コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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こちら藤沢家四兄妹
日時: 2014/10/27 23:29
名前: 和泉 (ID: l5ljCTqN)

初投稿です。
よろしくお願いします。


☆special thanks☆

ちゅちゅんがちゅんさま

冬の雫さま

紫桜さま

猫又様

はるたさま

八田 きいちさま

夕衣さま

波架さま

また、読んでくださっている皆様。


☆目次☆

日常編 

>>1 >>3 >>5 >>7 >>10 >>11 >>14 >>18 >>19
>>22 >>23

夏祭り編

>>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>34 >>37
>>45 >>47

長男過去編

>>55 >>58 >>61 >>63 >>65 >>68 >>71 >>73
>>77 >>78 >>79 >>84

双子お使い編

>>86 >>89 >>90 >>92 >>93 >>96

次女誘拐編

>>100 >>102 >>103 >>104 >>105 >>107 >>108 >>109
>>111

長女デート編

>>112 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120

長男長女の文化祭編

>>122 >>123 >>124 >>129 >>131 >>132 >>133 >>134
>>135 >>136 >>137 >>140 >>141 >>146 >>147 >>148
>>149 >>150 >>154

佐々木杏奈の独白

>>157 >>158 >>159 >>163

同級生と藤沢家編

>>164 >>165

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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.161 )
日時: 2014/05/11 16:47
名前: 紫桜 (ID: aFzuuCER)

久しぶりに来てみたら、結構更新されていて驚きました。

もう、書かれないのかと・・・・・・。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.162 )
日時: 2014/05/11 21:00
名前: 和泉 (ID: x6z9HA8r)  


紫桜さま

書きます。
とりあえず受験生なんで今書くのは厳しいです。
それに加えて部活の方で全国大会に出ることになったので、練習が激しさを増してます。きついです。
でも完結させずに放置は私も辛いので、時間はかかっても必ず更新します。

また気になったら覗きに来てください。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.163 )
日時: 2014/05/27 23:34
名前: 和泉 (ID: UHIG/SsP)  


それは奇跡のような偶然だった

♯75 「君に再会の誓いの花を 4」

嵐のような出会いは突然訪れた。

中学三年生、冬。
地域でも有数の進学校を受験することになった私は、緊張しながら会場にはいった。

大丈夫、大丈夫。

何度も自分にそう言い聞かせて受験票を握りしめたとき、かたんと小さな音。
なんの音だときょろきょろすると、

「これ、落としたよ」

隣から優しい少年の声がした。
手には私のシャープペンシル。あれを落としたらしい。

あわてて顔をあげて、少年にお礼を言おうとして—————息が止まった。

嘘だと思った。
奇跡だとも思った。
忘れるわけない顔だった。

学ラン姿の男の子。
私の前で優しく笑う彼は、毎日眺めているあの写真の男の子だったのだ。
確か名前は。

「ナツ!!緊張すんだけど、まじで!!」

「知るかよ、お前受験番号離れてんだろ。
隣の教室に帰れよ」

「薄情な!!」

「散れ浩二」

「禁句!!今から受験の人間に散れは禁句!!」

藤沢ナツ君。

梨花の義兄だ。

藤沢くんはにっこりと笑うとお互いに頑張ろうねとシャーペンを私の手に預け、
「いくぞバカ」

隣の男子をはたき倒して去っていった。

ここを受けるのか、ぼんやりと考えだした頭が叫ぶ。

私が受かれば。
彼が受かれば。

梨花との接点ができるかもしれない。

また、会えるかもしれない。

落ちるわけにはいかない!!

私は気合いを入れ直し、彼の拾ってくれたシャーペンを握りしめた。


そして次の春、私と彼はイチコーで再会を果たした。

藤沢夏君は、頭がよく、運動神経も顔も性格もいい、非の打ち所のない人間だった。
強いていうなら不憫。
その真面目さゆえにいらない仕事まで引き受けているようだ。

一年生の時はクラスが違ったから遠巻きに眺めるだけだったけれどいつも彼を目で追いかけていた。
話しかけたい、梨花のことを聞きたい。
そうは思っても勇気が出ずに早一年。
そのうち不安だけが胸をつくようになった。

今さら、あの子を捨てた私が梨花に会いに行く資格なんてあるの?

