コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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黒き少女との契約(コントラクト)
日時: 2014/07/27 03:06
名前: 蘭々 (ID: sLRBYAgN)



 はじめまして。
 名前は「らんらん」と読みます。パンダみたいな名前ですね(笑)

 では、拙い文章ですがお付き合いいただければ幸いです。

 あと、コメントやアドバイスなども常時お待ちしておりますので、お気軽に書き込みください。

Page:1 2



Re: 黒き少女との契約(コントラクト) ( No.2 )
日時: 2014/07/27 11:15
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

 はじめまして、朔良と申します。

 タイトルに惹かれてクリックさせてもらいました。
 クリックして正解だったな、と思っております!

 最初からいきなり蘭々さんの文章に引き込まれました……///
 
 少女が不思議ですね。
 何者か全く読めない。黒に包まれていて、ミステリアスな雰囲気。
 気になるポイントが満載ですね(@_@;)

「どうしてこんなことに」
 私も気になりますー!

 
 更新楽しみに待っていますね!

Re: 黒き少女との契約(コントラクト) ( No.3 )
日時: 2014/07/27 17:28
名前: 蘭々 (ID: sLRBYAgN)



 第一章 儀式(リチュオル)


 1


 今日も相変わらず普通の日々だった。

 中学生の頃に人生の退屈さに気付いた相原七瀬(あいはらななせ)は、高校生になっても人生が退屈だという考えは変わらなかった。
 毎日同じような授業の内容に、頭のレベルの低い同級生の話、他人との関わりを一切持たない七瀬は、教室の中で、溜息をつきながら窓の外の景色に視線を向けている。
 どうして人生はこうも退屈なのか。
 どうして面白いことが起こらないのか。
 どうして自分はこんなことを思うようになったのか。
 いっそのことどこか異世界にでも飛ばしてほしいものだ、と七瀬は思っていた。そこが命の奪い合いが常識の世界でもなんでもいい。
 とりあえずこんな退屈すぎる『日常』を繰り返すだけの世界からはおさらばしたい。
「ねえ、相原くん……」
 その時一人のクラスメートの女子が声を掛けてきた。
 話したことがあったかさえも分からない、印象に残らないような女子だ。眼鏡をかけていて、内気そうな表情をしている。名前など覚えていないが、クラスメートであることだけは辛うじて覚えていた。
「……なんだよ」
「えっと……数学のノート……今日提出日で、まだ出してないみたいだから……」
 そういやそうだったな、と思い出しながら、七瀬はその少女に言う。
「まともに取れてないからいい。先に全員の分出して来い」
「え、でも……」
「いいって言ってんだろ」
 少女を睨み、怒りを抑えるようなトーンで言い放つ。
 相手の女子はびくっと肩を震わせ、怯えたような表情を見せ、足早に七瀬の傍を離れていく。自分の机の上に置いてある七瀬以外のクラス全員分のノートの束を持ち上げ、教室から出て行った。
 明らかに女子が一人で持つには多すぎる量だったが、誰も彼女を助けようという者はいなかった。
 彼女もずっと教室で一人でいる、七瀬と同じような少女だった。
 七瀬みたく他人との関わりを自ら絶ったのではなく、ある事件がきっかけで周りから敬遠されているという話を聞いたことがある。
 その事件が何なのかは興味がないから覚えていないが、よっぽどのことなんだろうな、と他人事のように思う。
 七瀬はそろそろ五時間目開始の時刻だというのを教室の壁掛けの時計で確認すると、顔を伏せて寝る体勢に移る。

 
 そんな一日だったはずだ。

 朝だって特に変なことはないし、学校でも珍しくクラスメートが声を掛けてきただけだ。なのに、何故自分は今死にかけているんだろう。

 七瀬の意識は暗い海の底のような場所まで沈んでいた。

 ふと目を開ける。

 遥か遠いところから微かな光が差している。手を伸ばすが到底届く距離ではない。必死に手をその光に伸ばす七瀬の耳にある声が響く。

 いや、正確には耳にではない。

 直接脳に語り掛けられるような、そんな言葉だった。

 ——この世は戦いに満ちています。

 は? 戦い? なんのことだ?

