コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】
- 日時: 2012/05/30 23:08
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
「——生徒会に入れ!」
唐突すぎるだろ。何を言ってるんだこいつは、と。
何で転校してきたばかりで生徒会に入れとか言われなくちゃならないんですか、と。
それもこれも、何故こうなってしまったのか時間を遡る必要があるだろう。
あぁ、面倒臭い面倒臭い、長くて長くて、酷い酷い——俺達の日常の物語……らしかった。
——————————
【前書き】
初めまして、が多いと思われます。遮犬と申すものです。
このたび、大幅な変更点を加えていますので、リメイクではなく、あくまで完全版として再投稿させていただくことにしました。
大幅、といっても基本は変わらないこの駄作です。この作品があったのは、本当に昔のことです。あぁ、昔すぎて自分もよく分かりません(ぇ
挫折、挫折、挫折。この同じ形で、同じ文字をしたこの三連打が僕を殴りに殴り、KOされてから結構経ちます。この作品はこれまで自分が書いた作品の中で最も思い入れが強かった作品です。
時期を見て、またリメイクしたいと思うこと、もう半年以上。僕はこの春、これを再び書きたいと思います。
思えば、何年前のことでしょうか。もう早々と過ぎ去っていってますね。もう二年前? とかぐらいですか。この作品を初めて、約一年で中途半端な終わりを迎えました。ネタ切れ、そして度重なる更新停止で読者さんがいなくなり、自信がなくなっていました。
ですが、もうやってやりますと。
この作品、完結してぇなぁと。
何度もお前の口からはそれを聞いたよ、という言葉は十分承知しております。ですが……作りたいのです。ていうか、書きたいのです。ドタバタコメディーギャグ小説を。
そんなわけで、宜しくお願いします。うっふんあっはんな作品ですが、笑いの旋風を巻き起こせるように頑張りますので、宜しくお願いいたします;
【ジャンル】
学園、ドタバタラブコメ的な、ギャグという名の純粋コメディーもの。
皆さんの表情に笑いが起こせるように、地道に書いていきますっ。
※1話完結的な、短編のようですけども、話は続いております。
【目次】
プロローグ
【>>3】
第1話:俺が"仮"生徒会に入ることになってしまった理由
【#1>>4 #2>>5 #3>>6 #4>>7 #5>>10】
第2話:ここは何て名前の国ですか?
【#1>>11 #2>>12 #3>>13
- Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.9 )
- 日時: 2012/05/07 23:45
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
>>友桃さん
こんばんはー!
僕もGW課題を終えてきましたb中途半端にですがw
何か書いていて僕もこんな感じだったかなぁとあのノリをいち早く取り戻そうと必死に書いてます;
大幅に以前の感じとは違って描写を増やしたり、設定を変えたりと色々と変更点が多くなっていますが、基本的なノリ、ギャグ、雰囲気はそのままに仕上げたいなぁと思っています><;
前作品に出てきたキャラクターは全員再び出る予定ですっ。
読んだ後に、ふふふっと笑いが漏れる程度の作品に仕上げたいなぁと思いますので、どうぞ温かく見守ってくださいっ;
再びコメディ板に書くにあたって、友人等からまた書くとは思わなかったとかの声をもらったりします。けれど、一番完結させたい作品でもあります。
何気ないコメントをくださるだけでも本当に、心から感謝しています;ありがとうございますっ、ガチで心が震えてます(ぁ
幼稚な文章と共に綴っていく何気ないギャグ小説ですが、どうか見守ってくだされば有難い限りです;
改めて、コメントありがとうございました!頑張りますっ!
- Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.10 )
- 日時: 2012/05/25 19:21
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
- 参照: 色々色々ごちゃごちゃありまして、更新遅れて申し訳ございません;
——生徒会占拠制度。
その名の通り、生徒会を占拠する為に争うべくして争わなければならない制度のこと。
この学校の校訓である完全自主性を重んじる為に生徒会に入る為、個々の能力を最大限に生かそうというのが表向きの目的である。生徒会は自主性を重んじた者達を取り仕切り、スケジュール等を組み上げ、理想の学校生活を目指すべく努力する義務がある。
「……それで、この制度が何だよ?」
俺が言った言葉を聞くや否や、椿が懇切丁寧に教えてくれた。
「問題はここからです。この生徒会なんですが、ただの生徒会ではありません」
「どういうことだ?」
「先ほどご説明したように、限られたメンバーでしか構成されません。つまり言うと、選挙をして推薦で、となると、結構無理があるんです。人気だけでそれは決まっちゃいますから、能力も必要ってことで……」
何となく分かったような気はしたが、悪い予感だけは拭えない。まだ他にあるだろう、何かに俺は恐れている。
そうだ。先ほど話されたことは"今の所俺には全く関係ない"。ということは、ここからが本番みたいなものだろう。
「ふふ、よく分かってるみたいですね? そうです。ここからが本題ですね♪」
「陽気に言ってくれるが、全然俺は嬉しくないわ……」
「まあまあ、説明しますから、よく聞いててくださいね?」
椿はそう言った後、少し間を空けてから口を開いた。
「能力も必要ということなので、ただ選挙をするだけじゃ決められない。ということで、争わせようということに決定されました」
「思考がどこぞの戦闘民族か! 何で争わせようって考えになっちゃったんだよ!」
「僕に言われても分かりませんけど……その争わせるのは、生徒会の言わずも知れた"5役"と呼ばれる、いわゆる生徒会の重鎮です。会長、副会長、副会長兼雑務、会計、書記……これらがいわゆる5役と呼ばれる役です」
この学校では、この5役を中心とした生徒会が成り立つ方針で、その他の委員それぞれに生徒会が命じた委員長を設け、それで初めて全体的な生徒会とされるわけ……らしい。
「それで……何が言いたい?」
「もう大体分かるでしょ?」
その時、突然夕姫が横槍を入れてきた。この野郎、先ほどまでの存在感の無さでどうして横槍を入れて来やがった。
「存在感あるよ! ずっといたじゃん!」
「何で思ってたことわかったんだよ!」
こほん、と小さく夕姫は咳を鳴らして間を整え、ついでに片方の目を閉じ、人差し指を伸ばしてから口を開いた。
——ちなみに、俺のこれからの高校人生を大きく揺るがす発言だということを、前もって言っておくとしよう。
「奏は副会長兼雑務候補として、私達のメンバーに入ってもらうよ!」
少しの間、理解しかねて、俺は黙りこくった。
うーんと、待てよ? 色々と考えたいことがあるんだが、とにかく、こいつは今何と言った?
「副会長兼雑務候補?」
「うん、そうだよ」
「……いや、待ってくれ。何を言っているのか、俺には理解が……」
「何の為にさっき説明したんですか……僕と桜月さんが言った通りの流れで、こういうことになったわけです♪」
「そんなルンルンな感じで言われても困るわ! 第一、そんなものを入ろうとは思わないし、目指そうとも思わない! 俺は静かに暮らせればそれで……」
と、自分の意思を告げるが、夕姫はそれを鼻で笑い飛ばした。なんだこいつ——非常にムカつく!
「残念ながら、奏に拒否権はまるで無いよ」
「どういうことだ。まさか、既に人ではないからとか言うつもりか? だから人として当たり前の権限が無いとでも——」
「先に言われちゃった……」
「って、言うつもりだったのかよ! やめろよ! そんなことないよ! ちゃんと人だよ!」
隣でまあまあ、と椿が場を取り持ち、再び話を再開する。
「拒否権が無いって言うのは、まあ簡単に説明するよ?」
「あぁ、そうしてくれ。出来るだけ分かりやすくな」
「えっと、奏は元々この高校には来れなかったんだよ」
「……は?」
「つまり、この高校の受験失敗して、本当は入学できていなかったってこと」
「……いやいや、え? じゃあ何で俺はここにいるんだよ?」
「それが問題なのよ。ぶっちゃけちゃうと、私のおかげでもあっちゃうわけなのだよ! ふふふん」
「ふふふん、じゃねぇよ! お前個人でそんなことできるわけが——」
と、そこで思い出したことがある。
そういえば、夕姫の一家のことだ。こいつの家って、確か……桜月グループとかいう、大金持ちだったような……。
もし本当にそうだったとしたならば、俺を一学校に入れることなんてたやすいはず。
「まさか、金とかで……?」
「んなわけないじゃない。ていうか、何でお金払ってまで入れないといけないのよ」
