コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 古本屋「パセリボーガー」コスモウッズ駅東口店
- 日時: 2015/02/15 22:33
- 名前: 野木山圭一 (ID: xOnerCAx)
皆様初めまして、小説初投稿、野木山圭一、男です。4月から厨二の仲間入りでござります(2015年2月現在)。更新は不定期かと。
ジャンルはSF系日常モノ、結局ボーイとガールがミーツする話です。
なんかどっかで聞いたことあるような設定とかあるかもしれないですが、とりあえず生暖かい目で見守っててください。
感想、アドバイス等頂けたら大喜びしてキーボードを放り投げます。
これからよろしくお願いいたします!
目次
第一話「後の掃除が大変だ」>>1
第二話「生誕30周年記念」>>4
Page:1
- Re: 古本屋「パセリボーガー」コスモウッズ駅東口店 ( No.1 )
- 日時: 2015/02/15 21:23
- 名前: 野木山圭一 (ID: xOnerCAx)
第一話 後の掃除が大変だ
そこには、巨大なバドレーがいた。
「食いてえ」
バイトの新城進が、本の値札を付け替えながら、バドレーを見つめる。
「呑気だね新城くん!アレ、農場から逃げてきんだろうか…」
空気をも切り裂きそうな牙。理知的な印象を受ける、切れ長の瞳。筋肉質な脚線。灰色がかったピンク色の鬣、尻尾。まさに、立派な、これぞバドレーだと言わざるを得ないその姿。
それが、古本屋「パセリボーガー」コスモウッド駅東口店の前の住宅街を白昼堂々と闊歩していたのだった。
「危ないですよー!近づかないで下さーい!」
たまたま通りかかったパトロール中の警察官が、近くにいた一般人たちを誘導する。
「でけー!」「すっげー!」「ブサイクー!」
チャリに乗った小学生達、きゃっきゃきゃっきゃと興奮して口々に騒ぐ。
「凄いですねー!私、直接見るの初めてなんです!写真撮んなきゃ!」
バイトの塩谷萌花、きゃっきゃきゃっきゃと興奮してスマホを構える。
「もかりんも呑気だねえぇ!」
バイトリーダーの角田俊彦(彼女いない歴=年齢=29歳)が呆れたように、新城進芽と塩谷萌花を交互に見る。
「ツイートする前に通報しようよ」
「えーっと、ぴっぴっぴっと!」
OK。それにしても、実に立派なバドレーである。兵士たちは、あんな大きな大きな、道端で遭遇したらちびりそうな怪獣を乗りこなすというのだから驚きである。よく見ると、あのお巡りさんの股間が湿っているような…
「チョチョチョットオ!お巡りさんがなんか変なこと言ってるんだけどお!」
『2時 34分 を お知らせします』
「117じゃなくて110だっ!」
「てへぺろ!」
殺人的な天使の笑顔。そこそこある胸。これであとは健康で文化的な生活を送るうえで必要な一般常識さえ持ち合わせていれば、文句はないのだが。
「あいつに迂闊に近づくなよ、蹴られたら全治半月の大怪我だ」
- Re: 古本屋「パセリボーガー」コスモウッズ駅東口店 ( No.2 )
- 日時: 2015/02/14 11:21
- 名前: 野木山圭一 (ID: 60TA9nBF)
まーとりあえず本の陳列作業を終わらせようか、と新城が踵を返して本棚へ歩きだす。
後方から黄色い破壊音。
突然のガラスが砕ける音に店内にいた人間たちが何事かと音のした方向に視線を向けると、
「ぶびょおおおおおおお!」
自動ドアをブチ破って巨大なバドレーが店内に飛び込んできていたのだ。
「うひょっちゃあん!」
塩谷は5メートル飛び退きすっ転び、新城もすっ転びそうになりながら塩谷のもとへ駆けつけた。
「うわっと!大丈夫か塩谷!?ケガ無い?」
新城が塩谷を持ち上げる。塩谷は新城の心臓がバクバク言ってるのを感じたことだろうが、
「だいじょ〜ぶいやべ〜す〜」
とんでもなく呑気。そんな塩谷とは対照的に、
「やばい!逃げろぉ!」
「きゃあああああ!」
店の奥にいるお客さんたちが店から出ようと足を縺れさせる。鼻には獣の臭い。店の奥で、恐らくPS9ソフトの棚が倒れたかと思われる音がゴダンッとくぐもって耳に入る。
バイト歴及びフリーター歴8年、彼女いない歴29年と11か月と30日のバイトリーダー角田は、
「だいじょばないやべ〜す〜」
腰を抜かしていた。
- Re: 古本屋「パセリボーガー」コスモウッズ駅東口店 ( No.3 )
- 日時: 2015/02/14 11:00
- 名前: 野木山圭一 (ID: 60TA9nBF)
「は、はい、こちらへ!押さないで押さないで!」
新城が手汗をビッショリかきながらも、モップを振ってお客さんたちを店の外へ誘導していたら、
「————んっ」
なんだなんだこの騒ぎは、といった表情で店の奥のトイレから出てくる、1人の10代と思われる茶色がかった髪を後ろで縛った少女。そこへ、巨大バドレーが突っ込んでいくのが、新城の視野の端にチラリと映る。
新城の手からモップがすっぽ抜ける。
「そ、そこのお客様ああ!危ないですううううっ!」
叫ぶ新城の声に、
「おぅ?」
と、塩谷が反応する。
バドレーの上げた土煙に息を止めながら、少女へDASHする点Pこと新城。
こちらも同じく、新城とは垂直方向に少女へDASHする点Qことバドレー。
「よおおおおおおおおおお!」
しかし、動物の足に人間の足が敵うはずもない。自分の目の前で同年代の女の子の腹に牙が突き刺さり、辺りに血の花が咲くのを新城が覚悟しかけたが、
(いや、それだけは駄目だ!そんなことがあってはなるまいぞ!)
