コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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L
日時: 2014/08/09 16:27
名前: taka (ID: gOBbXtG8)
参照: 複ファから引越ししました。

 奴が誰か、俺は知っている。
 確か自分の事を、リブラとか言ってたな。

 だが俺は、俺が誰かを知らない。
 確か奴は俺を、ゼクトヴァリスと言っていたな。

 あの子を俺は知っている。
 確か自分の事を、ジェシカと言っていたな。

 だが、あの子は俺の事を知らない。
 過去に一度あっているような気がするが、何故だ。

 消され、塗り替えられた天秤の記憶。
 俺の意思1つで、世界は————

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Re: L ( No.1 )
日時: 2014/08/09 17:45
名前: taka (ID: gOBbXtG8)

「ここは……どこだ……? 僕は……誰だ?」

 とある国の城下町を、真っ赤な火の海が包む夜。
 税務署の屋上で1人の白髪少年が、焼け崩れていく建物を見ていた。
 周囲360度、何処を見渡しても、赤い炎が燃えている光景しか視界に映らない。
 上空を見上げても、火の粉が舞っているだけだ。

 少年に持ち物は残されていなかった。
 唯一残っているものは、腰に帯剣したブレードのみ。
 つまるところ、手持ち無沙汰である。
 徐々に税務署を燃やす炎が近付いてくるにも関わらず、彼は逃げようともせずにその場でしゃがみ、小石を拾った。
 特にすることもない——というより何をすればいいのか分からない——のでは、本能に従うしかないのだ。

「——つまらないな」

 まだ幼さを残す声色でそう呟くと、少年は拾った小石を、直ぐそこまで迫っていた炎の中へと放り投げた。
 火、消えないかな——と思ったが、そうしたところで何も変わらず、相変わらずパチパチと何かが燃える音がするだけである。
 彼は炎を恐れることなく、いつの間にか掻いていた汗をリストバンドで拭い、そのまま呆けていた。

 いよいよ熱さもピークに達して来た頃、少年を包もうとしていた炎は一瞬にして全て消え去った。
 相変わらず他の建物は燃えているが、税務署だけ、突然降り注いだ水により消火されてたらしい。
 少年は突然上空から降り注いだ滝のような水に濡れ、一気に寒気が増すのが分かった。

「ちょっとアンタ、大丈夫なの!?」
「え……?」

 税務署の階下へと繋がる扉から、突然見知らぬ少女が出てきて少年は驚いた。
 現れた少女の右手には、鮮やかなパステルカラーで彩られたメルヘンチックな杖が握られている。
 先ほどの多量の水は、彼女が魔法で生み出したものである。

 少女は駆け足で少年に近寄ると、両手で彼の頬をそっと包んだ。
 怪我はないか、お前は誰だ、ここで何をしているのだ、など、同時に様々な質問が飛んでくる。
 少年は返答に困った。

 何故なら、彼には記憶がないのだから。


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