「ぐ……! ごもっともすぎて反論ができん……!」
「条件は勿論あるよ」
「条件……?」
あぁ、何かさ? これだから俺の人生は不幸だって言うんだよね。
こう、なんていうか、予感がすんのよ。
絶対、これはヤバいっていう、予感が。
「生徒会副会長兼雑務にならないと退学処分っていうのが条件で、後は私のチームに入るっていうのも条件で、入学OKってことに……」
「ならないでくれよっ!? 何でそれでOK下しちゃうんだよ! ていうか……それって、もうほとんど強制じゃねぇか!」
「だから言ったじゃん。拒否権ないよーって」
「そ、それなら他の学校に行った方が——」
「色々手続き面倒だし、ここらへんの学校で今から編入するのは無理だよ。少なくとも、一年はここにいないと」
「は、はぁっ!? 一年もっ!?」
何てこった……全力で俺は後悔をした。いや、後悔なんてもんじゃない。もう絶望したね。何がどうなってるのか、さっぱり分からないほどに、某ゲームのゲームオーバーみたいに、目の前が真っ暗になったっていうのはまさにこれ。まさにこれと同じ状態だよ、畜生めが。
「……私のチームって、どういうことだ?」
そういえば、先ほど夕姫が言っていたことを、俺は尻餅をつきながら聞いた。
私のチームっていうのは、つまりどういうことなのかを。
「単純に言うと、生徒会を目指すグループみたいなものよ。部活とか、サークルなどでのグループで生徒会を目指す集団もいれば、個人でもいる。生徒会を目指す専用のグループもこの学校にはあるわけで……」
すたすたと、夕姫は俺の目の前を遮り、そのすぐ隣にあった布で隠されてあるホワイトボードの布を剥ぎ取った。
ばさっ、と布は音を鳴らして地面に落ちるのを見送ると、目の前のホワイトボードには大きな文字でこう書かれていた。
"暴風警報!!"と。
「私達のチーム名、暴風警報に入り、そして後々、生徒会になるのよ!」
夕姫は胸を張って自信満々に答える中、俺はその様子を口を開けて見つめるばかりだった。
これが、俺の仮生徒会に入ることになった理由である。
——END。って、まだ続くよ!?
- Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】更新遅れてすみません; ( No.11 )
- 日時: 2012/05/25 19:57
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
人生ロクなもんじゃねぇよ、というのが口癖っぽくなりそうで何とか堪えているなっていない俺こと篠坂 奏は不幸が度重なる自分の不運な体質のせいで様々なトラブルに巻き込まれる人生を今まで送ることとなってきた。それらの経験は身に持って刻まれており、危険なことが毎日のように起こる為に体が身につけたものは、超反射神経だった。何事に応じても脳よりもまず体が反応するのだが、その速度を通常の人間とは比べ物にならない速度で転換することの出来る能力をいつしか身につけてしまっていた。
そんな不運によって生まれた能力を持ちつつ、今の今までよく死なずに生きてこれた俺は、今年で高校生となった。しかし、その度重なる不運によるものなのか、顔馴染みがいるからという理由はただの言い訳に過ぎず、本当のところを言えば、迷惑はかけたくなかったのかもしれない。
そんなことで、住んでいた家から遠い場所に位置した学校へと通うことを決意し、寮のある学校ならどこでもいいかと適当に決めて受験をした。勿論、レベルやらも考えてのことだが、よくよく思えば色々間違えていたのかもしれない。
中学時代の最後の担任、そういえばボケてそうな老人の先生だったなぁと振り返って思ってみると、なんだかよく分からない二者面談を繰り返していたような気がしてならない。
「あの、俺は地元から離れてここの学校を……」
「あぃ? え? 何て言いましたかえ?」
「いや、だから……この学校を……」
「なんだって? 冷蔵庫にあったワシのプリン食べちまった!? 婆さん、そりゃねぇべ!」
「あの……」
「あぃ?」
「……また今度にしていいですか?」
……今思ったら、何で他の先生を頼らなかったんだろうと思う。というか、それ以前に俺が二者面談をしようって時に限って頼れそうな筋肉だらけの数学の先生もいなかったんだ。……というか、ずっと思ってたんだけど、絶対教える教科間違っただろうと思う。思い返してみれば……
「はい! エクササイズいきマッスル! なんちゃってー! がはははは! 面白いな! がはははは!」
もう、勝手にしてくれと当時は思っていた。暑苦しい筋肉を使って動き回りながら数学を教えるもんだから、こっちも暑かった。しかし、こんな教師でも頼れるっちゃ頼れる熱血漢だったのさ。ふっ、笑いたきゃ笑えよ。
そんな感じで、俺の学校選択はここまで不運に支配されて、俺の人生は大きく唸りを上げることになる。
「生徒会に入れ!」
そう——幼少時代以来あっていなかった、桜月 夕姫との再会をきっかけとして。
——————————
第2話:ここは何て名前の国ですか?
