コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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ハオのウィザード【明賀 鈴に改名しました】
日時: 2016/06/14 17:57
名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: YgiI/uLg)

普段は複雑ファジー板で執筆している明鈴あきすずもとい、明賀 鈴(あけが すず)です。この度改名しました…!苗字をつけました!
\あきすず は レベルアップ した/チャララ〜〜

魔法少女が正反対兄弟を巻き込んで、はちゃめちゃするお話です。

▼注意:ノリの塊でしかありません。ノリのかたまりでしかありません。
(大切なことなので二回ry)
→別名で、別サイト様にも投稿しております。
→のそのそ執筆になってしまってます…。
→いつの間にやら参照250ありがとうございます(>_<*)

▼最終更新:2016.06.14 >>14 →モロミザトの幸福と憂鬱
☆:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::☆
【ハオのウィザード】
・・・目次・・・

主な登場人物 >>02

【序章:三人の話】 >>01

【第一章:悪戦苦闘のプラットホーム】>>06-12
【第二章:戯言と乱立の高校生活】>>13-14 次回更新予定…
☆:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::☆

▼お客様:いつもありがとうございます*+
夏月さま→コメントありがとうございます♪♪ こちらこそ、よろしくお願いいたします(o^^o)


++++++
執筆開始*2015.12.26〜
参照100突破*2016.01.02


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Re: ハオのウィザード【12.30更新】 ( No.10 )
日時: 2016/01/01 20:39
名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: 02GKgGp/)

嫌な予感がしてそちらに向かうと、改札口の周りには二重にも三重にも人だかりができていた。
どうやらその中心に、先ほど叫び声を上げた人物はいるらしい。
郁人は、ヤジが飛び交う人ごみの中を「すみません。すみません」と断りながら進んでいき、ぷはっと顔を出すと、そこにはやはりあのヘンな少女と、警官を二人ほど後ろに従えた光希の姿を見つけた。

二人は対峙していた。

どうしたものか。
うろたえる郁人をよそに、少年少女の緊迫した会話が続く。

「万引き女に万引き女と言って、何が悪い」
「だぁから、どーしたもこーしたも、羽織は羽織なんだよっ! なんで万引き女呼ばわりされなくっちゃいけないのかなっ!?」
「あんたが万引きしたからだ。しかも白昼堂々と。万引きは立派な犯罪だぞ」
「……ハンザイ?」
「ああ、そうだ」

少女はキュッと眉を寄せると、そのまま『こめかみ』に人差し指をあてがった。

「むーん。そんな覚えなんか無いんだけどなあー」
「犯罪者は皆そう言う。あんたがいい例だ」
「じゃあ逆に聞くけどねえ。道端にポーンっとリンゴが置いてあったら、君ならどうする? しかも、と〜〜ってもお腹が空いてるとき。……食べちゃうでしょ? こう、パクッて」
「あいにく、俺はあんたとは違う人種のようだ」
「人類、皆家族だというでしょう!」
「意味が分からない」
「つまりだよっ!」

キュキュッと靴を鳴らして華麗なターンを決めた少女に、野次馬たちは口々に「ブラボー!」と、叫ぶ。
なんのこっちゃ、と郁人は小さくつぶやいた。

「食物連鎖! これ、自然界のオキテなのであ〜る!」
「……何が言いたいのか、さっぱりわからない」
「だから簡潔に述べると、だね。『羽織はリンゴを食べたけど、万引きはしていない』と。まあ、そういうことなのだよ」

少女が名探偵よろしく人差し指をぴっと立ててそう言うと、野次馬たちの間から「さっすが羽織ちゃーん!」という声があがった。こんな短時間でファンを作るなんて、この少女はいったい何者なんだと、郁人を含め、通りがかりの他の女性のたちは冷め切った視線で一連の騒動を眺めていた。

