コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】
日時: 2018/05/13 17:29
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6quPP6JX)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=300

 皆様は、学生生活を如何お過ごしでしょうか。

 屋上で雨乞いをしたことはありますか?
 学校の7不思議を全て解明した事はありますか?
 調理実習で誰かが暗黒物質的なクソマズ料理を作ったことはありますか?

 そんな現実では「ありえない」の一言で片づけられてしまうような学生生活を覗いては見ませんか?


 さあ準備は整った。
 始業を告げる鐘を鳴らせ。

 ————彼らの混沌とした日常が始まります。

***** ***** *****


 我ながら意味の分からねえポエムを書いたと思います。笑えよ。笑えばいいだろ(ヤケ
 ゴホン、気を取り直して。

 こんにちこんばんおはようございます。スレ主の山下愁です。
 ええ、このコメディライト板では何度目の出現でしょうね。数えてみてください。——いえ、やっぱいいです。
 この物語は上記URLにあります『偶像劇企画』でご協力していただいた皆様が登場します。その数30名!! ありがとうございます!!
 おっと、「お前に偶像劇など書ける訳がねえだろカス」と鼻で笑う声がどこからか聞こえてきますが無視しましょう。ええハイ。
 さてと。この話を読むにあたって守ってほしい規則がいくつか。


その1 現実ではありえない学生生活を送る個性豊かな生徒たちによるカオスな偶像劇です。まあ当然フィクションですので絶対に真似はしないようにしましょう。言わなくても分かりますよね?

その2 なるべく皆様のキャラを丁重に扱うつもりではありますが、中には雑に扱うキャラもあるかと思います。物語上に必要な演出なので、参加者の皆様はご了承ください。

その3 キャラ崩壊があるかと思います。原型は留めようかと精一杯こちらの方でも努力をいたしますが、もし万が一キャラが崩壊してしまった場合はごめんなさい。土下座させてください。再現率を重視する読者様・参加者様方は閲覧注意です。

その4 誤字・脱字はなるべくこちらで見つけて直していく所存です。ですが直っていなかった場合はご指摘していただけると助かります。

その5 作者は社会人ですので言い訳になりますが遅筆です。申し訳ございません。

その6 荒らし・誹謗中傷・パクリはおやめください。なお、2次創作する場合は山下愁に申し出てください。



 カキコで小説を閲覧するにあたって最低限の規則を守っていただければ幸いです。当然守れますよね? 守らねえよバーカなんて言ってあっかんべーする人なんていませんよね?
 よし、ならよかった。
 それでは始まります。皆様が少しでも楽しめるような小説を書けるように尽力いたしますので、よろしくお願いいたします。

***** ***** *****


プロローグ>>01

4月!!「桜の木の下には死体が埋まっているってほんとかな?」>>02
5月!!「クラスに馴染めない? そんなもんテンションでどうにかなるでしょ!!」>>68
6月!!「運動部の祭典である体育祭は、文化部にとって地獄でしかない」>>87
7月!!「プール掃除って意外と楽しいよ、やってみる価値あるよ!?」


***** ***** *****

お客様
大関様 アーリア様 HIRO様 はる歌世様 冬野悠乃様 Orfevre様 モンブラン博士様 俊也様 メデューサ様 purplemoon様
羽音様 オルドゥーブル様

***** ***** *****

暇つぶしSS一覧
LINEネタ>>33 >>34 >>41 >>45 >>54 >>60 >>70 >>74 >>78

榮倉桃馬【夕焼け小焼けで帰りましょう】微ホラー世にも奇妙風味>>76
八雲優羽【放課後ゲーム】>>86


***** ***** *****

NEWS!! 小説カキコ2016年夏 小説大会にて管理人・副管理人賞を受賞いたしました。ありがとうございます。

※最近我が家のパソコンの調子が悪く、タブレットからの投稿となります。読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。

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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.97 )
日時: 2017/11/02 11:49
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

