コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 色彩の星を____*
- 日時: 2014/04/10 18:54
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
僕らはこの星を握って、夢幻の世界を夢に見るんだ。
***
初めまして、こちらのサイトには初めて投稿させて頂いてます。
唄華、と申します。
上記の通り、本当に初めてと言う事で、至らない点も多々ある事をまずはお許しください。
今回は大好きなファンタジーを題材に書かせていただきます!
基本ほのぼのしながらも時には戦闘、時にはシリアス、時には感動、時にはその感動さえもぶち壊すアホっぽいもの、というのを考えております。
唄華自身が暗い奴なので、シリアス路線突っ走る場合もありますが、基本のほほんとした雰囲気を目指します。頑張ります。
大体はほのぼのというかゆったりしているものを書こうかな、と思っています。気軽な気持ちで読んでいただけると幸いです(*・∀・*)
唄華自身もゆっくりのろまな野郎ですので、ゆっくりまったり更新していきたいと思います。
そして文才の無いお馬鹿なので許してやってください(;∀; )
それでは、宜しくお願いします!
諸事情により題名変えました。すみません…
リアルの方で学校が始まりましたので、更新率がくり、とさがります。学生は辛いです。
其の辺のご理解、よろしくお願いします。
*目次
世界観・用語 >>01
登場人物 >>02
プロローグ >>03
第一章 【契約】
一話 >>04 二話 >>05 三話 >>06
四話 >>07 五話 >>08 六話 >>09
七話 >>12 八話 >>13
第二章 【恋歌】
九話 >>15 十話 >>16
小さな小話
(ここは本編の間にあった小さな小話です。基本ゆるゆるです。
これを読んでいなくとも本編の内容を理解できるようにできている…はずなので、
暇があったら覗いてやってください(*´∀`*))
八.五話 >>14
----------キリトリセン----------
50閲覧有難うございます!(14.3.31)
- Re: 色彩の星を____* ( No.13 )
- 日時: 2014/03/31 12:00
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
「みんな、頑張るのさ!プロテッジェレ・マジーア!」
親玉が襲いかかったと同時に傘を構え、補助魔法を繰り出す。青色の魔法陣は割れ、武器を構え突撃する二人に紋章が付く。
セイカはそれを実感したのか後ろを振り返りウインクをした。ありがとうの意味なのだろう。
全く戦闘中ぐらいは戦いに集中して欲しいと思う。
呆れため息を吐いたが、後ろからガルル…という獣の唸り声が聞こえた。カトレアは振り返りそれを見やる。
親玉が出現したということが追加されただけで、ウルフの大群は消えるということはない。
むき出しの敵意と刃を光らせ様子見をしている。カトレアは唾を飲んだが、傘を構え魔法陣を展開させた。
彼女はエムリタであり、エムリタは生来魔術が使える。
エムリタが使える基本的に魔術は二つ、東の大陸と西の大陸で別れる。彼女は東の大陸生まれの為東洋術が使える。
東洋術は火、地、闇を具現化する。カトレアは口元に余裕を浮かべ、詠唱を唱えた。
「地の咆哮、唸るのさ!テッラ・ルジートっ!」
魔法陣が割ると同時にウルフたちのいた地面が盛り上がり、地割れを起こした。
割れた地面たちは宙に浮き、ウルフたちに攻撃を加えた。やがてそれが収まった頃、大量のウルフが仰向けになって死んでいた。
しかし、後ろからも唸りが聞こえ振り向いたが、ウルフたちは襲いかかっていた。