——————————
カーテンから注がれる日差しのおかげで目が覚めた。こんなにも清清しい朝は初めてだ。
起き上がると、ベッドから下りる。質素ではあるが、とりあえずベッドはベッドなので、寝心地はまだよかったからかは分からないが、体の状態も万事おーけー。ふっ、いい感じに笑顔がこぼれる。これはなかなか素晴らしい一日の始まりじゃないか?
ミニ冷蔵庫の姿が見えたので、近づいてそれを開けると、中には『すもももももももものうち牛乳』を手に取る。紙パック状になってるそれをすぐ傍にあった食器の中からグラスを取り、中に注ぎ込んだ。白い、美味しそうな液体がうむ、心を躍らせるな。
丁度いい所まで入れると、俺はそれを手に取り、一気に飲み干す。
「……っ、ぷはぁっ! 素晴らしい朝だ!」
「朝から元気がいいですね?」
そこで、俺の体が凍りついた。丁度、口元の牛乳を豪快に拭き取ろうとした瞬間のことだった。
後ろの方から手が伸びてくる。何だ、これはホラーか。いや、違う、そういえばこの部屋にはもう一人の住居人がいたことを、あまりの清清しい朝によって忘れていた。
その白くて、小さな手は、ゆっくりと冷蔵庫にあるビンを掴むと、俺の後方へとまた縮んでいった。何かいい臭いもした。それは勿論、後ろにいるビンを手にとって微笑んでいる外見詐欺のことだった。
「牛乳、"奏クン"も好きなんですか? 僕も大好きで、こうやって冷蔵庫に入れてるんです♪」
この野郎——いきなり奏クンとか言うなああ! 何か動揺しただろ! 何これ! 嫌だよ! こんなにドキッとした相手が男とか! BL系の趣味は全然ないよ! いやでも、これ、椿は騙されるよ! 誰でも! ……いや、言い訳じゃないからね!?
「何をそんなに顔を引き攣らせてるんですか?」
「……いえ、何でもないです……はい」
ため息を吐きたかったが、黒服筋肉隆々のおじさん達が物凄く恐かったのでやめておいた。
椿は牛乳のビンについてあるフタを取り外すと、そのままゆっくりと口へと運んでいった。その動きが、一つ一つ滑らかすぎて見惚れて——いやいやいや、やめようやめよう。
「ふぅ、美味しいですね、ズドゥビバ牛乳」
「何それ!? 初めて聞いたわ!」
「生乳70%、後の30%は色んな出汁で出来ているといわれている牛乳ですよ?」
「それはもはや牛乳ではないんじゃないかな!?」
「そうですね、どちらかというヨーグルトです」
「ドロッとしてんの!?」
凄まじいオーラを放つズドゥビバ牛乳。いや、もう牛乳ではないから……ズドゥビバ? ——ズドゥビバって何だ。
「何で、すももももももももものうち牛乳があるのにズドゥビバ牛乳を飲むんだ」
「一個"も"が多いですよ。……言いにくいですし、ズドゥビバ牛乳の方が朝はいいですから」
「"も"の数とかどうでもいいわ! じゃあ夜は……すもものうち牛乳を?」
「もが少なすぎますよ。……いえ、僕は基本朝はズドゥビバ、他は緑茶オンリーです」
「"も"は略したんだよ! 緑茶オンリーって、じゃあ朝もそうしたらいいだろ……」
何かこう、話していたら疲れるのは初めてのことだった。いや、今まで鬱陶しい奴は幾度となく見てきたが、椿はそういうのじゃなくて、この笑顔に圧倒されるような、そんな表現しか出来ない妙な疲れを覚えさせてくれていた。
「まあ……どうでもいいけど、今日と明日で一応休みが終わるんだよな?」
「えぇ、まあそうですね。ですから、明後日から学校が始まるというわけです」
丁度よく転校してきた、というのか。今日と明日は休みで、明後日から学校が始まることを聞いた。
色々準備というか、この寮生活……いや、椿に慣れなければならない為、少しでも学校に慣れる時間が欲しい所だったのだ。
