コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- リンゴと毒
- 日時: 2014/05/23 21:53
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
START…2014・05・09
気軽に立ち読みしてください/ 登場人物の記載はのちほど/
内容はまだちゃんとまとめていません。すいません。
just a minutes...
*登場人物紹介*
寿和ソウ(すわ・−)
平和と時間を貴重とするというかこよなく愛する高校1年生。ずばりツッコミ担当。
赤井凛狐(あかい・りんこ)
毒リンゴを作る謎の少女。年齢不詳。感情表現をあまりしない。
坂屋純一郎(さかや・じゅんいちろう)
小夜子に本気になる、根はやさしい男。
小松恭平(こまつ・きょうへい)
だいたい落ち着いているソウの友人。
藤島篠花(ふじしま・しのか)
家庭事情で学校にはほぼ行かないで働くソウの幼馴染。ヤキモチやき。
里中小夜子(さとなか・さよこ)
昼ドラ大好き国語教師。白雪姫になぜか重点を置く。
- Re: リンゴと毒 ( No.33 )
- 日時: 2014/06/19 19:30
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード33
いや、違う。自分が関わるからいけないのだ。自分が関わるから。
初めて出会った日、あの時からもう気が緩んでいたのだ。
そして名前を教えた日、あの時からもう自分から関わっていた。
最初から自分が関わるから、自分の行動に邪魔なものを作ってしまうんだ。
凛弧は自分が言った事を思い返して、顔を引きつらせる。
「関わらないでください、というのは少しおかしかったですね」
目線を下げて、カップを丁寧にさすりながらそう口にした。
ソウは何のことだかよく分かっておらず、ただ「あー…」と半信半疑に声を出す。
「でもさ」
話をもう一度切り出したのはソウだった。
凛弧はソウの発言する言葉が分かっているのか、カップを触りながら顔を下げたままである。
「自分が嫌だと思う事、嫌だって分かってんならやらないほうがいい」
「だから嫌とは言って…」
「俺はそう聞こえた」
凛弧の言葉を最後まで聞かず、その言葉を念頭に置く。
眉間にしわを寄せる凛弧。
「それにこういう形だけど、俺にそのこと話したのはやっぱアンタも不安で自分ひとりで抱え込むのがイヤだったんだと思うよ。あ、言っとくけど、俺はそう思った。アンタは違うんだろうけど」
言いながら、いつの間にやら頼んでいたコーヒーをすする。
凛弧はカップから手を離して、首筋を触りながら物思いに考えている。
「違う、と思います…。でもわかりません」
珍しく自分の気持ちに素直になった凛狐に、ソウは飲んでいたコーヒーが器官に詰まってブフッと吹き出す。
「あ!認めたな」
ニカッと勝ち誇ったようなすがすがしい笑顔。
ソウの無邪気さに、凛弧は「子供だな」と心の中でつぶやいた。
「別に認めたわけじゃ…」
気に食わなさそうに言いながら、カップを口元へ運ぶ。
でもその表情が少し、今どきの女の子のようにも思えた。
飲もうとした寸前、凛狐は中身がないことに気づいた。
「ない」
「プッ、飲み干したの覚えとけよ」
凛弧はふんとした顔で言葉を流した。
そして不意に、
「おいしいですね、ここの」
やわらかな微笑みを浮かべた。
少し間があってから、ソウはうなずいた。
「いま、笑ったしょ」
「え」
「本日二回目〜」
指を二本立てながら、勝ち誇った笑顔が再来する。
その笑顔の裏には、素直な凛狐の姿が自分にむき出されていることに対する嬉しさがあったのかもしれない。
凛弧の態度は着実に変わってきていた。
以前に比べて、表情を出すようになった。間違いなく。
