コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- こぼれた星屑の温度 (短編集)
- 日時: 2014/09/15 13:35
- 名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: ikPsPKC4)
花鳴り様よりステキなお題お借りさせて頂きました。
感想、アドバイス等書いて頂けるととても喜びます!
ぜひぜひお願いします(*`u´*)
(12/15 執筆開始)
_______短編集_______
大人なフリと知らないフリ:>>1>>4-6 完結
見つめあう世界の途中:>>7-9 完結
彼女が天使だったころ:>>10>>13-14>>17-19 完結
魔法の言葉も知らないくせに:>>20-21
_______短編集_______
のんびりと更新。
- Re: こぼれた星屑の温度 (たんぺん) ( No.18 )
- 日時: 2014/01/22 23:09
- 名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: 1j9Ea2l5)
- 参照: オチが思いつかん
驚きとも、悲しみとも、怒りともとることができない、妙にはっきりとしない表情がみえる。彼女自身、故意に気持ちを隠しているだけなのかもしれないが。
僕は握られたままの左手にそっと力をこめて、彼女の手を握り返した。今から言おうとする言葉に、彼女が怒ってしまわないか不安で仕方がなかったためだ。
「冗談が通じなくて、遠慮もなくて、すごく無神経だろう? 橘は」
「何それ、喧嘩うってるの?」
案の定、彼女は握っていた手を勢いよく振り解いた。
「ああごめん、怒らせようとしてるんじゃなくて」
「何なの、結論を先に言って。あなたはいつもまわりくどい。だから私が怒るんだよ」
「……そうだね、ごめん」
「それにさっきのあなたの言葉、結構傷ついたんだけど」
「……ごめん」
- Re: こぼれた星屑の温度 (短編集) ( No.19 )
- 日時: 2014/01/28 11:52
- 名前: ぶー子 ◆I3wKSjB7xs (ID: 1j9Ea2l5)
- 参照: やっと完結できたあ
ああ、こうだから、彼女のことが苦手だ。信号のように顔色がコロコロと変わったかと思うと、最後には機嫌を悪くして僕を責めたてる。
「とにかく、まず最初に何が言いたいのかを言って」
彼女の怒りのせいで張り詰めた空気が流れている。無論、怒りの矛先は僕に向けられている訳だから反論すらできない状態だ。
ふう、肩の力を抜こうと深い息を吐いた。
「橘は元々、嫌われやすい。そういう星の下に生まれたんだろうって」
僕の言葉に、彼女はふっと息を漏らした。その息が笑ったためのものなのか、ため息からなのか、確かめる余地は無かった。
「嫌われる運命にあるからこそ、在るがままの姿でいいんじゃないの。良い自分を取り繕って満足したところで意味はないだろう。今の君は、自分の首を自分で絞めてるだけにみえる」
言い終えたところで僕は、小さな後悔の波に呑まれた。また彼女を傷つけてしまったのではないか、と。そんな僕の心配をよそに彼女は一向に口を開かないでいた。
「怒ってる?」
問いかけると、彼女は二秒だけ僕に目を向け、そして逸らした。
「別に怒ってないよ。痛いところをつつかれたから、ちょっと黙ってただけ。言い返す言葉がなかったからね」
泣きながら彼女は言った。驚きのあまり、僕は開いたままの口を閉じることが出来なかった。いや、閉じるということを忘れてしまっていた。あのいつもの気の強い意地っ張りな彼女の姿が、思い出せないくらい昔のことのように思えてしまう。太陽の光のように当然でありふれている僕の日常が変わってしまうような、そんな不思議な感覚に陥った。
彼女をバックに優しい日の光が降りそそいでいる。彼女の姿はひどく美しく、それでいて情けなかった。あの日の天使のように柔らかい笑みを浮かべていた彼女はもういない。彼女の静かな泣き声だけが僕らの辺りをつつむようにして、時間の流れを表していた。
/彼女が天使だったころ
おわり
- Re: こぼれた星屑の温度 (短編集) ( No.20 )
- 日時: 2014/01/31 21:52
- 名前: ぶー子 ◆I3wKSjB7xs (ID: 1j9Ea2l5)
- 参照: ふたりは恋人設定です
私がさむいですか、と聞くと、木邨さんからはちょっとだけ、という言葉が返ってきた。そうは言っても彼の身体は寒さに耐えるようにして丸くなっている。