「つまり、自己中心的な女だ、と」

光希はこくりと頷いた。

「————お巡りさん。そういうことなので、連れていってください」
「だ〜か〜〜らあ〜〜っ!」

だんだんと地団太を踏む少女に、光希は決定的な一言を放つ。

「あんたが何を言おうと、こちらには目撃者がいる。そして俺もそのうちの一人だ」
「むう〜〜……」
「諦めるんだな。あんたは犯罪者だ」

思いっきり頬を膨らませている少女に、光希はくるりと背を向けた。入れ替わりで警官が二人、少女に近づいてゆく。

「さ、お嬢ちゃん。名前と住所を……」
「ヤダ」

「けどねえ」と諭すように警官が話しかけると、少女はそれまで大人しく手に持っていた棒状の物体をいきなり突き出した。
まとっていた布がはらりととれ、まるで魔法使いが当然のように携帯している杖のような、節くれだった木の棒が姿を現した。杖の先端にはテニスボール大のガラス玉が虹色に輝いている。

「なっ、何を……?」

突然の出来事に、うろたえることしか出来ないでいる警官を見て、少女はニッと微笑んだ。
野次馬がざわりと波のように動く。
郁人と光希もこれから起こる事象に、身構えることしかできないでいた。

「さてっ——と」

少女はそう言って、深く息を吸った。
そうして杖を握りなおすと、舌先で唇を濡らしてつぶやいた。

「【汝と此方の契約に誓い、真の名のもとに請う。ルクス——我の姿形を霞と化せ!】」

呪文のような言葉の羅列に人々が呆気にとられる中で、少女を中心にぶわっと風が巻き上がった。続いてガラス玉から目がつぶれるほどのまばゆい光が弾け飛んだ。
人々は反射的に手や腕で顔を覆い、しばらくしてから目を開けたとき、そこにあったはずの少女の姿が忽然と消えていた。

「————!?」

郁人と光希は思わず顔を見合わせ、それからすぐに周囲を見渡した。
しかし、どこを捜しても少女の姿はなかった。
「だから消えたんですよ、目の前で、少女が!」とトランシーバーに向かってわめく警官の声が耳に響き、いつまでも反響していた。

Re: ハオのウィザード【あけましておめでとうございます】 ( No.11 )
日時: 2016/01/02 12:25
名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: ctVO2o7q)

二人が呆然と立ちつくしていると、警官がすぐそばまでやってきた。

「すまないが、君たちもあの少女を捜すのに協力してくれないかな」

もう一人の警官は、トランシーバーで応援を頼んでいるようであった。
郁人は間髪入れずに答えていた。

「もちろんです! 弟の光希もやる気まんまんです!」
「……俺は何も言ってない……」
「捜しに行くぞ! 本人に会って、確かめるんだ。色々気になるだろ!」

郁人は不服そうな顔の光希の腕をがっしり掴むと、そのまま人ごみをかき分け、構内を猛然と走り始めた。
駅構内を歩いている人々がぎょっとなって立ち止まる。途中で忙しそうな会社員にぶつかり、書類を派手にぶちまけてしまったが、郁人はそれでも走り続けた。郁人に腕を掴まれ引きずられるようにして走っていた光希が、兄の代わりに心の中で謝罪の言葉を唱えておいた。

しばらく走って息が切れてきたところで、仏頂面のまま走っていた光希が突然立ち止まった。
当然、腕を掴んでいた郁人も仰け反るようにして立ち止まった。靴が床とこすれて、キキーッとブレーキ音を立てた。

「はぁっ……はぁっ……。んだよ、光希。僕はあの謎の女の子を……」

弾む息を整えながら郁人がそういうと、同じスピードで走っていたはずなのに汗一つかいていない光希が「郁人」と言った。

「あの万引き女がどこにいるのか、心当たりがあるのか」
「ないっ」

きっぱりと言い張ると、光希の顔が険しくなった。

「無いけど……でも、とりあえず捜さないとさ。ほら、お巡りさんとも約束しちゃったし」
「だったらこのまま走り回ってても無駄に体力を消耗するだけじゃないのか」
「ん? なんでだよ」
「闇雲に探し回るのは効率が悪い。家に帰った方が良いと、俺は思う……けど」
「でもあれだぞ、光希。さっきも言ったけど、お巡りさんにも見つけるって言っちゃったしさ。それに……やっぱりアレだ! 最終的には、男のプライドだね!」