「学校の内部、俺まだ全然把握してないんだよな……」
「あぁ、それなら僕が案内しますよ」
ズドゥビバ牛乳を飲み終わり、ビンをテーブルの上へと置いた椿がしれっとそう言った。
「え? いや、椿も一年だろ? 同じ境遇っちゃ境遇じゃねぇか」
「いえ、一年は一年ですけど、この学校には既に2〜3年は在籍しています」
「は? ……えっと、それはどういう……?」
頭がこんがらがってきた。この学校に来てからというもの、驚くことが多すぎて困る。まだこれでも初日を過ごしただけとは思えないほどに。
「つまり、僕は飛び級してるってことですね♪」
「……飛び級って、あの飛び級?」
「はい。様々な飛び級は存在しますが、今回は学歴の方ですね。それに、ここは中学生も通う学校、一貫性の学校なので、それぐらいはしている人、いっぱいいますよ?」
「いやいや……でも、相当頭賢くないと無理だろ?」
「まあ……確かにそうかもしれませんね。昔から英才教育を受けている人が多いですね、飛び級は」
「……なんていう学校なんだ、ここは」
今更ながら何だが、この学校のシステムやら状態やらを聞くたびにとんでもない学校なんだと認識する。敷地もクッソ広いし、見ているだけでも迷いそうだ。中学はこの校舎と寮の他に存在しており、確かにあるようだ。中学専用の校舎、グラウンド、別館など。
まだ中学は義務教育なので、寮は設置されていないとあるが、高校の方でルームシェアをする形ならば、別に構わないとか。いやいや、それはもう既に義務教育じゃない気がする。
「一人で探索するには、広すぎる学校ですし、色々と面倒事とかあると、まだ学校を登校したこともないのに嫌でしょう?」
「……まあ、確かにな」
昨日のことを思い出すと、身震いした。駅のホームでのあの可憐な美少女に……鎖鎌の業務員のおばさん。あの人は恐かった。本当に人間だったのか?
「というわけで、早く用意してくださいね?」
「え? 今から?」
「当たり前じゃないですか♪ こういうのは、早いのにこしたことはないんですよ」
と、椿は言うと、笑顔で着替えに奥の方へと向かっていった。
「はぁ、何と言うか……」
言葉に出したくはないが、波乱万丈の予感がしてきた。
- Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】第2話更新開始! ( No.12 )
- 日時: 2012/05/27 15:01
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
言われた通り、俺も着替えることになったわけで、今の格好は学校指定のブレザー姿になっている。
淡い青色を基調としたそれは、しっかりと着こなせばなかなか学生っぽく見えるというか、それ以前に紳士に見えそうな気さえもする見栄えだった。
「似合ってますよ♪」
と、椿から声をかけられるも、登校前から着てしまったこのおニューな制服で今から学校探索をするというのだから、少し気が滅入る。
「確かに学校探索も必要かもしれんが、それ以前にまだ俺はここの生徒だと認識されてないだろ。そこらへんはいいのかよ?」
「全然大丈夫です。もしものことがあれば、奏クン自慢の超反射神経で逃げればいいんですから♪」
「簡単に言ってくれるな……」
そんなこんなで、俺と椿は部屋を出た。勿論、椿も制服姿だが……どこからどうみても、男装をした美少女にしか見えないのが不思議だ。メイクとかしてないはずなのに、女っぽさが抜けない。これが美男子たるものなのだろうか。いや、美男子というジャンルにも当てはまってないんじゃね?