その不安は藤沢くんに話しかける勇気を根こそぎ奪っていった。

そして二年生になって、まるでシナリオでも用意されていたかのように彼と同じクラスになった。

最初の内は変わらず彼を眺めているだけで、何も言えなかった。

転機が訪れたのは7月のこと。
放課後、忘れ物を取りに教室へ戻った時のことだ。

明日小テストの日本史のノート。
確かにバッグに入れたはずなのに見当たらない。あわてて引き返した。

夕方の5時。
夕暮れに染まる教室は何故かあいていて、不審に思いながら中を覗きこむ。

そこにいたのは。

「佐々木さん、はい。忘れ物」

窓にもたれかかって私のノートを振ってみせる、クラスメートの金井浩二の姿だった。
金井浩二—————藤沢くんの、小学校からの、親友。

「なんであなたが持ってるんですか」

なんだか胸が騒ぐ。
嫌な感じだ。私は厳しい口調で金井に問いかけた。

「ん?俺がこっそり佐々木さんの鞄からノートを抜いておいたから」

「なんでそんなこと」

「佐々木さんと話がしたかったから」

金井はにっと口元をつりあげた。

「佐々木さん、一年の時からずっとナツを見てるよね」

ナツは気づいてないけど、俺は気づいてた。

その言葉にいっそう胸騒ぎが強くなる。

「ナツが好きなの?」

「……違います」

「だろうね。恋する乙女の目じゃないもん」

わかってるなら聞くな。
そうぶつけてやりたいのに、喉元で言葉がつまって出てこない。
この空気、嫌だ。
逃げ出したいのにまるで足が地面にくっついてしまったみたいだ。
そんな私を見て、金井は吐き捨てるように笑った。

「恋なんてかわいいもんじゃないよね。
だって佐々木さん、ナツが羨ましくて羨ましくて仕方ないって顔してる」

喉を握りつぶされたような。
自分の中にある大事なものを一瞬で踏み潰されたような気がした。

そんな私を気にかけることなく金井は続ける。

「ナツの何がそんなに羨ましいの。
みんなの人気者だから?
顔がよくて、頭もよくて、運動神経もよくて。
でも佐々木さんはそんなナツの上っ面が羨ましいんじゃないだろ。

佐々木さんが羨ましいのは」

言わないで。

お願い、どうか、何も言わないで。

「ナツの家族だ」

言わないで。


「君は、ナツの妹、梨花ちゃんの生き別れた姉だ」


その瞬間、私は金井浩二に掴みかかった。

「なんで……私たち、似てないのに」

「声」

「え?」

「君も梨花ちゃんも、特徴のある声をしてる。
似てるというより同じものだと言いきるしかない声。
それから、小さな頃に君が住んでたって友達に話していた町と、梨花ちゃんが住んでいた町は一致する。
気になって興信所に依頼してみれば、案の定姉妹だ」

「言わないで!!藤沢くんには、梨花には言わないで!!」

「どうして?会いたくないの?」

「いまさらどの面下げて会いに行けっていうんですか!!」

会いたい。でも、会いたくない。
自分の中の中途半端な気持ちは日に日に黒さを増していく。

「私は、あの子が幸せでいてくれるならもう、いいの!」

私が叫んだ瞬間。

「その幸せが脅かされそうだといったら?」

金井浩二はふわりと微笑んだ。

「どういうこと……」

「それは俺と手を組むなら教えてあげる」

夕日を背にして差し出された左手。

「あなた、何を知っているの」

「きっと君の知りたいことはなにもかも」

「あなたは何をする気なの」

「藤沢家を守るよ」

「どうして……?」

金井浩二は笑う。
でもその笑顔が私には泣き顔に見えた。



「俺が、ナツの両親を殺したから」



その日、私は藤沢家のすべてを知り、金井浩二の手をとった。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.164 )
日時: 2014/09/14 23:00
名前: 和泉 (ID: uWNX.IKq)  


♯76「なくしものはなんですか」

佐々木さんがあたしのお姉ちゃん。
日下部に手を引かれてあるきながら、あたしはただ痛む頭を押さえていた。

なんで忘れていたんだろう。
なんで、なんで、なんで……。
彼岸花の花言葉をあたしに教えてくれた人。

『——が、梨花を守るよ』

あたしの、唯一の味方。

『杏奈が、梨花を守るよ』

あたしはどうして彼女を忘れてしまったの?
ずきんずきんと頭が痛む。
割れたコップ、閉まるドア、女の子の泣き声、桜、歩道橋、叫んだ女性、空に舞うストール、目を見開いてこっちを見る少年……。
あれ?
あたし、の、住んでいたアパート。
鬼のいたアパートは、東北にあった。今あたしがいるここは関東。