今度は何とか傘で防御しようと思ったが、傘に重みは来ず、目の前には従えた死神が鎖鎌を振るっていた。
『大丈夫かい、カトレア』
ドサリ、とウルフが転がった。平気なのさ、と答えると、タナスは戦場にいるにも関わらず穏やかな笑みを浮かべた。
「親玉の方は大丈夫なのさ?」
『まあ平気だよ、思っていたよりもセイカくん強くてね…僕はいらなそうだ』
そういって苦笑いしながら親玉を指差すと、奮戦しているセイカの姿が見られた。
親玉が大きく口を開け引き裂こうとしたが、セイカは右に転がり、態勢を立て直す。
ゆっくり頭を持ち上げセイカを探していたが、もう彼は親玉の懐に潜っていた。
「これでも食らって帰りなっ!」
無茶な体制で両方の剣を振るうと、腹から血が多量に出てきた。腹を捌いたすぐに彼は離脱したため返り血は浴びなかったが、気分の良いものではない。
奇妙な叫びを上げ、親玉は転がった。周りのウルフたちもこれには驚いたようで、動揺を見せる。
が、これほどの傷でもまだ立ち上がれるようで、ゆらゆら立ち上がると鋭い爪でセイカを狙った。
「セイカ、危ないのさっ!」
声を張り上げ叫んだが、先ほどのウルフ討伐に結構な体力を使ったのか反応が遅れ、背中を抉られた。
「…っぁっ…!」
「セイカっっ!」
『こりゃ、僕も助けに行ったほうがいいかもね』
緊迫した雰囲気に合わないのんびりとした口調でタナスは赴いた。鎖鎌をガチャン、と鳴らしながら肩に掛け、親玉と向き合う。
セイカはこちらによろよろと歩き、カトレアの前で足を崩した。
カトレアは軽い手荷物の中から神聖術弾をとりだした。
神聖術弾とは、神聖術…いわば回復術ができるように手軽に持ち運べる薬の一種だ。
丸い爆弾のような形をしており、中には人体を回復できるように封じ込められた魔力がたくさん詰まっている。
これの上部についている栓を抜けば、大量の神聖術魔力が溢れ、人の人体を癒すという仕組みになっている。
因みにこれを開発したのは、感謝すべきか忌むべきか、父が所属していた帝国騎士団だった。
傷は浅かれど、出血の量が意外にも多く、青白くなっていくセイカの顔を見つめ神聖術弾の栓を抜いた。
白い魔力が宙を漂い、セイカの傷をみるみる内に塞いでいった。
だが、そこまでできたものではなくて、出血量までは元には戻せない。例え傷を塞いだからといって、血が元に戻るわけでは無いのだ。
「大丈夫なのさ、セイカ」
「…あぁ、なんとか、な。」
むくりと起き上がれば、彼は親玉の方へと向き返る。まだ、戦うきなのだ。
「ちょっ…まだ安静にしてなくちゃっ…!」
「いや、此処で戦わなくちゃ、強くなれないっ…!」
『…お言葉だけど、そんな状態の君はいらないかな』
唐突に割り込んできた死神の声に驚き、顔をあげる。見ると親玉はまだ立ち上がっていた。
先程よりもボロボロだが、セイカが残した傷より深いものはない。まるで、少し傷をつけて遊んでいたかのよう。
対してタナスは余裕の笑顔を見せ、無傷だった。
あいつ、まだ余裕があるのさ、と思ったカトレアは、すくっと立ち上がり傘を構えた。
黒紫の魔法陣が展開される。降霊術を仕掛けるのだ。
カトレアは大きく息を吸い、声を張り上げ命令した。
「術者の名において命ずる!素早く、その親玉を退けよ!」
その声は森全体を震わせるほど、凛とし、且つ力強かった。
タナスはにっこりと笑みを浮かべ、鎖鎌を下ろした。
『…仰せのままに』
静かに呟き、鎖鎌を持ち上げた。だが、いつもと雰囲気がちがく、鎖が槍状になり宙を舞った。
それに呼応するかのように地面から風が来て、土や石が風に乗って踊る。
黒い炎を纏い始めた鎖鎌を見つめ、二人は唖然としていた。親玉やウルフたちもそれに驚いているのか動かない。
ただ一人、不敵な笑みを浮かべたタナスは高く跳躍した。そして鎖を振るい、親玉を縛った。
鎌を高く持ち上げた。肌にピリピリとした覇気が感じられる。これが、死神…!