「ごめんなさい、こんな真冬に海に行きたいだなんて」
「君が行きたいんなら、何処へだって連れてってやるさ」
彼を見れば、そこにはいつもの人の良さそうな笑顔が見えた。この寒さを一ミリも感じさせない、いつもの優しい笑顔である。だがやはり身体は小刻みに震えている。ああ、海は避けるべきだった、と小さな後悔にため息が漏れた。彼の大きな背中に手を添えて、少しでも暖かくなってくれればいいなと、ゆっくり撫でるようにしてさする。
海鳴りの音が遠くで聞こえる。冷たい潮風が頬を劈くが、徐々に、私も木邨さんもそんなもの御構い無しといわんばかりに、お喋りに花を咲かせていった。
「学校はどうだ」
「良い感じですよ。勉強も、サークルも」
「お、じゃあ安心だな。お前は少し人見知りだから心配だったが、良かったよ」
「最近は人見知りも治ってきてるんですよ?」
それは良かった、と木邨さん。だがその瞳には胡散臭いぞという文字を滲ませていた。まあ、人見知りをしないと言ったら嘘にはなってしまうけれど、大学に入ってからは多少ではあるが人見知りの度合いがマシになっている気がする。
「でも、何で海に行きたかったんだ。お前、靴欲しがってただろ? デパートでもよかったのに」
猫のように体を丸めたまま、彼は腑に落ちない様子で私にそう問いかけた。
この様子じゃあ、木邨さんは覚えていないようだ。この場所で彼が私の恋人になったということを。
- Re: こぼれた星屑の温度 (短編集) ( No.21 )
- 日時: 2014/01/28 22:59
- 名前: ぶー子 ◆I3wKSjB7xs (ID: 1j9Ea2l5)
迫りくるようなさざ波をぼんやりと眺めながら、ぽつり、私は木邨さんに言った。
「覚えてないんですか? ここの海でのこと」
木邨さんは頭にハテナを浮かべた。顎の先を片手で摩りながら、なんだったっけ、と考え込んでいる。こうなることは分かっていたけれど、いざとなるとやはり少し頭に来てしまう。
大切な場所を忘れてしまうだなんて。見損なったとまではいかないが、ほんの少し悲しくて寂しい気持ちに染まるようであった。
「ああ、そんなことより」
ふと、考え込むのを止めた彼はその黒いコートの中に手を入れてスーツの胸ポケットを探った。
もしかして、指輪?いや、いくら何でもそれは早すぎる。私はまだ大学生でこの大学生活を満喫しているんだし、彼も結婚だなんて考えているようにはみえない。でも待って、彼は元々掴みどころのない気まぐれな人だわ、今も昔も。だとしたら、今この場所、このタイミングでプロポーズっていうのも在り得るんじゃない?
あれやこれやと思考を巡らせる私をよそに、彼はまだ胸ポケットに手を入れて探っている。どうやらお目当てのものが見つからない様子だ。もしかして、落としたんじゃないの?
「木邨さん?」
「あれ、確かにここに入れたはずなんだが……いや、ちょっと待て。車に置いてきた気がしてきたぞ」
「え、木邨さん?」
「悪い、真綾。車に忘れ物をしたみたいだから、取ってくる」
ここで待ってろ、そう言って彼は着ていたコートを乱雑に脱ぐと、私にそうっとかけた。私が引き止める間もなく、スーツ姿の彼の背中は段々と遠くなっていった。
- Re: こぼれた星屑の温度 (短編集) ( No.22 )
- 日時: 2016/03/26 19:46
- 名前: ぶー子 ◆wpIe3ndyds (ID: /48JlrDe)
- 参照: 久々すぎる更新。書き方も忘れた。笑
一人取り残された私は時間を持て余す他なかった。
目の前に広がる海は、曇り空のせいか蒼さを無くしてしまったようにもみえる。まるでいまの私の心の中を表しているようだ。彼に大切な思い出の場所を忘れてしまわれた、私の心の中のよう。
彼のコートに染みついた香水が海風に乗り私の鼻の奥で広がった。彼が隣にいてくれているような安心感に私は思わず目を瞑って彼のコートのなかで微睡んでいた。
「真ー綾っ」
優しい彼の声が聞こえる。頭の中でこだまのように繰り返す。もう一度私を呼ぶその声にやっと微睡みの中から意識を取り戻した。
ハッとして顔を上げると、目の前には彼の姿があった。嬉しさのあまりか溢れんばかりの笑みを零している。
「ごめんな、寒かっただろう。少しばかり手こずってしまったんだ。待たせて悪かった」
全然いいけど、それよりどうしたの。なんでそんなに笑ってるの。困惑した私は彼に問うが、彼は顔を綻ばせたままで背中に回した手を出そうとしない。
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