新城本気モードON!
風より速く、閃光より速く、時の流れより速く。世界中誰も感じたことのないトップスピードの感覚を、新城は覚えた。
そして、少女に向かって新城が踏み切ったとき、
「FREEZE!」
その少女がバドレーに叫ぶと、ピタリとバドレーは動きを止めその場に膝を折る。
勢い余って新城、少女の胸にすっぽり顔を埋め込む。
5秒後。
店内中に響く2人分の絶叫。店から逃げる客たち、レジ係たちもみな驚きそちらに顔を向ける。目は真ん丸。
「すみませえええん!っていうかもう恥ずかしいというか皆様に顔向けできないというかぁ!申し訳ございましッございませんでしたぁ!」
かなり混乱している少女。それは新城の方も同じである。
「こちらこそなんかもう猥褻な行為をしでかしてじゃなくてああああもおおおおしわけございましッありますううううん!……うぐっ」
「ああああぁああ!泣かないでくださいっ!謝るのはこちっちでええええぇふぅええええええええええん!」
「申しっ申しわけっもう泣きませえんじゃなくてお客様泣くなあああああああ!恥ずかしい恥ずかしいああ!」
「泣くなはこっちのセリフだああああ!」
「こっちこそ泣くなは俺のセリフだああああ!」
「お前が泣くなあああああ!」
「こっちこそお前泣くなあああああああ!」
「お前が泣くなああああああああああ!」
「お前が泣くなああああああああああ!」
突如謎の水かけ論が始まったこの古本屋の中にいた者の中で、バイトリーダー角田に、
「もっとだいじょばないやべ〜す〜」
新城の手からすっぽ抜けたモップが突き刺さっていたことに気付いたものはいない。
- Re: 古本屋「パセリボーガー」コスモウッズ駅東口店 ( No.4 )
- 日時: 2015/02/15 22:32
- 名前: 野木山圭一 (ID: xOnerCAx)
第二話 生誕30周年記念
「はっぴばーすでーとぅーゆー♪」
手拍子。
「はっぴばーすでーとぅーゆー♪」
ロウソク。
「はっぴばーすでーでぃあ角田さーん♪」
総合病院3階。
「はっぴばーすでーとぅーーーーゆーーーー♪」
ベッドに寝たまま、バイトリーダー角田はケーキのロウソクに息を吹きかけようとしたが、
「あだだだだだだだだだだ!」
傷口が開く。下腹部には包帯が巻かれ、赤黒いシミが。
「大丈夫すか!?無理しなくていいです」
「見るからに痛そうですぅ!」
「痛だい!誰か代わりに吹いてくれっ!あっ、ナースコール押しちゃったあ!」
ドアが開いて、ナースさん入室。
「どうされましたか?」
「ロウソク吹いて」
「断ります」
ナースさん、恐らく人生で最も早く退室。
「ひどいよナース様……」
と、バイトリーダー角田は嘆く。
「私が吹きます!」
「ありがとう、もかもか!」
「ではいきますぞ。ふ〜」
全滅。
「「えええええええええええええええ!?」」
たったの一息。辺りには濁った煙がたなびくばかり。
「30本だぞ!?30本!奇跡!ヤバイ!ヤバイヤバイヤバイ!」
「ただただ凄いとしか言えねえ!ヤバイ!ヤバイヤバイヤバイ!」
「ヤバイとしか言ってなくないですか」
「一本ぐらい吹きたかった……」
「チャッカマンなかなか点かなかったのに……」
職無し金無し彼女無し。30歳を迎えた5月。
- Re: 古本屋「パセリボーガー」コスモウッズ駅東口店 ( No.5 )
- 日時: 2015/03/01 23:02
- 名前: 野木山圭一 (ID: YO.h.a0k)
「これ、お詫びどす」
肉に牛乳、チーズにアイス。
「あっ、その……。大丈夫どす」
病院の廊下にて、新城と髪を頭のてっぺんで一つの団子にした少女が向かい合っている。
「いえそのっ、本とかガラスとか角田さんとかPS9ソフトの箱に『盤面にキズあり』シール貼ったりとかいろいろと迷惑かけてしまいましたので————是非っ」
何やら気まずく、空気が湿ってのしかかっている。
「……じゃあ、頂いておきま……す、ね。園崎さん」
眉毛がピクッと糸でひっぱった様に上がった。
「っ?何で名前知ってるんどすか?」
「角田が言ってた。以前、ウチでバイトしてたんどすよ……ね」
「んなっ!」
園崎はわかりやすく「ゲッ!」とばかりに体を後ろへ下げた。
「ガッ!」
自販機に「ゴッ!」と頭が大激突クラッシュ。その衝撃で髪がばふっとほどけ、その自販機で某首領缶コーヒーを買っていたお爺さんが驚き、「大丈夫?」と声をかけた。
「あだだ脳震盪脳挫傷どす……。——では、ここらで失礼どす。すみませんでした!」
新城はダッシュで病院を出る園崎の背中を見つめながら、お詫びの入ったレジ袋をガサガサ覗いた。そしてふと顔を上げると、
「!?」
自販機の側面が「グッ!」と大男が大黒柱で押し込んだように凹み、某首領缶コーヒーのロゴのおっさんの顔が歪んでこちらを「ギッ!」と睨むようなしかめっ面。
「石頭どすな……」
ま、これでこの騒動は終わりだな、この食材で何作ろうかな、と新城は思った。
はずだった。
……ところで、「どす」って何どすか?
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