『死の粛清を喰らえ、デス・ファルチェ!』
急降下し、親玉に向けて鎌を振り落とす。瞬間耳を劈くような爆発音と爆風が襲った。
思わず腕で両目を塞いだ。爆風が止んだところで薄く目を開けば、いつものように笑っているタナスと、後ろに黒い何かがいた。
『終わったよ、カトレア』
「あ…あぁ、お疲れ…なのさ、」
穏やかな声で言われるので、まだ動揺が隠しきれない声で労りの言葉を投げかけた。
セイカは一連の流れをずっと見ていたようで、驚愕と呆然が入り混じった顔でタナスを見つめていた。
『さあ、邪魔者はいなくなったし、行こうよ?』
ハッとする。そうだ、此処での戦いは足止めだったことを忘れていた。ゆっくりと元の進行方向へ赴く。
だが、座りっぱなしのセイカがそれを止めた。
「待てよ」
「…セイカ?」
「俺も、連れて行ってくれ。…お願いだ。」
彼は目を伏せて呟いた。カトレアはキョトンとし彼を見ていたが、すぐ進行方向へ向き直り足を進めた。
「まっ…!」
「ほら、早くするのさセイカ。置いていっちゃうのさ」
『ほらほらセイカくん、主は気まぐれだからね〜早くしないと追いつけないよ?』
いつの間にか霧は晴れていた。鮮やかな緑色が森を彩っている。
セイカは呆然として二人の背中を見つめたが、くすっ、と笑い二人の後を追いかけた。
広大な世界と、過去を知る旅が始まった。
〜 第一章 契約 end 〜
- Re: 色彩の星を____* ( No.14 )
- 日時: 2014/03/31 12:32
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
八.五話
「そういえば、まず何処に行こうか決まってるのか?」
森の中を歩いている途中、セイカはふとした疑問を投げかけた。
「…港町のコーラルの町に行こうと思ってるのさ」
「…遠くね?」
「でっ、でも遺跡の情報が掴めるかも知れないと思ったから…!」
「遺跡を研究してるやつって殆どいないと思うぜ?もし、コーラルの町から遠いところに遺跡があったら、尚更研究者なんていないだろ」
事々く論破される。うぐぅとカトレアは唸った。
「じゃあセイカには行くあてがあるのな!?自分から吹っかけたんだからあるんだよな!?な!?」
逆にカトレアから問い詰めてみれば、セイカはふと勝ち誇った笑みを浮かべた。
「俺様を誰だと思ってる!俺はチャロアの街に行こうかと考えてたんだ!」
「…チャロアの街?」
「そう!ネリアンの森からそう遠くない場所にある小さな街だ!
海に面していて、魚が美味しい良い場所だ!」
「…!魚が、美味しいのさ?」
「ああ、絶品だぜ…あれは…しかも遺跡らしい洞窟を近くで見たやつもいるらしい。
何でも時々誰かの竪琴が聞こえるらしいいからな」
「魚…、遺跡…
…よし、チャロアへ向かうのさ!セイカどっちの方向へ行のさ?」
魚。遺跡、と単語を耳にしたカトレアは瞳を輝かせ、行く場所を変更した。
まったく、優柔不断である。
「こっちの方向で合ってるはずさ、というかコーラルの町に行く途中で通るはずだからな…」
「よし、じゃあチャロアの街に出発なのさー!」
『おーうっ!…ところでさ、セイカくん』
ずっと黙っていたタナスがいきなり喋りだし、いきなり話題をふったからセイカは驚いた。
「うわっ、…なんだよ」
『君、親御さんは大丈夫だったのかい?勝手に飛び出したりして…』
するとセイカは目を伏せて答えた。
「…俺にはもう両親はいない。代わりに親戚が引き取ってくれた。」
『あっ、何かごめんよ』
「いや良いんだ、慣れてる。で、昨日家帰ったあと親戚に相談したら、頬引っぱたかれた」
「律儀に相談したのさ…偉いな…」
『いや主、そこは引っぱたかれたことに反応しようよ』
「あっそうだったのさ、ごめん」
「良いよもう謝んなよ畜生!!!」
このアホコンビ、略してアホンビはっ!と叫び、話を続けた。