それは誰でもないソウと関わったせいか、定かではなくとも、今のソウは少なからず不思議と得をした気分だった。
「たぶんまた遭うと思いますよ」
言ったのは凛弧だった。
「俺もそんな気ィするわー」
遭遇率の高さは二人とも分かっていた。
- Re: リンゴと毒 ( No.34 )
- 日時: 2014/06/28 13:18
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード34
その日、藤島篠花は珍しく学校に登校してきた。
もう高校が始まって何か月もたつというのに未だに彼女が制服を着る姿だけは違和感を持つ。
篠花はイヤホンをして音楽プレーヤーを片手に、お気に入りの恋愛ソングを聞いていた。
徐々にステップをふんで、久しぶりの学校に不安だった気持ちが少しずつ和らいできた。
(大丈夫だ。アタシは強い。それに、教室にはソウがいるんだもん)
大切な人がそこにいてくれる心強さ。
篠花は大きな期待を胸に教室に入る。
ガラガラガラ
生徒たちが一斉に扉のほうを見た。
(あ)
タイミングが悪すぎた。授業なうだった。
「んん?」
いかにもベテラン教師というハゲ頭のメガネの先生が眉をひそめる。
あまりにも欠席日数が長すぎて、彼女がこのクラスの生徒だということを完全に忘れているようだ。
「君はだれだね」
「藤島です」
「藤島ぁ?」
嘘だろう、という顔で疑わしく見てくる。
篠花は何だか恥ずかしくなった。
周りの視線が突き刺さる。
生徒たちの顔も、なんだか怪訝そうである。無理もない、ここの大半が篠花のことを覚えているはずがない。
入学式とあわせて4月に3回しか登校していない生徒なのだから。
先生がパラパラと名簿をめくる。
「んん?名前がないぞ」
「えぇぇ!」
(そんなわけないし…!あ、いやでも……あたしの存在自体わすれられてる可能性も)
恥ずかしい反面、悲しかった。———————来るんじゃなかった。
いっそのこと辞めておけばよかったのだ、学校なんて。こんなことになるなんて分かっていたはずなのに。
もういいやと思いながら、篠花の足が一歩下がったときだった。
「4月のページになら名前載ってますよ」
「……!」
その声を聞いた途端、篠花の体の中がポウッと熱くなった。
(ソウ・・・!)
先生に教えたのは、寿和ソウだった。
「お、本当だ。藤島ー篠花さん、だね」
先生も納得の様子だった。
ソウは篠花に向けてニカッと笑ってみせる。
彼女の心は愛おしさに包まれる。
———ソウが同じ学校で、同じクラスでよかった———……ソウがいてくれるだけで頑張れそうだよ
休み時間に入ると、席を立ちあがりソウのもとへ行こうとした。
お礼を言いに——…ありがとうって…。
そうしようとした瞬間、ぞわっと篠花の周りに生徒が群がった。
「噂の藤島篠花ちゃんだ!めっちゃかわぃぃーー」
「何でいままで来なかったのー?」
まるでよくある転校生の質問タイムだ。
「ぇと、——アタシー」
(早くソウのとこに行かせてよ…もうっ)
生徒の集団の隙間から、遠くの席で坂屋たちと笑いあうソウの顔が見えた。
「メアド教えてよ。あ、ていうかLINEしてるならクラスのグループ招待するよー」
「藤島さん、入学式のとき声かけたの覚えてる?」
(あーしつこい。何なのこいつらうぜー)
- Re: リンゴと毒 ( No.35 )
- 日時: 2014/07/06 09:28
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード35
衝動は一つの場所で大きく広がり、しだいにそれが波紋をよぶ。
記憶のカケラはまっさらな砂となって散らばっていく。
何度も書き換え、都合のいいように塗り替えるんだ。
自分で自分を創るのはとても簡単なことだとどうして誰も思わない。
「あれ、お嬢ちゃん」
つい最近、凛狐に毒リンゴの依頼をしてきたホスト業を営む菅家聡平(すがやそうへい)24歳。
