コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 生贄花嫁花婿−もう一つの物語−
- 日時: 2015/11/27 19:07
- 名前: 古時計 (ID: UJz1k79g)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs3a/index.cgi?mode=view&no=1358
なりきりスレでやっています。生贄花嫁花婿の過去編などです!たまに時間あったら琥珀や火之矢以外のキャラたちもやってみようかなと思っています。参加していない人も気軽に読めるようにしますので温かい目で見てくれると有難いです
キャラクター >>1
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- Re: 生贄花嫁花婿−もう一つの物語− ( No.3 )
- 日時: 2015/11/28 10:16
- 名前: 古時計 (ID: KqRHiSU0)
弐話 弟
冬が来るのか、風が戸を荒く叩き入れさせろというように叫んでいるようだ。そんな風が荒い朝、一人で刺繍をして弟の帰りを待っている。
「…いつ、帰ってくるんだろう…もう三日目…」
一人だと独り言を言いたくなるのか、興していた火を見て言う。
もし、寒さで凍え死んでいたら…喧嘩で負けてぼろぼろで死んでいたら…餓えて死んでいたら…そんな事ばかりしか、頭を通らなくなり麻痺して。
‾‾ゴンゴン
明らかに風の声とは違う音が、戸から聞こえてきた。
「姉上…開け…て…姉上…」
唸るような、その声は自分の弟だ。
その声を聞いた瞬間に、慌てて縫っていた刺繍を放り投げて駆け寄って戸を開けた。やっと、弟が帰ってきた…無事に。
と、思ったが戸を開けた瞬間自分の肩に何かが寄り掛かる。
自分と同じように白い髪と狐耳…着ている着物を見ると風で乾いて茶色くなっている血の跡。
「っ琥珀…どう…して」
光景に唖然として、言葉が上手く出てこない。どうして、こうなったの、どうして、どうして…それしか言葉にできないような気がして。
けど、答える余裕はないように琥珀は力が抜けていき、どんどん私の方へと体重がのしかかり今にも倒れそう。
急いで、私は琥珀肩を貸して布団を敷き弟を寝かせた。
三日も飲まず食わずで、喧嘩をしに行き、ここへと帰ってくる。
そんなことをしていたら、こうなることもありえていたと彼は思わなかったのだろうか…。
ゆっくりと汚れた琥珀の体を、濡れた手拭いで洗っていく。
他人の血で染められた着物はきっと、もう使い物にならない。
弟がグレ始めたのは、いつのことだろう…母上が病で倒れて亡くなった時以来かな…そう思いながら、いつの間にか眠っている琥珀の肌に新しい着物を通していく。
きっと、寂しくて喧嘩をやっているのかもしれない…。
そう思えてくると、自分が情けなく思う。姉として、弟に何をしたら正気でいてくれるのか…どうしたら、喜んでくれるか…笑顔でいてくれるか…
けれど、その疑問の傍ら母上がいてくれたら…と、亡き母に頼ってしまう自分がいた。
窓や戸から入ってくる、隙間風が肌に伝わる。微かに震える。
「…ねんねんころりよ おころりよ
ぼうやはよい子だ ねんねしな
ぼうやのお守りは どこへ行った
あの山こえて 里へ行った…」
眠っている弟を寝かしつけるように、自分を保つように今にも落ちそうな目の雫を堪えて、かつて母が歌ってくれるように、優しく引き攣った笑顔で頭を撫でながら歌う。
‾‾秋が終わって、冬が来て…窓は曇り自分の代わりのように雫を流す。そんな窓の曇りが、羨ましく思う。
- Re: 生贄花嫁花婿−もう一つの物語− ( No.4 )
- 日時: 2015/11/29 11:56
- 名前: 古時計 (ID: UJz1k79g)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs3a/index.cgi?mode
参話 切り傷
朝、包丁の野菜を切る音で目覚める。
懐かしい響き慣れたこの音は…なんだろう。