「んで、引っぱたかれた後に言われたよ、絶対生きて帰ってこいってね。優しい親戚だったよ」
そう懐かしむように言ったので、三人は静かになった。
この空気どうにかしてよ、と視線でタナスに向けるが、タナスは知らん顔をした。むかつく。
すると突然、陽の光が強くなった。森を出たのだ。
雲一つない快晴で、太陽がさんさんと降り注いでいた。
「この平地を抜ければ、多分チャロアの街につくぜ」
「そ、そっか…よし、じゃあチャロアの街に出発なのさーっ!」
三人は同時に、平地へ足を踏み入れた。
- Re: 色彩の星を____* ( No.15 )
- 日時: 2014/04/01 11:43
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
「ここがチャロアの街な〜!海が綺麗なのさ〜!」
『だね〜今の世界にはこんなものもあるんだ〜』
広い平地を抜けたら其処は茶レンガの家が立並ぶ住宅街だった。
人々も活発に生き生きとしていて、お隣さんやご近所さん同士のやり取りが強そうにも見えた。
本当は最初、コーラルの町に行こう、と言っていたのだが、途中でセイカがこの街を提案してきたため、この街に来ることになった。
カトレアが思っていた道よりも遠くはなるが、コーラルの町も此処経由で通れるらしい。
それにセイカ曰く、此処の近辺で遺跡らしい洞窟を見た、という証言があった為、小さいながらも最近急成長したというこの街、チャロアにやってきたのだ。
カトレアは青く澄んだ海に目を輝かせ、タナスは町並みをキョロキョロと見回している。
それは良かったのだが、ただ一人セイカは呆れため息を吐いていた。
「ほらほら、セイカもあの海をみるのさ!」
「…喜ぶのは良いんだけどさ、」
「『ん?』」
「…なんで俺たち、魚介レストランに居るんだ?」
そう、今まで見ていたのは、広く開けた窓から見ている景色であり、カトレア達は今、この近辺で有名な魚介レストランにいた。
理由はカトレアの一言だった。
「魚が食べたいのさ」
街に着いた瞬間、そう言い出した。
元々よく食べる食いしん坊だったため、セイカから魚が美味しい、と言われてこの街に来たということもあるのだが、
「腹が減っては遺跡調査もできないのさ」と言い、すたこらレストランに入ってしまったのだ。
金銭的な面で大丈夫なのか、と問いかければ「亡くなった父の財布からいっぱいもってったのさ」と言った。
「おいおい、それってネコババなんじゃ…」とセイカは言いかけたが、カトレアはセイカを思い切り睨んだ。
そしてまたもや大爆笑しているタナス。やはり理由は夫婦みたいだ、と。
早く引っ込めこの死神!と思ったセイカの心情は、未だ誰も察していない。
「お待たせしました、スペシャル海鮮丼です。ごゆっくりどうぞ」
笑顔のウエイトレスが片手じゃ持ち運べないような丼を持ってきた。トレイって便利なんだと感じた瞬間だった。
さて、カトレアの前に持ってこられたスペシャル海鮮丼。これまた凄い威圧感だった。
まぐろ、カニ、いくら、ウニ、エビ、イカ、その他諸々。具材だけで見るとごく普通の海鮮丼だが、問題は量である。
先ほど大きな丼と言ったが、箸でまぐろ等の具材をいくらどけても米が見えない。もしかしたら米さえも無いのかもしれない。確かに海鮮丼だ。
カトレアはゴクリと生唾を飲んだ。箸を両手で掴み、手を合わせた。
「…いただきます」
運命の、瞬間だった。しかし、その時、この神聖な瞬間を邪魔する雑音…もとい声が隣の席から聞こえてきた。
「お待たせしました、スペシャル海鮮丼です。」
カトレアは箸を止め、隣を見た。するとそこには白髪のフィロイドがいた。朱色のヘッドフォンが特徴的で、相手もこちらを見ている。
瞬間、これは悟った。こいつは…ライバルなんだと。
カトレアはもう一度、その相手も同じように顔の前で手を合わせている。