小学生のあたしが、ひとりでどうして遠く離れたこの街にいたの。

あたし、まだ何かを忘れてる。
佐々木杏奈を忘れてしまった原因が、どこかにある。
あたしが忘れてるのは……。

「藤沢さん!!」

気がつけばもう中庭にいた。
あたし、藤沢梨花の肩をつかんで日下部が顔をのぞきこむ。

「おちついて」

心配そうにこちらを見るヒロとアヤ。
泣きそうな顔をした日下部。
その顔を見た瞬間、ふと気がついた。

あたしが忘れてるのは、母親に置き去りにされたあの日から、涼子さんに抱き締められた小四の春までだ。
その五年間の記憶が、すっぽり抜け落ちているのだ。

五年の間にあたしに何があったの。
あたしはどうして……

『消えて、しまいたい』

死のうとしていたの。

「お母さんに、会いたい」

思わずこぼれた一言を、拾ってくれたのは日下部だった。

「お母さん、どこにいるの?」

「病院。でも面会謝絶で……。
ナツ兄が行っちゃだめって」

日下部が大きくため息をつく。
そしてぐっと強くあたしの手を引いた。

「いこう、藤沢さん」

「え!?」

「近くの総合病院だよね。目と鼻の先じゃん。
いくだけいこうよ。会えなかったら諦めたらいい」

「でも」

ナツ兄の哀しそうな顔を思い出す。
今、確実に母さんの身に何かが起きている。わかっているけど。
それでも私は今あの人にすがりたくて泣きつきたくて。

『大丈夫だよ』

あの柔らかい声を聴きたくて。

あたしのなくした五年間を、あの人は知っているような気がした。

「いこ、藤沢さん。たまには我が儘いったっていいんじゃないかな」

日下部が優しくひく手を振り払えるほど、今のあたしは強情にも強くもなれなかった。


イチコーから病院まで徒歩5分ほどで病院の正面玄関についた。
いざ白い建物を目の当たりにすると足がすくむ。
ためらうあたしの背をとんっと日下部が押した。

「いこう。ダメだったら帰ればいいから」

一目見るだけで構わない。
そう何度も胸の内で繰り返して、日下部に押されるままあたしは歩く。
ドアをくぐって、ロビーをすり抜けて。
もしかしたら病室が変わっているかもとカウンターに足を向けたとき、
するりと私たちの隣を車イスに乗った女性がすれちがった。
思わず足を止める。

「藤沢さん」

日下部が背を叩くのを無視してあたしは勢いよく振りかえった。
ふわふわのロングの髪に薄い桃色のカーティガンが角を曲がっていく。
とっさにその背を追った。

「待って……っ」

あの女性とすれちがった瞬間ふわりとお日様の匂いがしたのだ。
1日外に干していた布団のような匂い。
抱きつきたくなるような、包まれていたいような、あたたかな匂い。

——————母さんの匂い。

「母さん!」

車イスの前に立ちふさがる。
女性がびっくりしたような顔であたしを見る。

なんでそんな顔をするの。

「母さん……」

——————やっぱり、母さんじゃないか。

その顔を見た瞬間、安心感で泣いてしまいそうになった。
久々に見た、起きている母さん。
けれどあたしを見上げた母さんはきょとんと首をかしげたままだ。

そして一言。


「あなた、だあれ?」


息が止まるかと思った。

後ろを追いかけてきていた日下部が、ぴたりと足を止める。

「…………え」

「あなたはだあれ?私の知り合い?」

なに、これ。
わけわかんない。
何言ってるの、母さん。
人違い?そんなわけない。

あたしのこと、覚えてないの。

『面会謝絶』

その意味はこういうことだったの。

うろたえるあたしに、母さんは悲し気に顔を歪めた。

「ごめんね、私、なんにも思い出せないの」

あなたはきっと、私の大事な人だったのね。

その言葉に、こらえていた涙がするりとほどけた。

「かあ、さん……っ」

母さんは悲しそうにあたしを見ていた。
心臓をえぐりとられたような痛みが胸を走る。

今、あたしは傷ついているんだな、と、頭の奥で冷静なあたしが笑っていた。


Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.165 )
日時: 2014/10/05 16:28
名前: 和泉 (ID: U.Z/uEo.)  