 借りもの競争は、やる側にとっては公開処刑にも匹敵する恥ずかしさを秘めているが、見る側にとってはこれ以上に面白いことなどない競技である。
 大山田関太郎もこの競技で大いに笑わせてくれることを期待していた。
 何故なら、この競技に進んで立候補した馬鹿がいる。それに伴うようにして二人ほど哀れな野郎どもが引きずり込まれたが、まあ彼らにはさほど期待はしていない。
 だが、まさか一発目からこういう展開が待ち受けているとは思わなかった。

「好きな……男子……ッ!! ブフ、クククッ」

 腹筋が鍛えられるというかなんというか。第一走者である八雲優羽は、お題が書かれているだろうメモ紙を見下ろして殺意を滲ませているようだった。多分自分も同じ立場だったら、体育祭実行委員へ殴り込みに行っているだろう。
 それでも期待の馬鹿こと優羽は迷いもなく自分のクラスであるC組へやってくると、飴食い競争とパン食い競争のどっちが公開処刑かと謎の討論会をしていた小田原博人を攫っていった。次の瞬間には二か所から「エンダー!!」「イヤー!!」と叫び声が上がった。
 颯爽と白衣の少年を背負って一位を獲得した優羽は、なんかもういっそ清々しいほど輝いていた。そんな彼を見て関太郎は指をさして爆笑したのだが。

「ふひゃははははははは!! ゴールしやがった!! ゴールしやがったぞあいつ!!」

 膝を叩いてケタケタと笑う関太郎だが、すぐそばから聞こえてきた「ハァ……」という重々しいため息を聞いて笑いが引っ込んだ。
 クラスの端っこに体育座りをして、じめじめときのこが生えてきそうな勢いでどんよりと暗い空気を背負った男子生徒。名前を——確か、三野上紘と言ったか。身長が二メートルに届く関太郎からすれば、彼は随分小さく見える。

「オイ、そこの」
「……今話しかけないで。砲弾になった時の対策を考えているの」

 関太郎が声をかけると、紘はやはり暗い声で突っぱねた。
 というか、砲弾になった時の対策とは一体なんなのか。

「……騎馬戦、憂鬱」
「ああ」

 ポツリと呟いた紘の言葉で、関太郎は納得した。
 カキコ学園の目玉競技として、全学年男子による騎馬戦が行われるのだ。
 非情なことに、全学年なので右も左も分からない一年生は真っ先に上級生から潰される。実質、二年生と三年生の戦争のようなものである。
 しかし、中には健闘を見せる生徒もいた。その中で起きたのが『生徒砲弾事件』というものだ。
 当時の小柄な男子生徒が騎馬の上に乗っていたのだが、負けたくないという気持ちが先行してしまったのか、上に乗っていた生徒が放り投げられてしまったのである。その男子生徒はあまりにも軽かったので、ポーンと砲弾のように上級生の騎馬へ突撃をかまし、上に乗っている生徒を巻き込んで倒れたのだ。
 もしかしてあれのことを気にしているのか——いや、紘はあの砲弾事件の被害者なのかもしれない。彼は膝を抱えて深々とため息をつき、

「……ヘルメットでも被ったらいいかな……それともいっそ銛でも担いだ方が……」
「そりゃ反則になんじゃねえか?」
「反則でもなんでも、命が惜しい」

 はぁ、と紘はため息。
 さすがの関太郎でも、どう声をかけていいか分からなかった。「気にするな」とも言えないし、「大丈夫だ」とも言えない。紘のように上へ乗った経験がないのだ。
 だから砲弾のように投げられるという感覚も分からないので、どうしようもないというか。
 そんなことでぐるぐると頭を悩ませていると、「おおおおおおッ!?!!」と会場中がどよめいた。
 なにが起きたと顔を上げると、そこには今まで八雲優羽と同じレースを走っていた男子生徒が一斉に一人の教員を囲んでいた。
 学校指定のジャージを羽織った、隻眼の若い男性教員である。紛うことなくC組の担任である王良空華である。いきなり教員の待機場所から引きずり出された空華は、むさ苦しい連中に取り囲まれて困惑しているようだった。