 ——あなたはその戦いに参加する資格があります。

 資格? 随分と上から目線なんだな。

 ——戦いは今の『日常』がすべてひっくり返ります。

 『日常』がねぇ……。なんか胡散臭いな。

 ——戦いは命を失う可能性もあります。まさに命を懸けてもらいます。

 命を? はっ、ますます胡散臭ぇ。

 ——信じるか否か。戦うか否か。それはあなた次第です。参加するというのなら——。

 言うのなら?

 ——あなたはもう一度、生を受けられます。

 へぇ。

 ——問います。生きたいですか? 生きたいなら、私と契約してください。

 上等だ。

 七瀬は伸ばした手をぎゅっと握りこぶしを作る。
 ニィッと獰猛な笑みを浮かべながら、心の中で叫ぶ。

 このくだらねぇ日常を捨てられるなら、契約でもなんでもしてやろうじゃねぇか!!

 七瀬の視界は一気に眩い光に包まれ——。

Re: 黒き少女との契約(コントラクト) ( No.4 )
日時: 2014/07/27 23:17
名前: 蘭々 (ID: sLRBYAgN)



 2


 七瀬は目を覚ました。
 どうやら自分は寝かされているらしい。ベッドの上に丁寧に布団まで掛けられている。顔を動かして左右を見やると、自分の部屋ではないことが分かった。
 七瀬は上体だけを起こし、部屋の全貌を見渡す。
 綺麗に整頓されている清潔感のある空間だった。必要最低限の物しか置かれていないようだが、それでも女子の部屋であろうことは理解できた。部屋の中を見て、そしてほのかに漂う香水かなにかの匂い。その匂いは妙に女子らしさを感じさせた。
「……どこなんだ、ここは……」
 七瀬がそう呟いたその時だった。
 部屋の扉ががちゃり、と控えめな音とともに開けられた。部屋に入ってきた人物を見て、七瀬は絶句する。

 セミロングの黒髪に、ぱっちりとした大きめな紫色の瞳。身長は一五〇センチ前後と小柄で、身体つきも華奢で幼いようなイメージがある。
 漆黒のセーラー服に身を包み、黒のプリーツスカート、その裾から伸びる脚は黒のタイツに包まれており、見事なまでに全身を黒で統一した少女だ。
 セーラー服が夏服なので、そこから伸びる腕が妙に白く思えた。
 顔も端正で、おそらく学校のマドンナ候補であろうその少女は、トレイにペットボトルのお茶とコップを乗せている。

