コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ファンタジー(仮)
- 日時: 2015/12/20 10:58
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bIAXyXLC)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16841
■お知らせ■
ひっそりとこの物語をベースに、新たな僕アリを書き直しております。
複雑ファジー板で執筆中のウェルリア続編が完結したら、再アップしようと考えております。
設定に若干の変更がありますが…なんとか完結させますよ(涙)
いつも閲覧くださるそこのあなた、本当にありがとうございます!
☆:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::☆
■お客様♪■
・書き述べる様『2次創作(紙)板:AsStory』
・シア様『コメディ板:白銀の巫女姫』
・一ノ瀬美鈴様『コメディ板:Clear the Dimension』
・如月神流様
★━━━━−−———————————————————————————————
『コメディ・ライト板』書き始め日*2014.07.21〜
参照100突破*2014.07.29 参照200突破*2014.08.04
参照300突破*2014.08.20 参照400突破*2014.08.31
参照500突破*2014.09.23 参照750突破*2015.04.01
参照800突破*2015.04.06
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- Re: 僕とアリスと白ウサギ【ファンタジー】 ( No.53 )
- 日時: 2014/09/29 00:21
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: /qKJNsUt)
Chapter4.『憂鬱なお茶会』
Ⅰ.
初夏の爽やかな風がふわりと前髪をかきあげる。
少し汗ばんだカッターシャツの首元に人差し指をかけ、内にこもった熱を逃がす。
僕は眩しく輝く太陽を片手で遮りながら空を仰いだ。
雲ひとつ無い青空に、二羽の鳥たちが仲良く並んで飛んでいる。
「朝だ…………」
呟いてから、ため息をつく。
それは、清々しい朝の陽気とはそぐわないほど重々しいものであった。
「結局一睡も出来なかった……」
徹夜明けのテンションとは、果たして、如何なものか。
寝不足で痛む頭を押さえ、ふらつく足取りで朝の通学路を辿る僕。
その傍らには、白衣を引きずって歩く【白ウサギ】の姿があった。
「……でさ。登校中にひっつくのはやめてくれよ」
「イイエ! 私は諦めませんからね!」
ケホンと控えめな咳をする白ウサギの顔は、半分以上が白いマスクで覆われていた。
昨晩のせいで、風邪でも引いたのか。
「だって……兼人サンが私をベランダに置き去りにするから……」
「自宅に帰れば済む話だろうが!」
「今日こそ【アリス捜し】に付き合ってもらいますからね!」
「だから僕を巻き込むな。僕は無関係だ」
「いいえ! 私のお隣りに住んでしまった以上、私たちは無関係とは言い切れないですよ!」
「後から来たのはお前だろうが! んなの、無茶苦茶だ!」
言いながらも、今のアパートに住んでいることに多少の後悔の念を抱いてしまった僕は、自分の胸の内にとどめておこう、などと、いらぬ決意を固めるのであった。
「というか、だから、僕は何も知らないんだってば」
「ホントに?」
「本当に」
【白ウサギ】が疑わしい目つきで僕を見上げてくるが、当然、知らないものは知らないのだ。
そういうやり取りを通学路で延々と続けていた僕は、校門前に差し掛かって、思わず声を上げていた。
前方に見つけたのは、否が応でも目を惹く人物ーー門をくぐろうとしている麗しコゴウ先輩の姿であった。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【ファンタジー】 ( No.54 )
- 日時: 2014/10/05 18:43
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: LHB2R4qF)
「あ……」
僕は反射的に声を上げてしまった。
反対側から歩いてくるコゴウ先輩も、目の前から歩いてくる僕に気がついたようだった。
そんな彼女は、相変わらずキラキラした目に見えない何かを周囲に振りまいている。
ーーまあ、先輩も黙っていれば美人なんだよなあ……。
黒髪を風になびかせ、均整のとれた身体に制服をまとっている。その姿は、まさに学校のアイドルそのものだ。
何故そんな彼女が僕なんかを目の敵にするのかーー考えてみて、そう言えば僕も前に同じようなことを見知らぬ誰かに言われたなあ、と思い返した。
さてーー
当の先輩は、伏せていた目を大きく見開き、僕を凝視していた。
先ほどまで散々喚いていた【白ウサギ】も、どうやらコゴウ先輩の美しさに気を取られているようだった。
「あの……先輩」
意を決して、昨夜の電話の内容を聞こうか否か戸惑っている僕に、先輩が無言でもって近づいてきた。
その無駄のない洗練された動きーー
ぴたりと僕の前で立ち止まる。
「ええっと……せ、センパイ?」
「…………」
黙ったまま見つめ合う僕と先輩。
周囲からは、何故か羨望の眼差しで見られているような気がしないでもないが、僕にとっては生きるか死ぬか、腹の中の探り合いの最中なのである。他人にあらぬ妄想をされるだなんて、たまったもんじゃない。迷惑だ。 ーーいや、大 迷 惑だ!