「「「「「王良先生、一緒にきてくださいッ!!」」」」」

 野太い声の大合唱。
 空華の薄い唇が「ひぇっ」となぞった。多分ドン引きしてる。

「きゃああああああああああああああ————!! お題は聞いてたけどなんかやだぁああああ!!」

 くるりと身を反転させた空華は、ダッシュでその場から逃亡を図った。
 競技中の男子たちは「逃げたぞ」「追え」と空華の追跡を開始する。本気なのか遊びなのか不明だが、とりあえず空華にはご愁傷様と合掌する。
 それよりも。
 関太郎は配られた体育祭のプログラム(宇宙語は翻訳済み)を開いて、

「騎馬戦って何番目だったか……」

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.98 )
日時: 2017/11/02 12:00
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

皆様、そろそろ一年も終わりに近づいてまいりましたが如何お過ごしでしょうか。
ええ、こちらは相も変わらずでございます。
さて、この度は——過ぎましたね、ハロウィンということで。



八雲優羽:とりっく

梓啓香:おあ

紅河玲奈:とりっく

最上長門:どちらに行ってもいたずら一択ですね分かります

小田原博人:ところで本日は10月30日なのだが、何故今この時間帯に?

八雲優羽:明日のお楽しみ

梓啓香:お楽しみ

紅河玲奈:さっきからこの二人でなにかを画策してるんだけど、なにも教えてくれないの

小田原博人:それはある意味で疎外感だ

小田原博人:なにがあったのか教えてくれないか?

八雲優羽:まだだめ

最上長門:楽しみすぎて原稿が捗らない

紅河玲奈:あ、もしかしてどこかの銀髪の問題児がお化けたちにあはんうふんなことをされるって話?

最上長門:さっすがべーやん分かってるぅ

八雲優羽:待って?

八雲優羽:待って??

八雲優羽:聞き捨てならない単語が今聞こえたんだけど!?

小田原博人:夢だと思うなら過去を振り返ってみるといい

小田原博人:そこに全てが書いてあるさ

八雲優羽:かっこいいこと言ってるけど、要はログを見てこいってことだよね?

八雲優羽:何度読み返しても同じことしか書いてないよ

紅河玲奈:やーさん目が悪くなったんじゃないかな?

梓啓香:ついに眼鏡デビュー?

梓啓香:眼鏡はいいぞ

梓啓香:エロさが増すよ

八雲優羽:マジで!?

八雲優羽:目が悪くなってないけど、伊達眼鏡を買おうかな

最上長門:マジで!?

最上長門:新たな原稿のネタが!!

八雲優羽:モガト、一度その辺りを話し合おうじゃないか

最上長門:やーさんが脱いでくれるのであればいくらでも

八雲優羽:ヌギヌギ

紅河玲奈:文字でやっても……

小田原博人:やーさん、やめないか

梓啓香:そうよ

梓啓香:玲奈の綺麗な目が潰れるでしょ?

梓啓香:もっとAU〇みたいに潔く脱ぎなさいよ

小田原博人:果たしてそれは伏字になっているのか

最上長門:パァーンと、パァーンと!!

八雲優羽:ちょっと今あうおのことについてぐぐってみたんだけど

最上長門:あうおて

八雲優羽:こうかな

八雲優羽:だが許す!

八雲優羽:そして崇め、敬え、奉れ!

八雲優羽:この我の玉体を!!

最上長門:FOOOOOOOOO!!

紅河玲奈:だから文字でやっても

小田原博人:ところで

小田原博人:ハロウィンの話題はどこへ行ったのか

八雲優羽:おやすみ

梓啓香:おやすみなさい

紅河玲奈:ノシ

最上長門:あれえ?

小田原博人:結局分からずじまいか




 次の日



「とりっく、おあ、とりーとぉ!!!!」
「ヘブンッ!!」

 朝のホームルームの時にやってきた担任の空華へパーティーで使うパイを投げつけた優羽は、そのあと一時間ほど正座で怒られたのだった。

【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.99 )
日時: 2017/11/16 11:55
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

皆さんこんにちは。
突然ですが、『君の名は』って素敵じゃないですか。夢の中で男女の中身が入れ替わるの。
そもそも男が女に、女が男に変身する話も意外とツボなのですが。
まあその話は置いといて。

創作世界でお約束の話題で盛り上がるLINEネタです。



八雲優羽:男が女になる

八雲優羽:そして女が男になる

八雲優羽:そんな夢のような面白薬品が

宇野響:ありません

八雲優羽:あります

宇野響:ある訳ねえだろ、現実を見ろやーさん

宇野響:大丈夫か、漫画の読みすぎじゃねえか?

