コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 関ヶ原学園の生徒会執行部は今日も元気
- 日時: 2012/10/02 17:23
- 名前: JOKER (ID: qBSksiy.)
これはここでの日常。生徒会執行部での日常。
はじめましてはじめましたです。
今回よりここで執筆活動を始めることとしました。
しかし、能力は低いです。あくまで自己満の塊でやってますゆえ…
世間は暗し。なので明るく燃えるような小説つくりました。
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- Re: 関ヶ原学園の生徒会執行部は今日も元気 ( No.1 )
- 日時: 2012/10/02 17:30
- 名前: JOKER (ID: qBSksiy.)
第1章『始まりの前のお話』
『第一話 出会いは突然に』
鐘は鳴る。時間を刻む僕らの学園の大きな時計は毎回分針が12の位置に来ると大きな音を立てて鳴る。それがこの学園の始まりと終わりをいつも告げているのだ。
朝は8時。鐘が鳴り1日の授業がスタート。そしてそこから午前は5時限の授業を行い12時の鐘が鳴った所で昼休み。学生にとっての昼休みは至福の時、そうそれはまさにユートピア。砂漠のオアシス、天竺、酸素カプセルなのだ。そんなガンダーラもつかの間。午後1時の時を時計が伝えると6、7時限と午後の授業が始まる。そして3時の鐘を時計が告げたところで1日のすべての授業が終了。第2のオアシス、放課後と言う時間がやってくる。この放課後の時間には部活をしたり友達と喋ったりするわけで学校での唯一の楽しみを味わえるのだ。そして6時の鐘が鳴ると生徒はすべて帰宅。明日に備えて食事や睡眠、予習など行い1日にサヨナライオンするわけだ。
しかし、これは一般生の話である。
それはもうホントに普通の一般生の一般生による一般的な1日のスケジュールなのだ。つまり何が言いたいかって言うと。
僕にはオアシス何て存在しないってことだ。
ここ関ヶ原学園はかの有名な天下分け目の関ヶ原の合戦の跡地に建設されたらしい。総生徒数もなかなか多くそれなりの大きな学校なのだ。
時間は3時15分。時間的には放課後の時間帯が始まったばかり。僕はこの学園のとある一室——生徒会室へ向かう。
そうこの僕——真田雄太は何を隠そう生徒会役員なのである。だから一般生とは違って放課後のオアシスなんて存在せず、待っているのは生徒会業務。ユートピアなどではなくただの地獄なのだ。
そんな僕がなぜ生徒会に入ったのかを話そうか
あれは4月。桜が舞散る2年に進級した春のこと。
「お、やってるやってる」
通学路を一緒に歩くノッポな奴。そいつは校門をみてそういった。こいつは僕の友達の直江義之長身でひょろながいやつだ。身長は190あるとかないとか。そんなこいつの隣を歩く僕は身長158と高校2年にしては小さくこいつの隣に立つと親子のようにも見えたりするらしい。最もこいつと親子はごめんだが。
「なにをやってるんだよ」
おれが義之を見上げてそう聞き返す。身長差があるから顔を見るときは嫌でも見上げて喋る形になってしまうのだ。すると義之はビックリしたような顔で俺に行ってきた
「お前知らないのか?生徒会選挙だよ。毎年春の入学式終わってから2週間選挙運動があってそこで選ばれたエリートが学校を背負ってたつんだよ。お前は頭いいけどいろいろ抜けてるからなあ。まあ立候補しても無理だろ」
「もともと立候補するつもりなんてさらさらないよ」
「だろうな。お前連帯責任とか代表とか前でて演説とか嫌いだもんな。生徒会役員に必要なスキル0だな」
そう言って義之は一人で笑い始めた。こいつめ。
僕は内心ムカつきながらもまあ昔からの付き合いということで許してあげた。わあ僕ってなんて優しいのだろう。
