コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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偽家族コンプレックス
日時: 2013/09/26 08:06
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: cm34dabg)

†登場人物†



御崎 佳音 MISAKI KANON

朝香 陸 ASAKA RIKU

椎名 星夜 SIINA SEIYA

朝香 空 ASAKA SORA

藤宮 堅都 HUZIMIYA KENTO

柏倉 瑠璃 KASIKURA RURI



†プロローグ†



紅一点の少女は幼なじみが一番大切で

双子の片割れは少女の笑顔が大好きで

冷たくても優しい少年は自分を知らなくて

双子の片割れはずっとこの関係が続いて欲しくて

ポジティブ少年は死んだ少女を忘れられなくて

天使になった女の子の面影はいつまでも残っていて


偽の家族の少年少女は何を想って育つのだろう————



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Re: 偽家族コンプレックス ( No.67 )
日時: 2015/01/30 19:27
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: Ar0Lat0c)

【039】


 風がほどよく吹き、もうとうに葉のない木の枝をさわさわと揺らす。透き通るような冷たい藍色の景色が広がり、土を踏むとしゃきしゃきと音が鳴る。霜柱が出来るほど寒い中、わいわいと騒ぐグループがあった。
 色々と騒動があった一年が終わり、迎えた元旦。麦晴中学校からほど近い神社に彼らは集まっていた。

「おー、メールで聞いてたけど実際に見ると凄いねぇ」

 周りに大人だとちらほらいるのは目に入るが、子供では珍しい鮮やかな着物。普段の荒々しいというか騒々しいというか落ち着かない性格である佳音が纏うのを見ると、彩菜から感嘆の声が漏れる。
 その佳音といえば、来る途中で陸に「馬子にも衣装だな」と言われたことですねている。更に、気を付けないと滑ると注意されたにも関わらず、聞こうとしないでずんずんと階段を上っていったら転けそうになった。

「髪もおばあちゃんにやってもらったの?」
「ううん、これは星夜がやってくれた」

 え、と驚く彩菜。高めの位置に結い上げられ綺麗な簪で止められた佳音の髪を見てから、問いかけるような目を星夜に向けるも、目をすっと逸らされてしまった。恥ずかしがっているのか何なのか分からなかったが、大して気にせず話に戻る。
 零時を過ぎると、佳音はクリスマスに玲子からもらった着物を着て、寒いから嫌だという一部を無理やり引っ張って初詣に来た。
 お参りをし、次々に溢れる人の波を避けて端によると佳音が訊ねた。

「とりあえずお参りもしたしー……どうする?」
「僕は甘酒でももらいたいなー」
「そうだな」
「そうしよー!」

 久々に佳音達について出かけることになった空が言う。すると、すぐさま無理やり連れてこられた陸と堅都が賛成の声を上げた。

「さっき入り口のとこで配ってたね」

 彩菜に言われて入り口まで行くと、そこもかなりの賑わいであった。低い気温の中、初詣に来た人々は同じことを考えるらしく、温かい甘酒に寄ってたかってちょっとした騒ぎになっていた。

「混んでるねー」
「み、皆はぐれないようにしてね」

 萎える、と呟く堅都に苦笑いしながら彩菜が周りに声をかけると、そこには既に二人ほど失踪者が出ていた。
 そのことに気づいた星夜も、空と顔を見合わせて静かにため息をついた。

 失踪者二名。言わずもがなの御崎さんと朝香さんであった。
 はぐれたことに気付いているのかいないのか、意思に関係なくずるずると動く人の流れに揉まれていた。佳音は息継ぎをするように度々顔を上げているが、そろそろ苦しそうに眉根を寄せて歩く。慣れない着物で動きも鈍くなってきている。

「あっ」
「佳音……っ」

 でこぼこした道から飛び出している石に躓いたと思ったら、グレーの硬いそれが顔面に急接近する。

「ったく……危ねえ」

 気付いた時には、すかさず手を伸ばした陸の腕にもたれかかっていた。
 一瞬の出来事で少し混乱したが、すぐに裾を払って立ち直る。仮にも中学生になって男子にこの格好で助けてもらったのは恥ずかしかったからだ。

「あ、ありがと」
「気をつけろよ! ホントに危なっかしいやつだな」

(なんか最近陸が優し……)

「佳音はともかく、せっかく衣装だけでも綺麗なのに」

(くなかった……!!)