「……たまに僕を見て微動だにせず、真顔で見るのはやめてもらいませんか?」
「あ、あぁ……すまん」
「涎垂れてますよ?」
「え、嘘?」
「嘘ですけど」
「……」
——————————
一方その頃、夕姫は
「断じてならん!」
「何でですか!」
目の前に立ちふさがる壁に衝突していた。
巨大なビルの最上階にいる夕姫の祖父たる、桜月 桃ノ助(さくらづき もものすけ)は凄みの利いた表情で夕姫を圧倒していたのだ。
「あの男を……! 断じてならんわ!」
「それは……私の"体質的能力"が半減されるから?」
「それもあるが……他にも理由はある!」
「もしかして……」
黙り込む二人の内、夕姫は祖父の言いたいことが分かっていた。けれど、自分はどうしてもこうでありたい。そしてそれは今から、これからも変わらない己の信念だからだった。
「絶対に負けない! 私は、"桜月 夕姫"だよ!」
「……勝手にしろ! それでどうしようもなくなれば……お前の面倒は見切れん。早速"許婚"の件を進行させてもらうからな!」
「……分かったよ、それでいいよ!」
夕姫は啖呵を切ると、そのまま身を翻してドアの方へと向かって行った。
「おい! まだ話は終わって——」
「もうこれだけでしょ! それに、勝手にしろって言ったのはお祖父ちゃんじゃん!」
そうして、夕姫は勢いよくドアを開けて飛び出して行ったのだった。
その様子を見つめ、桃ノ助はゆっくりとため息を吐いて、頭を抱え込んだ。
「……ならんのだ。この男は、災いしかもたらさん……!」
桃ノ助の前にある巨大な仕事用の机の上には、篠坂 奏の顔写真、プロフィール、家庭状況などが記録されたカルテが置いてあった。
——————————
「……とまあ、こんなもんですね、校舎の説明と言ったら」
「説明だけで、何で30分以上もかかるんだよ……」
「それだけ説明することが多いんですよ♪ 凄く広いので」
椿に歩きながら説明されたが、大分長かった。とはいうのも、この学校の有様というのか。一言でまとめると、結構なお坊ちゃまお嬢様学校だった。それなのにも関わらず、個人の自由性を重んじるこの学校だからこそ、生徒会占拠法は確立されているわけで、これだけ多くの敷地内も誇っているわけである。
更に驚いたのは、芸能人なんかも通っているらしい。個人の自由性とは、勉学と仕事を両立させる芸能人の人にも役立たれているらしい。芸能人、といっても若いアイドルや読者モデルぐらいだと思うが、それでも俺の地元とはえらく違う。
設備も、ここは大学かってぐらいの講義室に兼ね備え、まあ、色々とアホみたいにヤバい。とは言っても、それはあくまでお坊ちゃまお嬢様の方の校舎サイドで、実は凡人的な校舎も実在している。つまり、分けられていると言ったら言い方は悪いが、話のウマが合わないなんてことも満更でもないので、俺みたいな凡人衆はお坊ちゃまやお嬢様レベルのところではなく、平凡な方の校舎を選べと言われているようだった。
「奏クンは、どちらを選ぶか決めましたか?」
「いや、選ぶか決めるって、俺は圧倒的に凡人の方だろう」
「ふふ、そうですか? 何故?」
「……たまにお前は意味の分からない質問をするな。根っからの凡人ともう分かるだろ?」
「いえ、僕と同居しているんですから、それは違うんじゃないですか?」
同居て。言い方、同居て! もっとオブラートな言い方あるだろうに! ……って、男同士なんだから別にいいのか。ぐぅ、いつまで経っても慣れる気がしない……。
「ど、同居……じゃなくてっ、ルームシェアしてるだけでお坊ちゃん、お嬢様の校舎に行くっていう理由はないだろっ」
「あのー……」
「僕がそっちですから、同じ部屋に住んでいる者同士、同じにすべきではないですか?」
「あのー……?」
「いやいや! 意味分からん! どういう理屈だよそりゃ!」
「あのーっ!」
「……え?」
気付けば、俺と椿の丁度中間の辺りに、誰かがいた。その子は、ふんわりとした桃色の髪をして、長い髪なのだが、その中でよく見たらアホ毛が生えており、それに格好はワンピースという……って、どこかで見かけた顔だな……。
「ニャー」
その時、桃色の髪の女の子の手元から猫が一鳴きした。何かこの黒猫、どっかで見たことあるぞ……? ……あ、あ、あぁっ!!
