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緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】
日時: 2014/05/31 13:57
名前: 杏月 (ID: ieojggCq)

いつも私の話を聞いてくれる『君』が好きだった。

優しくて、笑顔が綺麗で、そんな『君』に想いを寄せていたのに・・・。

いつの間にか、『貴方』を好きになってしまった。

けれど、゛あの時″の出来事が怖くて怖くて・・・、この想いを信じたくない。







『君』の笑顔と、『君』の努力が、誰よりも輝いてた。

そんな『君』に惚れてしまった。

『君』の目線は、僕だけを映してほしい。

誰にも・・負けたくない。








俺は『アイツ』が嫌いだ。

馬鹿で人一倍うるさくて、お人好しで笑顔を絶やさない『アイツ』が嫌いだ。

素直になんかなりたくない。

素直になったら、負ける気がするから。






小さい頃から、私は『貴方』が好きだった。

口が悪いけど、それが『貴方』なりの優しさって事は誰よりも知ってる。

私の気持ちに合わせなくてもいいんだよ?

素直になって。



「私は貴方が好き。だけど、一つの言葉・行動で誰かを傷つけてしまうのなら一人で生きていく」





【エピロローグ】>>0

【挨拶&登場人物紹介&お客様一覧】>>1



【夢】                    【出会い】
1話>>2                 2話>>3   3話>>6
                    4話>>11   5話>>13
                    6話>>14   7話>>18
                    8話>>22   9話>>25
                    10話>>28  11話>>31


 【第一印象】                【恋愛事情】
12話>>35 13話>>36          14話>>39  15話>>41
                     16話>>48  17話>>49
                     18話>>50  19話>>51
                     20話>>52  21話>>53
                     22話>>60  23話>>61
                     24話>>62  25話>>63


【夢2】                    【返事】
26話>>71                 27話>>73  28話>>74
                     29話>>76  30話>>81

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Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.86 )
日時: 2014/06/28 16:13
名前: 杏月 (ID: ieojggCq)




「へー、付き合う事になったんですか!」
「う、うん。昨日、告白されてね」

 美弥乃ちゃんの仕事の手伝いをする為、私は今彼女の家にいる。しかし、そこにいるのは私達二人だけではない。
 何故か霜月楓も一緒に働いているのだ。

「なんで、この人がいるの?」
「何だよ、不満か」

 はい・・・というと、多分もう目も合わせてくれないだろう。いや、合った事なんか殆どないんだけど。
 正直言って、別にいるのはいいんだが、何故お手伝いをしているのかが気になる。昔からこうなのかな。

「楓君は、手先が器用だから手伝ってもらう事が多いんです。絵の具を使う絵が本当に上手なんですよ」

 美弥乃ちゃんはまるで、自分の子供の様に嬉しそうに話す。
 すると彼女は白い壁に貼ってあるあるポスターを指差す。

「あれが、楓君の作品なんですよ。綺麗ですよね、配色とか。
賞まで貰ってて・・・」

 どんだけ楓君の事が好きなんだと思いながら、私はポスターを見てみる。
 水彩絵画だった。真ん中には・・・泣いた女の子? 女の子の周りには美しい花だと思いきや、枯れている花もある。
 一体彼は、どういう思いでこの絵を描いたのだろうか。何か・・・とても悲しい気持ちが伝わってくる。

「・・・でも、ホントに綺麗」
「別にそんな事ねーよ。最近は殆ど描いてないし」

 勿体無いと、私は思った。美弥乃ちゃんも彼も・・・高一でこんな凄い事出来る人なんて、滅多にいないのに。

「私、楓君の絵好きなんだけどな・・・」
「そんな事言われてもよ・・・、描きたくないんだよ」

 描きたくない? 一体どういう事なんだろうか。
 聞こうとしたところで、美弥乃ちゃんが「あー!」と、ここまマンションだと忘れているぐらいに大声を上げた。

Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.87 )
日時: 2014/06/30 17:51
名前: 杏月 (ID: ieojggCq)

 何事かと美弥乃ちゃんの方を向くと、手をプルプル震えさせながらインクを持っていた。
 手は黒色に染まっている。・・・まさかと思うが。

「・・・零したな」
「だ、だって〜・・・」

 私よりも先に楓君が状況を把握し、言葉にした。量が少なかったのか、そこまで汚れてはいない。原稿もギリギリ無事な様だ。

「大丈夫、美弥乃ちゃん?」
「はい。慣れているので」

 慣れているって、何回も零しているって事だよね。これが世で言う『ドジっ娘』ってやつか。
 楓君もこの場面を見慣れているのか、溜息一つも出てこない様だ。

「俺が拭いとくから、お前は作業続けろ。もう一つぐらいあるだろ」
「うん、確かここに——・・・」

 彼女は自分の机の引き出しから、インクを探す。出てくるのはホワイトとホワイトと・・・ホワイト。

「・・・ない」
「は?」
「ない、です・・・」
「馬鹿」

 ブラックは無かった様だが、逆に何でホワイトがそんなにもあるのが気になる。修正する場所が多いからかな。

「じゃあ、私買ってくるよ。美弥乃ちゃんはまだ下描き終わってないんでしょ?」
「でも・・・いいんですか?」
「いいの、いいの! これもアシスタントの仕事だし」

 そう言うと彼女は甘えて財布から千円を出し、私に差し出した。

「・・・あ、じゃあ。楓君も一緒に行ってきてよ」
「は? 何で?」

 言葉の意味が分からず、楓君は何故か固まっている。そのくらい私と出掛けるのが嫌なんだろう。
 しかし、私も正直言って彼と出掛けるのは・・・しかも、美弥乃ちゃんの言葉の意味も分かっていない。