 さすがに実際に声には出さなかったが、心の中で叫びたくなった。
 なんのやんの言いながらも何とか無事甘酒を手に入れると、二人は隅に寄って鳥居に背中を傾けた。真っ白な湯気がふわふわと上がり、一度だけふぅっと息をかけてからそっと口に含むと甘さが口内にじわっと広がった。

「あったかぁーい。それにあまぁーい。身体中あったまるぅ〜! 人すんごい多かったけど甘酒もらえて良かったね。ナイスアイディアだったよ」
「それは良かったな」

 顔も声もほぐれた、というかほぐれすぎの佳音が言うと、陸もぶっきらぼうに返す。
 と、そこに明るい高い声がかかった。

「朝香君!」
「はい?」

Re: 偽家族コンプレックス ( No.68 )
日時: 2015/02/23 18:59
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: Ar0Lat0c)

【040】



 驚いて振り向くと、そこには終業式のあった日に話しかけてしたナントカさんだった。佳音のように着物というわけではないが、ベージュのダッフルコートからひらひらしたスカートが覗いていて、何とも女子らしく可愛い。
 そのナントカさんは見知らぬ男の子といて、男の子は興味津々に佳音の姿を見ている。どうやら若干年下のようだ。

「あれ?みゆーじゃん」
「わぉ、佳音!」

 陸は、佳音とその女子が親しげに話すのを見てちょっとびっくりしてから、部活が同じだったことを思い出す。というかみゆーっていうのか、とやっと名前が分かった。
 フルネームだと大塚美夕なのだが、人にあんまり興味のない陸はその後三学期になってしばらくしてからやっと名前を覚えたのだった。

「さっきね、椎名君たち見かけたんだけど、B組のあの子もいて、えっと……上杉さん? 佳音仲良いのにいないなぁって思ったんだよ」
「あはは。甘酒もらいにきたらはぐれちゃって」
「この人だもんねー。あ、そうだ! あけましておめでとう」
「おめでとー」

 女子二人が甲斐甲斐しく会話に花を咲かせているので、陸はズボンの後ろポケットから携帯を取り出してLINEを確認した。あの頭の回る星夜や彩菜なら連絡をしてくると思ったのだ。案の定、数件の新着。

空「お二人さんどこいっちゃったのー」
星夜「駐輪場ら辺にいるから早く来い」
堅都「上杉さんが「私達は甘酒もらえたよ」と仰ってます to佳音」

 堅都は最後に甘酒を片手で飲み干す空の写真を送ってきていた。同じ顔なもので自分でも一瞬動揺する。
 どれも数分前に送信されたものだが、この寒い中待たせるのもどうかと思い、佳音達の会話に割り込む。

「星夜達ももらえたっぽくて、駐輪場で待ってるって。そろそろ行かないか」
「りょーかい! あ、みゆーまた新学期ね〜」

 ばいばーい、と後ろを振り向きながら歩いていく佳音の頭を軽く陸が叩く。美夕には聞こえなかったが、佳音はじとっとした目で、陸は薄笑いを浮かべながら話している様子が見えた。

「私達も甘酒もらって帰ろっか」

 そっと言った姉に、隣に並んでいた男の子はこくんと頷いた。

 冬休みが終わり、新学期になってしばらくした。2月の中旬。夕方になってもまだ明るい時間が多くなってきたこの頃である。受験シーズン真っ最中で、風邪が流行っているということもあり、三年生はもちろんのこと、一二年生も休みが多い。
 そんなある日のこと。下校時刻になり、いつも通り部活動の無い生徒はぼちぼち帰路につきはじめた。