 七瀬はこの少女を知っている。
 いや、忘れられるわけがない。
 彼女は、自分を殺した少女だ。あの時、一瞬しか目を合わせなかったが、この端正な顔立ちと全身黒という恰好はそうそう忘れられるものではない。
 七瀬を刺し殺した刀こそないが、あの少女は紛れもなくあの時の少女だ。
 そこで七瀬はハッとする。
 そう、あの時自分は確かに殺されたはずだ。刀が身体に突き刺さる感覚もあったし、痛みも感じた。死への恐怖だってあったはずだ。
 なのに自分は今生きている。
 いや、生きているという確証もないが、呼吸は出来ている。頭も回るし、視界も見たものを移している。音も匂いも感じることが出来るし、物に触れればその感触だって分かる。
 七瀬は胸に手を当てる。刀で刺された場所だ。だが、胸どころか他のどの部分にも傷はない。
 一体どういうことだ。
 黒い少女は状況がよく理解できていない七瀬を数秒見つめると、ベッドの横にある台にトレイを置く。
「目が覚めたようですね」
 少女は無表情を崩さない。
「少し待っててください。今すぐ——」
 少女が部屋から出ようと踵を返す。
「待てよ」
 だが、七瀬はその少女の腕を掴む。
 少女は足を止め、七瀬へと振り返る。感情を読ませないような無表情で。
「——お前は何者だ?」
「……」
 少女は答えない。
 それに構わず七瀬は質問を続ける。
「お前は俺に何をした!? 俺は生きてるのか、死んでるのか!? 分からないことばかりでどれから質問すればいいかも分からねぇじゃねぇか!!」
 少女は叫ぶ七瀬と向き合うように体勢を変える。
 無表情の無感動な瞳のまま、七瀬を見つめて少女は問いかける。
「……では、こちらからも一つ質問があります」
「ああ?」
 まずはこっちの質問に答えろよ、と思ったが、それを言葉にするより先に少女が口を開いた。
「その質問すべてに答えれば、この手を放していただけますか?」
 少女は七瀬に捕まれた腕を指さしながら言う。
 どうやら叫んでいたら力が強くなっていたらしい。
 七瀬は指摘されて気付いたのか、少女の腕を掴んでいた手を放す。
「感謝します」
「質問には答えてもらうぞ」
「そのつもりです」
 少女はベッドの横に椅子を持ってきて、そこにちょこんと座る。トレイに置いてあるコップにお茶を注ぎ、それを七瀬に手渡す。
「まずはお茶でも飲んで落ち着いてください」
 七瀬は手渡されたお茶を怪しみながら飲むが、普通の麦茶の味だった。コップ一杯分を呑みほし、コップをトレイに置く。
「では、まずは何からお話ししましょうか」
「……お前の正体だ。そこから話してくれ」
 分かりました、と少女はこくんと頷く。
 少女は背筋をぴっと伸ばし、相変わらずの無表情だが、真剣さが宿る表情を七瀬に向ける。
「私は——人間ではありません」
 次いで少女から言葉が放たれる。

「私は——精霊です」

Re: 黒き少女との契約(コントラクト) ( No.5 )
日時: 2014/07/28 08:42
名前: 銀色 (ID: QYM4d7FG)


始めまして、お邪魔します!

ジャンルからして好みな上、文章が凄く読みやすくて展開も上手で羨ましいです( ´-`)

何よりヒロインさんが好みストライクげふんげふん。
清楚な感じが実にグッド(荒ぶる鷹のポーズ)

失礼しました、わくてかしながら続き楽しみにしてます、お邪魔しましたっゞ(⌒ノ'ω')ノ

Re: 黒き少女との契約(コントラクト) ( No.6 )
日時: 2014/08/11 02:04
名前: 蘭々 (ID: sLRBYAgN)



 3


「……は? 精霊だぁ?」
 七瀬は疑わしげな視線を、目の前の漆黒の少女に向ける。
 一瞬だけ自分の耳を疑った。
 他人に任せるよりは自分に頼った方がいい、と考えていた七瀬は、自分の見たものや触れたものを疑うことはしなかった。それはもちろん聞いたものに関してもだ。
 そんな七瀬が自分の耳を疑った。
 漆黒の少女が何を言っていたか分からなかったわけではない。何を言っているのかは分かった。だが、彼女の言っていることの意味が分からなかった。
 だから七瀬は聞き返した。
 七瀬の不審な視線を真正面から受け止めた少女は、無表情のまま言葉を紡いでいく。
「……私は精霊界(せいれいかい)という、こことは違う世界からやって来ました」
「おい、俺の質問は無視か」
 少女は続ける。
「精霊界とここ——私たちは人間界と呼んでいますが、目には見えないだけで二つの世界は隣接しています」
「おいこら」
 さらに続ける。
「今まではこの二つの世界は互いに影響を与えないようにしていましたが、最近は少し厄介なことが起きまして——」
「聞けよッ!!」

 ゴッ!! と少女の顔面に七瀬の鋭い拳がめり込む。漫画みたいなめり込み方だった。
 七瀬は鍛えているわけではないため、拳の速度もそんなに速くないはずだ。だが、説明に夢中になっていた漆黒の少女はそっちに気が割けずかわせなかった。そもそも、殴ろうとしていたことにも気付いていないだろう。