「女の子一人で出掛けるのは危険だから。ほら、早く!」
「・・・たっく。分かったよ」

 普通に受け入れた。ちょっと意外だった。
 しかし美弥乃ちゃんは確か楓君が好きらしいけど、大丈夫なのだろうか。もしかしたら、多分彼女は、私は沙空君と付き合っているから不安はないと考えたんだろう。

Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.88 )
日時: 2014/07/06 16:11
名前: 杏月 (ID: ieojggCq)



 という事で、私と楓君で出掛ける事になったんだけど・・・。

「・・・・」
「・・・・」

 美弥乃ちゃんの家から買い物して、ここまで約十分この状態だ。沈黙は相手が何を考えているのか分からないから嫌いだけど、彼と話す事が全くない。

「・・・か、楓君はいつから美弥乃ちゃん達と知り合いなの?」
「は? あー・・・俺は小学生の頃からだよ」
「え、小学生? 幼稚園じゃないの?」

 一般の゛幼馴染″といえば、大体が幼稚園の頃だと聞いた事があるんだけど、楓君は何故小学生の頃からなんだろうか。

「・・・引っ越してきたんだよ。そこからよく絡み合う事が多かったんだ。どうでもいいだろ、そんな事」

 彼は私より少し速く足を動かして、先に出る。
 すると突然こちらを向いたので、少し驚いて、何だろうと思っていると、

「・・・楓」
「え?」
「楓、でいいよ。君付けなんて、あまり慣れないからな」
「う・・・うん!」

 初めて向こうから喋り掛けてきたので、少し嬉しさと親しくなったと感じられて笑顔が出てきた。

Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.89 )
日時: 2014/07/18 15:40
名前: 杏月 (ID: ieojggCq)




 そんな話をしていたら、いつの間にか美弥乃ちゃん達のマンションの上に立っていた。

「あ、もう着いてた」
「何でだろうな。こんなに近くに感じたの初めてだ」

 それってもしかして、私といて楽しかった・・・って事なのだろうか。だって、私も同じ気持ちだから。
 そう考えると、何故だろう。少し嬉しいというか、心がこそばゆい気がする。

「何立ち止まってるんだよ。早く行かねぇと原稿進まねぇだろ」
「わ、分かってるよ!」

 いつからかな。何か彼の言葉に刺が無くなっている気がする。私の気のせいだろうか。それとも、元々彼はそんなつもりで言ってはいなかったのだろうか。
 どちらにせよ、少しは距離が縮まったというか、仲は深まったのだろう。


 私は楓の背中について行って、マンションの中に入っていった。
 しかし私の背中も誰かが見つめられていた事は・・・私も、誰も知らない。

Re: 緋色のムジュン恋愛帳【参照1000感謝!】 ( No.90 )
日時: 2014/07/23 14:00
名前: 杏月 (ID: ieojggCq)

 学校にて。
 教室は相変わらず騒がしい。美弥乃ちゃんはまだ来ていないらしい。

「おはよう、葉月さん!」
「あ・・・おはよう」

 私はこの数日で、ようやくクラスの子と打ち解ける事が出来た。多分、隣に沙空君がいるからだろう。
 だって時々、沙空君が好きらしき人が、私に色々質問してきたりするからだ。

(・・・ていうか、自分で打ち解けろよ〜)

 自分の情けなさに、悲しくなった。
 私は席に着いて沙空君に「おはよう」と挨拶する。

「・・・うん、おはよう」

 あれ、元気がない気がするけど・・・、気のせい?
 いつもなら、間もなく「おはよう、凛羽ちゃん」って言ってくるけど。それに挨拶はいつもあっちからだ。今日は何か間があったから、言ったけど。

「どうしたの? 元気ないけど・・・」
「うん・・・まぁ、ちょっとね」

 他人には打ち解けたくはないのだろう。私はそう考え、詮索はしなかった。


 一時限目・・・二時限目と、時間は進んでいくが、一向に彼は笑顔を見せない。
 他の友達にも「今日、お前元気なくね?」と聞かれる程だ。珍しいのだろう。

 そういえば私、彼女なんだよね? だったら普通、慰めるべきなのではないか?
 しかし、こういう時に何を言えばいいのか分からない。男子って何が喜ぶのか・・・。

「さっ、沙空君!」
「・・・ん?」
「あの! 元気ないけど・・その、今日は一緒に帰らない!? ほら、最近夕焼け綺麗だし。それ見ると、元気出るかもよ!」

 暫く沈黙が続く・・・。あぁ、やってしまったんだろうなと感じた。
 中学生の時みたいに、またやってしまった後に絶望感を感じるんだろうか。

「・・・そうだね。そうしよう」
「・・・え?」
「一緒に帰ろうか」

 にこっと微笑んだ沙空君。どうやら、嫌われてはいないらしい。


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