新しい着物と綺麗になっている体を見て違和感を感じる。
目覚めてすぐのぼやけた目を開いて、台所を覗くと狐の耳をして尻尾をする姉上がいた。料理上手でもない姉上が台所に立っている。
「…姉上、危ないからしなくていい…」
後ろから声をかけて、ぶっきらぼうに言ってみた。最近、素直にものが言えなくなりこうした態度になることが多い。例え、優しくされてもとげのある物しか返せない自信がある。
それでも、姉上は危なっかしい手つきをやめることなく続ける。
「なにも食べてなさそうだから…少しでも、食べて欲しくてね」
野菜を切り終えては振り返ることなく、どこか優しい似た笑顔をした。
それを見て、本当なら感謝をしたくなったが心の中でなにかが邪魔して黒いドロドロした言葉しか思い浮かばない。
「いつまで子ども扱いしたいつもりだよ、姉上。俺は自分で食べたいときに食べる。寝たいときに寝る。…姉上のこと、一人にだってできる」
言いたくもない言葉ばかりが吐かされる。
「…そうだね、はくくん…ごめん…姉上、頑張るから」
吐かされても、姉上はなにも聞いていないように笑顔で子供の頃に呼び合った名前で呼ぶ。
「っ…ほっとけよ、姉上…もう、うんざりなんだよ…いつまで、子供の頃引きずってるんだよ、いつまでそうやって弟の世話ごっこしたいんだよ…頭の悪い狐…頭の悪い女…ははっ…さっさと、消えてしまえば…いいのにね…姉上…」
なにかが、壊されたような気分になった。姉上を突き飛ばして、台所にあったものを荒れ狂うように床に投げつける。
「はく、くん…やめ、やめて…お願い…おねが、い…」
突き飛ばされ、投げつけたガラスの破片で頬を切り怪我をし震える姉を見て、正気に戻ったのか自分の手に持つ包丁を見て鳥肌が立つ。
床には切っていた野菜が散らかり、鍋は使い物にならないぐらいに割れていた。
自分は、どうして姉上にこんなことを言っているのだろ、どうしてこんなまねをした…。
手に持つ包丁が床に落ちては、なにかかに逃れるようにその場から離れた…。
…たくさんの人間を斬って来た罪なのだろうか。だから、自分の頭の中には悪魔がいるのか…唯一の姉までを自分の手で殺せというのか。
家の中で、響くのは包丁の音じゃなくなった気がする
——姉上の、か細く泣く音がした。
- Re: 生贄花嫁花婿−もう一つの物語− ( No.5 )
- 日時: 2015/12/20 16:48
- 名前: 古時計 (ID: a4Z8mItP)
肆話 おはぎ
小鳥達は冬から逃れるように、鳴き声を響かせながら南へと移動する。銀杏の葉はひらりと自分の足元に振る、この頃…。
「火之矢さん、こんにちわ」
振り向けば、また彼女がやって来た。
小走りに、今日は風呂敷を抱えて駆け寄ってくれる。
いつもと変わらない、彼女の笑顔と頭につけている被り物。そんな彼女を見ると、どこか心の奥が温まる。
「最近寒くなってきましたね。洗濯をすると、手が悴みます」
他愛のない話をしてくるのを見て、どこか安心をする。
「そうだな、葉も落ちてきて庭掃除が大変だ…けど、裏庭を見ると栗やしいたけがなっていて旬を感じる」
「いいですね、おすそ分けしてくださいね?」
「まあいったな、一人で贅沢をしょうとしたが…バレてしまったからには仕方ない」
「ずるい神様は許しませんから」
彼女との会話は他とは比べられない程に楽しい…ずっと、笑えられる。そして、彼女の仕草を見るのも楽しい。
「そう言えば…おはぎ、握ってきたので…一緒に食べませんか?」
俺に断られる不安を抱いているのか遠慮気味に言われた。そういう所を見せられると、放っておけないな…。
「嗚呼、ありがとく…頂く」
ふと、彼女の頬を覗くと切り傷を見かけた。一昨日会ったとき、こんな傷はなかったはず…。
無意識に彼女の頬に触れてしまう。柔らかく、どこか繊細な肌だな…。まるで、彼女はすぐに溶けてしまう儚い雪のよう。
「…あの、どうかしました?」
雪にような肌が、赤く染められていく。体温も上がっていくのを手で感じ、我に帰って離した。
「傷、どうかしたのか?」
自分の恥ずかしい行動を知ってしまい、しばらくは目を合わせられず逸らして聞いた。