などと考えていた僕に、コゴウ先輩がどんな言葉をかけてきたかと言うと……
うん?
何も無かった。
無言で微笑みかけられ、コゴウ先輩は僕の真横を通り過ぎて校舎に入って行ったのだった。
珍しいこともあるもんだと、少し拍子抜けしただろう。
けれど、確かにその時、先輩は僕の耳元でぼそりとこう呟いたんだ。
それは小さな声だったけれど、確かにつぶやかれたんだ。
「……アンタ、自分から私に話しかけるなんて。100億光年早いのよ」
100億光年もの時間が経ったならば、僕も先輩も塵と化しているだろうに……
などといういらぬ反論は飲み込んで、
僕は思わず胸をなで下ろしていた。
……よかった。
いつものコゴウ先輩だ。
【白ウサギ】が不思議そうな顔をして僕の制服の袖を引っ張った。
「兼人サン……あの人、まるで【女王様】みたいですね……」
「あながち間違っちゃいないね」
苦笑して、校舎に向かう……
「って、ちょっと待て。なんでお前まで校内に入ってくるんだよ!」
「なんで、って。学校に用事があるからです」
「まさかお前、転校してくるとか、そんなことないよな。そんなお約束的な展開、僕が許さないからな!」
「『転校』では無いですよ」
にっこり笑って。
「兼人サン、それじゃあひとまずここでお別れです」
「ひとまず、って言葉が引っかかるな」
「では! 私は時間が無いのでここでお別れです」
来客用の玄関前で大きく手を振って僕を見送る【白ウサギ】の姿は、どう考えても『大好きな兄を送り出す少し歳の離れた弟』のようであった。
頭を振って、僕も自分に時間が無いことに気がつく。
「遅刻っ、だあ〜〜〜!」
【白ウサギ】に出会ってからというもの、僕は最近まるでロクなことにしか巻き込まれていない。
しかしーー
これらはまだほんの始まりに過ぎなかったのだ。
教室に着いて、束の間の休息。
その後、僕にとっては少しも望んでいなかった最悪の事態が待ち受けていたのである。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【ファンタジー】 ( No.56 )
- 日時: 2015/04/01 20:35
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: P747iv5N)
Ⅱ.
「白井 友兎(しらい ゆうと)先生だ」
「初めまして、白井です。みんな、遠慮せずに《ウサギさん》って、呼んでくださいね!」
頭痛がする。
「白井先生には1週間、学会発表で外国に出張している近藤先生の代わりに理科の臨時教師として来てもらうことになった」
ああ、そうか。夢か。
これはきっとタチの悪い夢なんだ。
アリスの物語が夢であったように。
「よろしくお願いします」
黒板を背にして、白ウサギはペコンと身体を2つに折って優雅にお辞儀をした。
ーー否、これは現実だ。
全く……こっちの気持ちも察して欲しい。
そういう訳で、白ウサギが1週間だけ僕たちの臨時教師としてやってきた。
何という運命の悪戯か。
何か仕組まれた物を感じて、僕は思わず身震いするのであった。
担任が教卓に立ち、名前の順に出席を取り始めた。
「ーー加賀見は欠席だな」
出席をとって窓際の席でぼんやりと思案していた僕は、担任の言葉に素早く現実に戻された。
陸……?