ゴクリ、とその様子を見ていたタナスは一言、呟いた。
『レディ…ファイッ!!!』
二人は同時に、海鮮丼に箸を突き立てた。
「カトレア、お前実は馬鹿だったんだろう?いや馬鹿なんだろ?」
「うぅ〜そんなに馬鹿馬鹿言われたくないのさ〜」
『まあ主も楽しかったみたいだし、良いんじゃないかな?』
勝負は引き分けだった。カトレアは食べ終わった直後、相手を尊敬と敵意の目で見ていた。相手も同様にカトレアを見ていたので、ライバルとして認められた…のかもしれない。
しかし、そんな光景をずっと眺めていたセイカは、本当に馬鹿馬鹿しいと思った。これがカトレアにしかわからないロマン、というやつなのか。
そのあとでカトレアはお腹を下し、トイレに籠っていた。後日のことを考えると相手の方が勝ちだろう。
セイカも呆れ返って、なんでこんな馬鹿な幼馴染がいるんだろうと頭を悩ませた。
対してタナスは、これがフードファイターだね!と一人で盛り上がっていた。
最近の死神は余計な知識をずれて覚えるから、困りものだ。
「じゃあ、本題に戻るけど、遺跡っぽい洞窟って何処にあるのさ」
「とりあえず、さっき周辺の地図貰ったぜ!」
『セイカくん、ナイスだね!』
そう言ってセイカは地図を広げ、二人はその間から覗き込んだ。
ほう、此処は森に囲まれているんだ、と感心しながらタナスが呟くと、突如大きな音が三人の耳を劈いた。
「だーかーらっ!我が治してあげるって言ってるでしょーっ!!」
「居住民の言葉なんか聞けるか!引っ込んでろ小娘!」
「なっ…!酷い言い様!最低!」
何だなんだと人垣でが出来始めた。ちょうどその近くで地図を眺めていた三人は、状況が把握できるところで見れた。
どうやら喧嘩、らしい。ただ治す、とか言っているから、
恐らく叫び出した少女が何か治そうと言っているのだが、男はそれを拒んだということになっているんだと思う。
少女は遠くから見ても背が低く、流れる黒髪を緩く一本に縛って、白色の独特な…そう、民族衣装を来ていた。
金色の瞳が輝いていて、目元に描かれている赤いボディペイントが特徴的だ。
「あーれれ、何か喧嘩やってるねー!僕も混ぜて貰おうかな〜」
そうのんびりとした声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはレストランでいた白髪のフィロイドがいた。
彼はカトレアを見つけると、すぐさま駆け寄り手を振った。
「あっきみ!さっきのレストランの子だよね!ああ、やっぱり近くで見ると可愛いなぁ〜よく食べるし、今度僕と高級レストランでも…」
「…何言ってるのさ、キミ」
『なるほど、これがナンパってやつだね!』
「関心するところ違うぞ、それ」
「そうそう!僕はナンパじゃないよ!ただ可愛い女の子を見かけると声を掛けたくなるんだよ!」
「だからそれがナンパって言うんだよ!!!!!」
「あーもーっ!ごちゃごちゃ煩いわねー!外野っ!!!」
突如としてやってきたフィロイドの青年が騒がしくしたお陰で、静かに見ていた野次馬の中でも目立ってしまったらしい。
黒髪の少女はこちらを指差して、敵意むき出しの表情をした。
そして彼女は、背中の巨大な袋に入れてあった槍を取り出した。四人は直感的にやばい、と感じた。
「待ちなさい!!邪魔者おぉぉぉぉ!!!!!」
「おい、やべーぞ!逃げようぜ!!」
「あっ、あの女の子も可愛い!でもきみも十分…」
「うわっ!いきなり触らないで欲しいのさ!」
『これが高度な…ナンパテクニック…!』
「いいからとりあえず走って逃げろっ!!!」
悲痛なセイカの叫びが聞こえた。
- Re: 色彩の星を____* ( No.16 )
- 日時: 2014/04/03 12:04
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
「…ったく、何なの…お前ら揃いも揃って馬鹿なの…」