校門の近くに来ると選挙活動をしている人の声が耳に入ってきた。といっても一人で立って喋っているだけなのだが。
「私名前は織田麗華と言います。前年度2年副会長を行ってきた私です。この学園の未来を背負って立てるのはわたくし以外考えられません!なので私に——」
聞き流しながら歩いて校門を通り過ぎる。
「おい聞いたか?」
「なにが?」
突然義之が俺に耳打ちをしてきた。こんな大衆の前で恥ずかしいことを堂々とする奴だな。相手が女の子ならまだどきどきしたものを男なんかにやられても全然うれしく無い。
「なにがってあの織田だよ!織田麗華先輩!前年度副会長っつっても会長より権限があって実質去年うらで学校を操ってたって言うあの噂の織田先輩だよ!知らないのか?」
へえーそんなヒトラーみたいな人っているんだね。おお怖い怖い。まあ、確かにさっきの演説聞いてたらいかにもプライド高そうなお嬢様だよな。
「残念だけど僕は学校行事とかあんま関心ないんだよね。そんな噂聞いたこともないし知らなかったよ」
義之は背筋を伸ばし再び普通の姿勢で歩きだした。身長差が恥ずかしい。
前庭を超え玄関へと入る。靴を上履きへと履きかえる。
「だよなあ。お前絶対関心ないと思ったわ。まあいいや。目付らんねえように気をつけろよ!じゃあまた昼休み!」
そいって自分の教室へと走って行った。携帯で時刻を見れば7時43分。HLまであと2分。
「野郎!遅れそうなら言えってんだよ!」
急いで階段を駆け上がり教室へと急ぐ。間に合え。間に合えとなんども心で念じるが時間は無情にも進んでく。
あと一階。駆け上がっていきもうそろそろ自分の教室へと入れる。残り30秒。まにあう。ロスタイムギリギリ逆転勝利だ!
そう確信したのが間違いだった。俗に言う負けフラグは唐突に立った。そうさドーハの悲劇のように。
- Re: 関ヶ原学園の生徒会執行部は今日も元気 ( No.2 )
- 日時: 2012/10/02 17:32
- 名前: JOKER (ID: qBSksiy.)
「え」
思わず声をあげた時はもう遅い。うえから下へ全力で駆け下りてきた子に勢いよくぶつかった。当たり所で相手が女子生徒であるとすぐに分かった。いや、別に悪気はなかったんだ、うん。
で、当たった後はと言いますとまあ、落ちました。ええ階段から。それはもう勢いよくボールが転がるかのように。僕のここまで走った苦労っていったい。
頭を打ち付け意識がもうろうとする。ああきっと気絶するんだろうね。
……おいちょっと待て。気絶だよな。これ死ぬとかじゃないよね。大丈夫だよね?
そんなことを思っていると階段から駆け降りてくる女子生徒。
「大丈夫ですか!?」
いや、この様子で大丈夫だったら僕はスーパーマンになれます。そんな突っ込みは心に秘めて——というか喋れないだけんだけど——いると女子生徒ある一言
「大変!頭から血が流れているわ!」
……死亡フラグとかじゃないよね。うん大丈夫。気を失うだけ。きっと保健室のベットで起きるんだ。そして死神のような先生がいるんだ。そんな狂った思考回路で考えているってことは本格的にやばいのかもしれない。意識が消える前に一言振り絞り僕は言った。
「お怪我はありませんか?おじょうさん」
ああ、セリフチョイスをミスった。狂った思考回路からはじき出されたベストアンサーは相当キザで変態なセリフを出してきた。打った頭が悪いんだ。打った頭が痛いんだ。僕は断じてイタくない。僕の意識はそこで完全に切れた。
これがギャルゲーやライトノベルの類の話だったならきっと起きた時には膝枕されていたのだろう。しかしこれはギャルゲーでもラノベでもない。あるのは現実。所詮膝枕なんて高価な体験はこのさきずっとできないんだろう。
そして気がついたそこにはやはり膝枕でも何でもなくただ保健室の固いベットの上だった。
ああ、とりあえず死んではなかったみたいだ。頬をつねって確認する。うん、しっかり痛い。俺は体を起こすと保健室のいすに座る人影に気付く