#77「ほんものはどこにいるんですか」

あなた、だあれ?

藤沢さんは自分の母親の一言に目を見開いて固まった。
記憶がない。あなたのことを覚えていない。ごめんなさい。
その言葉にいやいやをするように首を振った彼女は、淡々と語る女性に背を向け、足早に俺の横を通りすぎようとした。

「藤沢さん……っ!!」

「……ごめん、ひとりにして、ちゃんと家に帰るから」

「でも」

「アヤとヒロはまだなにもわかってないでしょう」

見ると双子はきょとんとした顔で母親を見つめている。
二人は、母親が自分たちを覚えていないと言う事実を理解できていないのだ。

「悪いけど、今のうちに家へ連れて帰ってあげて」

残酷な現実を知る前に、お母さんからこの子達を引き離して。

そう告げて、藤沢さんは外へと駆け出していった。
伸ばした手が空を切る。
俺、なんてことをしたんだろう。
ナツさんが彼女から母親を隔離するなんて、よっぽどの理由がない限りありえないじゃないか。
わかった気になって、すこしでも震える彼女に元気になってほしくて手を引いた。

今、俺は————、日下部音弥は、簡単には消えない傷を藤沢家に刻んだのだ。

慌てて彼女を追おうとしたが、ぐっと握っていた小さな手に引き留められて我に帰る。
手を握るアヤちゃんの視線の先、廊下の向こうに、小さな女性の後ろ姿が消えていこうとしていた。

双子を振り向くこともしないで。

アヤちゃんはじっとその背中を見送って、ぽつりと呟く。

「あれは、だれ?」

アヤちゃんの手を握るヒロくんも、俯いて返す。

「リカ姉に教えなきゃ、あのひとおかーさんじゃないよ」

「……ヒロくん」

「だってアヤたちのことしらなかったよ」

わかってないなんて嘘じゃないか、藤沢さん。
この子達は。
この子達は、もう、全部わかっている。

自分達が母親の中にもう存在しないのだと。

「おかーさんじゃないよ」

「……アヤちゃん」

「おかーさんじゃない、アヤたちを知らないおかーさんなんておかーさんじゃない。にせものだよ」
「アヤちゃん!」

その瞬間、うわぁぁぁあんと大声をあげてアヤちゃんが泣き出した。
慌てて、二人の手を引いてロビーから出る。

病院の近くのベンチになんとか二人を座らせてもまだアヤちゃんは泣き止もうとしなかった。

「おかーさんはどこにいるの」

ヒロくんが俺の腕をぐいぐいと引っ張る。

「ほんものはどこにいるの」

「ほんものは……」

「おれたちは、やっぱりかぞくじゃなかったの……?」

その言葉と同時に俺は二人を思いきり抱き締めた。
本来ならこうしてあげるのは藤沢さんで、ナツさんで、ご両親じゃなくちゃいけない。
けど、みんなそれぞれに戦っているから。
それぞれが抱えるものと必死に戦っているから。

————藤沢家に、また帰ってくるために。

「君たちは、家族だ」

「おとや兄ちゃん」

「何があっても、君たちは藤沢アヤで藤沢ヒロだ。
藤沢家は、簡単に壊れたりしない。
君たちのお母さんはいなくなったりしない。
……だいじょうぶだから」

だから、泣くな。

その一言を告げると、ふたりは必死に俺にしがみついてきた。
いやだ、こわい、おかあさん……、ぐちゃぐちゃな気持ちをぶつけながら、ふたりはいつのまにかねむっていた。

「これは、ナツさんに救援を頼まないと連れて帰れないなぁ」

俺にすがりつく、小さな体を見下ろして苦笑をこぼす。

今、それぞれに戦っているであろう藤沢家の家族。
どうか、彼らに幸せを。
悲しくなるぐらい優しい人達なんだ。
彼らが幸せになれないなら、こんな世界壊れてしまえばいい。

「ハッピーエンドは、どこなんだろうな」

彼らにハッピーエンドを掴んでもらいたい。
けれど俺はただの観客の一人。
この残酷な台本の次のページをめくる権利を持つのは、藤沢家だけだ。

だから、どうか。


彼らにハッピーエンドが訪れますように。


涼しい風の中、祈るように目を閉じた。


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