チラリと、目を合わせないように見ると、彼女は困ったような顔をして、頬の傷を手で押さえていた。
「なんでもありません…それよりおはぎ…食べましょうよ」
話を逸らすのを聞いて、衝動的になってしまい、彼女の傷を押さえていた手を掴んだ。なにか隠されている、そう思うとモヤモヤして落ち着くことなどできない。
「…隠すな、辛いことなら言ってくれ…俺は一応、神だ…願いたいことがあれば言ってくれ…」
我が儘かもしれない、隠しているものを見せて欲しいと思うのは。けれど、こんな気持ちになったのは初めてだ。どう表現すればいいか、伝えたくても伝えきれない。
「…辛いことなんて、ありませんよ。叶いたいことも、願いたいことも…ない」
そんな俺の期待する答えとは裏腹に、彼女は笑顔を向けて答える。いつもとは、少し違うような見たことのない顔だ。
「…私、用事を思い出しました。おはぎあげます」握った手を振り払われ、おはぎの入った風呂敷を持たされては、小走りに去って行かれた。
一気に、寂しさを感じる。拒絶されたような気分だ。白い息を吐いて、風呂敷を開けると、いびつな形のおはぎを1つ取り出し口に含んだ。
「んぐっ…甘くて塩っぱい…な」
独り言を呟いて、くすっと笑いを零す。本当なら隣にいたら、もっと美味しく感じられるだろう。
切ない気持ちで、ただひたすらおはぎを口に入れた。
- Re: 生贄花嫁花婿−もう一つの物語− ( No.6 )
- 日時: 2015/12/23 13:41
- 名前: 古時計 (ID: FSosQk4t)
伍話 冬が来る
胸が締め付けるように痛い。
逃げ出してしまった…もし、バレてしまったら…もし、知られてしまったら…。
「…嫌われる」
ぽつりと零した言葉。それは、狐として彼に殺されることではなく狐として彼に嫌われること…。
もしも、彼が知ってしまったら…この耳を見てしまったら…顔色を変えて、笑顔で語り合うことなどもう二度と来ない。
そんなの、嫌……嫌だ。
胸が更に締め付けられて、涙が滲んで目の前がぼんやりとしか見えない。
どうして、こんなことを想うのか…わかり始めている。けれど、それは口にしてはいけないもの。
ーーーーー
ーーー
ー
思えば、あの時からかもしれない…
「ねえ、神様…」
神社の縁側で、池を眺めているとそう私は彼を呼んだ。
「…火之矢でいいと言っている」
細くて大きい手でお茶を運んで、私の隣に座っていってくれた。
「では…火之矢さんは、幸せですか?」
自分の欲しがる言葉は期待していないが、聞いてみたくなった。
「嗚呼。不幸を感じることもあるが……」
神社の鳥居で遊ぶ子供たちを、真っ直ぐに透き通った瞳で彼は…
「不幸と感じられる事は、幸せを知らないと不幸だとわからない…だから、幸せだ」
ーーーーー
ーーー
ー
もう少しだけでも、あの瞳を見ていたかった。もう少しだけでも、あの瞳に映っていたかった…。
道端で、俯いていると小さなどんぐりが目に映る。
‾‾秋が終わったら、冬が来る。
そう思うと、胸の中が痛い…このまま、居続けていたら…今でも欲張りなのに、もっと欲張りになる気がするから…。
「……帰ろう…」
自分の心を誤魔化すように、呟いては歩き始める。
今日も弟は、いないだろう…万が一いても、話す言葉もない…。
‾‾そんな家に帰ろう。
- Re: 生贄花嫁花婿−もう一つの物語− ( No.7 )
- 日時: 2016/02/13 14:20
- 名前: 古時計 (ID: cYSZrqDn)
おまけ ほのぼの日常な姉弟狐/琥珀推定6歳 姉推定9歳のお話*
「はーくーくん!!はくくん!!」
僕の姉上は僕より年がある。当然だけど…嘗められているのは嫌い。僕は誰よりも上に立ちたい主義。だから、時として姉がムカつく。早く生まれておけばよかった。あーあ
外は雪景色、姉の髪の毛とよく似ている。あと狐になった時の毛並み。というより、姉は白い狐だから当然か。母上から聞くと白い狐は幸運を運んでくれるらしい…僕が白い狐になりたかった。どうして、姉上は僕より優れているんだろう…先だからってえらそう!!