 漆黒の少女は顔面を押えながら涙目になりながら、恨めしげに七瀬を睨み付ける。
「な、殴りましたね……! 女子を、しかも顔面をグーで。この人でなし……!」
「知るか。つーか精霊だのなんだの言ってる奴に人でなしとは言われたくねーよ」
 涙目の訴えも七瀬には効果がないようだ。
 少女は鼻を押えながら、正座し直して七瀬の質問に答えていく形式に変える。
「最初の質問だ。精霊っつったな? 具体的に精霊ってのはなんだ?」
「……それを説明するためには精霊界の説明が必要不可欠なんですが……それをあなたが邪魔したんですよ?」
「だったら最初からそう言えよ。いきなり説明に入られたら分かんねーだろ」
 謝らないんですね、と漆黒の少女は口を尖らせる。やや不満に思っているのだろうが、なんの言葉もなしにいきなり説明に入った自分の非も認めているのか、それ以上は何も言わず説明に移る。
「では、私たちの説明の前に精霊界についてお話しさせていただきます」
 ——精霊界というのは、人間界と隣接している世界のことである。
 人間界と隣接といっても、実際にくっついて存在しているわけではなく、目に見えないパイプみたいなもので繋がっている。精霊界側からも人間界側からでも、そのパイプを利用すればどちらの世界の住人でも両方の世界に行ける。
 だが、二つの世界の存在を知っているのは精霊界側だけなので、人間界の住人が精霊界に来ることは全くと言っていいほどない。
 精霊界の住人は当然と言うべきか、全員が精霊である。しかし力の強弱は存在し、己を磨くために十二年制の養成学校に通うものがほとんどである。通わないのは高位の力を持つ家に生まれたものか、あるいは天才か——それくらいだ。
 漆黒の少女も養成学校の精霊で、今回人間界に来たのにはある理由があるという。
「……その、ある理由ってのは?」
「……私たちは精霊界に蔓延る妖怪……『魔の使徒(まのしと)』を倒す力を持っています。学校ではその力をうまく使う術を学びます。そこで、最近人間界によくない話がありまして……」
 七瀬が視線だけで少女に説明を続けるように促す。
 少女はこくりと頷くと小さな口で言葉を紡ぐ。
「その『魔の使徒』が人間界に現れ始めているんです」
「……なに?」
「それだけじゃなく、人間界側から、精霊界に繋がるパイプを侵食し始めています」
「それのなにがヤバいんだ?」
 七瀬の質問に漆黒の少女は血相を変えて叫ぶように言う。
「や、ヤバいに決まってるじゃないですか! こっちの世界に現れた『魔の使徒』は退治すればどうにかなります。でも、パイプは二度と元には戻せないんです! このまま侵食が続けば……異なる二つの世界が結合してしまいます!」
 少女の言葉を七瀬は冷静に聞いていた。
 いや、冷静に聞いていたではなく、あまりにも現実味がなくて、本気になれないし、焦ることだってできないのだ。そのため、七瀬はゆっくりと少女の言葉を咀嚼していく。
「……つまり、『魔の使徒』の二つの世界を繋げるパイプの侵食を防ぐため、人間界の異端である『魔の使徒』を退治するためにここに来ましたーってか」
「な、なんて軽い……」
 少女は七瀬のざっくりとした解釈にがっくりと肩を落とす。自分の数分に及ぶ説明がほんの数秒に納められたことがショックだったのだろう。
「……で、それでお前はどうして俺を殺した? 俺は『魔の使徒』じゃねーぞ?」
「それは分かってます。ただあなたには契約しやすい状況になっていただいただけです」
 首を傾げる七瀬だったが、少女は答えない。
 説明は後でします、というと少女は自身の服の胸元をはだけさせる。思わず目を逸らしそうになる七瀬だったが、少女が性的な目的でやっているのではないと気付くと、横目で見続ける。
「……見えますか?」
 少女が自身の胸元を指差す。
 そこには赤い刻印が印されている。手の平で簡単に覆えてしまいそうな大きさのその印を見ていると、七瀬は漆黒の少女に指を差される。
「あなたの胸元にもあるはずです」
「俺の?」
「それが、あたなと私が契約を交わした証——きっちりと印があるなら〝儀式(リチュオル)〟完了です」
 少女はにっこりと微笑みながら言う。


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