彼の働くクラブ『シャロン』の裏口で、凛狐は菅家を見つけた。
「どないしたん」
菅家は口にくわえていたタバコを抜くと、白い煙を吐きながらそう聞いた。
凛弧はいつもと変わらぬ顔だったが、今日はどこか真面目だった。
「依頼していた件ですが—————」
————————
———…
「もうすぐ夏休みだね」
昼休み、篠花はソウの前の席に座ってにこにこしながら語り始める。
昼休みという貴重な時間を有効に使うべくソウは弁当を食べながら片手にケータイ、机の上には漫画を広げていた。
「出席日数1ケタ台のくせにもうすぐ夏休みだねはヘンだろ」
「関係ないでしょー、でもね夏休みの仕事ちょっと給料いいんだぁ」
両手を絡ませ、ふふんと嬉しそうに言う。
「どこか行こうよソウ。夏祭りもあるしフェスとかさ」
「んー」
「ちょっと適当に応じないでくれる」
「はいはいはーい!! 俺もフェスいくーーーっ」
ちょうど購買から戻ってきた坂屋がそそくさと話の入りこむ。
篠花はあからさまに嫌そうにする。
「坂屋くんはだめ。ソウとふたりでいくもん」
「おひょーっ! こりゃあちーあちー。とうとうお二人もー」
「うるせ坂屋」
「またまたー、別にまんざらでもないんじゃないのー?ソウ君よー」
「え!やっぱりそうなの?!」
(やっぱりってなんだよ、やっぱりって……)
坂屋の言葉が変に篠花を誤解させている。
「それより小松は?」
「ん?あれいねーなー。便所にでもいってんじゃねーの」
「だな」
なんて話していると本人が戻ってくる。
「へっくしゅ」
同時に小松がくしゃみをした。
「何か俺のこと話してた?」
「いえーす。やっぱ噂してるとなんとかってホントだなー」
坂屋がのんびり言うと、いつものメンツが席を囲んだ。
「藤島さん制服よく似合ってるねーかーわいー」
「坂屋くんの言い方なんか気持ち悪い」
「え?!えーショック…」
坂屋純一郎、うつむく。
「てゆうか、何で藤島さん登校してきたの?」
小松の問いに篠花は黙る。
「……なんとなく」
「ふーん」
小松はズコッとジュースを吸った。
「なーなーなー、ソウ!凛狐様の家いついくー?」
なんの躊躇もなしに篠花がいる前で凛狐の話を持ち出した。
顔色を変えるのは小松ただひとり………。
「坂屋…」
小松は坂屋の足をドスッと踏んづける。
「いでっ…!」
「いーえー?家ってなんの話よ」
怖い顔をしてソウに詰め寄る篠花だった。
- Re: リンゴと毒 ( No.36 )
- 日時: 2014/07/09 20:19
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード36
篠花は顔をムスッとさせたままソウに詰め寄っていた。
「何でみんなそんなにあの子に興味あるの?全っ然理解できないんだけどー、てか家とか絶対行かないでよ」
まるでソウがダメ夫で篠花が鬼嫁のようだ。
「いや行かねーし!」
「うん。それでよろしい」
満足そうに篠花がうなずく。
「それより学校来てるけど今日仕事ねえの?」
「あるよでも夜から」
「あのさやっぱそういう夜にある仕事ってやめといたほうがいいって思うわ」
「なーに言ってんのよ今更。給料いいし、こんな今どき高校生を簡単に雇ってくれるとこないんだからね」
「だろうけどさー、ほらこの前のカラオケでお前が一緒いた連中とかかなり危なそうな奴らだったじゃん」
「こっちだって程よい距離で関わってるつもりだもん」
ソウに色々指摘されるのが嫌らしく、目線をあわせない。
髪をいじくりながら適当に返していた。
「つーかなんで藤島さんって仕事やってんの?」
坂屋がまた会話に入ってくる。
「貧乏だから」
サラッと言葉にした。
「いやちげーだろ」
ソウがすかさず突っ込む。
「えーでも貧乏と何ら変わらない状況だし今」
「なになに、気になるわ〜」
「うち、お父さん借金残して出てっちゃって、んでお母さんがかなり頑張って働いてさーどーーにか八割は返済できたんだけどね。過労でお母さん倒れちゃって」