「だから馬鹿馬鹿って言わないで欲しいのさ!」
『そうだよ!偉大なる死神様に馬鹿はないでしょ!馬鹿は!』
「じゃあなんて言えばいいんだよアホンビ!」
「何処よ邪魔者!我が直々に成敗するんだから、大人しく出てきなさい!」
「ああもう!言ってるそばから来ちまった、こっちに逃げるぞ!」
「…あの子、怒ってる顔も可愛いね…あの幼さ、僕の胸にキューンとくるよ…」
「ロリコン黙ってろ!!逃げんぞ!!」
どうしてこうなったかというと、偶々近くで起こった喧嘩の真っ最中にカトレアたちが騒がしくして、喧嘩していた一人の少女の逆鱗に触れたということだ。
しかし、逃げているはずの当人たちは、それぞれマイペースでゆったりとしていた。
一人焦っているセイカは、自分が馬鹿みたいじゃないか、と思い始めもした。
追いかけてくる黒髪少女の手には、未だ槍を持っており、この街で殺傷沙汰とか冗談じゃねえ…、と思い逃げていた。
だが、少女も中々しぶとく、一回斬ってやんないと許さない、みたいな形相で探している。怖すぎる。
そこでマイペース軍団のうち一人、銀髪のフィロイドが唐突に言った。
「よし、楽しかったし、僕もう他の女の子のところに行こうかな!」
「…はぁ?」
「じゃーねー!楽しかったよー!!」
そういって隠れていた街角から、黒髪少女の方へ出た。勿論黒髪少女には見つかるのだが、銀髪のフィロイドは笑顔で此方を指差した。
「さっきの騒がしくしてた人たち、あの街角に居るよ!僕はただ、巻き込まれただけ」
「そう、なの…うん、有難う!」
これは、やばい。瞬間に察した。
どんどんと黒髪少女は此方に近づいてくる。セイカはマイペース軍団…銀髪フィロイドがいなくなったからアホンビなのだが…を連れて逃げようとした、
が、あっけなく見つかってしまった。
黒髪少女の顔は、幼く可愛らしい作りをしていたが、カトレアたちを見つけると、その金色の瞳をきりりと釣り上げて、槍を構えた。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!すまん、すまんってば!」
「ごめんじゃ許さないよ!我の見返し作戦を邪魔したやつ、絶対に許さない!」
「おいカトレア!逃げるぞ!」
セイカはそう耳打ちするも、カトレアは呆然とした目で少女を見つめていた。
槍を今にも突き出しそうな態勢を取った少女は、カトレアのその視線に気づくと訝しげな目でカトレアを見た。
「何よ、さっさと我に降参しましたー、みたいな顔してよ」
「…ねえキミ、ハーフ…だよね?」
時間が止まったかのように場が固まった。海から聞こえる波の音だけが鮮明に聞こえた。
ハーフはそこまで珍しいものではない。ヒューマとエムリタ。相容れないというわけでもないし、この世界はそういった種族が混じり合っている。
だが、ハーフというのは見分けがつかない。ヒューマとエムリタの違いなど、魔力の使い方ぐらいで、他にはあまりない。
しかし、ハーフはどちらともの能力を中途半端に継いでしまうもの、そのためあまりいい立場には立てない。
黒髪少女の表情は、驚きを隠せないという顔だった。まあ、普通見分けられないものを、いとも簡単にわかられてしまえば、驚くのも当然だ。
カトレアはゆっくりと少女の目元を指して、静かに言い始めた。
「本で読んだことがあるのさ。体の何処かに印をつけた民族がいるってな。
目元に印をつけているのは成人していない証、そして赤の意味は…混ざりもの。つまりキミはハーフなんじゃないかなって思ったのさ」
西の方…だった気がするのさ、と付け加え静かに指を下ろした。
黒髪少女の顔は、みるみる内に萎んでいき、比例するように瞳が輝いてきた。
そして槍を下ろし、カトレアを指さした。その表情は喜んでいるようにも見える。
「良くわかったね!そう、我は西の大陸に住む民族、アルテラ族の一人!そしてハーフ!
