コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】
- 日時: 2014/05/31 13:57
- 名前: 杏月 (ID: ieojggCq)
いつも私の話を聞いてくれる『君』が好きだった。
優しくて、笑顔が綺麗で、そんな『君』に想いを寄せていたのに・・・。
いつの間にか、『貴方』を好きになってしまった。
けれど、゛あの時″の出来事が怖くて怖くて・・・、この想いを信じたくない。
『君』の笑顔と、『君』の努力が、誰よりも輝いてた。
そんな『君』に惚れてしまった。
『君』の目線は、僕だけを映してほしい。
誰にも・・負けたくない。
俺は『アイツ』が嫌いだ。
馬鹿で人一倍うるさくて、お人好しで笑顔を絶やさない『アイツ』が嫌いだ。
素直になんかなりたくない。
素直になったら、負ける気がするから。
小さい頃から、私は『貴方』が好きだった。
口が悪いけど、それが『貴方』なりの優しさって事は誰よりも知ってる。
私の気持ちに合わせなくてもいいんだよ?
素直になって。
「私は貴方が好き。だけど、一つの言葉・行動で誰かを傷つけてしまうのなら一人で生きていく」
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- Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.86 )
- 日時: 2014/06/28 16:13
- 名前: 杏月 (ID: ieojggCq)
「へー、付き合う事になったんですか!」
「う、うん。昨日、告白されてね」
美弥乃ちゃんの仕事の手伝いをする為、私は今彼女の家にいる。しかし、そこにいるのは私達二人だけではない。
何故か霜月楓も一緒に働いているのだ。
「なんで、この人がいるの?」
「何だよ、不満か」
はい・・・というと、多分もう目も合わせてくれないだろう。いや、合った事なんか殆どないんだけど。
正直言って、別にいるのはいいんだが、何故お手伝いをしているのかが気になる。昔からこうなのかな。
「楓君は、手先が器用だから手伝ってもらう事が多いんです。絵の具を使う絵が本当に上手なんですよ」
美弥乃ちゃんはまるで、自分の子供の様に嬉しそうに話す。
すると彼女は白い壁に貼ってあるあるポスターを指差す。
「あれが、楓君の作品なんですよ。綺麗ですよね、配色とか。
賞まで貰ってて・・・」
どんだけ楓君の事が好きなんだと思いながら、私はポスターを見てみる。
水彩絵画だった。真ん中には・・・泣いた女の子? 女の子の周りには美しい花だと思いきや、枯れている花もある。
一体彼は、どういう思いでこの絵を描いたのだろうか。何か・・・とても悲しい気持ちが伝わってくる。
「・・・でも、ホントに綺麗」
「別にそんな事ねーよ。最近は殆ど描いてないし」
勿体無いと、私は思った。美弥乃ちゃんも彼も・・・高一でこんな凄い事出来る人なんて、滅多にいないのに。
「私、楓君の絵好きなんだけどな・・・」
「そんな事言われてもよ・・・、描きたくないんだよ」
描きたくない? 一体どういう事なんだろうか。
聞こうとしたところで、美弥乃ちゃんが「あー!」と、ここまマンションだと忘れているぐらいに大声を上げた。
- Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.87 )
- 日時: 2014/06/30 17:51
- 名前: 杏月 (ID: ieojggCq)
何事かと美弥乃ちゃんの方を向くと、手をプルプル震えさせながらインクを持っていた。
手は黒色に染まっている。・・・まさかと思うが。
「・・・零したな」
「だ、だって〜・・・」
私よりも先に楓君が状況を把握し、言葉にした。量が少なかったのか、そこまで汚れてはいない。原稿もギリギリ無事な様だ。
「大丈夫、美弥乃ちゃん?」
「はい。慣れているので」
慣れているって、何回も零しているって事だよね。これが世で言う『ドジっ娘』ってやつか。
楓君もこの場面を見慣れているのか、溜息一つも出てこない様だ。
「俺が拭いとくから、お前は作業続けろ。もう一つぐらいあるだろ」
「うん、確かここに——・・・」
彼女は自分の机の引き出しから、インクを探す。出てくるのはホワイトとホワイトと・・・ホワイト。
「・・・ない」
「は?」
「ない、です・・・」
「馬鹿」
ブラックは無かった様だが、逆に何でホワイトがそんなにもあるのが気になる。修正する場所が多いからかな。
「じゃあ、私買ってくるよ。美弥乃ちゃんはまだ下描き終わってないんでしょ?」
「でも・・・いいんですか?」
「いいの、いいの! これもアシスタントの仕事だし」
そう言うと彼女は甘えて財布から千円を出し、私に差し出した。
「・・・あ、じゃあ。楓君も一緒に行ってきてよ」
「は? 何で?」
言葉の意味が分からず、楓君は何故か固まっている。そのくらい私と出掛けるのが嫌なんだろう。
