が爽やかで美しいが、 酷い惨状の扉を見ているとそうも言っていられない。
その様子を同じく見ていた棗や拓斗も動きを止め、 というか完全に硬直し、 俺もグラウンドの野球部の声が全く聞こえなくなった。
竜夜はそんな俺たちにちょろりと首を傾けて理解不能 (´・ω・`) を示した後、 まだ固まり続けている棗や拓斗を尻目に先ほど自ら蹴破った扉に体を向けなおした。
あの瞬間、 実は竜夜が鬼に見えたなんてことは、 きっと墓場まで持っていかなければならないだろうな。
竜夜は例の引き戸に手をかけて、 少々乱暴に丁寧に、 上下左右へガタガタと動かしていた。 もともと埃っぽく汚く、 そこら中から木屑が出てくるようなボロくて可哀想だったが彼が鬼の形相で蹴飛ばしたことによって、 一層悲惨な状態になってしまった。
哀れむ以外にどうしようと。
「竜夜、 どうした?」
ていうかどっから開けた。
「ああ、 由紀生くん。 この扉、 相当建て付け悪いみたいだよ。」
それで苛立って蹴ったのか。
恐ろしい思考回路だな、 こいつ。
「さっき軽く蹴ってみたら、 ちょっと開いたんだけど……」
軽く……だと……?
「ていうか竜夜、どっから開けたんだよ」
ようやく硬直から帰ってきた棗が、竜夜に聞いた。
一応は様子を見ているようで、何となく安心した。
「え? この……一番存在感薄い鍵で試してみたら開いたよ」
「え……うわホントだ存在感うっす!!!」
「あっ……こんな鍵あったんだ……」
鍵に失礼じゃないか? 三人とも。
それにしても、 棗がもらった鍵は四つだったんだな。
どこに隠れていたんだ今まで。
「まあ、 部屋も開いたことだし、入ってみようぜ!」
途中から心の中で突っ込み続けて疲れていたので、 棗の提案は嬉しいものだった。
これで、 その 【少人数教室】 とやらの中が綺麗だったらいいのだけれど。
- Re: とんぐぶ! 【4/9本編更新】 ( No.28 )
- 日時: 2012/04/15 01:26
- 名前: 紫亜 ◆RC5Rh1pXuc (ID: sHQaGZqh)
小説相談板にて、紫様から感想・アドバイスをいただきました!
貼る許可をいただいたのでコピペ。
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紫亜さんのとんぐぶ!の感想です
一人称小説……実はあまり自分で書いたことがない分野なので、しっかりとした感想が書けるかどうか不安です。ちょっと読んで、何かの足しになれば幸いです
まず何より、一つの描写にいろいろな情報を入れるのがうまいな、と思いました。
まず、はじめの方の「静かに桜の雨と共にどこかへ飛んでいった」
これも上のような描写の一つで、桜の美しい描写であると同時に季節も語っている。描写、またその他の説明が長くなると、どうしても文章のまとまりがないようにも感じてしまいますから、こういった描写は貴重です。
まだこの手のことについてはありました
あの頭の禿げは、気苦労のせいなのだろうか
ここでは性格と容姿の描写をいっぺんに。どちらも書こうとすると長くなりすぎてしまいがちなものですから、このように違和感なく表現するのは良い方法だなと思いました。
挙げてくときりがないので、このことについては次で最後にします
僕が必ず左手を用いるのは、癖なのか右利き故なのか
どうでもいい、というわけではないかもしれませんが、利き手関連は長ったらしくなってしまいそうでなかなか入れられない情報です。それを、こういう風に描写の中に入れる、そうすると細かい情報まで入れられたりもするんだなと学びました。
それから、セピア色の描写が印象的でした
まだ明るいというのに、全てがセピア色に見えた
セピア色の視界に飛び込んだ、一人の茶色い髪の人
どちらも違う場面、違う人の描写にも関わらず、この類似性。トング部、でくくるべきか、それともまだ何かあるか、どちらにせよ今後の展開が楽しみになる描写でした。
あと、小説全体の構成として、それぞれが主人公になって、互いに関わって紡がれていく物語なんですね。こういう小説はここのところ見ていなかったので何か新鮮でした。
さらに、それが一人称なんですね。それによってうまい具合にそれぞれの視線、それぞれの関係、それぞれの立場等々が出ていて良かったと思います。
最後に、紫の思ったこと、スルー推奨です
上に書いたように、この小説の特徴は主人公が次々と変わっていくことだと思います。それによってこの小説らしさが出て、話ともうまく関わっていく。
そこで、其れを利用する形でもう少し手を加えてみるとすると、という感じに話を進めていきます。
一人称小説で、主人公が変わる。ここで気をつけないといけないのは、今の語り手は誰か、ということを明確に、変わった当初から分かりやすくする、ということなんですね。
読者は当然、主人公はそのまま続くものとして、話を読んでいきます。語り手の転換が分かりにくいと、読者は話がつながらないなと思いつつもそんなものだと思いながら読み、あるときに違ったことに気づくことがあります。
それをなくすために何ができるか、というと私は一人称小説をあまり書いたことがないので、しっかりとはいやませんが、
まず、一人称がかぶらない人を次に持ってきたり、章が始まった直後に呼びかけを入れて語り手を明確にしたりすること、でしょうか。
一番分かりやすいのは地の文を一人称であることを利用してそれぞれ表現を分ける、もしくは章自体を分けてタイトルで区切ってしまう
どれにしろ、明確、それから章のなるべく最初の方に持ってくる、ということが大切だと思います
……なんか、長々と自分でもよく分かっていない一人称について語ってしまいました、スルー、大切です
それにしても、長らくお待たせいたしまして本当にすみませんでした……
では、こんな紫ですが感想を書かせていただき、ありがとうございました!
これからも頑張ってください^^
——————————————————————
紫様、本当にありがとうございました!
私はこれからも日々精進いたします。
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