あなた、結構物知りなのねーそんなフリフリ着てるのに…良いわ、許してあげる!」
黒髪少女はにっこりと笑った。
セイカは許す、という言葉に安堵の息を漏らし、カトレアは、フリフリ…、と呟きながら自分の服装を見つめた。
黒髪少女はとりあえず、と言い人差し指を立て、先ほどいた住宅街の方へ身を翻した。
「こんなところで話すのも嫌だから、何処かゆっくり話のできる所へ行きましょ?」
「…えーっと、話って、何?許してくれたんじゃないのか…?」
「はぁ?何言ってるのお馬鹿さん、それじゃない!あなたたち、遺跡を探してるんじゃないの?」
馬鹿…っ!?とセイカは身を持ち上げ、カトレアはうん、と頷くだけだった。タナスはいつの間にかいない。
ちらりとセイカはカトレアの指輪を見た。ブラックオパールが、妙に綺麗な色で存在していたから、多分見つかった時にしまったのだろう。
「遺跡…!そうなのさ!自分たちは遺跡を探しにきたのさ!」
「我のじぃちゃんがらしい洞窟に潜ったんだ、そしたらその洞窟から竪琴が聞こえてね。
でもなんか、途中で帰ってきちゃった。
まあ詳しい話は、近くの店でもしてあげるわ。良い魚介レストランがあるの、付いてきて」
セイカは、もしかしてその魚介レストランって…と目元を引きつらせたが、とりあえず黙ってついていくことにした。
今カトレアを押さえ込んでも、きっと聞かないだろうし。
海の音が穏やかに、そして涼やかに響いた。
- Re: 色彩の星を____* ( No.17 )
- 日時: 2014/04/10 20:14
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
セイカの予想は大当たりだった。つい数時間前に訪れたレストランの前で、一人引きつった顔になる。
女子二人組はキャッキャッと笑いながらレストラン内に入る。いつの間に仲良くなったのか疑問に持ってしまうほど、楽しそうだった。
店員さんは先程とは別の人で、どうやら朝、昼、夜と人が変わる方式らしい。
もし先程入った時と同じ店員だったら、またこいつらか、という目で見られていた気がしていたので、安堵感は更に増す。
適当に席に座り、「さっき食べ損ねたやつ食べるのさ!」と張り切り、五個ぐらいの商品を注文した。
その細い体に、どんだけ入るのか、という突っ込みはしてはいけない。禁句なのだ。
ドリンクバーで黒髪少女がオレンジジュース、セイカがコーラを持って席に着いたとき、黒髪少女は静かに口を開いた。
「えっと、早速本題に入るんだけど…あっそうそう、我は睡蓮って言うの。」
「俺はセイカ・クロートー。で、こっちがカトレア。」
「ぐぉぐぼぉう゛ぇばぁ」
「食べるか喋るかどっちかにしろ」
「…ぷへっ、僕はカトレア・ヴェン・オーディン。宜しくなのさ。」
そういって右手を差し出すが、睡蓮は何の表情変化も見せず、話を続けた。
「…で、その洞窟なんだけどね。普通じゃ見つけられないの」
「…普通じゃ?」
「うん、夜の何かのタイミングに現れるの。で、現れるとこの街に微かだけど、竪琴の音が聞こえるの」
「竪琴なのさ?」
「そう。で、じぃちゃんは昔、竪琴の音がする夜に、探検してくるって言って行っちゃったの」
そこで話を切ると、ずずーっとオレンジジュースを飲み干した。
「おかわりするのか」とセイカが尋ねれば、「女の子になんてこと聞くの!?」と怒鳴った。
「…それでじぃちゃんは、竪琴の音が鮮明に聞こえる洞窟を偶然に見つけて、中に入ったんだって。
その中には、血っぽい何かが壁にこびり付いてたんだって。しかもその血っぽいの、誰かの名前っぽいのをずっと書いていたの。
気色悪いなあ、と思いながらじぃちゃんは進んでいったんだ。そしたら急に竪琴の音が止んじゃって。」
「音がやんだのさ?」
「うん、そしたら声が聞こえたんだ。確か…『僕の妻』だとか『返して』だとか。凄い怖い声だったんだって。」
「…妻?幽霊にも妻なんかいたのか?」
「そんなの、我が知るわけないじゃん。それでじぃちゃん、怖くて怖くて家に帰ってきちゃった。
へっぴり腰だなぁって家族で笑ってたけどね」
睡蓮は話し終えるとへらりと笑った。幼さの残る顔立ちをしているため、大きい幼稚園児を見ているように錯覚した。