宇野響:それともあまりの馬鹿さ加減に頭が\パーン/したか?

八雲優羽:わざわざそんな表現をしてくれてありがとう

八雲優羽:こんちくしょう

榮倉桃馬:だけど、いきなりなんでそんな話題に?

榮倉桃馬:やーさんにはすでに似てるお姉さんがいるじゃない

榮倉桃馬:二卵性の

八雲優羽:いるよ

八雲優羽:姉貴の部屋から物騒な本が出てきたんだけど

八雲優羽:タイトルが『鬼畜眼鏡攻め』ってあるんだけどさ

八雲優羽:これどう考えても受けの方って俺じゃね?

榮倉桃馬:ちなみに攻めの方は小田原博人さんです

榮倉桃馬:拍手

宇野響:ワーパチパチ

八雲優羽:知りたくなかった現実

宇野響:話を戻せ

八雲優羽:鬼畜眼鏡攻め?

宇野響:ちーがーうーだーろー!

宇野響:謎のお薬の話だっつの!

宇野響:なんで中途半端に話が流れたんだよ!

八雲優羽:あー、そっち

八雲優羽:ちょっと待ってな


八雲優羽が写真を送信しました


八雲優羽:どーよ

榮倉桃馬:お姉さん、自撮り上手いね

宇野響:つか本当に似てんな、やーさんをそっくりそのまま女にしたみたい

八雲優羽:ぶぶー

八雲優羽:残念

榮倉桃馬:誰かがやーさんのコスプレでもした?

宇野響:いくら銀髪碧眼っつー二次元にいそうな見た目をしてても馬鹿のコスプレはしねえだろ

八雲優羽:正解は


八雲優羽が写真を送信しました


榮倉桃馬:カキコ学園の制服だね

宇野響:つか記憶が正しければこれやーさんが着てる制服じゃねえか

八雲優羽:俺でした、はーと

八雲優羽:助けろください

宇野響:なにをした?

宇野響:お前なにをした?

八雲優羽:わかんない!!

八雲優羽:姉貴にもらったココアを飲んだ瞬間にこれだよ!!

八雲優羽:なにこれ、天罰!?

八雲優羽:あずにゃんと一緒にふざけて猫耳つけてゴリ原先生にトリックオアトリートしてきたのが間違いだったの!?

宇野響:なにしてんのお前!!

宇野響:次の日ゴリラが休んだのはお前のせいだったのか!!

八雲優羽:いい加減に俺の銀髪を地毛だと認めないから

宇野響:だからって一生もののトラウマを作るなよ!!

榮倉桃馬:ココアになにかが入ってたんじゃない?

八雲優羽:多分そう

八雲優羽:試しにヒロに助けてと送ったら

八雲優羽:一日経てば元に戻る薬だから問題はないよ

八雲優羽:だって

宇野響:原因あいつじゃねえか

榮倉桃馬:じゃあ明日の学校はその姿で登校するの?

八雲優羽:やったね、女子更衣室に入れるよ!!

八雲優羽:女子トイレにも行けるね!!

宇野響:お巡りさんこいつです

榮倉桃馬:有罪

八雲優羽:Σ(゜д゜lll)ガーン

八雲優羽:いやそんなことはしないけど

八雲優羽:あずにゃんにぶん殴られて、べーやんの剛速球の的になりそうだし

八雲優羽:仕方ない

八雲優羽:明日は女装していくか

宇野響:待って

宇野響:待てやーさん

八雲優羽:てなわけでお楽しみに

榮倉桃馬:楽しみー

宇野響:待てコラオイ!!