元気が取り柄なヤツだ。
はっきり言って、体力バカだ。
今まで遅刻はして来ても欠席は未だゼロ。
陸のヤツ、どうしたんだろう。
「なあ、陸がなんで休みなのか知ってる?」
先生の目を盗み見て、こっそり隣席のクラスメートに話かける。
彼女はハッと目を見開いてしばらく僕の顔を凝視し、それから現実に引き戻されたかのようにふうっと息を吐いた。
「なんか、怪我したらしいよ」
「ケガ?」
「加賀見、サッカーじゃん? こないだの練習試合で骨折したって噂聞いたけど」
「嘘だろ……」
「本当だ」
顔を上げると、机と机の間の通路に仁王立ちして担任の松野が構えていた。
相変わらず赤いジャージを来て、しかしいつもより少し落胆した様に見える。
「こないだの練習試合でな、相手選手と衝突してしまってな」
「大丈夫なんですか?! あの……もう一生サッカーが出来ないとか、そういう……」
「美ヶ原」
松野が唸るように言う。
いつもは気だるそうな目が、心なしか鋭い。
「加賀見は今、市立病院に入院している。また見舞いに行ってやってくれ」
「はい……」
それから、気づけば全ての授業は終わっていた。
臨時教師として来ていた白ウサギのことなど、すでに頭の中には無く、僕はその足で市立病院に向かっていた。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【ファンタジー】 ( No.57 )
- 日時: 2015/04/03 13:48
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: P/XU6MHR)
僕たち市民は、病気になるとだいたいの人々が市立病院に駆け込む。
駅前から市バスに乗って約8分。
一昨年改装し終えた市立病院は新築のごとくピカピカで、3階建ての本館と7階建ての病棟が渡り廊下で繋がっていた。
僕は正面玄関から病院受付に直行すると、加賀見陸の面会を求めた。
受付の人は、あっさりと承諾してくれた。
用紙を差し出され、必要事項を書くように求められる。
「加賀見さんは、306号室にいらっしゃいますよ」
面会カードを手渡しながら、受付の人は微笑んだ。
僕はお礼を述べると面会カードをポケットにしまいこみ、歩き出した。
平日の病院は、老人が多く利用していた。
ちらほらと母親に付き添われたマスク姿の子どもも見受けられる。
僕はすれ違う老人にぶつからないように壁際に沿って廊下を進んだ。
3階まで階段で上がり、病棟に続く渡り廊下を渡る。
身一つで踏み込んだ病棟は、先ほどの雑踏に比べて至極静かであった。
まるで誰もいないかのような静けさ。
自分のスニーカーの踏みしめる音に耳を傾けながら、僕は白い空間をひたすら歩いていた。
時折出会う看護師と会釈を交わし、ついに306号室にたどり着いた。
目の前のスライド式ドアの取手を引こうとして、僕は思わず躊躇ってしまった。
陸がどんな状態なのか。
僕は知らない。
どんな言葉をかけてやれば良いのか。
もし陸の身体が、大好きなサッカーが一生出来ない身体になっていたらーー不謹慎ではあるが、もし、そうなっていたら……
ゴクリと喉を鳴らす。
僕はなんも気兼ねなく見舞いに来てしまったが、陸が見舞いを嫌がっていたらどうしよう……
「入らないのかい」
声をかけられて、僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。
背後に腰が曲がった老人が立っていた。
僕は意を決して306号室のドアを開け放った。
老人の目が「早くしろ」と急かしているように思えたのだ。
病室内は6つのベッドが整然と並んでいた。
仕切りとなっているカーテンはだいたい締め切られていて、カーテン越しに人の気配を感じることが出来た。
先ほど僕の背後にいた老人は、その1番ドアに近いベッドの主であった。
どっこいしょと声を上げてベッドに身を投げ出した老人は、そのまま勢いよくカーテンを閉めてしまった。
僕は病室に1人取り残された形になってしまった。
ーーしまった、病室に入る前に陸のベッドがどれか確認すれば良かった、と思ったのも束の間、奥のベッドから聞きなれた声がした。
「待ってたぜ、姫」