「あ、気がつきましたか!」
ベットに乗りあがってくる女子生徒。もとい僕からすれば危うく殺されそうになった相手でもある。
「あ、いえ。まあ」
初対面の人と喋るのは苦手なんです。まして女の人相手だとなおさらなんです。てか何でこの人しかいないんだ。養護教諭はどこに行ったんだ……こんな重症を受けているのにスルーかよ。そうです、保健室で女子生徒と二人きりなんてそうないシチュレーションです。でも僕は残念ながら喋るのが苦手です。さてどうしよう。脳内会議が開始される。
さあここでまずこの子にどんな言葉を僕はかければいいんだろうか。
よくもぶつかったな!死にかけただろ!と怒鳴ってみようか。いや、そんな勇気は持ち合わせていない。危うく怪我するところだったんだゾ!と可愛く振る舞おうか……いや、論外。全然平気だから!安心して。うん。これがスタンダードだよな。
そんな僕の脳内議論のことを知ってか知らずか。僕が口を開こうとしたそれより早く彼女は先制攻撃を放った。
彼女はいきなりベットの上で手をついて謝り始めた。格好的には土下座のような姿勢になっている。
「ホントにごめんなさい!私その……おっちょこちょいであの……急いでてそれであなたが走ってくるのが見えなくて吹っ飛ばして頭から出血なんて……ほんと……ひぐっ……ごめんなさい……」
いや、ちょっと待て!なんで土下座!?え、いや、そこまでされるとは思ってなかった。しかも、泣いてる!?いや、僕が泣かせたのか?ちょっとまて。僕が何をしたって言うんだあああああ。
内心かなりパニクっている。脳内議会も大混乱だ。なんていえばいいのかも忘れました。えっと……でもとりあえず何とかしなきゃ。
手をついて謝る彼女はごめんなさいと連呼しながらベットの上で涙を流しながら謝っている。そしてこの僕のシーツが涙でぬれているのがここから分かる。
ここで先生に入ってでも来られて見ろ。僕は停学どころではなくなるかもしれないぞ。退学も視野に入れた両親との命がけの4者懇談とかもあるかも。
そんなの絶対に嫌だ!とりあえず泣きやませなきゃ……
「お怪我はありませんか?おじょうさん」
どうやら頭は痛く無かったらしいです。イタかったのは僕のようで。
何やってるんだ俺!パニクったからってチョイス考えろ!さっきは頭うったので言い訳にできたけど今度は無理だぞ。完全にイタイ人決定じゃないかああああ。
まさか頭打った時に出たセリフが反射的に出るなんて思ってもみませんでした。僕の脳内会議は不信任決議を叩きつけて今すぐ辞めてもらおう。
普通ならドン引くようなセリフだ実質僕は言い訳に必死になってる。
「いや。あの今のはそのオケガワってのを僕は探してましてそれをあなたに尋ねただけで。確かあなたの名前はオージョーさんでしたよね?オケガワありませんか?オージョーさん。ね?ほらこういったんですよ。ははははは…」
うん、このままベットの端に頭を打ち付けて死のうと思いました。ひどい。これはひどいいいわけだ。僕が絶望に打ちひしがれていると彼女は顔をあげた。目は泣いていたので赤くなっており、鼻水も少し出ている。そんなに泣いてたのかよ。
「え、そうなんですか?オケガワってなんでしょう?私が持ってこられるなら持ってきますよ!」
あれ?この子バカ?
もしかして俺が恥ずかしいこと言ったのに気付いてないのか
「あ、でも私はオージョーなんて変な名前じゃないです。私は浅井。浅井市夜って名前です。で!オケガワってどれのことですか?ゴミ箱ですか?バケツですか?私に罪を早く償わせてくださいよぅ!」
僕は底知れぬ安堵感と緊張感からの解放、そして浅井さんに不覚にも萌えてしまったことにより傷口が再びオープン。目の前が暗転して僕の意識はまた深くへ落ちていくのであった
- Re: 関ヶ原学園の生徒会執行部は今日も元気 ( No.3 )
- 日時: 2012/10/02 18:26
- 名前: JOKER (ID: qBSksiy.)