しかし、私も正直言って彼と出掛けるのは・・・しかも、美弥乃ちゃんの言葉の意味も分かっていない。
「女の子一人で出掛けるのは危険だから。ほら、早く!」
「・・・たっく。分かったよ」
普通に受け入れた。ちょっと意外だった。
しかし美弥乃ちゃんは確か楓君が好きらしいけど、大丈夫なのだろうか。もしかしたら、多分彼女は、私は沙空君と付き合っているから不安はないと考えたんだろう。
- Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.88 )
- 日時: 2014/07/06 16:11
- 名前: 杏月 (ID: ieojggCq)
という事で、私と楓君で出掛ける事になったんだけど・・・。
「・・・・」
「・・・・」
美弥乃ちゃんの家から買い物して、ここまで約十分この状態だ。沈黙は相手が何を考えているのか分からないから嫌いだけど、彼と話す事が全くない。
「・・・か、楓君はいつから美弥乃ちゃん達と知り合いなの?」
「は? あー・・・俺は小学生の頃からだよ」
「え、小学生? 幼稚園じゃないの?」
一般の゛幼馴染″といえば、大体が幼稚園の頃だと聞いた事があるんだけど、楓君は何故小学生の頃からなんだろうか。
「・・・引っ越してきたんだよ。そこからよく絡み合う事が多かったんだ。どうでもいいだろ、そんな事」
彼は私より少し速く足を動かして、先に出る。
すると突然こちらを向いたので、少し驚いて、何だろうと思っていると、
「・・・楓」
「え?」
「楓、でいいよ。君付けなんて、あまり慣れないからな」
「う・・・うん!」
初めて向こうから喋り掛けてきたので、少し嬉しさと親しくなったと感じられて笑顔が出てきた。
- Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.89 )
- 日時: 2014/07/18 15:40
- 名前: 杏月 (ID: ieojggCq)
そんな話をしていたら、いつの間にか美弥乃ちゃん達のマンションの上に立っていた。
「あ、もう着いてた」
「何でだろうな。こんなに近くに感じたの初めてだ」
それってもしかして、私といて楽しかった・・・って事なのだろうか。だって、私も同じ気持ちだから。
そう考えると、何故だろう。少し嬉しいというか、心がこそばゆい気がする。
「何立ち止まってるんだよ。早く行かねぇと原稿進まねぇだろ」
「わ、分かってるよ!」
いつからかな。何か彼の言葉に刺が無くなっている気がする。私の気のせいだろうか。それとも、元々彼はそんなつもりで言ってはいなかったのだろうか。
どちらにせよ、少しは距離が縮まったというか、仲は深まったのだろう。
私は楓の背中について行って、マンションの中に入っていった。
しかし私の背中も誰かが見つめられていた事は・・・私も、誰も知らない。
- Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.90 )
- 日時: 2014/07/23 14:00
- 名前: 杏月 (ID: ieojggCq)
学校にて。
教室は相変わらず騒がしい。美弥乃ちゃんはまだ来ていないらしい。
「おはよう、葉月さん!」
「あ・・・おはよう」
私はこの数日で、ようやくクラスの子と打ち解ける事が出来た。多分、隣に沙空君がいるからだろう。
だって時々、沙空君が好きらしき人が、私に色々質問してきたりするからだ。
(・・・ていうか、自分で打ち解けろよ〜)
自分の情けなさに、悲しくなった。
私は席に着いて沙空君に「おはよう」と挨拶する。
「・・・うん、おはよう」
あれ、元気がない気がするけど・・・、気のせい?
いつもなら、間もなく「おはよう、凛羽ちゃん」って言ってくるけど。それに挨拶はいつもあっちからだ。今日は何か間があったから、言ったけど。
「どうしたの? 元気ないけど・・・」
「うん・・・まぁ、ちょっとね」
他人には打ち解けたくはないのだろう。私はそう考え、詮索はしなかった。
一時限目・・・二時限目と、時間は進んでいくが、一向に彼は笑顔を見せない。
他の友達にも「今日、お前元気なくね?」と聞かれる程だ。珍しいのだろう。
そういえば私、彼女なんだよね? だったら普通、慰めるべきなのではないか?
しかし、こういう時に何を言えばいいのか分からない。男子って何が喜ぶのか・・・。
「さっ、沙空君!」
「・・・ん?」
「あの! 元気ないけど・・その、今日は一緒に帰らない!? ほら、最近夕焼け綺麗だし。それ見ると、元気出るかもよ!」
暫く沈黙が続く・・・。あぁ、やってしまったんだろうなと感じた。
中学生の時みたいに、またやってしまった後に絶望感を感じるんだろうか。
「・・・そうだね。そうしよう」
「・・・え?」
「一緒に帰ろうか」
にこっと微笑んだ沙空君。どうやら、嫌われてはいないらしい。
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