「あの駅のホームの!」
「……? 何ですか?」
「ほら、俺が黒猫助けたんだけど、何か色々変なことになって、鎖鎌を持った駅の従業員のおばさんに追いかけ回された!」
「……あ、あぁっ! あの時の最低な人!」
「違う違う! 誤解だよそれ! その猫がめちゃくちゃ引っかいたから……!」
「ニャー?」
「……てめぇ! こんな時に限って愛くるしい声で鳴くんじゃねぇよ!」
「ほら! やっぱり野蛮な変態!」
「何か酷くなってねぇかな!? それ!」
とりあえず、色々と誤解されているようなので、色々と説明を繰り返していくが、何となしに理解されていないような気がした。
「変態と言ったのは、こちらの人に男装させていたからです」
「男装?」
「はい。こんな可愛い女の子に男装だなんて……どこからそんな知識を!」
知識の入手方法をツッコむのか。いや、そうじゃないだろうというツッコミ返しはさておき、
「こいつは男だよ。俺が言うのもなんだけど、確かめてもないんだけど、男らしい」
「初めまして♪ 七瀬 椿といいます」
「……性別は?」
「男、ですかね、一応、いや多分、ですね」
「「意味深だああああ!!」」
俺と桃色の髪の女の子が二人して叫んだ瞬間だった。
- Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.13 )
- 日時: 2012/05/30 23:09
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
「国枝 涼音(くにえだ すずね)といいます。今日からこの学校にお世話になる者です」
「これはどうもご丁寧に……俺の名前は——」
「あ、別に名乗らなくてもいいです」
「いいのかよっ!! そこは名乗らせて、いや、名乗らせてください!」
「そこまで言うなら……」
「篠坂 奏っていいます。とりあえず、変態ではないです。……学校にお世話になるってことは、寮生になるってことか?」
「まあ、そうですね」
俺達は一旦落ち着くと、とりあえず俺の目の前にいる桃色髪の女の子、すなわち国枝 鈴音が何故俺達に話しかけてきたのかということを確認する為、落ち着いて話しをすることになった。
「二人共、寮生なんですか?」
「一応、まあ……」
「一応というより、そうですね。共に暮らしています」
「同棲!? 学校でなんて卑猥な……!」
「え? いやいやいや! そうじゃないそうじゃない! ここの寮はルームシェア制で、仕方なくだ、仕方なく!」
「ていうより、そもそも僕と奏クンは"男同士ということになっている"ので、問題はないかと」
「だからいちいち意味深な言い方するなぁぁっ!!」
と、まあ要するにこの国枝 鈴音という美少女、俺と同様にパンフレットなどを見ずに学校へと来た感じになっているので、寮の場所というか、部屋が分からないそうな。やっぱりあれだよね、パンフレットとか読まないよね。読むとしても、楽しそうなところしかね、うん。
「それで、俺と椿が通りすがったから、教えてもらおうと?」
「はい、まあ、そうなんですけど……分かりますか?」
「一応寮生だからね。案内——」
「出来るんですか? 奏クン」
椿に言われて、冷や汗をかいた。
その理由、まあ簡単に言えば、案内できるほどまだよく知らない。ていうか、ここどこだっけ? っていう状況だった。丁度俺も案内してもらっていたんだったということを思い返すと同時に、俺もまたこの国枝という少女と何ら立場は変わらないことに気付いたのだった。
「すみません、俺は無理っす」
「ですよね♪ まだ入学したばかりなんですから」
「うぐ……!」
椿から言葉のボディーブローを喰らった。畜生、いいじゃないか。こんな可愛い子、地元の中学でも——いたっけ? いや、いないよなぁ。ていうか、本当に見れば見るほど可愛いなって思えてしまうのがあらやだ不思議。
「なんだ……やっぱり、見た目通りに変態に声をかけたのがまずかったみたいですね……」
「ぐばぁっ! そ、そんなことは——」
「あ、安心してください♪ 僕がちゃんと案内しますから」
「え、椿? ちょ——」
「本当ですか!? 七瀬君なら安心して頼めそうです!」
「待て待て待てぇぇ! 俺の案内はどうなった! そしてこの心の傷をどうしてくれる!」
「……あぁ、そうでしたね。なら、奏クンも勝手について来てください」
「おお! 椿!」
「ただし、変な行動を起こした場合はすぐに終身刑ですので」