そのあと僕が目を覚ましたのは午後も午後。すばらしきオアシスの時間放課後だった。時計の針は4時30分を指していた。
「ああ、僕は今日授業を受けずにずっと寝てたのか」
1日を無駄にしたのかそうかそうか。
「はあ、授業のぶん取り返さなきゃ」
「あのー」
高校の授業は1日スル—しただけで分かんなくなるから予習、復習は常にしとかないとね。
「今日の授業は何だっけ……」
「あのー?」
数学、物理……
「あの!」
「うぇっ!」
おっと気付かなかった。ベットのとなりに椅子を持ってきて座っている女子生徒——浅井市夜がいる。この学校の至福の時、放課後を削って僕のところに来ているということはかなり心配してくれてるみたいだ。それはそうとかなりマヌケな声をあげてしまった。それが一番恥ずかしい。
「あー、いやどうも。こんにちは」
「あ、こんにちは」
いろいろありすぎて何を話そうか……
僕が悩んでいると彼女は1人で話し始めた。
「あ、いやあの。ホントにごめんなさい。あの時は私……不注意で……気付かなくて……ホントごめんなさいっ!……ぐすぅっ……ごめんなさい」
「大丈夫です!もう平気です!僕パーマンですから!あのだからホント泣かないでください」
もう泣かせない。いや、もうほんとこれ以上泣かせてたまりますか。多少恥ずかしくても泣かせるよりはましだ。
こう近くで見ると結構可愛い顔してるな。黒くて長い髪にくりっとした目。少女おもわせるようなそのいでたちは一部のファンからは溺愛されそうな感じです。
「あの……私……一言お礼が言いたくて……」
なにか詰まりながらも僕に伝えることがあるそうです。告白ワクワクですね。
「私とぶつかったときにあなたは私に『ケガはないですか?』って言ってくれたじゃないですか。頭打ってるのに私の心配してくれるなんて……」
ああ、きちんと1回目に言ったのは聞かれてたみたいです。
「いや、あれはあの頭を打っててですね」
「もうホントに感激したんです!」
あら人の話を聞こうとしないですね。困るな。これはかなり勘違いされたかもしれない。あ、でも2回目に言ったあれが誤魔化せたから今度も誤魔化したら行けるかも。
「いや、あの。あれも実はオケガワ——」
「でですね!あの手伝ってほしいことがあるんですけど」
これはダメだね。どうしようか。この人ホントに自分の世界にダイブしてしまったみたいだ。僕の話はガン無視ですね。まあとりあえず話を聞きますか。
「あの……私の選挙活動手伝ってほしいんですけど良いですか……?」
浅井さんは真顔で僕にそう言ってきた。つながりが見えない僕はまったくもって状況がつかめない。頭の中は大混乱。もうえらいこっちゃです。
とりあえず僕が喋っていいかを聞いてみよう。
「あのー。喋っていい?」
すると彼女はキョトンとして『当り前だよ。何言ってんのこいつマジバカじゃない?』って顔をした。いやほんとにそんな顔をしたかどうかは置いておいて。
「え、いや別にいいですよ」
そう答えたのだ。この人ってもしかして自分のマシンガントーク具合に気付いてないのか。まあでもマシンガントークの人ってそうらしいね。昔じっちゃんが言ってたよ。じっちゃんあったことないけど。
まず僕は最初の疑問を口にする。
「じゃあまず一つ目の質問。ぶつかって倒れて気絶した後僕はどうなったんだ?」
そう、あの恥ずかしいセリフをいったあと僕の意識は途切れて気づいたら保健室にいた。そこまでの経緯を知りたいのだ。
「ああ。それでしたらまず私が通りかかった先生に養護教諭の山本先生を呼んでくださるように頼んだんです。で、そのあとすぐ山本先生が来てあなたを担いでこの部屋に来たんです。私も心配だったんでついて行ったんです。先生は『授業受けろ』って言ったんですけど私にはどういう経緯であなたが怪我したのとかを説明する義務があると思って残ったんです。で、先生が『包帯まいて寝てれば治る。万事オーケーだ。問題ない』といって保健室から出てってその大体10分くらい後でしょうか?あなたが目覚めて話していたらまた気絶して傷口が開いちゃって。で私先生に呼びに行ったら『包帯を巻いて寝とけば治る。万事オーケーだ。問題ない』っていって包帯貼り替えてまたいなくなって。で結局次に起きるまでに授業は終了しちゃったんです。私怒られちゃいました。てへへへ」
