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- 皐月語〜陰陽少女編〜
- 日時: 2013/07/14 09:31
- 名前: 紅月 輪廻 (ID: pfKTVxMr)
時は平安。
ある暖かな日、陰陽を生業とする十六夜一族に一人の娘が生まれた。
その名は桜華。
彼女の運命は男として十六夜家の跡取りになることだった…!
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- Re: 皐月語〜陰陽少女編〜 ( No.1 )
- 日時: 2013/07/14 09:40
- 名前: 紅月 輪廻 (ID: pfKTVxMr)
− 鋼の運命 −
—とくん、とくん
そんな音を立てて心臓が膨らんだり萎んだりを繰り返している。
全身がじっとりと汗ばみ、着物が肌にぴっとりと張り付いている。
——どこだ…。
遠くから地の底を這うような声が響いた。
体中が総毛だっている。
しとしとと降り出した雨が微妙に熱を帯びた体を濡らしていく。
気持ち悪い……。
正直にそう思った。するとまた
——どこだ……。
と何がそれほど恨めしいのか、どうしたらそんな声が出るのか、この状況でなければそう聞いただろう。
しかし、残念ながら声が出ないのだ。
どんなに口をあけようとも、どんなにどんなに叫んでも、どんなにどんなにどんなに……
声が出ないのだ。
ふと視線を右に向けると目の前に黒い、もやもやとしたおぞましい物が蠢いていた。
これが瘴気というやつか…。
体も動かない。声も出ない。
これはどう考えてもおかしい。
きっとあいつは悪しき物に違いない。
少女がそう思った瞬間だった。
——いた…!
悪しき物は何かを見つけたように目の前を横切った。
その先には…
しょ…彰子様!!
あの悪しき物は彰子様を狙っているのか……!
ようやく絞り出した声で
「しょ…うし…さ…まぁ…!」
と彼女の名を呼ぶ。
彰子は壁にもたれてぐったりとしている。
——選ばれし…子、ふじわらのしょうし……!
悪しき物の手が彰子の首に伸ばされた。
「やめろぉぉぉぉぉぉおお!」
- Re: 皐月語〜陰陽少女編〜 ( No.2 )
- 日時: 2013/07/15 09:22
- 名前: 紅月 輪廻 (ID: pfKTVxMr)
バサァッと。
勢いよく体を起こした少女は、先程のことが夢だということを理解した。
すぅ、と涙が頬を滑り落ちていく。
嗚呼、夢か、夢でよかった。恩がある道長様の一の姫だ。
何かあったらと肝を冷やした。
それにしても…と。あの夢はもしや何かの兆しではないだろうか。
「後で翁に占じてもらうか…」
と静かに呟いていると、
「桜華様、いかがなさいましたか」
と優しく、落ち着きを払った声がどこからか響いてきた。
そちらを向くと、質素な着物を着て佇んでいる一人の少女がいた。
長くのびた金の髪は天女の如く、その澄み渡る青き目はこの国のものではなかった。さらに白い肌が儚さを映し出している。
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