 〜次の日〜

「生足魅惑の☆俺!!」
「だからってなんでメイド服なんだよ!! しかもスカートの丈が長いクラシカルなメイド服だから生足もなにもねーよ!!」
「え、本気で俺の生足を見たいの? しょーがねえなー」
「やめろスカートをたくし上げるな!!」

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.100 )
日時: 2017/12/01 11:41
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

 非常に嫌な作業を押しつけられたものである。

 堂前妃はちょうどトイレから戻るところだった。体育祭の真っ最中である為に、選手は運動部棟のトイレを使わなければならなかった。非常に汗臭いし、汚いしで大変だった。
 堂前妃は運が悪い。非常に運が悪い。今日だって体操着を忘れかけて家まで戻ったら靴紐が切れ、仕方がないから比較的綺麗な靴で登校したら犬の糞を踏み、泣く泣く公園で洗っていたら靴下まで濡れて、ついでに制服も濡れて、朝からすでに体操着なのであった。
 なんでこんなに運がないのだろうか。
 前世はなにか酷いことでもやらかしたのだろうか。
 もしそうだとしたら、前世の自分をぶん殴りたい。タコ殴りにして自転車に括り付け、町内一周の刑に処してやる。

「あ、沙羅君」
「……ねえ、どうしようこれ」

 目の前をふらふらとした足取りで横切ったクラスメイト——沙羅華一に声をかけると、彼は泣きそうな表情で一枚の紙切れを差し出してきた。
 それに描かれていた文字は、なんというか、読めない。いや読めない文字の翻訳表というか、ローマ字の表のようなものだった。
 そういえば、今年の体育祭のプログラムが宇宙語で書かれていたような気がする。あれか。あれの翻訳表か。

「これいきなり渡されてさ……クラス全員に見せろって言われてもさ……」
「頑張れ」

 妃は薄情にも親指を立てて華一を応援した。他人の不幸は蜜の味とはよくいろはから聞くが、今まさに同じような状況だった。
 そもそも、妃はこれ以上不幸な目に遭いたくなかったのだ。こんなものを持っていったら「今更なに持ってきとんねん」の台詞と共に殴られそうである。いや、殴られはしないだろうが——どうだろうか。
 妃は早々に離脱を図ろうとしたが、進行方向に華一がいる為に逃げることができない。トイレは一方通行だ。逃げられない!!
 なんということだ。華一は意外と策士だったのか!!

「一緒に逝こう……大丈夫、ちょっと話しかけるだけだから」
「それコミュ障の俺に言う!?」
「それそっくりそのままお返ししてやるよ!! 薄情にも逃げようとしやがって!!」

 互いに胸倉を掴み、お前が行けいやお前が行けと突き飛ばし合っていると、騒ぎを聞きつけたか単にトイレを利用する為だけにやってきたのか、別のクラスメイトが姿を現した。
 烏丸凉。
 なにかと口数が少ない、侍のようなクラスメイト。
 涼しげな目元で見据えられ(睨みつけられたかもしれないが)、妃と華一は互いに抱き合って「ひえっ」と悲鳴を上げた。

「……別に怖がらせたい訳じゃない」
「あ、あ、ごめ、ごめん、ごめんね!?」
「すみませんすみませんすみませんすみません」

 どもりながら謝る妃とひたすらぺこぺこと頭を下げ続ける華一に、凉はなんと答えていいか分からずに頭を掻いた。
 だが、逆にこれはチャンスでもある。——そう、他の誰かに押しつけるという最大のチャンスが!!
 自分の不幸を回避する為に妃は華一が抱きしめていた宇宙語翻訳表を凉へと差し出し、

「これ!!」
「これは?」
「う、宇宙語の翻訳表です!!」

 なに言ってんだ自分。

「あの!! 体育祭のプログラムが宇宙語で書かれてて!!」
「その翻訳表だと?」

 妃は何度も頷いた。華一も「そうなんです!!」と横から突っ込んでくる。
 妃の手から宇宙語の翻訳表を受け取った凉はそれを一瞥すると、

「悪いが先に他の人に見せてくれないか。俺はこちらに用がある」

 そう言って凉が顎で示したのは、その先にある運動部棟だった。多分トイレに用事があったのだろう。
 申し訳なさそうに会釈をして運動部棟へと消えていく凉を見送り、妃と華一は二人してしくしくと涙を流した。

