コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 雪の降る町 【完】
- 日時: 2012/02/12 21:08
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
初めましての人がほとんどだと思います
リオです♪
小説初挑戦&のろまで短気なので、更新は亀以上に遅いです…
気長に応援していただけるとありがたいです
登場人物
・濱里有咲 Hamazato Arisa
主人公。恵美奈の幼なじみで親友。
友達思いだか、ネガティブ思考になることが多い。
・平瀬恵美奈 Hirase Emina
有咲の幼なじみ。三歳の頃にこの町に引っ越してくる前
に、厳しい過去を経験してきた。
・高橋美咲 Takahasi Misaki
有咲と恵美奈の友達。拓海の元カノ。
友達思いで、周りの事を考えるのが上手い。
・渡辺拓海 Watanabe Takumi
美咲の元カレ。恵美奈への浮気が原因で別れる。
有咲や恵美奈とも友達。
無愛想だが、暖かい心を持っている。
お客様
ちくわ大明神様、みつ様、るいーじ様、恋歌様、スポンジ・ボブ様
Thank You!!
2011.2.12 修正完了
- Re: 雪の降る町 ( No.36 )
- 日時: 2012/02/05 20:59
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
「ちょ、恵美奈…」
取り乱す恵美奈を抑えようとする美咲。
「放せよっ!こいつは…全部、全部奪ったんだ!私の大切な物を、全部…」
「だけどこいつはまだ幼かったじゃないか!物事の善悪がわからなかっただろ!?」
拓海が必死に説得しようとする。
「そんな事言ったって、人殺しは人殺しじゃない。私の大事な人を奪った事実は変わらないんだよっ!」
それだけ言い残すと、美咲の手をふりほどき、家へと逃げ帰った。
「有咲、恵美奈がなんと言おうと、私達はずっと有咲と一緒にいるから」
美咲が耳元で小さくそう呟いた。
でも…
「ありがと、でも、悪いのは全部私だから。確かに私は、恵美奈の大切な物を全部奪ったから、恵美奈の言ってる事は、間違ってないんだよ…」
公園に取り残された三人は、雪の中、それぞれの家路についた。
できることなら、恵美奈とずっと一緒にいたいと思う。
今までみたいに、二人でずっと笑い合いたいと思う。
でも大切な物を奪ってしまった私には、許されない事だった。
それでもやっぱり、恵美奈といたい。
今まで十年以上一緒にいた仲だ。この絆の深さは誰にも叶わない。
それが一瞬にして崩れ落ちていくのは、あまりにも悔しすぎる。
明日、もう一度恵美奈に会おう。
会って話をしよう。
それでも元には戻らないかもしれない。
それはもう、仕方のないことだ。
しかし、運命はあまりにも残酷すぎた。
- Re: 雪の降る町 ( No.37 )
- 日時: 2012/02/12 09:10
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
次の日。まだ雪が降り続いている。
今日は朝から恵美奈と会う予定だ。会って話をする。
朝食をとって、静かに家を出た。
私の家の近くには急カーブがあり、危なっかしい。
だけど、私達の家は隣り合わせだ。気にする必要はない。
道路は除雪してあるが、所々凍っている。
雪に足を取られないように、道路の真ん中に出た。
この時間帯にここを通る車は多くない。
恵美奈の家に向かってゆっくり歩き出した。
頬を冷たい風が刺激する。
でも、神様は時に残酷だ。
気がついた時には、カーブを曲がってきたトラックにはね飛ばされていた。
ゴンと低い音をたて、後頭部を強打した。
気がつけば、傷ついた自分の姿を上空から自分で見ていた。
頭から血がどくどく流れている。
恵美奈が家から出てきた。そして私の姿を見るなり青ざめた表情になり、私にしがみついて泣いた。
トラックの運転手は、出てくるなりその場にしゃがみ込んだ。
「有咲!?有咲!?何があったの!?」
恵美奈が泣きながら叫ぶ。
その時私は理解した。
あぁ、私は死んだんだ……
- Re: 雪の降る町 ( No.38 )
- 日時: 2012/02/12 12:34
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
「有咲!?ねえ有咲っ!返事してよっ!あんたまで死んだなんて言わないでよ!?」
恵美奈の泣き叫ぶ声を上空から聞いている。
私まで泣きたくなってくる。だけど、泣けない。
もう、死んだのだから涙が出ない。
「バカ…あんたはまた、私の大事な物を奪ってっ!いつまでやったら気が済むの!?たとえあんたが人殺しでも、私の大事なものを奪ってても、ホントは有咲の事が大好きだったの…。ねえ、有咲までいなくならないでよ、私を一人にしないで…」
心がうたれた。感動した。私一人、死んでしまったなんて、悔しすぎるよ…。
恵美奈がそう思ってくれてたのに、どうしてずっと一緒にいられなかったの?私も恵美奈の事、大好きだったのに…。思い合うだけじゃ駄目なの?