汗を飛ばしながらも、元気いっぱいに言う。
 がしかし、郁人のこの自信に満ち溢れたセリフは、

「くだらない」

光希の言葉に一蹴された。

「早く帰ろう」
「………………」

帰宅するために一度離れた改札口へ向かう光希のあとを大人しく追いながらも、郁人の顔は腑に落ちない様子だった。
なんだかすっきりしないと頭を振り、顔を上げたところで、郁人は思わず声を上げていた。自分の前を行く光希を呼び止める。

「なんだ」

ものすごく不機嫌そうに光希が振り向く。
郁人はぱくぱくと口を動かし、もう人がまばらになっている改札口の辺りを指差した。

「あ、あれ……。光希。あれ……」

言われるがまま、光希も改札口を見て、

「————万引き女だ」

赤みがかったショートボブを揺らし、改札前で右往左往しているひとりの少女を見つけた。

参照100ありがとうございます!(*^^*)! ( No.12 )
日時: 2016/01/02 15:07
名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: jJ9F5GeG)

二人がじいっと見つめていると、少女はその視線を感じ取ったのか、びたっと立ち止り、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
そうしてそれが郁人と光希のものだと気づくと、ダダダダと、ものすごい勢いで向かってきた。

「え……」

まさか——。
郁人にとって、少女の行動は予想外の行動であった。
思わずたじろぐ郁人の隣で、光希はハアとため息をついていた。

「あ、えーっとお……」
「キミはあのときのキミぃ——ッ!!」

笑顔で飛びついてきた少女をどうするか——考えるより先に、郁人は全身で受けとめていた。
そのとき反動でガツンと床に頭を打ち付けてしまったが、少女はそんなことなど気に留める様子はなく、彼の両肩を掴んでガクガク揺さぶりながら、喜ばしい運命の再会につかの間浸っていた。

「……ン。じゃあ帰るから」

光希はその傍らでため息交じりにつぶやくと、早々に立ち去るべくきびすを返した。
郁人が慌てて叫ぶ。

「ちょっと待て、光希ッ! お前、万引きがどうとかは、もうどうでもよいのかよっ!」
「ああ……」

相変わらずガンガンと床に頭を打ちつけられている郁人をしばし見つめ、光希はうなずいた。

「そうだな」
「でもっ、だって、さっき警官二人をひきつれて言ってたアレは……!」
「あのときはそういう立場にいたからね。今は警官もおばさんもいない。よって俺は赤の他人だ」
「どーいう意味だそれーっ!」

ガンガン。

「そのままの意味だ」
「善人ぶって裏の顔はそれかーっ! 光希ぃ——!」

ガンガン——
そこで、少女は郁人を揺さぶるのをやめた。
郁人は後頭部をさすりながら、思わず目の前の少女の顔を凝視していた。

「ねえ、キミ」
「は……い?」
「名前はなんなのかな。そういえばまだ聞いてなかったや。名前」

先ほどの郁人と光希の会話は一切聞こえていなかったのか。それは満面の笑みを浮かべて、少女は郁人に尋ねた。
郁人は後頭部をさすっていた手をとめると、

「あ……僕は 成宮 郁人、だけど」
「いくと、くん! わあ——ッ。いい名前だねえ——!」

そんなふうに盛り上がられても、返答に困る。
ははは、とひきつった笑みを返した郁人に、少女は大きくうなずくと、瞬間、ギッと光希を睨み据えた。

「なんだ万引き女」

それに動じもせずに光希が言うと、少女は無言で立ち上がった。
郁人は呆気にとられて彼女を見上げ——少女はそのままつかつかと光希との距離を縮めていく。

「ねえ、キミ」

そう言った少女は、すでに光希の鼻の先にいた。

「キミは誰で、郁人くんとどういうご関係、なのかな」
「なんでそんなことを聞くんだ」
「キミは羽織の質問に答えてくれればそれでいいんだよ。ね。キミは郁人くんの、なんなのかな」
「………………」