「す、すげーリアルな話………」
結構なブラックな話に、坂屋は食べようとしていたパンを食べるにも食べれなかった。
「んーーであたしが働いてんのよ、病院代だっているし借金なんてもう当然返済すんのあたしだし」
「えーそれ藤島さんのオヤジ最低じゃね」
「そうよ最低オヤジよ、会いたくもないけどあたしがこの手で殺しちゃいたいくらい」
「・・こえー藤島さんこえーって」
「んふ、冗談よ冗談」
「いやあれ冗談な顔じゃなかったし」
ソウも篠花の事情をもちろん知っているためにとても複雑だった。
邪魔者あつかいしていなかっただろうか、優しく接していただろうか。
思えば自分の篠花に対する態度はすこしひどかった。
いきなりあらわれて振り回されて、いつもあからさまに迷惑そうにしていた。
見えないところでどれだけ篠花が頑張っているか、一番よく知っている人間のくせに………。
「ソウ…?どうかした?顔色悪いけど」
「ん?あ、いや別に」
「なによー隠さないでいいでしょ。気分悪い?」
「大丈夫だよ」
やさしく微笑んだ。
せめて支えてやりたい、と思っている。
- Re: リンゴと毒 ( No.37 )
- 日時: 2014/08/01 12:46
- 名前: Tao: (ID: ARSa.OgH)
エピソード37
とある某ビルのオフィス。
スーツをきっちり着こなした男が静かにドアを開けた。
男の視界はその広大なオフィスの面積に埋め尽くされた。
そしてそんな部屋の真ん中で高級そうな椅子に腰かけながらまったりしている女性がいた。
「オーナー、お客様がお越しになりました」
男の言葉に、女性ははっきり今知ったような表情を浮かべる。
「客?知らないわよ」
「ですが、お相手の方はもう一か月前からアポを取ってらっしゃると」
「は?まったく初耳よ。追い返して」
「いいのですか?」
「よくいるのよ、店のことにクレームで押しかける奴。ほんとクズ」
イライラしながら爪を噛む。
男は対処に困りながら、一応「はい」と返事をして出ていこうとする。
瞬間、男は驚愕した。
「クズで悪かったなー、オーナーさんよ」
男の目の前に立ちはだかる、菅家。そして、凛狐。
「あなたたち!いつの間にここまで…」
「このオフィスの暗証番号は調査済みや」
「ちょっと困ります、お引き取りください」
男が追い返そうとするも、隙を狙って二人は男の横を通り過ぎ、女性のいる部屋へはいりこんだ。
あわてて男が捕まえようとするが、菅家に楽々とはねのけられる。
凛弧は部屋の鍵をしめる。
「何をしているんですか!!!出てきてください!!!」
ドアの向こうから聞こえる男の声。上厚なドアなためかとてもか細く聞こえてきた。
ふー、と「意外と楽やったなー」としゃべりながら襟をただす菅家。
そして、眼前の女を強いまなざしでとらえた。
女はひるむ様子もなく、余裕をこいて椅子にもたれたままだ。
「またあなたー?」
顔も見飽きた、というふうな表情を浮かべているところ女性は菅家と面識があるようだ。
「ここまで来たからには、そろそろ俺の根性を認めてもええんやないですか」
「根性?ふふ」
あざ笑う女。
「もうあなたとは話がついているはずじゃないのかしら」
「あれーそんなんいつ決まったんやろうな。アンタの勘違いとちがいますの」
「減らず口をたたくんじゃないわよ、クズ」
かなり女性にとって、菅家は気に障る存在のようだ。
そして菅家もこの女性に対し恨みがある様子。
「クズクズって————、アンタは周りを見ようとせえへん。アンタが言うクズたちはな必死にもがいて苦労してんねん。アンタが見えへんとこで、アンタのせいでな」
菅家のこぶしに力が入る。強烈な憎悪が漂っている。
凛弧はただその様子を横目でうかがっていた。
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