「そんなに罪重いの!? ていうか、変態じゃないってぇぇええ!!」
——————————
その頃、仮生徒会室ならぬとある部室の中で、夕姫は一人考え込んでいた。
「はぁ……まさか、あんなにもお祖父ちゃんが反対するとは思わなかったよ……」
ぐったりとした様子で、夕姫は目の前の砂時計を見つめた。砂時計の中に入ってある砂が上から下へと移動していく様子をじっと見張る。耳を澄まさなければ聞こえないような砂の音に耳を傾け、誰もいない無音の部屋の中でいるのはどこからか孤独を感じられた。
そして、その砂時計の奥の方にあるのは、ホワイトボードに書かれた"暴風警報!!"という文字だった。
それがこの、夕姫が生徒会として成り立たせるグループの名前。何故この名前にしたのか。それは一つの古い紙か本に書かれてあったことのような気がする。
なんとなく、自分に合っている気もした。
「まあ、やるしかないよね……」
夕姫は寝そべりながら、砂時計の奥に見える暴風警報の文字をぼんやりと見つめ、呟いた。
「……奏」
丁度、砂時計の砂が全て下に落ちきった所だった。
——————————
さすがに休日の日に校舎を歩き回っているといったら部活動関係の人とか、その他役職の部類で仕事をしている人ぐらいしかいない。椿にさっきまで案内してもらっていたのは、あくまで凡といっては何だが、普通の校舎の方。今から向かうのは——
「あれがお坊ちゃまお嬢様の方の……通称、伯麗と呼ばれる校舎です」
「……待て、椿」
「はい?」
「……"あれ"は何だ?」
「見て分かりませんか? あれはどこからどう見ても——時計塔でしょう」
俺達の目の前にあるそれは、どこぞのヨーロッパかここはと思わせるような時計塔が聳え立っていた。何だここ、本当に日本国ですか、非国民めが。
なんたって規模が凄い。ただ時計塔が聳え立っているだけでもなく、校舎の方もまた嘘だろうと口にしてしまうほどにバカげたものだった。
正直、普通校舎の方と比べ物にならない凄さだった。何だあれは、お花畑か? うふふふーって戯れろといいたいのか、この野郎め!
「鬼のような顔をせずとも、まあ気持ちは分かることは分かります。普通校舎とは大いに違う。それでも、この伯麗と普通校舎である盆栽は同じ学校として二つ共成り立っているわけです」
「……普通校舎の通称、盆栽って言うんだ……」
「凡、からかけまして、盆栽と」
「そんなことだろうと思ったけどさ……」
にしてもバカ凄い。本当にお嬢様とかが通うにふさわしい、みたいな学校じゃないか。俺の隣にいる国枝も口を開けて時計塔を見つめていた。
「……お二人共、こちらの校舎で過ごす……ということで?」
「そんなわけないだろっ!」
「そんなわきゃ、にゃ……! にゃ、な、ない、だろ!」
「……可愛い」
「はい、終身刑」「すみませんすみません」
……と、ひと段落してから、椿が笑顔で人差し指を立てて俺と国枝に向けて言った。
「まあ、お二人共、気にしなくても全然大丈夫ですよ」
「……いや、何がだよ」
「生徒会を目指す者は、伯麗で勉学を学べるという決まりはしっかりとありますので♪」
「何だその決まり! 別にいらねぇよ! 普通でいいわ!」
「ていうか……あの、生徒会云々って、何のお話ですか?」
そういえば、どさくさに紛れて椿の奴、俺達二人のことを指して言ったな。俺は契約的に断れないものだが、国枝は——
「正直な所、勧誘です。共に生徒会を目指してはもらえませんか? 数多くの生徒を見てきた中、僕は貴方には才能があると思いまして……」
「え、えぇっ!? 何を言って……私、何も才能なんて……」
手を左右にぶんぶんと振って、必死に拒否を示す国枝。……なんちゅー美少女なんだ。
「とりあえず、奏君は終身刑確定で」
「人の心を勝手に読むなよっ!!」
「じゃあ、心を読みますね」
「今更遅いわ!!」
俺の返答はスルーして、椿は一呼吸置いてから再び口を開いた。
「国枝さん、貴方は類稀なる能力を持っています」
「能力……?」
能力、と聞いて、俺のような立場にあるのかと思った。この国枝が。
何をするにしても、途中で諦めなければ取り返しのつかないことになる。そんな俺の人生のような、そんな人生をこの国枝も送ってきたのだろうか。
何故か、ふとそんな思いが脳内に走った。
「貴方の能力、言い方は悪いですが……それは"影の薄さ"です」
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