ずずいっと少女が光希に顔を突き出し、それを傍らで見守っていた郁人の心臓は鳴りっぱなしであった。

——この雰囲気はヤバい。

郁人はそう思ったが、思っただけで、そこへ介入しようにもその場から動けないでいた。
それほどまでに、嫌な緊張感に包まれていたのである。

「……俺は 成宮 光希 。成宮 郁人は、俺の兄だ」

光希の言葉に、少女の目がくるんと反転した。
刹那、バッと光希の肩を掴み、少女は目の前の顔を食い入るように見つめた。

「なんだ」
「…………似てない」

ぽつりと吐き出された言葉は、郁人の心に凶器のごとく刺さった。
確かに、十七年間生きてきて、弟とそっくりだと言われたことは一度もなかった。
それでも——やはり正面切って言われると、こうも辛いものが込み上げてくるんだな。
そうつぶやいて、郁人は人知れず涙をのんだ。

「そうか。そんなに似てないか。俺と郁人は」
「そりゃあね」

光希の言葉にうなずくと、少女は肩から手を離して指を折っていく。

「顔は似てないし、オーラも違うし、言葉遣いも違うし、性格も真逆! 真逆の真逆!」
「真逆の真逆は、同じじゃないか」
「なによおっ! 強調しただけなんだからねぇ! これで勝ったと思うなよキミィ——!」

一体何の勝負なんだと、光希はため息とともに吐き出した。
そこで息をひそめていた郁人が「そうだよ、あのさあ」とすかさず割って入った。

「僕たち、そろそろ家に帰んなくっちゃいけないんだよね。ってことで、短い間だったけど、ありがとう。お世話になったよ」

ここは『お世話になられた』が正しいよな、と心の中でぼやきつつ、郁人は笑顔でそう言い放つと、一方で非常に迷惑そうな顔をしている弟の腕を自分の腕に絡めた。

「………………」

黙って腕を見つめる光希を引っ張りながら、郁人は振り向きざまに少女に告げた。

「そうだ。もう万引きすんなよーっ。あ、あとついでに無賃乗車もダメだからな——っ!」

ひらひらと手を振って弟と共に改札口へ消えていった成宮 郁人を見つめ、しばらくしてから赤毛の少女はぽつりとつぶやいた。

「あの人なら……絶対大丈夫だ……」

そして不敵な笑みを残して、少女は文字通り、『消えた』。

一方で、忘れ去られていた警官だが、いまだに郁人と光希の帰りを待っていたりする。


【第一章:悪戦苦闘のプラットホーム 了】

Re: ハオのウィザード【参照100ありがとう(*^^*)】 ( No.13 )
日時: 2016/06/11 00:01
名前: 明賀 鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: N0L12wyN)

【第二章:戯言と乱立の高校生活】


「山羊座のあなたに朗報だヨ! 今日は新しい出会いがあるみたい。そんなあなたのラッキーパーソンは、『普段あまり喋らない人』。素敵な出会いに美香もドキドキ! 以上、井上美香の今日の星占いでしたぁ〜☆」

 今日の一位は山羊座……しかも新しい出会いがある……そして自分は山羊座……。
 そんなことを考えながらネクタイをビシッと締め、諸見里 弥市(もろみざと やいち)は思わずにやけていた。胸ポケットには校章が縫い付けられている。それは彼が猩々学院の生徒だということを立派に証明していた。

「今日は素敵な一日になりそうだなァ〜」

 間の抜けたような声に被って、リビングの奥から叫び倒すような女性の声が響く。

「弥市! あんた急がないと学校遅刻するでしょーが!」
「わかってるよ母さん。じゃあ、行ってくるよ!」

 プチンと自室の小型テレビの電源を切り、諸見里は立ち上がった。校章が刻印されている学生指定鞄を持つと、玄関のドアを開けた。
 いつもと変わらない太陽の日差しが、いつものように諸見里の眼鏡に反射して輝いている。
 しかし、本日星占い一位である諸見里にとって、それは天からの祝福であった。