窓から差し込む夕陽を浴びて、ベッドの上で陸が微笑んでいた。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【ファンタジー】 ( No.58 )
- 日時: 2015/04/03 10:53
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: P/XU6MHR)
「陸……」
何と声をかければ良いのだろう。
ベッドの脇に置かれた丸椅子に背を丸めて座り、戸惑う僕を見て、陸が肩を揺すって笑った。
「どうしたんだよ、兼人」
「それはこっちの台詞だ!」
思わず大きな声が出た。
病室に刹那、沈黙が訪れる。
僕はハッと息を飲んで、そのまま俯いた。
「いや……ごめん。でも、僕」
「うん。聞いたんだろ、松野に」
僕たちの担任であり、陸の所属するサッカー部顧問でもある松野の名前をつぶやいて、陸は軽く息を漏らした。
「オレとしたことが……マズったよなあ」
「どうして、そうなったんだよ」
ベッドの上で苦笑いを浮かべる陸は右腕をギプスで固定され、首の後ろに通した包帯で吊られていた。
僕の視線に気がつき、陸が頭をかく。
「ああ……試合中に相手選手のキックが、運悪く右腕にヒットしちゃってさ」
「……『運悪く』……本当にそれだけか」
「何が言いたいんだよ」
陸が珍しく険しい顔つきになる。
僕は淡々とした口調で続ける。
「クラスのやつに聞いたよ。こないだの練習試合の相手校、宇野高校だったんだろ」
陸は僕の言葉を黙って聞いている。
「宇野の奴らと、何があったんだ?」
陸は俯いたままだ。
口を固く結んだまま、しばらく黙りこんでいたが、ぽつりとつぶやく。
「中学の時にさ、宇野高校を受験したって、前に言ったよな」
宇野高校というのは、この地区では高校サッカーの強豪校だ。
中学の受験の時、陸はその宇野高校をスポーツ推薦枠で受けたらしい。
だが、結果は二次試験落ち。
周囲からは合格確実だと言われていたのもあり、陸は酷く落ち込んだそうだ。
「……でさ、こないだの練習試合で宇野高校と対戦してさ。……いたんだよね、昔通ってたサッカースクールの奴が」
陸は僕を見ずに、ただ真っ直ぐ、目の前の白い壁を穴が空くほど見つめている。
「そいつがオレに気づいてさ。試合前に言って来たんだ。『あれ、お前まだサッカー続けてたんだ』って。それでオレ、なんかカッとなってさ。良いとこ見せなきゃって。試合に臨んだんだ」
重たいものを吐き出すようにため息をつく。
「……まっ、結果はこのザマだ。ははっ。やっぱオレ、サッカー向いてないのかなあ」
僕は、何と声をかけようかと必死に考えていた。
……僕は陸ではない。だから陸の体験してきたことを、本人のように感じることは出来ない。
だからといって、「大変だったね」と声をかけるのも他人事のように聞こえてしまって、何だか居心地が悪い。
そうやって色々思案していると、陸が僕の顔をじっと見つめてきた。
「なんでお前が、んな暗い顔してんだよ」
「でも……」
「オレな、将来プロのサッカー選手になって世界デビューするんだ。で、バカにした奴らを見返してやるんだ!」
ニッ、と歯を見せて、笑う。
僕は思わず吹き出した。
なんて奴だ。
でも、そんな彼が、僕はとても羨ましく思う。
「応援してる」
今度は、すっと言葉が出てきた。
陸は「おう」と言って、また笑った。
陸の怪我は、全治3週間らしい。
じゃああと2週間とちょっと我慢したらサッカーが出来るなと言ったら、今すぐにでもやりたいと言う。
僕は無理をしないように釘を刺した。
それから学校であったことやテレビ番組について話をしていたら、あっという間に面会時間が終わってしまった。
帰りがけに陸が、暇だからまた遊びに来てなと言ってくれた。
モチロンと頷き、僕は病室を後にした。
行きと同じルートをたどり、受付で面会カードを返却した。
今日は真っ直ぐ帰ろうと病院の正面玄関をくぐった時だった。
はっと、目にとまった。
目の前の横断歩道で信号待ちをしている女性は、一際人目を引いていた。
その恵まれた容姿、艶やかな髪。
「先輩……」
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