マシンガントークありがとうございました。すごく長く喋ってくれましたね。まあ大体状況はつかめた。なんだよあの養護教諭。やぶ医者め。
うちの学校の養護教諭名前は山本幹太という。もちろん男である。学校の生徒——主に男子だが——は常々『養護教諭が男とか誰得だよ!大体あいつ男子見るの適当じゃねえかああああ』という意見が絶えず出ているらしい。そんなわけでついたあだ名がやぶ医者だ。
「ほう、俺がやぶ医者か。いい度胸してんじゃねえか」
噂をすればなんとやら。いきなり読心術を使い登場した男こそが養護教諭、山本幹太その人だった。白衣の袖をまくって無精ひげを生やしたどう見てもただのおっさんだ。
「誰がおっさんだオラ。せっかく見に来てやったのに職員室もどんぞオイ」
「……あの先生。そう簡単に人の心って読めるんですかねえ?それにもし読めたとしても黙っておいた方がいいですよ。プライバシーの権利の侵害の対象になりかねませんからね」
さっきもいったがこのおっさんところどころ不思議なところがあるのだ。読心術が使えたり、病院に行かなければならないような傷もすべて学校で処置してしまうという。なぜそんなことができるのかと友達が聞いたそうだがその時の答えが
「ん?まあ俺は『神童』だからな。それに一流の医者ともなれば読心術ぐらい使えなくてどうするんだよ」
はい、また読まれましたね。ご丁寧に答えてくださいました。これって思ってる俺だから分かるけどそばにいる人にはただ先生が聞いてもないことをベラベラ喋る変態にしか見えないて言うね。事実さっきから浅井さんは頭の上にハテナを浮かべているようだ。
「まあそうでもいいから早く傷見せてみろ」
そういうと保健室の僕の寝ているベットへずかずかと迫ってきて、そして僕の頭の包帯を取った。
「あの……大丈夫ですよね?」
浅井さんが心配そうな目で見てくれている。こんなに他人のことを心配してくれるなんて絶滅危惧種だと思ってたよ。人間の大半は事なかれ主義だと思うからね。もちろん僕も含めて。
「もちろん俺もそうだぞ。めんどくさいことは嫌いだがこれも仕事だ。傷口は塞がり切っていねえが少し落ち着いたな。完全下校時刻の6時まで寝てろ。6時になったら出てけ。いいな?」
そういうと彼は保健室から出て行ってしまった。嵐のような人だったな。
保健室にはまたも浅井さんと二人。
ここで僕はさっきの質問の続きを引っ張り出すことにした。黙ってたりしたらまたテンパりかねないからな。
「二つ目の質問いい?」
「あ、大丈夫ですけどそのまえにあなたの名前、教えてくれませんか?」
そうだね。相手に名乗らせておいて自分は名乗らないなんて卑怯だもんな。
「真田雄太。2年Dクラス所属」
「真田さんですか。私は2年のAクラスです。お願いしますね」
笑顔でそういう彼女の顔はまさにこの学園の男子生徒を虜にするようなそれはそれはすばらしい笑みだった。でも僕は残念ながらあまり興味はないのだ。心に決めた人がいるので浮気はしない。あ、これ山本いる前で思わなくて良かったー。
「で二つ目の質問ってなんですか?」
おっと忘れてたそれが本題だった。
「さっき君は僕に選挙を手伝ってほしいとか言ってたけど理由をいいかな?」
これが最大の謎です。今日初対面で危うく殺されかけ恥ずかしいセリフを二回も——二回目は勘違いしてくれたみたいだが——言った相手の選挙を手伝う意味が良くつかめないのだ。そんな僕の問いに対して彼女はまた長く果てしなく話すのかと思った。
しかしそれはいい意味で外れることとなった。いや、悪い意味かもしれないけど。
「あの私!……あなたのこと……」
- Re: 関ヶ原学園の生徒会執行部は今日も元気 ( No.4 )
- 日時: 2012/10/02 22:43
- 名前: JOKER (ID: qBSksiy.)