「太陽のやつめ……この自分を祝福してくれるとは、困ったもんだなあ」

 諸見里のこのつぶやきは悲しいかな、周囲の人間はもちろん、誰一人として理解できるものはいなかった。
 それでも構わず鼻歌を歌いながら諸見里はご機嫌に通学路を歩いていた。
 彼は高校二年生。彼の通う猩々学院には中等部と高等部があり、彼はもちろん、高等部に在籍している。が、私立であるこの学校には、他校にはない『制度』が存在していた。それが『飛び級制度』である。外国では多く見かけるこの制度は、日本ではほとんど例を見ないが、猩々学院には頭脳明晰な生徒が身の丈にあった学年に籍を置けるようになっていた。もちろん諸見里はただの諸見里である。そんな制度など、多分一生世話になどならないと、本人も自覚していた。

「バラの高校生活っ! 青春の高校生活! そして今の自分は幸せ絶頂! このチャンス、モノにしないでそうしろと言うんだ諸見里 弥市ーーッ!」

 登校途中に右手の拳を元気よく突き上げ、妙なことを口走る男子生徒など、ただの変態である。
 同じように登校していた猩々学院の生徒たちは、皆がみな嫌疑の表情を浮かべていた。

「あっと、こんなことをしている場合じゃあないぞお!」

 一人そう叫び、周囲の生徒らはヒソヒソと怪しむ目つきで目の前の変質者についての話を始める。

「まずは新しい出会い! これに限る!」

 たったかたーと軽やかに駆けていく諸見里の姿は、心なしか輝いて見えるのだった。

Re: ハオのウィザード【明賀 鈴に改名しました】 ( No.14 )
日時: 2016/06/14 17:55
名前: 明賀 鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: YgiI/uLg)

 七時四十分を告げるチャイムが鳴る頃、約十五分の道のりを経て諸見里は校門前にたどり着いていた。
 中庭の向こう側にそびえ立つように立っている校舎を見上げながら、諸見里は胸の前でぎゅっと拳を握りしめ、心に誓った。

「新しい出会いを、必ずこの手でゲットしてみせる! 待っててね美香さん!」

 星占いの担当ニュースキャスターの名前を噛み締めるように呟くと、彼は再び「新しい……出会い……」妄想の世界へトリップし始めた。

「どんな子なんだろうか……いやそもそも新しい出会いというだけあって女子学生だとも限らないんじゃ……いやいや、何を言っているんだ自分。弱気になるな自分。美香さんを信じろ、美香さんは正しい。でも……女子生徒が……ぎゃんっ」

 諸見里は校門前でひっくり返っていた。そんな彼を物珍しそうに登校中の生徒たちが眺める。諸見里は制服についたほこりを払い、落としてしまった眼鏡をかけ直すと、すっくと立ち上がった。

「何なんだ、いったい……!」

 そこまでだった。
 彼の目の前に、赤みを帯びたショートボブの少女が立っていた。胸ポケットには諸見里の見ている制服と同じものが刺繍されている。それで彼女がこの学校の生徒なのだと、諸見里は瞬時に理解した。
 しかし、彼女は学生鞄とともに、おそらく少女の肩までありそうな長い棒状のものを布に包んで所持していた。剣道部か何かかな、と、諸見里はその時はそう思った。
 とにかく、その女子生徒はくるんと大きな黒い瞳を瞬かせ、諸見里をじっと見つめた。

「ごめん。ぶつかっちゃった……大丈夫? かな」

 愛らしい唇から、鈴の音のような声が漏れ出る。
 瞬間、諸見里の脳内で今朝の星占いの結果がぐるぐると駆け巡っていた。

 新しい出会いが……新しい出会いが……新しい出会いがあるでしょうっ!

「美香さん! 君の言葉は正しかった!!」

 諸見里は朝のテンションのまま叫ぶと、身を乗り出すようにして少女に言った。

「あのだね、君。よかったら名前を聞かせて……」
「あっ! もうこんな時間だよお。羽織行かなくちゃ。校長も待ってるし。じゃ!」

 可愛くピースサインをすると、少女はそのまま校舎の方へと駆けて行ってしまった。
 一人取り残された諸見里は、しばらくその背中を追っていたが、すぐにその後を追うのだった。


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