「失敗した、押しつける作戦失敗した……」
「大丈夫だよ……世界はこんなにも綺麗なんだから……」

 さあ逝こう。
 あらかじめ宇宙語の翻訳表を配布しなかった体育祭実行委員へ呪詛を吐きつつ、妃と華一は宇宙語の翻訳表を回す為に奔走するのだった。
 なんか遠くの方でやーさんがどうのこうのって聞こえた気がするけど、さらにいうと空華先生の悲鳴が聞こえた気がするけど、二人にとっては関係のないことだった。

【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.101 )
日時: 2017/12/18 11:44
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: A7M9EupD)

『部活対抗リレーは出場する部活は全員コスプレでーす』

 そんなアナウンスが入ったのは、体育祭開催日の一週間前だった。
 坂神優那は思考回路が停止しかけた。なんか訳の分からない事情に巻き込まれたような気がする。そもそも部活対抗リレーに出ることになってからそんなことを言われてもって感じである。
 だが、規則は規則。やらなければならないのだ。

「でも、あの、バニーは寒くない……?」

 部長から渡された衣装は、ふざけたバニーガールの衣装だった。巨乳である優那が着れば、たちどころに体育祭は如何わしい方へ早変わりだ。
 なんとかしなくては。
 焦った優那は、近くにあった着ぐるみに着目した。これなら露出も少ないし、いいのではないのだろうか。どこの誰が使うのか分からないが、交換させてもらうとしよう。
 部活対抗リレーの衣装は、とある教室で保管されているのである。優那はちょうどその保管室に衣装を置きにいくところだったのだ。そしてちょうど見つけた着ぐるみを、弓道部の保管場所に置いた。
 よし、これなら完璧。
 坂神優那はそそくさと保管場所から離れようとしたのだが、次の瞬間、凍りつくような場面に遭遇してしまう。

「あれ? 坂神、なにやってんだ?」
「ッ!?」

 心臓が口から飛び出るかと思った。
 ちょうどそこへやってきたのは、クラスメイトの菊川柊だった。そうか、彼はサッカー部として部活対抗リレーに出るのか。
 しまった、この行為がバレてしまったらどうしよう。あの着ぐるみってサッカー部のものだっただろうか。視線を彷徨わせてあれこれ考える優那になにかを感じたらしい柊が、ポンと手を打ってくる。

「もしかして、部活対抗リレーのコスプレの衣装を置きに? なにになるんだ、弓道部は?」
「……ば、ばにー……」
「バニー? え、バニーガール? 嘘だろ、そりゃねえよ!!」

 だよね、知ってる。
 優那はその言葉を言いかけたが、「あ、そうだ!」という柊の声に飲み込んでしまった。

「じゃあ、露出の少ない部活と衣装を取り替えればよくね?」
「え、えっと」
「なんならサッカー部の奴を持っていけよ!」

 柊はそんなことを笑顔で言ってくれるが、すでに取り替えているので「うん」とは頷けない。

「その、どんな衣装?」
「着ぐるみだったな。熊さんの」

 ていうかもう交換した後だった。

「その、じゃあ……」
「いいって! 代わりにバニーは俺が着てやるよ!」
「えっ」

 ニカッと満面の笑みで言ってくる柊だが、自分がなにを言っているのか理解しているのだろうか。
 混乱というか、若干引き気味の優那を察したのか、柊が「違う違う!」と訂正してくる。それでもバニーガールの格好をすることには変わりはないのに。

「実は、やーさんと同じレースで走るんだ。負けられない戦いなんだよ、コスプレでもリレーでも」
「やーさん……ああ、サバゲー部の……」
「そうそう。やーさんは絶対にイロモノ衣装を着てくるだろ? あの馬鹿のことだから」

 ふとクラスというか、学校一の馬鹿のことを思い出す。
 彼のことだ。きっとなんか色々まずいものを着てきそうな感じではある。だって馬鹿だから。学校一の問題児で、究極のいたずら馬鹿だから!
 そう思うと、バニーもなんか霞んで見えてくるような……?
 そろそろ坂神優那の正気もカキコ学園のカオスさに飲み込まれつつあった。

「そう、じゃあ、期待してる……」
「俺の肉体美を見せてやるぜ」

 親指を立てて笑う柊に、坂神優那は安堵の息をついた。
 これで変態枠から逃れられた。


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