「憧れてるんです!」
彼女はそう言った。
告白とかそういうムードとか全部突っぱねて彼女は僕に、憧れている。と言った。
「えーっと。それはどういう意味で?」
いまいち、と言うかまったく飲み込めてない俺はさらに説明を求める。
「まず、最初も言いましたけどとっても優しいじゃないですか。それに先生にも普通に喋れるじゃないですか。私は喋るの苦手なんです。口下手で。でもあなたにはなんかこう、喋りやすいって言うか。喋りやすい雰囲気を作り出してくれるんですよ!だからあなたにあこがれました!あなたとなら生徒会選挙も受かれるかもって思って。で頼んでみたんです」
うーんと整理するとまずこの子、浅井さんは実は口下手。でも、僕といると不思議と喋れる。でもって俺が優しい。だから一緒に生徒会選挙戦ってくれと。
うん、なかなか難しいですね。人の意思を理解するのって難しい。定期テストが簡単に思えてきます。
「えっと、結論から言っていい?」
僕はとりあえずの収集をつけることにした。
「はい」
「まず君が僕のこと優しいとか、喋りやすいとか褒めてくれたのはうれしいよ。ありがとう。でも僕は選挙のことなんか何も知らないし僕が一緒に戦ったからって受かる訳でもないよ」
「でもいいんです!一緒に——」
「無理」
これは自分でも中々非情な奴だと思った。ここまで心配してくれた相手に突きつける現実。僕の脳内会議では相手への言葉も選べないようだ。
「あ、まあ、ごめん。ようは僕より適任なんかいくらでもいるってことだよ」
事実そうだと思う。これはホントに率直な気持ちだもんなあ。僕なんかがやるとかえって迷惑にしかならなそうだし。
「……分かりました」
浅井さんは1言そう呟く。悲しいけどこれって現実なのよねえ。
これで僕の平凡な1日は守られユートピアに囲まれた日々が続くかに思われた。
しかし、どうしてか神様は僕をそう簡単に楽園へは招待してくれず。むしろ地獄へ突き落す気満々なようで。
「分かりました。あんまり使いたくない手でしたけど脅迫させてもらいますよ?真面目に私の選挙活動やってくれないと今日会った出来事を私が着色して学校に広めます」
神様……ばかやろう。
この女の子は可愛い顔してずいぶん鬼畜なようです。え?冷静じゃないかって?バカを言わないでください。背中の冷や汗が半端ないです。
そう、彼女は間違いなく脅迫と言った。聞き間違えることはなくどうしてこうなったかと聞きたい。
今日会ったことを着色して広めます
僕の脳内会議はまたも熾烈を極め始めた。
そして目に浮かぶのは彼女が今日の出来事に着色したストーリー
この人階段で私にいきなり触ってきたんです!
突き落して頭を打って尚、私にセクハラしようとしたんですよ!
保健室に連れ込まれて私もうどうしたらいいか分からなくって!
あの人最低なんです!
うわああああああああああああああああああああああああああああああ。
だめだ!絶対だめだ!これはダメすぎる!
ただのおとぼけ不思議系マシンガントーク女子かと思ったらなかなか取引上手な人です。ああ女子怖い恐い。
さてどうしたものか。僕が思いつく選択肢は二つ。
一、だが反抗する。どうしてもやらない。めんどくさいからパスする。おそらく変態の異名は僕が欲しいままにするだろう。
二、従って選挙活動を手伝う。めんどくさいしちょっとごまかせばどうにでもなるからこれがベストな気がするな
うん、二番を可決。
「……分かった」
僕がそういうと彼女はぱあっと笑った。その笑顔もさっきの脅迫の後だと霞んで見える。
「話が通じる人でよかったです。じゃあ、明日の朝から6時に学校に来てくださいね!」
「……え?ごめん耳が腐ったみたい。何時に来いって言ったの?」
「いや、6時ですよ?朝の選挙活動は基本です!来るべき選挙当日の2週間後に向けて毎日朝6時に来ましょう!」
前途多難。八方ふさがり。一騎当千。とんだ日にいる夏の虫。どんな言葉で形容したらいいか分からないくらい僕は絶望した。ああ、どう転んでも地獄なんですね。
「遅れたら……まあ、分かりますよね?」
そういった彼女の笑顔を僕は片時も忘れなかった。
主に恐怖の意味で。
こうして僕と彼女の選挙13日戦争が始まるのだった。
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