この話を終えた頃、カトレアは手を顎に当て唸った。セイカは、ふーんと興味無さそうに言った。
睡蓮が「話すの疲れたんだけど」と言い、席を立ち上がりドリンクバーへと向かった。
案内された席はドリンクバーから結構離れており、それに広いレストランだったため、二人きりの時間は多少なりともあった。
「…なぁカトレア、これって…」
「うん、多分遺跡で間違いないのさ。あとでタナスにも聞いてみるのさ。ただ…」
「ただ?」
「夜の何かのタイミングって言うのが引っかかるのさ…何かのタイミングってことは、不定期じゃないと思うのさ。
その夜にあって、他の夜には無いもの…きっとそれが重要なのさ」
「はぁ〜よく話されてる間に考えられたな」
「頭を使わないセイカとは違うのさ!」
「…何で自慢げに言うんだ?なぁおいカトレアさんよ?」
「楽しそうだね…二人共…」
ドリンクバーから帰ってきた睡蓮が、呆れた視線を送りながらも席に着いた。
本人たちは全く以て楽しくないのだが、と不満そうに口を尖らす二人。そんな二人を見て、くすり、と睡蓮は笑いだした。
睡蓮が異常な速度で持ってきた飲み物…ジンジャーエールを飲み干すと、不意に窓ガラス越しの空を見つめた。
「今日は晴天だね、風も穏やかだったし雲もなくて…絶好の漁日和だったのか…」
ぽつりと呟いた。二人も釣られて空を見ると、其処にはちらちら光る星が広がっていた。
星で埋め尽くされているという程では無かったけれど、王都に住んでいたカトレアには珍しかった。王都では、星が全くというほど見えない。
ちょっと離れるだけでこんなに見えるんだなあ、と感心していた。
「だな、月に雲が掛かってないし…まあ掛かっていたら掛かってたで風情なんだけどな」
一緒に眺めていたセイカが言った。月の形は真ん丸に見えて満月かと思ったが、よく観察してみると少し欠けていた。楕円形。
ちょっと残念と思いながらも、この世界の中央にある島々の一つに、欠けた月の方が素敵だと言い張る所もあったなあ、と思い出す。
別にカトレアはどっちでもいいが、やはり月なんだから完璧な丸になって欲しいところはある。
「じゃあ帰ろっか。我のこと見抜けられた奴はオーディンが初めてだったよ!」
「こちらこそなのさ。本で読んだ民族に会えると思わなかったのさ」
会計を済ませ、外へ出た一行。因みに金を支払ったのはセイカだった。
何故だか睡蓮に「男なんだから支払いなさいよ!」と言われ、泣く泣くお財布からお金を取り出した。
お金が飛んでいく幻を見るくらいのトンデモ金額だった。勿論原因はカトレアだった。
トホホな表情を浮かべているセイカを置いて、珍しく気のあった女の子二人は別れを惜しんでいた。
じゃあね、と二人の声が重なり、遠くなっていく背中を見続けていたら、指輪のブラックオパールが光りタナスが出てきた。
「タナス、」
『…大丈夫。今までの話は聞いていたよ』
「じゃあ話は早いな。睡蓮の話していた洞窟は遺跡か?」
『うん、あれは僕の仲間が眠っている神殿…詩吟の遺跡だよ』
「…詩吟の遺跡?」
聞いたことの無い単語に首をひねる。
タナスの話だと、この世界には七つの遺跡があるらしい。
元々それは前の世界で呼ばれていた地名だったらしいのだが、この世界に誘われた際に、この世界のエムリタが独自に解読して今の名になったらしい。
だから本来の名前とはちょっと違うらしいが、まあ前の世界の言葉は異様に難しく、慣れるのにも時間が掛かるということで現代訳のを言わさせて貰っているそうだ。
しかし、カトレアがどんなに強く迫っても、七つの遺跡の名は教えてくれなかった。
唯一教えてくれたのは、今回の詩吟の遺跡。そしてタナス自身が眠っていた、生と死の遺跡のみだった。
「ねえじゃあタナス、詩吟の遺跡っていつに現れるのさ?」
『それは、…自分で考えて欲しいなあ』
「ケチだな、神様の癖に」
「本当なのさ!主の命令でも従わないのな!」
『いやぁっはは…困ったなぁ…』
そうタナスは言うが、その表情は穏やかな笑みだった。
ご機嫌斜めな子供二人を連れて歩く彼の姿は、到底死神のように思えなかった。
この掲示板は過去ログ化されています。