どうしようもない悔しさが、二人を襲う。
騒ぎを聞いてかけつけた人が救急車を呼んだ。
大切な物は失ってから気づくものだというけれど、私も恵美奈も、失う前から気づいていた。なのに、どうしてもっと大事にしなかったのだろう。
大事にしていたら、ずっと守り続けられた?失うことなんてなかった?
雪はまだまだ降り続けている。
そういえば、あの時も雪が降っていた…。
急に恵美奈の様子がおかしくなった時。恵美奈が窓から飛び降りた時。恵美奈の母親は死んでいた事を知った時。恵美奈の過去を知った時。恵美奈と美咲の怪しい会話を聞いた時。恵美奈の母親が死んだ時。昨日、衝撃の過去を思い出し、四人で話をした時。それから、今も…。
雪の降るこの町で、雪の中、すべてが起こった。
誰かと誰かがケンカして、誰かと誰かが仲直りする。誰かが泣き、誰かが笑う。そして時には新しい命が誕生し、誰かの命が失われる…
それはいつどこで、誰の身に起こるかわからない。
だけど、だからこそ、たくさんの充実した思い出が、生まれる。
誰にも予測できない。誰もわからない。わかったら意味がない。
後悔する意味が。笑い合う意味が。
後悔してもいい。人は後悔して成長するものだ。だけど、同じ過ちを繰り返してはいけない。
後悔し、それに学ぶ。
そして、やりたいことを思う存分やり、心から信頼できる友達をつくり、いつか、心から愛してくれて心から幸せにしてくれる人と幸せになれたら、それはとても、充実した人生を歩んでいけるだろう。
それは私の夢だった。叶わない希望だった。
恵美奈の母親はこの言葉を恵美奈に与えた。だけど、それは実現できたのだろうか…。
とても難しいことだ。でも、だからこそ、実現した時にはどうしようもないくらいの幸せを感じるのだと思う。
私は幸せだった。最期はこんなだったけど、私は15年間生きていて、どうしようもなく幸せだった。
それは、心から信頼できる仲間に出会えたからだと私は思う。
たとえ裏切られても、何度も何度も信じ続け、最後にはちゃんと分かり合えた。15年間で作りあげた、誰にもかなわないくらいの深い絆。これがあってこそのことだと思う。だから私は、本当に、幸せだった。
そして最後に。
恵美奈、美咲、拓海、お父さん、お母さん。私をここまで育ててくださったすべての方々に言いたいです。
言い切れない“ごめんね”と、言い尽くせない“ありがとう”を。
そして、
さようなら
- Re: 雪の降る町 ( No.39 )
- 日時: 2012/02/08 20:56
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
エピローグ
窓の外で雪が降っている。
誰の姿も見えない、田舎の町。
こんな小さな小さな町で、
私は数えきれないほど後悔した
私は数えきれないほど涙を流した。
その分、
数えきれないほど笑った。
数えきれないほど沢山の思い出ができた。
誰よりも幸せだった自信がある。
あなたと共に。ここにいてよかった。
〜雪の降る町〜 完結
- Re: 雪の降る町 ( No.40 )
- 日時: 2012/02/12 21:03
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
読者様へ
今まで「雪の降る町」をご愛読くださってありがとうございます。
おかげさまで忙しい中、なんとか完結する事ができました。
また、本文を一部修正しました。もう一度読み返していただけると幸いです。
さて、私から一つ質問です。
本当の幸せとはなんでしょうか?
答えはいろいろあると思います。
私は、小説にも書いた、やりたいと思う事を思う存分やり、心から信頼できる友達をつくり、心から愛する人と心から幸せになれる事。
これだけではないと思います。
仲間がいて、家族がいて、自分の居場所がある。
そして何よりも、自分が今幸せだと思える事が、一番幸せだと思います。
大切なものは失ってから気づくものだ、と誰かが言いました。
有咲と恵美奈は気づいていました。失う前から気づいていました。
だけど、守りきる事ができませんでした。
大切なものは守ろうとしない限り、守りきる事はできないのです。他の何よりも早く失ってしまいます。
そういうものなのです。
幸せも同様です。
手に入れることは簡単でも、それを守り続けていくのが難しいのです。
では、どのようにして守ればいいのか。
それは、自分で考えるしかないのです。
答えを見つけてください。そしてどうか、他の誰にも負けないくらい、幸せになってくれると幸いです。
長くなってしまいました。
今まで読んでくださっていた方、コメントをくれた方、ありがとうございます。
次に小説を書く時も、覗いてくださると嬉しいです。
リオ