「外へ遊んでらっしゃい、ただし上を羽織ってね」
母上は僕たちに手作りの羽織を着せる。はっきり言って、母上の手作りは歪だ上手くもない中途半端なでき。だけど、僕はできのいい息子だからそんなこというはずもないよ?へへーん
だが、姉は違うはっきり言って素直な奴
「母上、ここの糸上手く縫えてないよ」
無邪気な笑顔で素直に言う。狐なら、上手く嘘付ければいいのになんでそんなに素直なのかな。きっと、母上の僕の好感度は鰻登り間違いなし
「あら、本当ね。あとで直しておくから」
あれ、母上なんで怒らないの?…なんだよ、僕てっきり嘘つかれた方が喜ぶと思ったのに…。
「はくくん、お外であーそぼー!!でっかいでーっかいかまくら作ろ」
姉上は僕より少し大きな手で手を繋ぐ。な、なに、先に生まれたからってなんでお手々おっきいーの…むかつく。
拗ねた顔で外へ無理やり引っ張られると、投げ飛ばされて雪へと顔面ダイブさせられた。—なんでこんなに力が違う。
「若菜のばああか!!」
怒りがたまりにたまって、ぐずぐずと寒さ…寒さで鼻水をすすり、ゴ、ゴミが目に入り…涙を我慢する。姉上なんて呼んでやるか、三年早く生まれたからと言って妖怪にとって三年は三日の感覚。姉上なんか、姉上なんか…所詮、白い狐の若菜だ!!
「はく、くん…ごめんね…お姉ちゃん、投げ飛ばしたの謝る…」
無自覚な姉なんて、もっともっと嫌い。投げ飛ばされて、顔面冷たくて感覚ないのは確かに許せないけど…ぼくは…。
「違うよ、あねう…若菜、僕ね…弟なのヤダ」
ついに、言ってしまった。僕のワガママ…言っちゃった。
「じゃあー、今日からはくくん若菜の兄上!それで泣き止んでくれる?」
とか、言って僕の頭なでなでしないで…全然、妹がすることじゃない。ってか、泣いてないし…!
「僕、今日から兄上だから…いうこと聞け…わかちゃん」
せっかくの羽織を、涙と溶けかけの顔面に付いた雪を拭いて二ヤリと胸を張って言って見せた。これで姉上も僕のこと、腹立つとか思うはず。
「はい!兄上、若菜頑張りまーす!」
ッギク…なんで、なんで…なんで、姉上はそんなに楽しそうなの。上から目線されて嫌にならない?…逆にムカつく。
「じゃあ、雪だるま10個作って!兄上命令!」
これはさすがに嫌な顔をされる。絶対絶対、僕はそんな命令お断りだから。
ーそう思っている矢先、姉上は無邪気に雪を集めてはよいせよいせと作り始める。…なんで姉上嫌がってくれないの!?
それも楽しそうに一人で尻尾振って雪だるま作ってる。
「…あ、兄上は一番偉いから!お菓子だって妹より多いから!」
ムキになって、泣きそうな目で姉を見つめて言う。
「うん、兄上。えらいよ」
動じることもせずに、一生懸命に雪だるまを作っていた。
「…」
なんで、涙が流れてるのに姉上…頭撫でてくれない。
…それより、手冷たくないのかな。さっきから、ずっと雪触ってるから…寒いはず。
「…姉上、手…赤いよ…」
涙を拭きながら、ボソリと呟いた。姉上のこういうところは、素直じゃない。やっぱり、姉上がいい…ムカつくけど。
「姉上はへーき、だって姉上だもん」
にひひと笑うと僕の頬に冷たい手を当てた。びくっと、肩を揺らすと仕返しに姉の頬を抓った。
「姉上…ムカつく」
なにをしたって、姉上は姉上だった。素直でいても嘘ついても、妹のふりをしてくれても姉上。
だから、姉上と僕は呼び続けるよ。
END
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