「あれ、佳音どっしたのーん」

 明るい調子でけらけらと笑いながら廊下をスキップするように走ってきたのは堅都。一時期は救いようがないくらい暗い雰囲気だったのに、最近は瑠璃の死以前のポジティブな堅都が戻ってきている。年が明けて吹っ切れた部分も少しあるのかもしれない。
 彩菜は生徒会の活動があって今日は遅いため、待たずに帰るつもりだったので、そのまま答えると、堅都も同じく帰るようだったので一緒に帰宅することにした。

「そういえば、さっきどこ行ってたの?」

 帰りの学活が終わってすぐに姿が見えなくなったからどうしたのかと思った、と言う自分より少しだけ背の高い少年を、佳音はそっと瞬きを忘れて見ていた。ひょろひょろした様子でにこにこしているだけだった堅都の姿は、だんだんと消えてきている。
 はっと我に返って返事をした。

「あ、うんとね、退部届け出してきた」
「退部? え、家政部だよね。この時期になんで?!」

 曰く、色々とバタバタしていて部活を何となく遠ざけてしまっていて迷惑もかけたし、三年生に仲のいい生徒もいないので三送会の前にやめることにしたらしい。

「残念がられなかった?」
「そんなに交流なかったし。りっちゃん先輩……二年の先輩一人にはめっちゃ引き止められたけどねー」

 よく佳音や星夜の話に出てくるので、わざわざ二年の先輩と言い直さなくても「りっちゃん先輩」は誰だかすぐに分かった。
 その後もく二人はだらない雑談をしながら歩いた。そして、毎日通る通学路の、家と学校の中間あたりにある公園を過ぎた時、突然堅都が奇妙な声を上げた。

「ふぁっ?!」
「え、なにどうしたの?!」

 思わず佳音もびっくりして大きな声を出すと、堅都がそっと公園の端の方に指を向けた。
 その人差し指の先にいたのは____麦晴中の制服を着た女子生徒と手をつなぎ、仲よさげに話す朝香少年であった。


Re: 偽家族コンプレックス ( No.69 )
日時: 2015/02/27 17:24
名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: aAxL6dTk)

お久しぶりです!あんずです。
今回もとても面白かったです!

……あ、朝香少年!←
果たして陸なのか空なのか…(困惑)

ますます続きが気になりますね。
というか堅都の性格がいい感じに変わってきて…!
明るくなって良かったです。

次回更新も楽しみにしてます。

Re: 偽家族コンプレックス ( No.70 )
日時: 2015/03/05 18:53
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: Ar0Lat0c)


あんず様



お返事遅れてすいません……
コメントありがとうございます!!

朝香少年は最初は名前書いたんですけど、
あえて朝香少年にしてみました←

ご存知かと思いますが、二つほど新しい話を
思案中で、いつもよりさらに更新が遅くなってます(。-_-。)
それでも読んでくれている人がいると信じて
頑張ります……!

Re: 偽家族コンプレックス ( No.71 )
日時: 2015/06/19 23:16
名前: 葉月 ◆S/72wRvvfc (ID: Ar0Lat0c)

お久しぶりです。

ここ数ヶ月、創作というものに手を付けずにおり、
こんなにこの物語を放置してしまいました。

突然な話ですいません。
正直、私にはもうこの話を最後までかける気がしません。
構成、この先の話、書きたいこと……
頭の中には私が作りたい登場人物の人生があります。
でも、未熟な力でスタートしたこの物語を、
私は最後まで書ききることが出来ずに終わると思います。

そこで、もし、もしもの話ですが、
この話の続きを読みたいと思ってくださる方がいれば、
思いついた話をぽんぽんと短編でおくだけですが、
R*STORYで細々と続けようと思います。

新たな自分の力を試すべく、新たな物語に挑戦したいという気持ちもあります。

あんず様をはじめ、偽家族コンプレックスを最初から
支えてくださった、閲覧数にカウントされた数だけの皆様。
すいません。
二年弱、ありがとうございました。

葉月


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